「ねぇ知ってる?今は廃校になってるこの学校の旧校舎なんだけど…実は出るらしいのよ」
「まっさかぁ!…冗談抜きにしてよね。今は科学の時代よ…そんな非科学的な」
「本当なんだって…30年前あの旧校舎で殺人事件があったの。先生がクラス全員を殺して自分は自殺したそうよ。…それからあの旧校舎には夜な夜な殺された生徒達が徘徊してるんだって」
「そういえばもうじき取り壊されちゃうんだっけ旧校舎…ねぇ。だったら今夜確かめない?」
「それいいね。あたしらで証明しようよ…出るかどうか」
仲良し3人組のレオナ、美玖、薫は学校にずっと伝わってきた噂を確かめるべく夜旧校舎に忍び込んだ。
旧校舎
「暗いねぇ…ムードばっちり」
美玖がニヤニヤ笑うと薫が美玖にしがみついた
「やだぁっ…ねぇ美玖もう帰ろう?」
「何怖がってんのよ。…いい?これは重大な問題なんだよ。新聞部は新鮮なネタを求めてるの。題材探しくらいどうってことないでしょ?」
「だけど…ホントに出たりしたら…」
その時足下でギシギシと音がした
「きゃー!!!!」
「落ち着きなさいって…これは老朽化した廊下を歩いてるからこういう音になるの。高校生にもなって何ビビってるのよ」
レオナが薫を見下して云ったが遠くからかすかに何かの音が聞こえた
「ねぇ…何か聞こえない?」
「風の音…じゃないわよね?…よっしゃ!確かめるよ!」
美玖を先頭に音のする方へ行くと音楽室があった
「ピアノ…よねこの音」
「誰かが弾いてるのよきっと…まったく人騒がせね」
立て付けの悪いドアを開けピアノに近づくと色白の手が見え徐々に近づくと高校生くらいの少女がピアノを弾いていた
「あ…あの。貴方誰?」
「ごめんなさい。忍び込んで練習しようと思ってしてたんだけど…」
「なぁんだぁ。…貴方幽霊じゃないのね?」
「驚かせてごめんなさい。私、荊っていうの。貴方達は?」
「あたしは美玖、んでこっちがレオナでそっちでビクついてんのが薫。もうすぐ旧校舎が取り壊されるから探検にね。…あたし達旧校舎に入ったことすらないしさ。荊も同じ学校でしょ?何年生?」
「2年生よ。…と云っても入院が長かったから知ってる人はほとんどいないけど」
「入院してたの?」
薫がおずおずと会話に入ってきた
「ええ…生まれつき体が悪くて、でもほんの2週間くらい前に退院出来たから」
「じゃあどうして音楽室に?旧校舎自体が立入禁止でしょ?」
レオナは机に座り込んで聞いた
「ピアノが好きだから…校舎の音楽室って鍵がかかってて入れないからこっちの音楽室で弾いてたの」
「ふーん成程。…でもそろそろ帰らないと出るって噂よ此処は」
「そうね…そろそろ切り上げようかな。そうだ!貴方達の仲間に入れてよ。あたし夜の学校初めてだから面白そうじゃない?」
「あたしはいいよ。ね?レオナ」
「構わないわ…いいでしょ薫」
薫もうんうんと頷き4人で探検することになった
「確か…4階よね例の事件があったの」
「とりあえず1階から順番に行こう…と云っても1階はもう終わりだから2階からだね」
しかし、この後降りかかる災難に4人はまだ気付いていなかった。
2階
「確か実験室と職員室があるんだっけ…実験室って不気味で嫌よねぇ」
美玖は懐中電灯を片手に看板を照らした
「何かあるか解らないし…貴方達は此処にいてよ。あたし見てくる」
「でも1人じゃ危ないよ」
「平気よ。…ちょっと薄気味悪いだけじゃない」
美玖がドアを開け中に入ってから数分後におびただしい悲鳴が上がった
「なっ何!!」
驚く3人に追い打ちをかけるかのようにドアが開き血塗れの懐中電灯が転がって来た
「「「きゃああああっ」」」
3人は悲鳴をあげ同時に逃げ出した。
いつの間にか狼に似た鳴き声が聞こえ初め何かが動き出していた
「美玖は…死んだの?」
「かもしれない…だってあれ彼女の懐中電灯よ。それに血がべっとりついてたって事は…」
薫と荊が心配しているとレオナがついにしびれをきらした
「もうつきあってらんないわ!…きっとあいつの悪戯なのよ。悪戯につき合う気はないんだからさっさと帰るわね。」
「でも今は危ないよ…狼の鳴き声みたいなのも聞こえたし」
「あれは美玖の悪戯よ。それっぽい雰囲気を出して怖がるあたし達を見て楽しんでるんだわ…あたしそういう悪戯にはつきあってらんないの!」
レオナは側にあった机を蹴って外に出た。
「ねぇ。荊はどうする?」
「私は…残るよ。今出ていったらどうなるか解らないもの」
「よかったぁ…あたし1人じゃ絶対無理だもん」
薫は安堵の表情で荊の腕に触れた
「とにかく…なるべく校舎の外に近いトコにいた方がよさそうね」
「うん」
目的はそれてしまったがこうなった以上校舎にいたくなかった
「ねぇ…30年前に此処で殺人があったって噂知ってる?」
「うん。確か当時数学担当だった教諭が口論をしていて謝って殺してしまったの。しかも生徒達の前でね」
「じゃあその場にいた生徒達も?」
「うん…何も悪いことはしてないのに見たからって理由で殺されたんだって、生存者はいないって云われてる」
薫はゾクゾクして壁に手を突いたが何かべっとりしたようなものがついていた
「きゃっ…なにこれぇ」
「水みたいだね。血じゃないわ」
「よかったぁ…じゃあさっさと此処から逃げ」
その時足下で何かが動き薫は悲鳴を上げた。
「鼠だよ。…もう恐がりなんだから」
荊はそういって薫を窘め先に歩かせると後ろを振り向かずに
「この子だけは襲わせない。…ダメよこれ以上無関係な人を巻き込まないで」
と言い放った背後にいた何かは何か言いたそうだったが何も言わずに消えた。
3階
「ねぇ薫。…貴方はやっぱり帰った方がいい。」
「何言い出すのよ荊」
薫は冗談だと思い進み始めた
「これ以上関係ない人を巻き込みたくないのよ。」
「え?何言って…」
振り向いた瞬間見知った人物が立っていた
「美玖!やっぱり生きてたのね!よかったぁ…もう心配かけさせないでよぉ」
美玖はうつろな目で薫を捕らえ何かを伝えようとしたが解らなかった
「薫。先に2階の職員室に行ってて…私、見てくるから」
荊は笑顔で見送ると美玖に
「やっぱりこうなってしまうのね…誰かを巻き込まないとこの怨嗟は止まらない。…30年も経つのに未だにあのことが昨日の事のように続いてる。でも…終わりにしなきゃ」
と呟き美玖は何かを言いたげな目で見たが荊は解っていたので
「うん…薫はあたしが必ず助ける。貴方は助けられなかったけど…でも、今日で終わりにするよ。」
と微笑むと美玖はニコっと笑って消えた
「急がなきゃ…」
荊が4階に急いでいる途中薫は職員室でうずくまっていた
「うぅっ…荊早く来てね。…あれ?これってクラス写真?」
入学式に取った写真らしく30年前の日付だった。
「え?…これって荊!?」
驚いたことにその写真には荊が写っていた。今と全く同じ姿で
「どういう事?だって30年前ってまだ生まれてないよねあたし達」
疑問は深まるばかりだが本人に直接聞こうと思い写真を握りしめた
一方4階に辿り着いた荊は例の教室の前にいた。
「あの時…あたしは唯一死ななかった。でも、その変わりに植物人間になって30年過ごしてきた。…もう終わりにする時が来たのよ」
薫は気付いていなかったがガラスに荊の姿は映っていなかった。
ドアを開けるとあの時と同じ光景が繰り返されていた。
「先生!止めて!もうこれ以上関係ない人を巻き込まないで!!」
そこにはレオナが倒れていた。まだ死んではいなかったが震えてしまっていた
《お前は…生きていたのか》
「…死んだのは昨日よ。それまでずっと植物人間だった…30年前のあの日から」
荊はレオナを庇いにらみ返した
「みんなも目を覚ましてよ!…どうして関係ない人まで巻き込むの?」
かつてのクラスメイト達は無言で荊を見ていたがその中の1人が
《此処には死者しかいない…なのに生者は面白半分で見物しに来て俺達の眠りを妨げる。許せることだと思うのか?》
「それは…でもだからって」
荊の言葉は届くことなくレオナに憎しみと怒りの念を向けた
《荊。どうしてやつらの味方をする?俺達は大人になることなく終わったんだ。なのに…奴らは軽いノリでやって来て汚していく、そんなやつらを許せと云うのか?》
「違う…そんな人たちばかりじゃない!」
《そこを退け》
「嫌よ!…もうじき此処も取り壊される。だからもう終わりにしよう?此処が無くなったらもう居場所はなくなっちゃうのよ」
《だが、あの世にも行けず彷徨うくらいなら此処にとどまる方がいいのではないか?》
「ううん。そんなの悲しすぎるよ。…生まれ変わることも出来ずに時間が止まったみたいになるなんて、30年もずっとそうだったなんて悲しすぎる。私たちみたいな犠牲はもう出したくない…例え今は憎しみで溢れていても時が経てばそんなのは無くなる。…だから一緒に行こう?まだ間に合うよみんなであの頃に帰ろう?」
荊は手を差し出すと生徒達も動揺し始め荊の手を取りだした。
荊の周りには光が出来始めて生徒達がその光に包まれて云った。そして
「レオナ。起きて」
「はっ…あれ?あたしどうして」
レオナが目を覚ますと荊がにこっと笑って
「関係ない貴方達を巻き込んでごめんなさい。もう…こんな事は起きないから安心して」
「ちょっと荊それはどういう…」
「薫は2階の職員室にいるよ。ごめんなさい…そしてありがとうって伝えて」
レオナが反論しようとした時強烈な光が教室を包みレオナは意識を失った。
翌朝
意識を取り戻したレオナは職員室に行き眠りこけている薫をたたき起こし先生達に頼んで荊を探して貰ったが見つからなかった。
だが、2階の実験室で美玖の変わり果てた遺体と複数の骨を発見し決まっていた取り壊しが執り行われ旧校舎後には慰霊碑が建てられたという。
END
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