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神様、ちょっとチートがすぎませんか? 作者:七草裕也

ラクルス村編 最終章 始まりの一歩

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45/92

45.信じるべきモノ、疑うべきモノ

再び闇の世界で“ヤツ”と再開するパド。
彼は何を信じ、何を疑い、何を成すべきなのか!?
 どこまでも続く真っ黒な世界で、そいつは相変わらず人をバカにしたようなニヤニヤ幼児顔を浮かべていた。

「やだなぁ、パドくん。そんなに睨まないでよ。ボクとキミとはオトモダチだろ?」

 ふざけんなっ!!
 ここでは声を出すことはできない。
 だが、ヤツには僕の心の声がちゃんと聞こえているはずだ。

「うわ、酷いなぁ、そんな風に嫌われるとボクとしてもカナシイよ」

 わざとらしく――極めて芝居臭く、オヨヨと涙する彼。

「ま、そんなことはどうでも良いんだけどね」

 悲しがって見せたと思ったら、あっさりニヤニヤ顔に戻る。
 やっぱりコイツは一切信用できない。
 というか、なんで今更またここに僕は呼ばれたんだ?

「そりゃあ、キミがまた新しい魔法を欲したからさ。ボクはキミのことを助けたいと思っているんだよ」

 どの口が言うのか。いや、この世界では口から言葉を発しているわけではないらしいけど。

「ボクがキミに魔法をあげたからこそ、キミやキミのお母さん、それに村の人たちは助かったんじゃないか」

 そんなこと言って、あの『闇』はお前が操っているだろ!

 僕はヤツを指さし言う。
 これはあくまでもレイクさんの推測に過ぎないけど、僕もおそらく正解だと思っている。
 図星をつかれれば少しは動揺するだろう。
 そう期待したのだが……

「ふん、偉そうに。あの学者バカから指摘されるまで自分では考えもしなかったくせに」

 ぐっ。
 で、でも、そうに言うってことは認めるんだな!?

「うん? あー、はいはい。認めるよ、認めます。キミが『闇』ってよんでいる奴に村を襲わせたのはボクでしたー。
 ……これで満足かな?」

 動揺するどころか、あっさり認めやがった。
 しかも自分の悪事がばれたのに、めちゃくちゃ余裕ぶっていやがる。
 こうなると、逆に実は推測が間違っていたんじゃないかと深読みしたくなるくらいだ。

「いやー、それにしても、パドくんって面白いね。ボクを動揺させようとして『衝撃的な事実』を突きつけたつもりで、結局キミの方が動揺しちゃうんだから」

 うううっ。
 事実だけにとことんムカつく。

「さて、パドくん。今回も魔法を欲したキミをここに招待したわけだけど、その前に1つ尋ねても良いかな?」

 何だよ?

「キミ、どうしてボクの手助けを無碍(むげ)にするんだい?」

 は?
 どういう意味だ?
 確かに今更お前から魔法をもらおうなんて思っていないけど――

「いや、そういうことじゃなくてさ。なんでボクが今回キミの村に『闇』を送り込んだのかって話」

 ……????

「あー、やっぱり理解していないか。まあ、キミの頭の程度はだいたい解っているから意外でもないけどさ」

 なんか、バカにされた気がする。

「うん、そりゃあもう、とことん凄まじくこれ以上無いくらいにバカにしているよ」

 うわぁ、殴りたい。

「ははっ、この世界でキミがボクに危害を与えられる可能性なんて皆無だよ。
 まあ、それはともかくとして、あのままだとキミはあの王女様か教皇に殺されていたよ。さすがにそれくらいは自覚しているんだろ?」

 それは……まあそうそうかもしれない。
 教皇は僕を抹殺するためにやってきた。
 そして、アル王女やレイクさんも僕が役に立たないと考えれば、教皇に売り渡した方が得だと判断しただろう。
 つまり、コイツはアル王女や教皇を殺すために『闇』を送り込んだとでもいいたいのだろうか。

 僕がそこまで考えると、ヤツは心底あきれたとばかりに首を横に振った。

「……本当、キミの物わかりの悪さはバカなんていうレベルじゃないね。あの下級神が力の代わりに判断力のステータスを下げたんじゃないかと思うくらいだ」

 どういう意味だよ!?

「王女や教皇を殺す? そうなったら、それこそキミに生き残る道なんてあるわけないだろ。村から追放されて親子3人で生き残れると本気で思っているの? 
 そもそも教皇があの村で変死なんてことになったら、教会が村を滅ぼしに来るよ。もちろんキミたち親子も徹底的に駆り出されるだろうね。そうなったら200倍の力とか、ボクのあげた魔法とかでどうにかできるとも思えないね。
 ボクが『闇』を送り込んだのはもっと現実的にキミの手助けをするためだよ」

 意味がわからない。

「あー、もう、めんどくさいなぁ。
 これは本気で親切心から忠告するけど、キミはもう少し自分で考える癖をつけるべきだね。そうじゃないと、今後の人生他人に騙され利用されるだけだと思うよ。
 ボクと違って人間は他人を騙すのが大得意だからね」

 うるさいな。
 っていうか、お前以上に他人を騙したがる人間なんてそうそういないだろ。

「その思考自体が、典型的な騙されやすいヤツの考え方だと思うけどね。
 言っておくけど、あのレイクとかいう学者バカがキミに説明した諸々の歴史も色々と間違いや意図的な嘘が含まれているし、キミを転生させた下級神もキミに伝えていない重要事項があるよ。
 どんな人間や神にも裏表があるもんさ。キミ自信だってずっとこの世界の両親に隠し事していただろう?
 誰もが自分の心の中に秘めた思いを持っているし、誰もが他人に自分を良く見せたいし、誰もが自分にとって都合良く相手を操りたいものさ。
 キミを騙そうとしているのはボクだけじゃない」

 ってことは、お前も僕を騙そうとしているってことじゃないか。

「何をいまさら。ボクはキミのことを利用したい。その為にキミに情報を与えることもあれば隠すこともある。力を貸すこともあれば、邪魔することもあるだろうさ。
 それはあの王女様たちと変わらない。
 持ちつ持たれつ、互いの利益を叶えるために互いを利用する。純粋な好意や親切心なんていうもので結ばれた関係は心変わりするだけで壊れる危ういものだけど、損得勘定で結ばれた関係はWin-Winである限りは途切れない。
 少なくとも、今現在、ボクがキミを助けたいと思っているのは本心だよ。キミにここで死なれたらボクの計画が水の泡と消えちゃうからね」

 そんな言い方をするヤツを信用しろっていうのか?

「ボクを信用するもしないもキミの自由だよ。だけどこれだけは教えておこう。ボクが今回『闇』を送り込んだのは、キミの力を王女様や教皇に示す機会を与えるためだ」

 ……??

「まだわからないのかい? 王女様や女騎士、それに枢機卿はそれぞれ単体なら、あの世界の人族としては最強に近い実力者たちだ。彼女たちが勝てない相手をキミが颯爽と倒してみせれば、結果として彼女たちにキミの力を見せつけることができるじゃないか」

 つまり、アル王女や教皇の前で僕に倒させるために『闇』を送り込んだってことか?

「その通り!! ようやく理解してくれたね。それなのにキミときたら、戦う意思もみせないんだから、ボクもあきれたよ。正直、ボクが王女様の立場だったらキミのことは見限るね」

 ううぅ。
 他のことはともかく、今回僕が戦おうとしなかったことは事実だ。確かにこれじゃあ『自分の力を示す』なんてできるわけがない。
 僕が戦いの場にいても邪魔になるだけだと判断したんだけど……

「キミが戦いの邪魔にしかならないとしたら、あの王女様がキミを必要としてくれると思うのかい?」

 その言葉に、僕は息をのむ。
 いや、ここには空気は無いのであくまで比喩表現だけど。

 確かにコイツの言う通りだった。
 僕は絶対にあの場で逃げ出してはいけなかった。たとえ『闇』を倒すための最善の判断だったとしてだ。
 キラーリアさんにいわれるがまま戦場から逃げ出すような子どもに、アル王女は用などないのだから。

「それに、あの3人じゃ『闇』には勝てないよ。枢機卿の魔法は一応効いてはいるけど、それは人間で例えるなら『子どもに泥団子を投げつけられた』くらいの話だ。
 うざったいし少しは痛みを感じているけど――いや、あいつに痛覚なんてないんだけど――ともかく、何発あててもアイツを倒すには至らないよ。なにより、彼の魔力はもう限界だろうし、夜になったら魔法を当てること自体困難だろう」

 それはレイクさんや教皇も言っていた。

「ボクがあいつに与えた命令は次の3つ。

 1つは村に行って暴れ、その場の人間を殺すこと。
 1つはそのなかでキミだけは殺さないこと。
 1つは死ぬ直前に予言を残すこと。

 もっともキミがどうしても戦わないって言うなら、最後の命令は叶わないかもしれないケドね」

 予言?

「今から5年後、ボクはあの大陸に100体を超える『闇』を送りこみ、人間たちを虐殺するつもりだ。まずは王都、そのあとありとあらゆる場所。
 人間だけじゃない。エルフもドワーフも龍族も獣人もモンスターも動植物も、全ての生き物を殲滅する」

 なっ!!
 いきなりの言葉に、僕は唖然となる。
 何を考えているんだ、お前は!? なんでそんなことを……

「さあね。それこそ教えるつもりはないよ。本当か嘘かも含めてね」

 前に会ったときは『嘘はつけないようにできている』って言っていなかったか?

「あれ? そうだっけ? だったら本当なのかもしれないね」

 どこまでも人を馬鹿にした笑みを浮かべ続ける。
 ダメだ、やっぱりコイツの言うことは一切信用できないし、信用すべきでもない。

「で、今回も魔法の契約をする? 今度は右手か左腕でもくれるのかな? あ、もちろん、家族の命をくれるっていうのも大歓迎だよ。もし家族の命をくれるって言うなら出血大サービスで世界そのものを滅ぼせるような強力な魔法も……」

 いらない。

 ヤツの言葉を遮り、僕は言い切った――いや、実際には声に出したわけではないので、言い切ったというのは不適切かもしれないけど。

「なに?」

 お前の意図通りになんて動かない。お前の魔法もこれ以上いらない。

「どうして?」

 心底不思議そうな顔を浮かべたヤツを、僕は精一杯睨み付ける。

 コイツの言うとおり、僕はこれまで他人(ひと)の言葉に従ってばかりだった。
 自分で判断せず、他人任せの行動。
 前世では看護婦さんやお医者さんの、真っ白な世界ではおねーさん神様の、転生してから村の大人の、前回の戦いではコイツのいうことに従い続けてきた。
 それが『良い子』だと信じて。

 だけどようやく解った。

 誰かの言うことを聞くだけじゃダメなんだ。

「ほう……」

 目の前の幼児顔が、初めて目を細めた。

「キミの考えは解ったよ。
 だけどさ、確かに以前の漆黒の刃でもアイツは倒せるけど、空に浮かぶ相手に当てられるかな?」

 うるさい!!
 なんと言われようと、お前とは2度と契約しない。

 ヤツの顔から笑みが完全に消える。
 その顔は不快そうでもあり、怒りを感じているようでもあり、あるいは悲しんでいるようにも見えた。

 だが、そんな表情も一瞬のこと。
 再びいやみったらしいニヤニヤ顔に戻る。

「いいだろう。すでに契約済の魔法を消すことは僕にもできない。せいぜい頑張るがいいさ。
 じゃあ、もうこれ以上ここに用はないだろ? 元の世界に戻すよ」

 最後に1つだけ教えろ。お母さんの心が壊れたのはお前が僕にくれた回復魔法のせいなのか?

「さあね。それこそ答えるつもりはないね」

 その言葉とともに、世界の風景が一転する。
 気がついたとき、僕は夕日が沈みかけたラクルス村の外れに戻っていた。 

 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇

(????)

 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇

「どういうつもりだ?」
「何が?」
「何故、あの子どもや人間たちに5年後のことを教える? せっかくの計画を台無しにするつもりか? 教える必要のない情報ではないか」
「あれー、馬鹿正直なキミは騙し合いはきらいなんじゃなかったの?」
「……時と場合による。」
「ま、キミみたいなケモノには解らないかもしれないけどね、欺すなら真実の中に嘘を交えるべきだよ」
「……どういうことだ?」
「彼らは与えられる情報を元に5年後に向けて対策を練るだろう。
 『闇』の生産が予想以上に順調でね。このままいけば4年後には攻勢をかけられる。さて、5年間の余裕があると思い込んでいる人間たちは、4年後に対応できるかな?」
「言いたいことは理解した。その通りに人間たちが動くかどうかは知らんが」
「まあ、人間たちもパドくんやキミみたいなバカばかりじゃないだろうしね。このくらいの罠なら見破れるヤツもいるかもね。だけどまあ、不完全な情報っていうのは相手を動揺させるには十分だよ」
「いずれにしても1つだけ理解できたことがある」
「なんだい??」
「……やはり私はお前が()かんということだ」
「それは残念」
ラストの会話のみの部分は、なんとなく前からやってみたかった手法。
読者の都合を無視した作者の自己満足ともいいます。

ともあれ、魔法の契約を拒否し、元の世界に戻ったパドくんは果たしてどうするつもりなのか。

次回、ラクルス村編クライマックス!!
+注意+
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