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神様、ちょっとチートがすぎませんか? 作者:七草裕也

ラクルス村編 第四章 獅子と少年

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【Break time】雑談は楽しく

お久しぶりです。
色々悩んだりしているうちに時間が経ってしまいました。

外伝の方も色々更新しています。
http://ncode.syosetu.com/n8810dl/
できれば『【聖歴517年】少女騎士キラーリア』までおお読みいただいた後で、本章をご覧ください。
 豚領主達が這々(ほうほう)の体で逃げ去り、アル王女とレイクがパド少年を連れて行ってしまったため、村の広場にはキラーリアと土下座をしたままの村人達、2頭の軍馬のみが残されることになった。

 アル王女達はいつ頃戻ってくるだろうか。
 レイクは無意味に話が長いし、しばらく時間がかかることは間違いないだろう。
 調教された軍馬はおとなしくしているが、山道を歩いてきたこともあるし、水くらいは飲ませた方が良いかもしれない。
 集落があるのだから、近くに川くらいあると思うが具体的な場所は知らない。
 馬には水以外に草を食べさせ塩をなめさせる必要もあるが、多少の草はともかく、塩を手に入れるのは難しいだろう。まあ、数日は大丈夫だと思うが。

 馬よりも気になるのが村人達である。
 領主も王女もいなくなったのに、この人達はいつまで土下座を続けているのだろうか?
 暇だとも思えないし、あの老人は家に帰って休むようにレイクも言っていたはずなのだが。

「一つ尋ねてもいいだろうか?」
「はい、なんでございましょうか?」

 キラーリアの言葉に、老人が代表して応じる。

「なぜ、あなた方はいつまでもそうしているのですか?」
「は……?」

 キラーリアの質問に、老人は虚を突かれたような表情を浮かべた。

「あの、我々に何か不手際でもございましたでしょうか?」

 老人が震えながら言う。

「いや、そういうわけではないが……領主も王女もいなくなったのに、いつまでそうやって頭を下げているのかと疑問に思ってな。一体、貴方達は誰に頭を下げているのだ?」
「え、は……いえ、それは……」

 老人の顔に困惑が浮かぶ。
 他の村人達も戸惑った表情でこちらを見る。
 ここにきて、さすがのキラーリアも話がかみ合っていないことに気づき始めた。

「……ひょっとして……間違っていたら申し訳ないのだが、あなた方は私に頭を下げているのか?」
「は、はぁ……さようですが」

 夏の山に何故か寒々とした空気が流れる。

 ここら辺がキラーリアの天然さである。
 今の自分はあくまでも1人の騎士であり、騎士は王家と民衆に自らの能力を捧げる者だと考えている、
 故に、アル王女や豚領主に対してならともかく、自分に対して村人達が頭を下げ続けているなどと考えもつかなかったのだ。

 一方、ラクルス村の村民達にしてみれば、領主よりも偉い王女様の腹心らしき騎士など殿上人である。
 許可も無く頭を上げられる相手ではないのだ。

「それは申し訳なかった。私のことは気にせず、おのおの自分の仕事に戻ってほしい。ご老人は家で体を休めてくれ」
「はい、ありがとうございます」

 老人はそういうと、村人達に指示を出し始めた。
 村人達は各々(おのおの)キラーリアに両手を合わせて挨拶した後、方々(ほうぼう)に散っていく。

「お父さん、私たちも行きましょう」
「いや、ワシは自分でいく。お前は騎士様のために残れ」
「でも……」
「心配いらん。足も大丈夫だ」
「わかりました」

 老人とその娘らしき女性が話す。

「騎士様、我が娘マーリを残します。若輩ではありますが何かご要望があれば娘にお伝えください」

 別に必要ないと答えようかと思ったが、村人との繋ぎ役はいた方が良いだろうと思い直す。

「助かります。お体にお気をつけて」
「もったいないお言葉です」

 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 女騎士の元に残されたマーリは極度の緊張状態だった。
 なにしろ相手は王女様の付き人である。
 何か対応を間違えて機嫌を損ねれば命がない。
 いや、それどころか、村1つくらい簡単につぶされる。

「マーリだったな」
「はっ、はいっ!!」

 答えた直後に。自分の声が必要以上に上擦っていたことを意識して後悔する。

「そんなに緊張しないでくれ。私の方が年下だろうし、暇だから世間話でもしたいだけだ」
「は、はいっ」

 緊張するなという方が無理である。
 世間話などとんでもないと言いたいが、逆らうわけにもいかない。

「とは言ったものの、私は口下手でな。こういうときに何を話せば良いのかわからん」

 私はもっとわかりません――と、悲鳴を上げてたくなる。

「ふむ、そういえば、あの大きな穴は一体なんなのだ? 無意味にあんな穴を掘るとは思えんし、なによりもあれは魔法で爆発がおきたかのようではないか」

 ギクっとマーリの顔が引きつる。
 穴というのは、当然、先日の『闇』との戦いであいた穴のことであろう。
 豚領主は村人が無意味に掘ったと思ったようだが、むろんそんなわけはない。
 だが、ここであの戦いのことを話しても良いのか?
 マーリには判断がつかない。

 そもそも、『闇』のことは自分達にも何一つわかっていないに等しい。
 パドの力のこともだ。

 眼をキョドキョドしながらマーリがなんと言ったものか考えていると、女騎士は慌てたように両手を前で振った。

「い、いや、言えないならいいんだぞ。あなたにも立場あるだろうし、私も興味本位で聞いただけだし」

 何故かひたすら慌てている女騎士を見て、マーリはふと思った。
 この女性(ひと)は本当に、単に話題がほしか(・・・・・・・・)っただけ(・・・・)なのではないか。
 騎士という立場に恐れを抱いていたが、よく考えてみれば相手もまだ10代の少女である。
 彼女と同じ年のころ、自分は同年代の少女と恋バナに明け暮れていた。
 あの王女様や豚領主はともかく、この女騎士は警戒すべき相手ではないのではないか。

「いえ、かまいません、私にわかることならばお話しいたします」

 マーリはそういって話し始めた。

 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 一方、崖の上の3人。

「あー、やっぱりお前の魔法は息苦しくてかなわんな」

 レイクが魔法を解くとアル王女が汗をぬぐいながら言った。
 確かにレイクの頬にも涼やかな風が汗をかいた頬に気持ちよく当たる。
 パド少年のいうように、自分の魔法はエーデルの循環を止めるものなのかもしれない。

「おい、干し肉がまだあっただろ。出せ」

 水袋からあおるように水を飲みながら、アル王女がいう。

「了解です」

 レイクは袋の中から干し肉を取りだし、引き裂いてアル王女に渡す。
 干し肉をうけとったアル王女は一息に噛みついた。

「お前らは食わんのか?」
「私は干し肉はあまり好きではありません。パドくんはどうします?」

 干し肉は保存用であるがために塩辛く、かつ水分がないため非常に喉が渇く。
 レイクとしては今は干し肉よりも喉の渇きの方が深刻であった。
 パド少年に尋ねると、彼は意外そうな顔をした。

「いただけるんですか!?」
「ええ、まあ余っていますし」
「あ、ありがとうございますっ!!」

 涙を流さんばかりに喜んで、パド少年はレイクから干し肉を受け取ってしゃぶり始めた。

「なんだ、パド。そんなに干し肉が好きなのか? 正直、レイクほどではないが私もあまり好かんのだが」
「月始祭以外でお肉食べるの初めてです。それに、味も濃いし」
「月始祭?」
「ああ、このあたりでは月に1度、肉を食べる祭りがあるんでしたっけ」

 アル王女の疑問に、レイクが答える。

「はい、それ以外でお肉なんて食べられないですし。きっとジラが知ったらうらやましがるだろうなぁ」

 パド少年は感慨深そうにしながら一口一口を大切に口に入れていく。
 アル王女はとっくに食べ終わっているが。

「このあたりには食料になる獲物がいないのか?」
「いますけど……矢が足りないんです」

 アル王女の疑問にパドが答える。
 鉄や青銅の(やじり)はこの村では貴重品なのだろう。
 かといって、木の鏃では小動物をとらえることずら難しいはずだ。

「ふん、ならば矢もどこからか奪えば良い」
「無茶言わないでくださいよ……」

 アル王女の暴論にパド少年も少々あきれ気味に応じる。

 ――それにしても、とレイクは思う。

 パド少年はどこかの世界から転生してきた。
 転生前の世界について、レイク達は何も知らない。
 興味は尽きないが、今はこの世界の話を優先するべきだと考えたからだ。

 だが、これまで話してきて、レイクは彼の前世が並々ならぬ者だったのではないかと感じ始めている。
 この世界の歴史を一気に話して聞かせたのだが、ちゃんと話しについて来ているのだ。
 話の合間でパド少年が尋ねてくる事柄も、概ねが的を射たものであり、むしろレイクが説明しやすくなるほどだ。

 こう言っては何だが、アル王女に教育したときは10倍の時間をもってしても、10分の1も理解してもらえなかった。
 今パド少年に話している横で、アル王女はいかにも理解しているかのようにうなずいていたが、おそらくほとんど聞き流しているだけだろう。

 転生者だとしても、この世界に来て3年間はこの村で暮らしていたらしいし、この世界に関する知識はほとんど無い様子にもかかわらず、この理解度。
 おそらく前世では名のある学者だったのではないかと思える。
 目の前にいるパド少年がどうみても幼児の体なので錯覚しそうになるが、おそらく中身は相当な年配なのではないか。
 レイクの好奇心が、パドの前世について探りを入れたくなる。

「確かにこの村では肉は貴重品かもしれませんが、その前(・・・)はどうだったのですか?」

 魔法を解いているので、一応『前世』という言葉は使わずに尋ねる。
 パド少年もその意味を理解したらしい。

「前はずっと病気でした。肉や魚は体が受け付けなくて」

 やはり、老人だったということだろうか。
 そう考えたが、パドの次の言葉にレイクは飛び上がりそうになる

「なので、11歳の誕生日に病院で死にました」
「そうですか……って、え? 11歳? 11歳で亡くなったんですか!?」
「え、ええ、そうですけど?」

 レイクは思わず崩れ落ちそうになる。
 自分はこれまで20年以上勉学に励んできた。
 この大陸全体でも1、2を争う知識人かつ頭脳派だという自負(うぬぼれ)がある。
 その自分の話しについて来るパド少年の前世は、よほど名のある学者なのだろうと思っていたのだが、まさかそんなことが……

「あ、あの、レイクさん、どうしたんですか? なんか落ち込んでいるみたいですけど……」

 パド少年が慌てたように言う。

「ハッハッハッ、放っておけパド。どうせ『自分よりも頭の良い子供がいるなんて信じられない』とか、そんなことを考えているだけだろうからな」
「は、はぁ……でも、僕、自分がそんなに頭が良いとは思わないんですけど」
「そうか? 私よりもレイクの話についていっているように見えるが?」
「ですけど、前の場所では僕よりも頭の良い子いくらでもいましたし。っていうか、僕病気であんまり勉強できなかったですし……」

 パドの言葉を聞けば聞くほど、ますます落ち込んでうずくまるレイク。

「だ、そうだぞレイク。異世界にはパドよりももっと頭の良い子供もいるんだそうだ」

 おかしくてたまらないという様子で、アル王女が笑い転げる。

「まあ、そんなに気にすることはないぞ、レイク。お前は確かにこの世界では優秀な頭脳の持ち主だ。例えそれが異世界から見れば『洞窟の中の鼠』状態だったとしてもだ」

 そう言いながら笑い転げるアル王女。
 ちなみに『洞窟の中の鼠』とは、洞窟の中のことしか知らない鼠を揶揄したこの世界の言葉である。

 実のところ、レイクはプライドが高い。
 ある意味で、アル王女などよりもよっぽど自尊心の塊と言って良い。
 ここまで言われれば、妙なファイトがわき上がってくる。

 レイクはうずくまったまま「クククッ……」と笑い出す

「あ、あの、レイクさん?」
「どうしたんだ、お前、ちょっと恐いぞ」

 レイクの笑いに引いたような声を出す2人。

「クククッ……いいいでしょう……」

 レイクはと笑ったまま立ち上がる。

「この後はもっと話しのペースを上げます。異世界の子供の頭脳でどれだけついてこれるか勝負ですっ!!」

 レイクはそう言って、パドに人差し指を突きつけた。
キラーリアさんが口下手すぎたり、レイクさんが怖かったりといったお話でした。
パドくんタジタジ。

次回はこの世界の歴史の続きになります。

前書きでも書きましたとおり、外伝の方を結構更新しています。
http://ncode.syosetu.com/n8810dl/
単に続きを書いているのではなく、内容も書き換えたりしています。
ここから先は外伝と本編が微妙にリンクしてくる(ハズ)なので、外伝の方も是非ご一読ください。

※レイクさん視点なので説明しにくかったのですが文中で出てきた『洞窟の中の鼠』というのはもちろん、我々の世界で言うところの『井の中の蛙大海を知らず』とほぼ同じ意味のことわざです。
+注意+
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