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神様、ちょっとチートがすぎませんか? 作者:七草裕也

ラクルス村編 第四章 獅子と少年

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【Break time2】 交流の第1歩

更新があいてしまってすみません。

とりあえず、世界観説明はもう少し続きますが、その前にキラーリアさんが『闇』との戦いを聞いた反応を。

【感謝】
先日、累計PVが50,000アクセスを、累計ユニークアクセスが10,000アクセスをそれぞれ超えました。
皆様本当にありがとうございます!!
「ちょっと待ってくれ、マーリ、その『闇』というのは結局なんなのだ?」

 マーリから数日前にラクルス村で起きたという戦いの話を聞き、キラーリアは困惑しながら尋ねた。

 曰く、突然村の上空に現れた。
 曰く、全身真っ黒。
 曰く、言葉はしゃべらなかったがニヤニヤ笑う人型。
 曰く、指を伸ばして攻撃してきた。

 ……意味が分からない。
 黒ずくめの服装をした魔法使いかと思ったのだが、話を聞いているとどうにも違う。
 そもそも服が黒いのではなく全身が黒かった(・・・・・・・)らしい。

「わかりません。ただひたすらに恐ろしい存在だったとしか」
「う、うーむ……」

 確かにこの世界には未知の獣もいる。
 建国以前に初代国王勇者キダン達が滅ぼしたと言われる『魔物』も、今となっては謎の存在だ。

 ――しかし。

 いくらなんでもここまで訳の分からない存在の話は聞いたことがない。
 あるいは、勇者キダン達が滅ぼしたと言われる魔物の生き残りかとも思うが、建国550年も過ぎようという時代に何故今更という疑問が浮かぶ。

(いや、違うか)

 キラーリアは思い直す。
 この話から自分が考えるべきことは、『闇』への対抗策だ。

 キラーリアは騎士。
 今の王家に思うところはあるにせよ、人々を害する存在が確認されたならば、軍人としてそれを戦闘で打ち負かす手段を考えることが自分の役割だ。
 相手の正体を考えるのは政治家や学者――それこそ、レイク達の役割だろう。

 そして、パドは『闇』を倒したという。
 パドが使ったという漆黒の刃も含め、本人から聞き出すべきだろう。
 レイクとアル王女の思惑通りにいけばその時間はこれからたっぷりあるはずなのだから。

 気がつくと、キラーリアは自らの腰に身につけた剣の柄を握りしめていた。
 アル王女の大剣ほどではないが、一般に女性が使うには大きすぎる剣。
 臨終間際の父より受け継いだ名剣である。

 ――自分の剣で『闇』に対抗できるのか。

 いや、それも違う。
『対抗できるのか』ではない『対抗しなければならない』だ。
 亡き父の想いを受けてこの国を護る――そのために今自分はアル王女達と行動を共にしているのだから。

「マーリ、感謝する。話を聞かせてもらえてよかった。
 私は騎士としてこの国を、国の民を護るために戦わなければならない。
 もしも『闇』の存在を知らずにいきなり対面したら、私とて思考停止状態になってしまったかもしれない。だが、これで少なくとも心構えは出来た」
「いえ、とんでもありません」

 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇

(やっぱり、この()は真面目で実直なんだ)

 マーリはキラーリアを見て思う。
 マーリにとって、貴族は恐ろしくまた身勝手で自分達を人間とも思わない理不尽な存在であった。
 そう思うのは、やはりあの豚領主のせいだ。
 今日まで直接領主と会ったことはなかったが、天候不順などお構いなしに税を上げ、村長である父を困らせる横暴な存在こそが貴族なのだと。

 父から先代の領主が民のことをよく考えてくれた人だと聞かされてはいる。
 が、マーリが幼い頃に今の領主代替わりしており、物心ついたマーリは理不尽で横暴な貴族しか知らなかった。

 それゆえ、マーリはキラーリアも横柄なのだろうと半ば決めつけていた。
 厳密には現在のキラーリアは騎士であって貴族ではないのだが、村から出たこともないマーリには等しく殿上人である。

 だが、話してみれば、彼女は実に真面目で、実直で、ともすれば危ういほどに素直で一途(いちず)な騎士だとわかる。
 まだ20歳になったかならないかという若い女性にもかかわらず、自ら民を護るために戦わなければならないと言い切るこの少女に、マーリは憧れすら覚えた。

 それに比べ、幼いパドや心を失ったサーラを村から追放して生き残ろうとする自分達がとても卑しい存在に思えてくる。
 父の決定が間違っているとは思わない。村のために必要なことだ。
 だが、正しい決定だったとしても、正義には反する決定だとも思う。

 マーリが複雑な心中のやり場を探していると、いきなり場違いな声が聞こえた。

「うわぁ、すげー、本物の騎士様だ」
「あの白いの何?」
「ロバだろ、騎士はあれに乗って戦うんだよ」
「バカ、ロバじゃなくて馬だ……いや、そうじゃなくて、お前らちょっと待てっ!!」

(やっかいなのが来た)

 内心マーリは焦る。
 振り向かなくても分かる。水くみ組の年少男児達である。
 無礼を無礼とも知らず、敬語すら操れない彼らだけが何故ここに来るのか。

 振り返ると、最年長のキドが必死に抑えようとしているのを、もっと幼い子達が振り切って駆け寄ってくる。

(ど、どうしよう……)

 大人達はなにをしているのか。

「こら、お前達戻れっ!!」

 いや、大人達も追いかけてきた。
 が、こういうときの幼子のすばしっこさというのは、時に年齢に反比例するのではないかと思うくらい大人を凌駕(りょうが)する。
 その証拠に一番最初に駆け寄ってきたのは最も幼いジラであった。

「うわぁ、馬ってでっけぇ!! 騎士様の剣や鎧カッコイイっ!!」

 もう、周りが見えないほどに目をキラキラ輝かせているジラ。
 さすがに騎士であるキラーリアに直接つっこんだりはしないが、馬の方に駆け寄ろうとする。

「待て、不用意に馬に近づくなっ!!」

 キラーリアが叫ぶ。
 当たり前だ。あの馬は王女からの預かり物。キラーリアとしてももし何かあれば大変だろう。

「よしなさいっ。ジラ!!」

 マーリは慌てて馬にたどり着く前にジラを押さえつける。

「いて、なにすんだよ、マーリさんっ」
「あれは王女様の馬なの。私たちが触っていいものではないのっ!!」
「えー、なんでだよー?」

 理由を説明した直後に、理由を聞かれても困る。
 もっとも、村の外の常識など知らないジラに、王女やら貴族やらがどれだけ怖いのかなど理解できようはずもないのだが。

「ジラといったか?」

 キラーリアがマーリに押さえつけられたままのジラに言う。

「おおっ!!」

 敬うという意識のかけらも感じられない返答をするジラ。

「馬というのは敏感な動物だ。いかに訓練された軍馬とはいえ不用意に近づけば、驚いて蹴り飛ばされかねん。昨年も馬に頭を蹴られて死んだ騎士がいた」
「え……」

 騎士が蹴られて死んだと言われ、さすがにジラの顔が引きつる。

「だから、申し訳ないが素人を馬に近づけるわけにはいかない。分かってもらえないか?」
「……ごめんなさい」

 ジラが素直にシュンとなって謝罪を口にした。
 同時にマーリはキラーリアのことをさらに快く感じる。
 キラーリアはとっさに馬ではなくジラのことを心配したのだ。
 馬に何かあったら大変だと思ってしまった自分よりもよっぽど村人のことを考えてくれた。
 子ども相手に無理のある説明をして理由を話したつもりになっていた自分が恥ずかしい。

 マーリが抑えるのを止めてもジラは動かなかった。

「あ、あの、貴方は騎士様だよねです?」

 めちゃくちゃだけど、一応敬語を使おうとはしているらしい。

「ああ、そうだ」
「領主様に仕えているんだよねです?」
「いや、騎士というのは王族に仕える者のみを言う。私の(あるじ)は領主ではなく王族だ」

 ジラのような村の幼児にもきちんとキラーリアは説明してくれた。
 分かっているのか分かっていないのか、ジラは首をひねる。
 たぶん、王族と領主の区別もこの幼子にはハッキリとは理解できていないのだろう。

「あ、あの、お願いがあるです」

 ジラが意を決したように言う。
 マーリとしては何を言い出すのか不安で仕方がない。
 というか、今すぐジラの口をふさぐべきなのではないか。

「なんだ? 安請け合いは出来ないが、相談くらないならかまわんぞ」

 だが、マーリが動く前にキラーリアがそう応えたからには、もはやどうしょうもない。

「あの、俺の友達を騎士に推薦したいんだです」

(何を言い出すのよぉぉぉ、この子は)

 ジラの口から出た爆弾発言に、マーリは気絶するかと思った。
 ただの村人が騎士になれるわけがない。
 というか、騎士からすればこんな発言侮辱も良いところだ。

「俺の友達で、パドってやつがいて。まだガキだけど」

(あんたもガキでしょうがぁぁぁぁ)

 内心叫び続けるマーリ。

「あいつ絶対役に立つ。すごい力を持っているんだ。この間、村を護ってくれた」

 ジラはもはや、出来損ないの敬語を使うことも忘れているらしい。

「それなのに、大人達はパドを村から追放するって、そんなことされたら、いくらなんでもアイツ……だから、騎士になれたらって」

 もう、事項の前後関係がむちゃくちゃである。
 マーリとしては頭を抱えるしかない。

「こら、ジラ、なにをやっている。騎士様、申し訳ありません。この子達はすぐに連れ帰りますから……」

 ジラ達を追いかけてきた大人らがようやく合流し、ジラ達を捕まえて立ち去ろうとする。

 だが。

「……ちょっと待って欲しい」

 キラーリアが言った。

「1つ聞きたい。パドを村から追放というのは一体どういうことだ?」

 キラーリアの問いに、場が沈黙する。
 (みな)が目をせわしなく動かして沈黙する中、マーリは決断した。
 これ以上、ジラに不確定な情報を出されるよりは自分が説明するべきだろう。
 なにしろ、自分は次期村長だ。そのくらい出来なくてどうする。

「実は……」

 マーリは先日の父の決定を語り始めた。

 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇

「これって相当に(いびつ)な状況じゃありませんか?」

 パド少年の言葉に、レイクは目を見開いた。
 この子はここまでの説明で今のこの国の問題点に気がついたのか?
 それとも全く見当違いのことを考えているのか?

 元来レイクは好奇心旺盛な性格である。
 だからこそ、ガラジアル・デ・スタンレード公爵に仕えながら、政治家ではなく学者を志した。
 他人に講義をする暇があったら自分の知識を増やしたいと考える。
 正直なところ、今だってこの世界の知識をパド少年に与えるよりも、異世界の話を聞きたくて仕方が無い自分を感じるくらいだ。

(一体、この異世界からやってきた少年は限りある情報からどれだけのことを推察できるのか)

 レイクはそう考えると自分を抑えられなかった。

「ほほう、『(いびつ)』ですか。具体的にはどういうことでしょう?」

 自分の声に少年を値踏みするような嫌らしさが混じっていることを自覚しつつも、レイクはそう言ってニヤリと笑った。

「だって『力』の中で『権力』だけ戦いになったら意味が無いですよね? それなのに、他の『力』――つまり、『軍事力』『魔法』『財力』『新任』があまり高くない王家が『権力』だけを持ち続けているのは、『(いびつ)』というか『危うい』気がします。王家の『権力』ってよりどころが薄いんじゃないかと」

 そのパド少年は、今のこの国の問題点の指摘としてをほとんどパーフェクトな正解であった。

「クククっ……」

 レイクは自分の口から笑いが漏れるのを押さえられなかった。

(なんでしょうね、このうれしさは)

 レイクは頭が良い。
 それゆえに、他の人とは会話が成立しないことが多い。
 例えば、今回と同じ説明を普通の人間にしたところで、パドと同じような思考にたどり着く者は少ない。
 事実、王家の中枢にいる者達ですら、そのことに気がつくのに遅れ致命的な事態を招いたのだ。

 そんな中、ガラジアル・デ・スタンレード公爵は自分と同じかそれ以上に頭を働かせる能力に長けた人だった。
 彼だけが、唯一自分と同じ土俵に立って会話できた。
 公爵の死後、自分と同じほどに高度な会話ができる者がおらず、レイクはどこか寂しさを感じていた。

 だが、パドはここまで話についてきた。
 前世の記憶という『この世界を客観視する土台』があるからこそなのかもしれないが、だとしてもこうして自分と同じ土俵で思考を巡らせられる存在がいることは純粋に嬉しい。

「あ、あの、レイクさん?」

 笑う自分が不気味に見えたのか、パド少年がおそるおそるといったかんじで言う。

「パドくん、あなたのおっしゃったことは正しいですよ。そして、それ故に、1年半前の事件が起きました」

 レイクはそう言って話を続けた。
どこまでも出張ってくるジラくん。
最初は作者も物語を薦めるのに邪魔だなぁくらいに思っていましたが、今となっては作者からすると『便利な少年』ですよ(^O^;)
一途でまっすぐで恐れを知らない子ですねぇ。

……ぶっちゃけ、チートはあっても優柔不断パドくんよりジラくんを勇者にスカウトした方がいいんじゃないかという、本末転倒な思いが作者の頭に一瞬浮かんだりもしました(ヾノ・∀・`)
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