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神様、ちょっとチートがすぎませんか? 作者:七草裕也

ラクルス村編 第一章 ラクルス村のパドくんはチートが過ぎて大変です

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7.《家族の問題1》冷え切った妻

いつまでも赤ん坊視線では物語が進まないということで、主人公の(転生先での)父親、バズ視点のお話です。
冒頭、一気に3年経っていますが、回想という形で3年間を描いています。
 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇

(バズ視点 一人称)

 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 ラクルス村の上空は今日もよく晴れていた。

「お父さん、お母さん、水くみに行きます」

 家族3人での食事を終え、1人息子のパドがそう言って頭を下げた。
 3年と2ヶ月前に産まれたパドには妙な癖がある。
 いったいどこで覚えたのか、挨拶をするときに腰を曲げて頭を下げるのだ。
 少なくともこの村にはそんな習慣はないのだが。

「ああ、行っておいで、気をつけてな」
「お父さんは今日は狩りですよね?」
「そうだ。明後日は月始祭だからな。できるだけ大きな獲物を捕ってくるから楽しみしていろ」
「はい、お父さんも気をつけてください」
「ははは、息子に心配されることはないさ。なあ、サーラ?」

 俺は妻のサーラに話を振った。
 だが、彼女は目をそらしたまま、黙々と矢羽根の確認を行っている。
 夫が使う矢を整備するのは妻の役目だ。
 が、それにしても――

「返事くらいしたらどうなんだ?」

 俺はため息交じりに言った。
 が、妻は答えない。
 無言の圧力である。
 彼女は家族と極力会話をしない。
 夫である俺とも、パドとも。
 結婚当時、「バズ、バズ」と俺にしなだれて甘えていたがウソのようだ。

 こうなった責任の一端は9ヶ月前の俺自身にある。
 だから強く言うこともできないのだが――

「では、行ってきます」

 そんな母親の様子を知ってか知らずか、パドは小さな木製のバケツを持って家から出て行った。

 この村には井戸がない。
 川まで子どもの足でも半刻ほどでたどり着けるからだ。
 井戸を掘るのは重労働だし技術者を雇う必要もある。
 そんな資産は日々生きるだけで精一杯のこの村にはない。

 川から水を汲んでくるのは3歳~10歳の男の子の役割である。
 とはいえ、子供達――とりわけ3歳になったばかりの幼児にとって川から水をくんでくるのは大変な作業といえる。
 何しろ、一往復では終わらない。
 水というのは飲料以外にも、畑や掃除洗濯などあらゆる場面で必要になるからだ。
 季節にもよるが、3往復、4往復は当たり前である。

 行きはまだしも水の入ったバケツを運ぶ帰り道はつらいものだ。
 何故子供達だけでそんな作業をさせるのか?

 その理由はそのつらい作業の中で年少の子には仕事の、年長の子にはリーダーシップの大切さを学ばせるためだ。
 俺がそのことを理解したのは、11歳になって大人達とともに畑仕事をするようになってからだが。

「俺も出かける」

 俺がそういうと、サーラは黙って俺に弓と矢を渡した。
 サーラは俺とは話もしたくないという態度だ。
 4年前、俺に惚れていた村1番の別嬪(俺評価)の面影はそこにはない。
 俺は矢を受け取りながら、これまでの結婚生活を振り返った。

 4年半前、俺は流行り病で両親を亡くした。
 あの時は本当に大変で、俺の両親だけでなく村人の3人に1人が病に倒れ、そのうちの半分が死んだ。
 サーラの父親も亡くなった。

 俺たちの住むラクルス村は山奥の小さな集落である。
 閉鎖的とまではいわないが、月始祭前に毎月来てくれる商人アボカドを除けば、めったに旅人も通らない。
 そんな村だから、村人同士の絆は深い。
 親を亡くした俺やサーラを心配した村長の後押しもあって、俺達は結婚することになった。

 実際のところ、俺は幼い頃からサーラが好きだった。あこがれだったと言い換えてもいい。
 サーラもきっとそうだった……と思う。

 俺たちの結婚は、病とその結果に沈んだ村人達を高揚させた。
 実際、村長が俺たちの結婚を勧めたのは村人を活気づけるためだったのかもしれない。
 病が治まった後、いつまでも落ち込んでいたらそれこそ村が滅びかねない。
 実際、あの年は他にも何組かの結婚式が執り行われた。

 いずれにせよ、俺とサーラは夫婦(めおと)になり、サーラの母と3人で暮らし始めた。
 ほどなくしてサーラが懐妊。
 新たな命の芽生えは、俺たち夫婦だけでなく村全体にとっても明るいニュースとなった。

 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 子どもは無事生まれた。
 出産直後に産婆のジールが疲労かなにかで倒れるというハプニングはあったもの、俺が抱き上げると元気な産声をあげた。
『高い高い』をしてやると嬉しそうに「きゃはははっ」と笑う我が息子に、俺も嬉しくて笑い返した。
 新たな命とともに新しい家庭を作っていこうと、俺は心に誓った。

 ところが、めでたいはずのその日のうちに、おかしなことがいくつも起きた。

 まず、半刻ほどで目を覚ましたジールが、自分が気を失ったのは赤ん坊に蹴られたからだと証言したのだ。
 ジールを見舞いに来ていた俺も含めて、周囲の人々も一笑に付した。
 それはそうだろう。
 産まれたばかりの赤ん坊に蹴られたからと言って気を失うわけがない。

「なら、これを見てみなさい!!」

 周囲の反応を自分に対する嘲笑と受け取ったのか、ジールはいらついた声で服の裾をめくり、腹を見せた。
 そこには確かに赤ん坊の足ほどの形をした痣があった。

 こうなると、それまで『ありない』と思っていた村人達も『半信半疑』くらいにはなる。
 とはいえ、さすがに赤ん坊が蹴飛ばしたくらいで、大人が痣をつくって気絶するわけがない。
 きっとジールは以前に痣を作り、今回は疲労で倒れたのだが混乱しているのだろう。
 村長の取りなしもあって、その場はそういう結論になった。
 もっとも、みんなの中に釈然としないものは残ったようだったが。

 いずれにしても、産後の妻や赤ん坊の様子の方が俺は気になる。
 ジールに大事がないと分かったので家に戻ろうとした、その時だった。

「きゃぁぁぁぁぁ」

 サーラの悲鳴は家の方から聞こえた。
 慌てて駆けつける俺。
 サーラの母や村長他数名もいっしょだ。
 家に入ると、パドを寝かせていた部屋へとつながる扉付近にサーラが倒れていた。
 慌てて俺たちが駆け寄ると、サーラは気絶しているようだった。

 産後のサーラが気絶していることも不安だったが、俺はもっと別のことに唖然となった。
 赤ん坊を寝かせていた部屋が半壊状態だったのだ。
 床には大きな穴が開き、天井は穴こそ開いていないものの大きく崩れている。
 一瞬、床や天井の木が腐っていたのかと考えるが、この部屋はサーラの懐妊を機に新築したばかりである。

 いったい何があったのか?
 俺は一瞬頭の中が真っ白になった。

 が、すぐに1番大切なことを思い出す。
 子どもは――赤ん坊はどうした?
 あの穴は、赤ん坊を寝かせていた位置にあいているではないか。

 俺はすぐさま部屋を見渡す。
 赤ん坊は部屋の隅で横になっていた。
 サーラが気絶した理由や、部屋が半関した理由はわからない。
 どうして産まれたばかりの子どもが移動したのかも疑問だ。
 しかし赤ん坊を抱き上げて無事だということを確認すると、俺はホッと息をなで下ろした。

 いずれにしても、半壊した部屋に赤ん坊を寝かせておくわけにもいかない。
 俺はが隣部屋に移ると、サーラもそこに寝かされていた。

「赤ん坊は?」
「大丈夫です」

 サーラの母にそう告げると、彼女も一安心したようだ。

「サーラはどうでしょうか?」
「気を失っているだけじゃろう。おそらく産後に無理に動いて貧血でもおこしたのではないかの」

 俺が訪ねると、村長がそう答えた。

「ですが、あの悲鳴は……」
「……確かにそれがわからん。貧血で倒れただけならば悲鳴を上げる道理はないからのう」

 村長が首をひねる。
 ともあれ、俺は息子を母親の横に寝かせた。

「それにしても、あの部屋はなぜあんなことになっているのでしょうか?」
「バズには心当たりはないか?」

 サーラの母の言葉に、村長が俺に尋ねる。

「そういわれても……あの部屋は新築していただいたばかりですし……」

 部屋の新築は俺たちの結婚と懐妊を祝って村人達総出で行ってくれた。
 どんなに感謝してもしきれない。
 こんなに早く壊れてしまうなど、申し訳なく感じる。

「確かにな……誰かが手抜きをしたとしても、ああも壊れるとは思えん」
「せっかく娘達のために作っていただいたのに、申し訳ないことです」

 村長が首をひねり、サーラの母が両手を前に合わせ謝罪する。

「いや、お前達の責任ではないだろう。しかし、いったいなにがどうなっているのか……盗賊が現れたとも思えんし」

 確かにその通りだ。
 部屋を荒らされ、妻が気絶したというなら悪人の侵入を疑いたいところだが、我が家には盗むモノなどない。
 あえて考えるならば、妻か生まれたばかりの子どもを狙った人さらいだろうが、それならば部屋を破壊する理由はないし、現に子どもも妻も連れさらわれていない。
 なによりこの村はそこまで広くないし、村人は皆顔見知りだ。
 もしもよそ者がここまで侵入したならとっくに知れ渡っているはずだ。
 村人の中にこんなことをする人間がいるとも思えない。

「いずれにしても……」

 村長が言いかけたそのときだった。

「きやぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 目が覚めたらしいサーラが再び悲鳴を上げた。
 悲鳴のみならず、赤ん坊から逃げるように後ずさる。

「サーラ、大丈夫か?」

 俺はあわてて駆け寄るが、サーラはガタガタと全身を震わしている。
 明らかに何かにおびえている様子だ。

「立ってた……」

 サーラは震え声でそういう。

「しっかりしろ、サーラ。いったい何があったのだ?」
「立っていたのよ、あの子が、赤ん坊がっ!!」

 サーラはそう叫びながら、産まれたばかりの息子を指さす。
 そして、恐慌状態で俺の服をつかむ。

「ありえない、なんで産まれたばかりの子どもが立ち上がるのよ……私は……私たちの子どもは……なんなのよ……」

 震えながら叫ぶサーラ。

「サーラ、落ち着きなさい」

 サーラの母がサーラの肩をつかむ。

「ほら、水だ、ゆっくり飲め」

 誰かが水瓶からコップに水を汲んで持ってきてくれたようだ。
 サーラはそれを飲み干したあと、涙ながらに語り始めた。

 産まれたばかりの赤ん坊が壊れた部屋の中で立ち上がっていたと。
 いったい自分は何を産んだのか。
 悪魔の子どもでも宿していたというのか。

 サーラの訴えはあまりにも信じがたいことであった。
 産まれたばかりの赤ん坊が立ち上がるわけがない。
 だが、嘘をついているようには見えないし、嘘をつく理由もない。

 俺は生まれたばかりの自分の息子を見る。
 そして、破壊された部屋と、腹を蹴られて倒れたというジールを思い出す。

 何がどうなっているんだ?
 言いしれぬ不安が俺の心を襲った。  
赤ん坊のころのネタもまだいくつもありましたが、とりあえず話を進めることを優先します。
あらすじに書いた母乳を吸うのに力が強すぎて苦労する話とかも用意していたのですがさすがに話が動かなすぎるので(;´・ω・)
というか、赤ちゃん時代ってそこまで需要ないと思いますし(^^;)
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