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伝説の木の棒 前編  作者: 木の棒
第1章 ゴブリン
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第9話 討伐

 頭の中が真っ白になった。

 きっと髪の毛も真っ白になってしまったに違いない。

 いや…髪の毛ないんだけどね。

 木の棒だし。


 オーク達の戦いの後、大剣を手に入れたゴブルンは俺を自分の息子に渡した。

 その瞬間…俺の頭の中にシステム音のような声が響いた。



「持ち主が変更されました。ステータスがリセットされます」



 このシステム音は知っている。

 レベルが上がると、同じようなシステム音が鳴るからだ。

 持ち主が変更された…つまりそれはゴブルンからゴブルンジュニアにだ。

 それは別にいいよ。

 ゴブルンには大剣があって、俺はいらない子になったのだから。

 だが、しかし!ステータスがリセットされるのは何でなんだよ!!


ステータス

木の棒

状態:ゴブリンの木の棒

レベル:1

SP:1

スキル:無し


 ゴブルンに拾われた時とまったく同じ初期のステータスだ。

 持ち主が変わる度に最初からやり直しってこと?!

 なんというマゾ仕様!

 俺そんなに心強くないからね?!


 まさか俺…木の棒がこんな残念仕様だとは思わなかった。

 とりあえず、叩かれても痛く無いように闘気レベル1を取得しておく。

 ゴブルンジュニアは俺をもらって嬉しそうにしていた。

 嬉しそうにしていたけど、狩りには行かずにハーレム達との営みに戻っていった。

 俺は定位置の隅っこに放り投げられて捨て置かれた。


 新しい持ち主のゴブルンジュニアはまったく狩りにいかない。

 行く必要が無いのか?

 ゴブリンロードであるゴブルンが次々と獲物を持ってくるからなのか…。

 偉くなったら仕事しないで女を囲って堕落した生活をするイメージがあるのだが…いや女は囲ってハーレムは着実に増えているが、ゴブルンはどうやら働き者らしい。

 おかげで息子のゴブルンジュニアは狩りの必要が無く、一日中ハーレム達のお尻を追いかけている。

 よって…俺はまったくレベルが上がらない。


 ゴブルンがいれば、村は安泰だ。

 きっとみんなそう思っている。

 こうして、ゴブリン村には平和が訪れたのでした…めでたしめでたし。



 ……あれ?俺の物語終わり?

 完結?!

 俺はこのままずっとテントの片隅に捨てられて、ゴブリンジュニアとハーレム達の営みの声を聞きながら生きていくのか?!

 いや~~~~!イベントプリーズ!

 再びイベントプリーズ!!

 出来ればボインボインな女性剣士様が持ち主になって下さるイベントプリーズ!!!



 イベントやってきた。

 割と早く。

 しかも…ちょっと残酷なイベントだ。

 

 ゴブリンの村が燃えている。

 あちこちで、ゴブリン達の悲鳴が聞こえる。

 ゴブルンジュニアは俺を持って外に出た。

 そこで見えたのは…人間だ。

 人間達が、このゴブリンの村を襲撃している。

 戦士がゴブリンが斬る。

 魔法使いの火属性魔法だろう…火の玉が飛び交う。

 

 どうして人間達がこのゴブリン村を襲撃したのか分からない。

 ゴブリンの村はますます発展していっていた。

 住人も増えて…軍隊のようなものまで出来ていた。

 あの軍隊が…人間達を襲ったのだろうか。

 ここから人間が住む土地まで、どのくらいの距離なのか分からない。

 ゴブリン達が森の中でひっそりと暮らしているだけなら、ゴブリン達の村を襲う必要なんてないのではないか。


 …もしかしたらゴブルンか?

 ゴブルンがゴブリンロードに進化したことがまずかったのか?

 この世界の人間達がどのような者なのか俺にはまだ分からない。

 ラノベ知識からいけば、冒険者ギルドのようなものがあっても不思議ではない。

 そのギルドに…例えば森の中でゴブリンロードが誕生したという情報が流れる。

 その討伐依頼…と考えることは出来る。

 ゲーム的な感覚なら、レベルアップや素材集めのために、誕生したゴブリンロードを倒すというのは分かる。

 だが、ここはゲームの中では無いだろう。

 人にとって無害であるゴブリンをわざわざ倒しにくるとは思えない。

 つまり…人にとってゴブリンとは害ある生き物だということなのか。


 遠くで戦士達に囲まれているゴブルンが見える。

 大剣を振り回している。

 あいかわらずだな…どんなに知能が高くなっても…腕力が強くなっても…ゴブルンは武器を振り回すだけだ。

 俺の闘気が無ければ、振り回しても相手は倒れてくれない。

 その大剣にも、俺と同じような魂があってスキルを持っていない限り…。

 囲まれたゴブルンに、魔法使いの火の玉が直撃する。

 ゴブルンの強靭な肉体を戦士達の剣が次々に切り裂く。

 ゴブルンは大きな雄叫びをあげて…崩れ…倒れていった。


 俺は土の上に転がっている。

 ゴブルンジュニアは、自分の父親が倒されるのを見ると俺を投げ捨てて一目散に逃げていった。

 他のゴブリン達も森の中へと逃げていく。

 人間達も、ゴブリンを皆殺し…って感じじゃない。

 適当に倒しているものの、森の奥に逃げていくゴブリン達を積極的には追わなかった。

 やはり目当てはゴブルンだったのか?

 

 戦いはあっという間に、人間達の勝利で終わった。

 人間達はゴブリンの村を適当に壊すと、ゴブルンの巨体を荷車に乗せている。

 村の中を物色している人間達もいるが、真面目に見ていない。

 ゴブリン村に価値ある財宝が眠っているなんて思っていないのだろう。

 

 そんな中、俺はというと…髭もじゃの中年おっさん戦士に拾われて、ゴブリンの死体を突いて生死を確かめたり、テントの中を物色するのに使われたりとしていた。

 中年おっさん戦士に拾われた時点で、自分のステータスを見てみた。


ステータス

闘う木の棒

状態:ゴブリンの闘う木の棒

レベル:1

SP:0

スキル

闘気:レベル1


 俺はまだゴブルンジュニアの物らしい。

 俺を拾った中年おっさんが新しい持ち主ではないようだ。

 例のシステム音も聞こえないし。

 中年おっさんが自分の剣を持っているからか?

 

 人間達はゴブルンの巨体を乗せた荷車を引いて歩き始めた。

 俺は、荷車の一つに放り投げられた。

 ちゃんとした形の木の棒だからだろうか。

 この人間達の街まで持ち帰ってくれるようだ。


 こうして、俺のゴブリン村での生活は終わった。

 木の棒に転生してからお世話になった?ゴブリン達。

 いや…俺がお世話していたのか?

 俺のこの世界での初めての持ち主は、俺を捨てて大剣に浮気したことで敗北することになった。

 そして俺は…人間の街へと旅立っていくのでした…めでたしめでたし…あれ?まだ終わらないよ!!







 「持ち主に放棄されて24時間が経過しました。持ち主不在となりステータスリセットとなります。」





ステータス

木の棒

状態:荷車に乗せられた木の棒

レベル:1

SP:1

スキル:無し


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