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神様、ちょっとチートがすぎませんか? 作者:七草裕也

ラクルス村編 第三章 獅子と少年

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35/92

35.さらなる世界(中編2)

《中編》と銘打ちながらさらに2つに分けるのは我ながらどうだろうと思いつつ、連続投稿です。
こちらは会話文主体。
レイクさん、暴走気味です。
王女様、ガツンやっちゃってください。
【歪な三竦み1】

「さて、パドくん。ここまで話して王家、教会、領主連立それぞれの力関係がどうなっているか理解できましたか?」
「……えーっと、すみません、よくわかりません」

 レイクさんの本気の話に、正直な返事をする僕。

「ふふふふふふ、そうでしょうそうでしょう。いくら異世界の知識があっても、所詮は子供。この私の知識にかなうわけがないのです。ふぁはっはっはっ」

 いや、レイクさん、そうやって高笑いをすると完全に危ない人みたいなんですけど。

「さあ、パドくん、素直に負けを認め、私に教えを請いなさい!! さあ、さあ!!」

 グィっと僕の目をのぞき込みながら言うレイクさん。
 こ、怖いです。
 僕は所詮お子様ですよ?
 そんなに対抗心燃やさないで。

 っていうか、怒りの表情を浮かべた王女様が背後に近づいていますよ、レイクさん。
 こっちはこっちでもっと怖いですよ。

 ドガっ。

 レイクさんの頭に王女様の拳がめり込む。
 声もなく地面に倒れるレイクさん。眼鏡も吹っ飛ぶ。

 うわぁぁぁぁ、痛そう。

「な、なにをするんですか、アル王女っ!!」
「うるさいっ。なんとなくムカついたから殴っただけだ、悪いか」

 抗議の声を上げるレイクさんに言い放つ王女様。
 いや、さすがに『なんとなくムカついたら』で他人を殴るのは悪いと思いますよ、王女様。

「私の優秀な頭脳を殴るなど、下手をしたら人類全体の損失ですよっ!! アル王女のように脳みそまで筋肉でできているわけではな……」
「もう一発いっとくか? それとも今度は剣を抜こうか?」

 レイクさんの抗議を途中で冷たく遮るアル王女。
 目が笑っていないよ、この女性(ひと)
 レイクさんとは別の意味で怖いよ。

「い、いえ、少々言葉が過ぎました。話を続けましょう」

 レイクさんもさすがに顔を青くする。

「と、とにかく。現状の王家、教会、領主連立の力関係の話です。」

 眼鏡を拾ってかけ直し、レイクさんは話を元に戻す。

「パドくん、人を支配するのに必要なものは何だと思いますか?」
「え……えーっと……なんでしょう?」

 いきなりそう言われても困る。

「答は人を支配するに値する『根拠』です」

 いや、そりゃあそうでしょうけど。

「言い換えれば、支配する『根拠』がなければ世を統治することは出来ません。なぜならば根拠なき支配に民は従わないからです」
「は、はぁ……」

 結局何が言いたいんだろう?

「問題は、支配する『根拠』とは何かです。これは大きく分けて3つあります。具体的には『力』『信認』『洗脳』です」

 ちなみに、この世界において『信認』や『洗脳』を意味する言葉を僕が聞いたのはこのときが初めてである。
 僕の頭の中で翻訳できたのはその後の説明を聞いてからなのだけど、ここでは話を複雑にしないために最初から日本語に訳しておく。

「まず『力』ですが、これは『権力』『軍事力』『財力』『魔法』などが該当します。
『信認』は人々が相手を支配者だと認めるに足る『信頼』『伝統』『血縁』『信仰』です。
 最後に『洗脳』は『信認』と似ていますが『騙す』という概念が付け加えられるケースが多いです。場合によっては薬物や魔法によって洗脳が行われることもあります。
 ここまではよろしいですか?」
「なんとなくは」

 正直自信は無いけど、うなずいておく。

「まず、三者それぞれの『力』を見てみましょう。
『軍事力』は――魔法を除いて考えるならば――『諸侯連立>>>>王家>教会』といったところでしょう」

 木の棒を拾って地面に文字を書きながら言うレイクさん。
 といっても、僕はこの世界の文字なんて読めないけど。
 わかるのは“>”という記号だけだ。この記号ってこの世界でも同じ形なんだね。

「同様に考えれば――
『財力』は『諸侯連立>>>教会>>>王家』
『魔法』は『教会>>>>>>>諸侯連立>>王家』
『権力』は『王家>>>諸侯連立>>>教会』
 となります」

 うーん、先生、覚えきれません。

「え、王家って財力や軍事力ないんですか?」
「税金の大半を領主が持って行ってしまっているのが現実ですからね。しかも、教会も王家への寄付を迫っていますし。財力はかなり逼迫しています。
 もちろん、あの豚領主と同程度の資産はありますが、諸侯連立全体と比べたらもうどうにもならないですよ」

 思いっきり毒のある言い方でいうレイクさん。

(……大丈夫なのかな、王女様の前でこんなこと言って)

 そう考えて、王女様の方をチラっと見るが、怒るどころか上機嫌だ。
 どうも先ほどから話を聞いていると、この王女様やレイクさんは王家に対して手厳しい。
 この女性(ひと)が本当に王女様なのか、あらためて疑わしく思えるくらいだ。

「王家の軍事力は『流血の時代』以降、大幅に削られました。
 現在では王家に仕える騎士や近衛兵の人数は最低限にまで制限されています。
 王家に無用な軍事力を与えて『流血の時代』を再び起ないようにというのが諸侯連立や教会の言い分です。この大陸には国と敵対する勢力はいないわけですしね。
 そして、なにより――」
「なにより?」
「『伝統』の話にも関わりますが、王家が王家たる所以は、『勇者の子孫』であることが根拠となっています。そして、勇者キダンはわずか4人でこの大陸の魔物を滅ぼしたとされています。
 よって、勇者の血を引く王家ならば少人数でも十分だろうというのが諸侯連立の言い分です」

 うーん、でもさぁ、それって……

「でも、それ、建前ですよね?」

 僕の言葉に、レイクさんはニヤリと笑った。

「ええ、その通りです。諸侯連立や教会にしてみれば王家に軍事力を持たせないことで王家の力を削ぎ自分達の権力を維持したいということでしょうね」

 やっぱりそうだよね。

「『魔法』に関しては契約方法を教会がほぼ独占していますが、多額の寄付を行えば教会関係者以外も魔法を手にすることは出来ます。諸侯連立と王家で魔法に差がついているのは、財力のせいですね。まあ、王家の騎士達のプライドが高すぎて魔法を学びたがらないとのもありますが。
 最後に権力に関して言えば、この国の立法権と司法権を王家が握っています。もちろん、全て裁きを王家で行えるわけではありませんし、領主達にはそれぞれの領土によって細かい法律を制定する権限もありますが、王家の定めた法律を覆すことは出来ません」

 なるほど。武力や財力、魔法で劣る王家は法律によって力を維持しているということか。

「次に『信認』と『洗脳』に関して考えてみましょう。
 これは様々な形がありますが、全体的には『教会>>>>王家>>>>>>>諸侯連立』となるでしょう」
「えーっと、教会は信仰心によって人々の信頼を得ているってことでしょうか?」
「確かにその通りです。が、それだけではありません。教会は『人々を救うことで支配』しているのです」

『救うことで支配』……なんだかピンとこない。

「確かに、難しい考え方でしょうね」

 僕の困惑顔をみて、レイクさんは言う。

「もう少し簡単に考えてみましょう。
 パドくん、もし3日間パンが食べられなかったらイヤですよね?」
「うーん、もともと、パンなんて月始祭以外では食べられませから」

 レイクさんの言葉に僕が応えると、しらーっとした空気が流れる。

「ええと、言い方が悪かったですね。麦粥でもなんでもいいです。食べ物が3日間食べられなかったら困りますよね?」
「まあ、そりゃあ……」
「その時、教会に駆け込めばパンをもらえるとしたらどうしますか?」
「そりゃあ、教会に行く……かな?」
「そう、最初のうちは教会はパンを無償でくれます。が、しばらくすると教会は奉仕活動を求めます。
 例えば、畑仕事だったり、土木工事だったり、売春だったりです」
「でも、食べるために働くのは当たり前なんじゃ……売春はともかくとして」
「もちろん、それはその通りです。が、教会でいくら仕事をしても賃金は出ません。最低限のパンと水とスープと寝座(ねぐら)は与えられますが、他の自由は全て制限されます。同じ仕事を与えられる人が集められるので、家族とも引き離されます。休暇もなく、朝から晩まで仕事。寝る時間すら制限されるわけです」

 うーん、ブラック企業の究極系みたいだ。

「もちろん、教会は『強制などしていない。信者の皆さんが望んでいることだ』と言います。が、1度教会に頼って暮らせば、自立することは困難です。なにしろ一文無しで路上に放り出されることになりますから」
「なるほど」
「しかも、教会には『神様』という強い味方がいます」

 ……神様ねぇ。あのガングロ女神様しか思い浮かばない僕にはなんとも言えないけど。

「いえ、もちろん、『神様』が本当にいるかどうか、いたとして教会の味方をしているかどうかなど、本来は誰にもわかりません。
 が、『これは全て神様の思し召しなのです』と神父に言われれば、それに疑問を持つことすらしない人々は多いものです。
 信仰とは『信認』であると同時に『洗脳』でもあるのです。
 領主や王家が税金を取れば『搾取されている』という意識を持つ人もいますが、教会で奉仕活動をさせられても『搾取される』と感じる人はほとんどいません。むしろ『ありがたい施しを戴いている』と感じるでしょう」

 ふ、ふむ。
 やっていることは奉仕活動という名の強制労働による納税に近いものだけど、神様の名前を借りることによって『税金』という意識が働かないってことか。
 中々上手く出来ている。

「一方、王家への『信認』とは、結局のところ初代国王勇者キダンへの『尊敬』です。建国当初は教会などよりもはるかに大きな『信認』を得ていたと思われます。が、流血の時代と長き年月によって血縁による王家への『信認』は地に落ちています。
 もちろん、『伝統』として初代勇者キダンの血脈への尊重はなされていますが、教会の方が遙かに人々の『信任』を得ているのが現状です。
 領主達は『伝統』も『信仰』もありませんから、『信任』という意味では1番低いといえるでしょう。もちろん、先祖代々善政を行っている一部の領主は、その歴史を信任されていることもあるでしょうが、それは数少ない例外でしょうね」

 ここまで、説明を受け、僕は地面に書かれた文字をもう一度見る。

『軍事力』:『諸侯連立>>>>王家>教会』
『財力』:『諸侯連立>>>教会>>>王家』
『魔法』:『教会>>>>>>>諸侯連立>>王家』
『権力』:『王家>>>諸侯連立>>>教会』
『信任』:『教会>>>>王家>>>>>>>諸侯連立』

 文字は読めない僕だけど、それでもレイクさんの説明と合わせればなんとか理解できる。
 この世界の文字はアルファベットみたいな表音文字らしい。

 しばらく文字とにらめっこをして頭をひねった後、僕はつぶやくように言った。

「これって相当に(いびつ)な状況じゃありませんか?」

 僕の言葉にレイクさんは少し驚いたような顔をし――そしてニヤリと笑った。

「ほほう、『(いびつ)』ですか。具体的にはどういうことでしょう?」

 値踏みするように僕を見下ろすレイクさん。
 僕は自分の考えを話し始めた。
ということで、世界の歴史編です。
色々書いていますが、直接物語に影響しそうな範囲で簡単にまとめると……

1.この世界の王家は初代勇者の子孫だよ
2.この世界の魔法は教会が独占しているよ
3.領主、教会、王家という3つの支配者がいて、それぞれ対立(三竦み)状態だよ
4.王家は軍事力や資金力が無くて困っているよ
5.アル王女やレイクさんは王家に一家言ありそうだよ

……最低限、このくらい理解していただければ十分かと(*´∀`*)
ごちゃごちゃ歴史が書かれていますが、あくまでも『現在そうなるに至った話』でしかないわけです。
世界の設定という意味で重要ではあっても、物語を楽しむという意味ではそこまで重要ではありません。

じゃあ、書くなって話もないではないのですが(;^ω^)
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