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伝説の木の棒 前編  作者: 木の棒
第3章 怪しい女王と聖女
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第22話 秘密のお話

 豪華な装飾が施されたテーブルに、二つのティーカップ。

 ティーカップに注がれた香りのよい紅茶を優雅に口に運ぶ女性が二人。

 どちらも服装から位が高いことが伺える。


 「ナールの件…本当に良かったですね。ティア様」


 「ああ、まったくだ。最後の聖樹の狩り手を失わずに済んだ…この数か月、私を悩ませてくれた大きな問題が1つ解消されて嬉しいよ」


 「運ばれた聖樹が一本足りないと分かった時の騒ぎが、笑い話になりましたね」


 「完全な笑い話になるにはもう少し時間が必要かな…ナールを処刑せずに済んだとしても、例の派閥が何も無しで許すとは思えない」


 「確かに…そこはナールの今後の頑張り次第と言ったところでしょうか。それにしてもこの聖樹…どういうことなのでしょうか」


 「うむ…ニニの話しを聞けば聞くほど、この聖樹は特別に思えてならない。まるで意思が存在しているかのようだな」


 「はい…謁見の間での出来事…直接見たわけではございませんが、あの信じられない魔力の高まり。そしてマルケス騎士を凍らせたという話。どちらもニニという少女が出来るとは思えません。となると…この聖樹が自らの意思で行ったと…」


 「ああ…ミリアから聞いたところによると、マルケスはニニを取り調べている時に…ニニの服を脱がし、下着まで脱がそうとしたらしい。この聖樹がそれを見て怒っていたとしたら…」


 「信じられませんが…起こった出来事から考えられる答えは…やはり意思があるということでしょう。昨夜の「聖樹草8番地」における事件でも、ニニの言葉からすれば、聖樹が自分のことを助けてくれたと」


 「ニニはこの木の棒が、聖樹から切り取られたものだと知らなかったようだがな。それにしても聖樹の値段が銅貨1枚とはな…ニニは買い物上手だ」


 「値段をつけられるようなものではございませんからね。ニニのお母様…クリスティーナという名前でしたね」


 「ああ…クリスティーナだ」


 「あの「祝福のクリスティーナ」ですよね?」


 「ああ…あの「祝福のクリスティーナ」だ」


 クリスティーナの話しになった途端…ティアの表情が変わる。

 ティアの表情をマリアはどう感じ取ったのか。

 ティアはティーカップを眺めながら、遠い過去を思い出しているようだ。



 「さてとマリア…例の事件との関連性は分かったのか?」


 「はい。ニニに聖樹を渡した老人は、雑貨屋ムーンにて聖樹を箒にするために購入しております。そしてその雑貨屋に聖樹を持ち込んだのは、やはり例の討伐に参加していた戦士の一人でした」


 「やはりか…その戦士はあのゴブリン討伐で聖樹を拾ったと?」


 「はい、ですが報告書通り自然発生したゴブリンロードが大剣を持っていたことは間違いないようです。聖樹は投げ捨てられたように地に転がっていたのを、たまたま拾ったそうです」


 「自然界のゴブリンからゴブリンロードが誕生する前代未聞の事件…この聖樹が関係していることは間違いないな」


 「そう考えるべきかと…「バハムートの化身」が空を飛んでいたとの目撃情報から、当初はバハムートの化身の力によってゴブリンロードが誕生したかと思っていましたが…聖樹の影響と考えるべきでしょうね。ただ、どちらも関係しているという可能性もございますが…それに自然界のゴブリンが大剣を持っている…あり得ないことです」


 「鑑定された大剣は…地下世界のものだった…つまり「根の穴」から侵入してきた悪魔があのゴブリン達を襲ったはずだ…それをゴブリンロードが撃退する…不可能ではないが悪魔に素手で勝てるとは思えない…あのゴブリンロードは聖樹を木の棒として武器に使っていたと考えるべきだろう」



 息を吐き出してティーカップの紅茶を飲む。

 その姿を、マリアと呼ばれた女性は見つめている。



 「さて…次の問題はこれだな…マリアどう思う?」


 「こちらも信じられません。信じられませんが、実物がこうして目の前にあるわけですから、信じないわけにはいきません」


 「ああ…聖樹草から作ったお茶だそうだが…「聖樹の祝福」を受けている」


 「はい…アルフ王に背いた「大罪の日」以降…聖樹が私達に祝福を下さったことはございません。しかし…こうして目の前に…聖樹の祝福を持つお茶がある…アルフ王が私達を許して下さったということなのでしょうか?」


 「そうあってくれることが望ましいが…簡単に結論付けることは出来まい。何より地下世界からベルゼブブの侵攻は止まっていないのだ。大罪が許されたのに地下世界から悪魔はやってくる。そんなことは多くの混乱を招くだけだ」


 「はい…3つ目の「大穴」が発生したばかりですし…私達が許されたわけでは無いのでしょうね」


 「3つ目の大穴の件はまだ広まっていないな? これがあの堅物老人共に知られたら…」


 「はい、大丈夫です。賢老会には知られておりません」


 「そうか…マリア。聖樹の祝福のお茶だが…1つ持っていけ」


 「え?!…そ、それは」

 

 「良い。持っていけ。娘に飲ませるといい。これは女王命令だ」


 「…ありがとうございます」


 ビンを手に持ったマリアは、ティアに深々とお辞儀をして部屋を出ていく。

 一人残ったティアは、ティーカップを眺め…一口飲むと。


 「賢老会が動く前に…どうにかしなければ…」


 ティアは何かを思い立ったかのように立ち上がると、部屋を出ていこうとする。

 ドアの前で立ち止まり…振り返ると聖樹を見つめる。

 この聖樹が…自分に何をもたらしてくれるのか…栄光ある未来か…破滅の未来か。

 

 女王が溜息のような小さな声で呟く。

 その呟いた言葉を理解出来る人間は…この世界には存在しない。






ステータス

すりつぶすのが得意な冷たい魔力の木の棒

状態:空飛ぶ少女のすりつぶすのが得意な冷たい魔力の木の棒

レベル:4

SP:0

スキル

魔力:レベル2

氷魔法:レベル1

薬調合:レベル1


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