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神様、ちょっとチートがすぎませんか? 作者:七草裕也

ラクルス村編 最終章 始まりの一歩

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42/92

42.転生少年はバランス崩壊クソゲー世界を生き抜けるか!?

自分は役に立つ存在だと、教会とアル王女に示さなければ生き残ることはできない。
ついに教皇と対面するパド少年。
果たして、彼はこの無理ゲーを後略できるのか!?

【2017/07/27 描写不足箇所を追記しました】
 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇

(パド 一人称)

 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇

「お待ちしていました、アル王女。実は先ほど教皇が……って、どうしたんですか、そのボロ雑巾は?」

 村に――正確には村の入り口に戻った僕らに、キラーリアさんが駆け寄ってきて言った。

 ちなみにボロ雑巾というのは僕とレイクさんのことだろう。
 アル王女の無茶苦茶な力で引きずられ、僕とレイクさんはズタボロである。
 わりとガチで死ぬかと思った。

 ……っていうか、体が頑丈にできているっぽい僕はともかく、レイクさん本当に死んじゃったんじゃないかな?

「……(ヒーリング)

 心配になってレイクさんを見ると、死にかけのようなの掠れた声で自分自身に回復魔法をかけていた。
 うん、生きていたみたいだ。
 ちなみに眼鏡は割れないように必死で保護していたらしい。

「この馬鹿どもが走れないとほざくから引っ張ってきただけだ」
「そうですか。それよりも先ほど教皇がやってきまして。パドくんと会わせろと」

 いや、『そうですか』で済まさないでほしいんだけど。
 っていうか、レイクさん、僕にも回復魔法プリーズ。

「で、その教皇はどちらに?」

 回復魔法で復活したらしき、レイクさんが尋ねる。

「村長の家にてお待ちになっています」
「そうですか。さて、どうしたものでしょうかね」

 レイクさんが眼鏡をかけ直しながら言う。

「教皇の目的は何だ?」
「まず間違いなく、パドくんの抹殺でしょうね」

 あ、やっぱりそうなのか。
 神託が正しいというならば、そういうことになるのだろう。

 それにしても神様の言葉か。
 おねーさん女神様が頭に浮かぶけど、彼女が僕を殺せっていうかな?
 200倍の力と魔力を与えてしまって慌てて抹殺しようとするというなら……まあ、なくはないだろうけど、あのおねーさんはそういうことはしそうもないと思うんだけどな。
 というか、そもそも、おねーさんの管轄はこの村だけのはずだし……
 彼女よりももっと上位の神様かな。部長とか言っていたし、部長って言うからにはその上もいるだろう。

 他の可能性としては、神の名をかたる誰かの言葉。
 それこそ、教皇様自身がつくった神託ってこともあるだろうけど、だとしたら教皇様がなぜ僕のことを知っているのかって話になる。
 なんらかの超常的な力は使っているはずだ。
 あるいは、僕に漆黒の刃の契約を持ちかけたアイツが神の名をかたってとかだろうか。

「だ、そうだ。パド、どうする?」

 考え込む僕に、アル王女が尋ねる。

「どうするって……どうしたら良いんでしょうか?」

 その僕の言葉に、アル王女の顔が不機嫌になる。

「自分の命の問題を他人に預けるな」
「そ、そんなことを言われても……あの、助けてくれるんですよ……ね……え?」

 後半口ごもってしまったのは、アル王女の――いや、レイクさんやキラーリアさんを含め三人の表情を見る限り、必ずしもそうではないと理解できたからだ。

「なぜ、我らがお前を助けねばならんのだ?」
「え、だって、僕を勇者にして女王になるって……」

 僕がそういったとたん、アル王女が大剣を抜き放ち切っ先を僕につきつける。

「なめるなパド。私にはお前の力は必須ではない。元々、お前の存在を知るより前から我らは動いているのだぞ」
「え、じゃあ、なんで……?」
「今のお前は、私にとって『使えるかもしれない駒候補(・・・)の一人』にすぎない。使えるモノはなんでも使うが、使えないモノに用はないし、使い方も1つとは限らない。お前を勇者とするか、それとも引き渡して教会に恩を売るかか、それはお前次第だと言うことだ」

 僕は押し黙る。
 そうだ、アル王女はそういう人だ。
 決して僕の味方じゃない。

 選択を誤れば死ぬ。
 どうする? どうすればいい?
 アル王女は何を望んでいる?

 決まっている。僕が使える人間だと示すことだ。
 教会よりも僕を優先することがアル王女の利になると示すことだ。

 背中に冷や汗が流れる。

 この世界の教会について僕はあまり知らない。
 大陸のほとんどの人が信仰しているとか、大陸全土に教会があるとか、初代勇者の仲間が作ったとか、王家にも匹敵する権力を持つとか、その程度だ。
 どれだけ巨大かわからない相手。この世界で3本の指に入る権力者たち。
 それ以上の価値を自分に見出させなければならない。

 僕が持っているのなんて『200倍の腕力&魔力』と『前世の病室で得た知識』だけだ。
 前者はチートとしても過ぎたる能力だが、それだけで教会を上まわる価値を示すって……

 ……いくらなんでも無理ゲー過ぎません?
 布の服と銅の剣を持ってフィールドに飛び出したら、いきなり次の瞬間に邪神が復活したみたいな展開だよっ!?
 こっちはまだメ○もホ○ミも覚えていないのに、相手はいきなりメラ○ーマぶっぱなしてくるみたいな話じゃん。
 バランス崩壊しすぎで、年間クソゲー大賞受賞決定だよ!!

 でも。
 無理ゲーだろうとクソゲーだろうとやるしかない。
 僕はお母さんを助ける。
 お母さんとお父さんと僕と、3人で幸せになる為に。
 その為なら、なんでもしてみせる。

 ならどうするか?
 教皇様とやらを倒す?
 馬鹿な、何の解決にもならない。
 教会と戦争したってしかがないのだ。

 教会よりも自分の方が価値があるなんて思えない。
 アル王女たちだって思っていないだろう。
 それを覆す方法……

 ……あれ?
 そこまで考えて違和感に気がつく。

 そうだ。
 そもそもアル王女たちだって僕が教会よりも価値があるなんて思っていないハズだ。
 だったら何故……

 そうか。

「つまり、教皇様に僕の価値を認めさせれば良いってことですね?」
「ふんっ、そういうことだ」

 そう、アル王女は最初から僕が教会以上に価値があるなんて思っていない。
 レイクさんも、キラーリアさんもだ。
 僕が生き残るためには、教会に僕の価値を認めさせなければならない。
 だが、アル王女に頼っているようでは到底不可能だ。
 それならそうと言ってくれれば良いのにと思うが、それに僕が気がつかないようならば、それこそ無価値ってことか。

 今更ながらに状況をハッキリ理解して震えそうになる。
 僕はこれからアル王女と教会両方に――あるいはさらに諸侯連立側の王子にも――自分の価値を示し続けなければならないのだ。
 それができなければ僕は死ぬ。

 やっぱりハードゲーだ。バランス崩壊のクソゲーだ。
 とっとと中古屋さんに売りにいくべきだ。

 だけど、これはゲームじゃない。
 現実だ。僕の人生だ。2度目の人生ではあるけど、3度目はない。
 リセットボタンはないし、電源を切る時は死ぬときなのだ。

「わかりました。教皇様に僕の価値を認めてもらいます」

 アル王女はニヤっとわらって大剣を鞘に戻した。

「ただ、その前に1つだけ教えてください」
「なんだ?」
「教会は諸侯連立の王子とアル王女、どちらが王位に就くことを望んでいるんですか?」

 その質問への答えを聞き、僕はほんの少しだけこの無理ゲーをクリアー可能にするためのする光を見つけたのだった。

 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇

(以下、教皇の一人称)

 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 村長の家といっても、この規模の田舎村では特別なわけでもない。
 小さな木製の民家である。しかも壁が修繕中だ。
 村長は老人で足が悪いらしく横になっていた。
 私が秘書として連れて来た枢機卿と2人で話がしたいと言ったところ、隣の小屋を案内された。
 こちらは壁も無事だし、料理にも使わないからとのことだ。
 村長の家では村全体の料理も作っているらしい。

「まさかアル王女に先を越されるとは思いませんでしたね」
「ええ。ですが、これはこれで好都合かもしれません。200倍の力と魔力を持つ子ども。私たちだけで御せるものかどうか。いざとなったらアル王女のお力も借りるべきでしょう」
「産まれながらの200倍の力と呪いのよる10倍の力ですか。おそろしい話ですが200倍と10倍なら、10倍の方が負けるのでは?」

 アル王女には呪いがかけられている。
 10倍の腕力を手に入れる代わりに、あと5年で死ぬ。そういう呪いだ。
 解呪できるのは王だけが使える魔法。
 だが、現国王は高齢すぎてその魔法の使用に耐えない。

「確かにその通りですが、田舎村の3歳児と盗賊女帝(ロバー・エンブレス)との間には普通に考えて20倍程度の実力差はあるでしょう。つまり200倍の力を持つ3歳児と、10倍の力を持つ盗賊女帝(ロバー・エンブレス)なら互角ということです」
「失礼ながらかなり楽観的な概算に思えますが」
「もちろん数字は適当です。パド少年はもちろん、アル王女が戦うところも見たことはありませんしね。
 楽観的に考えるならアル王女有利でしょうし、悲観的に考えるならパド少年有利ですよ」
「確かにそうでしょうが……」

 納得したようなしていないような顔を浮かべる枢機卿。

「それよりも1番懸念すべきは、パド少年とアル王女が手を結び我々に襲いかかってくるケースでしょうね」
「その場合はいかがなさるおつもりですか?」
「アル王女がそこまで愚かなら――女王に推すことは出来ません。諸侯連立側の王子もアル王女もいなくなった場合、果たして次の王はだれになるのか検討しなければなりませんね」

 結果からいえば、私の懸念ははずれることになる。
 アル王女やパド少年以上に恐ろしい存在が襲いかかってくることになったのだ。

 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇

(以下、パドくんの一人称)

 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 教皇様たちは、村長の家ではなくその隣の家で待っていた。
 料理の邪魔――というよりは、料理作業が話の邪魔だからだろう。
 僕とアル王女、レイクさんが小屋に入る。キラーリアさんは入り口で見張り役。
 小屋の中には教皇様と、もう1人別の神官がいた。

「おお、これはアル王女。お久しぶりでございます」
「ふん、老体に鞭打ってごくろうなことだ。教皇殿」
「なんのなんの。神託は教会にとって最重要な存在(もの)。私自ら動くのは当然です」

 どうやら、アル王女と教皇様は知り合いらしい。

「して、アル王女、その少年が(くだん)のパドくんですかな?」
「その通りだ」
「ふむ、ではその子どもを私たちに預からせて戴きたいのですが」
「ほう、私たちが先に唾をつけたのだがな。横から持って行かれるのは良い気分とは言えぬな」
「お言葉ごもっともなれど、貴方がここに来たと言うことは先日の神託はご存じなのでしょう?
 彼が10歳になるまでに抹殺しないとこの世界が滅びると」

 教皇の言葉に、僕はゴクリと唾を飲み込む。
 わかってはいたけど、こうハッキリ、自分を抹殺すると言われるとね。
 やっぱりショックでかい。

「抹殺とは教会にあるまじき乱暴なお言葉ですね」

 アル王女ではなくレイクさんが言った。

「あなたは?」
「おっと失礼いたしました。私はかつて故ガラジアル・デ・スタンレード公爵閣下に仕え、現在はアル王女の側近を努めておりますレイク・ブルテともうします」

 レイクさんはそういって両手を前で合わせる。
 この世界での一般的な挨拶だ。

「ほう。それはご丁寧に。
 しかし、レイク殿。確かに私としても抹殺などと言う手段はとりたくありませんが、これは神の思し召し。従わぬにはまいりません」
「おや、これはおかしいですね。神託でパドくんが10歳になるまでに魔力を制御できれば問題ないとも語られ、あくまでも『抹殺するべきと考える』とおっしゃったのであって、『抹殺せよ』とは言っていないはずでは?」

 レイクさんが教皇に反論すると、教皇の後ろに立つ神官が顔をゆがめる。

「神の言葉尻を都合良く解釈して揚げ足取りとはなんと不敬な!!」
「揚げ足取りのつもりはありません。が、神の言葉を吟味せず幼子を抹殺しようなどという安直な対処こそ不敬かと思いますが」
「おのれっ!!」

 神官がいきり立ち、にわかに場が緊張する。

「よさぬか枢機卿。レイク殿の言い分も間違ってはおるまい。
 しかしながら、レイク殿。確かにそのような幼子を殺すなど不正義かもしれません。教会としても心苦しい。神の言葉は良く吟味して解釈すべきというのも一般論として正しいでしょう。が……」

 そこで教皇は言葉を止めて、一呼吸を置いた。

「この世界全体が滅びるというのはさすがに看過できない。これは王家がどうこうとか、教会がどうこうといった政治や信仰だけの問題ではなく、この国全体の人類――いえ、エルフやドワーフ、獣人、龍族、はては動植物まで含め、全ての命に関わることですから。
 いえ、正直に言いましょう。教皇である私がこんなことを言うのは恥だと思いますが、私も1人の人間として世界の滅びは恐ろしいのですよ。
 大陸中の人々に『このままだと3割の確立で世界が滅びるが、1人の子どもを殺せば確実に助かる。王家や教会はどうするべきか?』……そう尋ねたら、いくら非人道的であっても子どもを殺すべきだと多くの人が考えるでしょう」
「なるほど、確かにそれは道理かもしれませんね」

 レイクさんは頷く。

「ご理解戴けて幸いですよ」
「しかしながら、もしもその3割のリスクをとったとしても、それ以上の見返り(リターン)があるとしたらどうでしょうか」
見返り(リターン)?」
「それは是非、ご本人の口からお聞きください」

 レイクさんはそう言って、僕の方をチラリと見た。
 あとは僕自身でやれという合図だ。

 僕は頷いて前に出る。
 自信なんてない。
 自分がそんなたいそうな存在だとも思わない。
 それでも、ここはアル王女と教会双方に僕の価値を認めさせる必要がある。

 そのための鍵は僕が先ほどレイクさんに尋ねたこととその答だ。

『教会は諸侯連立の王子とアル王女、どちらが王位に就くことを望んでいるんですか?』

 レイクさんの解答は次の通り。

『教会内でも意見は割れているが、教皇は諸侯連立がこれ以上力を持つことを警戒し、アル王女が王位を継承することを望んでいると思われる。だが、アル王女に勝ち目があるか確信が持てず、態度を鮮明にしていない』

 ならば、僕がアル王女を王位につけるのに役立つ人財だと教皇に認めさせる。僕がアル王女、教皇両方に認められる可能性があるとしたら他にない。

 無理ゲーだろうとなんだろうと、自分が生き残るためにはそれしかない。
 元々桜勇太として1度は死んだ魂だ。
 病弱だった桜勇太が11歳の誕生日まで生きることに比べたら大したことないと、そう思おう。

 僕がそう決意し口を開き欠けたその時だった。

 外が急に騒がしくなった。
 馬の嘶く声が聞こえたかと思うと、キラーリアさんの叫び声が上がる。
 言葉は聞き取れないが、ただごとではない。

「なんだ!?」

 アル王女が訝しがる。
 僕たちは顔を見合わせ困惑する。
 何かが起きている。
 だけど、今外に飛び出すのは――

 僕とアル王女、教皇、レイクさん。
 4人ともどう動いたら良いのかわからず、結果奇妙な沈黙が流れる。

 だが。
 その沈黙は小屋に駆け込んできたキラーリアさんによって破られた。

「アル王女!!」

 叫ぶキラーリアさんの頬にはうっすらと切り傷があり、さらに服も一部破れている。
 というか、抜き身の剣を持ったままの姿は明らかに何らかの異常があったはずだ。

「『闇』が現れました」
「なんだそれは!?」

 アル王女が叫び返す。

 僕は『闇』という言葉に反射的に駆け出す。
 チートの力で床に穴が空くが、構ってはいられない。

「待て、パド!!」

 キラーリアさんが止めようとするが、僕は構わず外に飛び出した。
 外には悠然と『闇』が立っていた。
再びラクルス村に『闇』襲来!!
+注意+
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