挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
神様、ちょっとチートがすぎませんか? 作者:七草裕也

ラクルス村編 第一章 ラクルス村のパドくんはチートが過ぎて大変です

しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

更新通知 0/400

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

4/92

4.転生したけど……記憶消えてないじゃんっ!!

ようやく転生しました。
ここまで長かった(^ω^;)

出産直後のお話ですが、すでにチートの影響がいろいろと……
 痛い!!
 痛いっ!!
 痛い痛い痛い痛い痛い痛ぁぁぁぁぁい!!!!!!

 気がつくと僕は締め付けられていた。
 いや、本当に。
 縛られているというんじゃなくて、頭ぎゅぅっと握り絞られるみたいな。
 何?
 いったい何が起きているの?
 あ、今度は頭の先を誰かに捕まれて引っ張られている!?
 いや、痛いから。
 本当に痛いからっ!!
 死ぬぅぅぅっ!!
 あれ? 僕もう死んだんだっけ?

 地獄のような時間が終わり、僕は目を開けた。
 目がぼんやりしている。
 そして誰かに抱かれている?
 なんだろう、体に違和感。
 自分の体格が以前と全然違うような……
 あと、体中にぬるぬるした液体がついているような。

 と。

「×○△▼……」

 なにやら声が聞こえる。
 が、聞いたことがない言葉だ。
 少なくとも日本語じゃない。
 確信は持てないけど英語でもないと思う。

 だんだんと視界が広がっていく。
 僕を抱いていたのは薄紅色の服を着たおばさんのようだ。
 彼女はにっこりとした笑顔を僕に向けている。

 少し首を横に向けてみると、別の女の人がつらそうに、でもうれしそうな笑顔を浮かべて笑顔を向けていた。
 その笑顔は僕に向けられていて……

 ああ、そうか、僕は今、産まれたんだ。
 ようやく記憶と現状がつながる。

 桜勇太として11年の生涯を終えた僕は、神様を名乗るガングロおねーさんの言葉通り転生したのだろう。
 そして、今、この瞬間に産まれた。
 横たわっている金髪の女性が僕を産んでくれた人。
 さっき締め付けられたように感じたのは出産だったんだ。
 出産は母親もつらいけど、赤ちゃんもつらいんだね。
 まあ、当たり前か。

 ……うん?
 僕は転生した。
 それはたぶん間違いない。
 でも、おかしいよ。
 おねーさんの言っていたことと違う。
 記憶消えてないじゃんっ!!

 そう、僕は桜勇太としての記憶を持ったまま、この世界に転生したとしか思えない。 
 ふむぅ?
 なぜこんなことになった?
 正直僕には分からない。
 分からないが……まあ、あのガングロおねーさんのやったことだからなぁ。
 きっと、何かの手違いで記憶を消し忘れたんだろう。
 うん、あのおねーさんならやりそうだ。

 いい加減だなぁと思う一方、うれしいとも思う。
 記憶を持ったまま、もう一度人生をやり直せるのかもしれない。

 ともあれ、産まれたからには少し体を動かしてみるか。
 僕は両手を動かしてみた。

 おお、動く動く。
 手を握って開いて、グーパーグーパー。
 自分で言うのも何だが、赤ん坊の小さなお手々が握って開いてするのはかわいい。

 次は――足。
 桜勇太の体では1度たりとも僕の意思で動かすことができなかった部位。
 動かせるのかな?
 正直怖い。
 おねーさんは今度は健康体にしてくれるみたいに言っていた。
 だけど、記憶を消し忘れるくらいだ。
 もしかして、今回も下半身麻痺で産まれたなんていうこともあるかもしれない。

 それに――足を動かすってどうやるんだ?
 なにしろ11年間動かすことがなかったのだ。
 足を動かす方法が分からない。
 僕の魂は足を動かす方法を知らない。

 ――そう思ったけど。
 でも、足の動かし方が自然と理解できた。
 理由は分からない。
 人間の本能なのかもしれない。
 たぶん、足を動かす方法は大丈夫。

 僕は足に力を入れようとして――

 ――怖い。
 もし動かせなかったら……
 この体でも足を動かせないって分かったら……

 でも。
 動かしてみなくちゃ分からない。
 分からないままなら一生動かせない。

 僕は慎重に――ゆっくりと足に力を入れた。

 ――すると。
 僕の意思の通りに足がピクっと動いた。

 よしっ!!
 動かせる。
 きっと、動かせる。

 僕は今度はもう少し大きく、足を前に出してみた。

 ――そして。

 足が前に……動いた!!
 僕の思ったとおりに足を動かせた!!
 足を動かせたよ!!

 前世では自分の意思では一切動かなかった足が、自分の意思で動いたのだ。
 僕は足を戻した。
 勢い余って、抱いてくれていたおばさんのお腹を少し蹴飛ばしてしまった。
 蹴飛ばしたといっても、軽くだけどね。

 と、そのときだった。

「ぐ、ぐふっ」

 言葉は分からないけど、今のはわかる。
 僕を抱いていたおばさんが苦しげな声を上げたのだ。

「あ、あ、あ、ぁ……」

 僕を抱くおばさんから力が抜けていき……
 おばさんはその場にうずくまり、僕を床に置く。

 そして、そのまま横たわった。

 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 産まれたばかりの僕の足が軽く当たっておばさんが倒れた。

 ――後から思えばこれが、僕にかけらた呪い(チート)の最初の発動だった。

 だが、その時の僕はそんなことには気がつかなくて――

 産後の体でお母さんが慌てて起きようとして、でも起きられなくて何事かを扉の向こうに叫ぶのを、ただ黙って床に横たわったままで見聞きしているしかなかった。

 すぐにドタドタと大人が数人駆け込んできて、僕をひげ(づら)のたくましい男が抱きかかえてくた。
 倒れたおばさんは他の人たちが部屋の外へと運んでいく。

(大丈夫かな? どうしたんだろう、あのおばさん?)

 僕はそんなことをのんびり考えていた。
 一方、ひげ面は僕を抱きかかえたまま、お母さんとなにやら会話している。
 言葉が分からないが、少し興奮状態のお母さんにひげ面がお母さんに優しく声をかけているようだ。
 ……ひょっとしてこのひげ面が僕のお父さんなのだろうか?
 年齢的にはおかあさんよりも上みたいだけど。

 さて、そこまで考えたら少し眠気を感じた。
 赤ん坊は眠るのが仕事だからね。
 でも、テレビドラマによれば赤ん坊が産まれたら何かやっていたような……

 そうそう、赤ん坊は産まれてすぐ泣かなくちゃいけない。
 泣かない赤ん坊は病弱と見なされる。
 場合によっては、赤ん坊の足を持って逆さにしてお尻をペンペン叩いてでも鳴き声を上げさせるんだっけ?

 うん。
 お尻ペンペンはいやだな。
 前世では麻痺していたからお尻を触られても感覚がなかったけど、この体なら痛いだろう。
 無意味に叩かれたくはないし。
 ……うん、とりあえず一声あげておくか。

「おんぎゃあぁ」

 僕は大きな産声を上げた。
 ひげ面とお母さんがそれをみて喜んだ。

 桜勇太として産まれたとき、僕は産声を上げる力もない未熟児だったらしい。
 でも、今回は大きな声で産声をお母さんに聞かせることができた。
 それだけで、ぼくはとてもうれしく思った。

 ひげ面が僕を天井に向かって持ち上げた。
 うぉ、楽しい。
 そうか、これがこれが『高い高い』ってやつか。
 前世では味わえなかった楽しみだ。

「きゃはははっ」

 思わず笑ってしまう。
 そんな僕をひげ面はぎゅっとだきしめてくれた。
 前世ではお父さんともお母さんとお抱き合うことも許されなかった僕は、このとき確かに幸福を感じていた。
 うん、このひげ面は僕のお父さんだ。
 根拠はないけど、そうだと思う。
 ここからはお父さんと呼ぼう。

 お父さんは僕を床近くまで下ろす。
 どうしたんだろう?
 と、思ったらなにやらぬるいお湯に体がつかる。
 木のたらいにお湯が浸っているみたいだ。

 ……そうか、お湯で体を洗ってくれるんだ。
 前世はお風呂に入ったことがない。
 体は毎日拭かれたけど、こうやってお湯につかるのは初めてだ。
 抵抗力のない桜勇太はお湯に入ることすら許されなかった。

 やさしくお父さんが僕の体を洗ってくれる。
 うん、気持ちいい。
 すごく、気持ちいい。
 お湯で体を洗うのって、こんなに気持ちいいものだったのか。

「きゃっきゃっ」

 僕はちょっとうれしくなって、少し手を動かした。
 ちょっとだけ、お湯をパシャパシャやるつもりだったのだ。

 が。
 ものすごい水しぶきが起きてお父さんの顔にかかる。
 ――水じゃなくてお湯しぶきか?
 いや、そんなことはどうでもよくて。

 しかも、木のたらいの底が砕けている。

 ……

 …………

 ………………

 ……なに? これ?

 お父さんはしばし呆然として――
 しかし、それでも揺れた僕の体を布で拭いてくれた。

 お父さんは布に包まれた僕をお母さんに手渡す。
 いったい何が起きたのかよくわからない。
 よくわからないけど――
 でも、もう眠くて仕方がない。
 お母さんのその心地よい暖かさの中で、いよいよ僕は眠りについたのだった。
というわけで、産まれた直後からチートという名の呪いがいろいろと……

なお、お腹を蹴飛ばされたおばさん(勇太君は理解していませんが産婆さんです)は気を失っただけで死んではいませんのでご安心を(^.^;

最初は殺しちゃうのも面白いかなと思ったのですが、さすがに出産直後に主人公が産婆さんを殺してしまうのはシャレにならんだろうと考え直しました(*´∀`*)

お母さんの暖かさを感じながら眠りについた勇太君ですが、次回以降自分のチートを徐々に自覚し始めます。

【注意!!】
本編中で出産直後の赤ん坊を『高い高い』する描写がありますが、近年では首が据わる前の赤ん坊を『高い高い』するのは極めて危険であるとされています。
本編中では転生先が医学をはじめとする学問が発達していない世界で、かつ学校もない山奥の村なので安易に行っている設定です。
皆様は幼いお子様を安易に『高い高い』しないようご注意ください。
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ