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神様、ちょっとチートがすぎませんか? 作者:七草裕也

ラクルス村編 第三章 獅子と少年

32/91

32.さらなる世界(前編)

説明回の前半です。
5000文字以上世界観説明が続きます。
こういう説明は読んでいて楽しいものではないかもしれませんが、さすがにここから先進めるのは最低限の説明は必要かなと。

読むのが大変という方は、流し読みして、もっと先の話を読んだ後に振り返っていただいても大丈夫だと思います。
 僕と王女様、そしてレイクさんは崖の上で様々な話をした。

 ……というわけで、これからその情報交換について書いていくわけだけど、セリフをそのまま文章にするとものすごい長文になる。
 なにしろ、レイクさんの話が無駄に長いんだよ、これが。
 僕の方も中々理解できなくて、同じ説明が行ったり来たりしたし、色々な話が入り交じっていたし。

 なので、ここからは実際の会話は少なめに、項目ごとに情報を整理して述べようと思う。

 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇

【神託の話1】

 聖テオデウス王国の国民が信仰するテオデルス信教、その総本山の教皇様には特別な力がある。
 教皇様っていうのは要するにこの世界の教会の一番偉い人らしい。
 教皇様は神様から神託を授かるが出来るのだ。

 神託とは神様からのお告げみたいなもの。
 どうやら、話を聞くにこの世界では神託は絶対視されているらしい。
 レイクさんや王女様も神託そのものに関しては信じているっぽいし。

 神様のお告げなんて、平成日本の感覚だとうさんくさいとしか言い様がないけど、なにしろ魔法のある世界だ。
 これまでの神託も間違った内容だったことは一度も無いという。
 ただし、間違ってはいないけど、人間が解釈を間違えたことはあるとか。

 ……と、こう聞くとやっぱりうさんくさいく感じるけど、今回王女様達が僕の元にやってきたのは間違いなくこの神託の情報によってらしいので、完全なインチキではないのだろう。
 神様の言葉というのも事実なのかもしれない。
 神様の存在自体は僕も転生の時に見ているし。

 ――まあ、神様っていうと僕の頭にはガングロおねーさんしか浮かばないわけだけど、おねーさんも上司がいるみたいなこと言っていたしね。

 で、神託は教皇様の就寝中に突然訪れる。

 これまでにも、例えば『○○日後に地震がある』とか『エルフを虐待するのはやめなさい』とか、事実を言ったり、忠告したりと、色々な神託があったそうな。 

 数日前の深夜――日数を計算すると、『闇』がラクルス村に襲来した日の夜だ。厳密には日付は変わってからかもしれないけど、いずれにしてもあの夜。
 教皇様は新たなる神託を受けた。

 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇

【神託の話2】

 今回、教皇様が授かった神託は以下のようなものだった。

1.産まれながらに200倍の力と魔力を持った異常児がいる
2.彼は別世界――前世の記憶を持っている
3.名前はパド。ラクルス村に住む少年である
4.このままパドが10歳になると、魔力が制御しきれなくなり世界が滅ぶ可能性がある
5.それを避ける方法は二つ。一つはそのパドが魔力の制御を学ぶこと。もう一つは今のうちにパドを殺してしまうこと
6.200倍の魔力の制御は容易ではなく、今から一流の師についても成功する可能性は7割といったところだろう。神としては今のうちにパド少年を抹殺するべきと考える

 確かに3までは正しい。間違ってはいない。
 もっとも、事実全てでもない。
 200倍の力と魔力を僕が持ったのは神様のミスだと、あの魔法の契約をした少年は言っていたけど、そのことは神託では示されていない。
 神様としてみれば自分のミスは認めたくないってことなのかな。あるいは教会が神さまのミスっていう部分を省略したのかもしれないけど。

 正直、神託の内容を聞いたとき、王女様達は僕を殺すためにここに来たのではないかと考えた。
 だけど、レイクさんもそう僕が考えるであろうことは理解していたらしく、自分達は今のところ僕を殺すつもりはないと言った。
 今のところというのが非常に気がかりだけど、ここは信用するしかない。

 この神託の内容からいくつかの事実がわかる。

 まず、神託はそれなりに真実を告げているということ。
 パドやラクルス村という固有名詞も含め、僕の力や魔力、前世の記憶についてまで情報が及んでいる。
 それはつまり、神様のお告げか占いか魔法かはともかくとしても、超常的な方法で得た情報なのだろう。
 おなると、4~6も正しい可能性が高いということになる。
 色々衝撃的な内容だけど、それはあとにする。

「あれ? でも、レイクさんは僕が本当に前世の知識があるかどうか疑っていたんですよね?」
「さすがに前世となると突飛な話ですからね。神の言葉を疑ったというよりも、教会が神託を創作した可能性も頭にあったということです」

 神託について説明を聞いた僕の疑問に、レイクさんはそう答えた。

「教会が神託を勝手に作ることなんてあるんですか?」
「そういう疑いを持たざるをえない神託がこの10年ほど増えていることは事実です」
「例えば?」
「典型的なのは2年前の民衆、貴族、王族から教会へ渡すお布施の増額すべしという神託でしょうか」

 ……うわ、露骨。

「この村の税もそのせいで上がったはずですよ」
「全然知らなかったです」
「きっと、大人達が子どもが心配しないように対処したのでしょうね」

 ラクルス村の場合は大人達というより、村長が僕らに心配をかけないよう配慮してくれたのだろう。
 僕とお母さんの追放という決定をした村長だけど、できる限り村人の負担にならないよう苦心していたのだと今更ながらに知る。

「そんな信託が通用するんですか?」
「本来なら無理です。が、今のこの国では通用してしまいます」
「それはどういう意味ですか?」
「それを説明するためには、この国の歴史を説明しなければなりません。パドくんはこの国の歴史についてどの程度の知識がありますか?」
「……正直、ほとんど知りません」
「わかりました、では、まずこの国の成り立ちから話しましょう」

 ……ちなみに、さっきから王女様が全く会話に参加していないように見えるかもしれないけど、事実ほとんど傍観者に徹していた。
 どうやら、これが2人の――あるいはキラーリアさんも含めた3人の役割分担らしい。

 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇

【この国の歴史1 初代国王キダン・カルタ・レオノル】

 今から550年以上前。
 エーペロス大陸は魔物が住まう場所だった。
 魔力の高いエルフや地底を主な住処とするドワーフ、強靱な肉体を持つ龍族にとってはともかく、人族が暮らすには難しい環境である。

 そこに現れたのがキダンという1人の青年だった。
 彼は3人の仲間――女剣士ミリス、僧侶グリカード、賢者ブランドと共に、この大陸の魔物を追い払い、大陸中央のアルラット山脈に封じ込めることに成功した。
 4人の中心人物あったキダンを人々は勇者と称え、キダンは初代国王キダン・カルタ・レオノルとしてこの大陸を統治した。
 時に今から523年前のことである。

 ……色々はしょった最低限の概要と断った上で、レイクさんが説明したこの国誕生の歴史である。

「魔物ってなんですか? あと、4人でどうやって……」
「そこら辺の詳細はとても長くなります。のちのち勉強してもらうかもしれませんが、今は概要だけにして話を先に進めましょう」

 そう言われては何も言えない。
 小学校で習う歴史を理解していない子に大学で習う詳細な日本史を教えるのは難しいし、意味が無いということだろう。

 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇

【この国の歴史2 王族、教会、貴族の誕生】

 勇者キダンが王になり剣士ミリスと結婚した。
 2人の子孫がこの後この国を王族として統治していくことになる。

 一方、僧侶グリカードと賢者ブランドはテオデルス信教を立ち上げる。
 当初は王族と教会は政治と信仰という役割分担がなされていた。
 互いが争うこともなく信頼関係と協力関係が成立した蜜月状態だったとされる。

 実はこの時点では聖テオデウス王国が立ち上がったとはいえ、まだまだ人族は大陸の一部で暮らしているに過ぎなかった。
 ぶっちゃけていえば、今の王都がある場所とその周辺だけが聖テオデウス王国の支配地域であり、それ以外は未開の地という方が正しかったらしい。
 とはいえ、中には冒険家みたいな変わり者や、未開の地にあらたなる資源を求める商人はおり、人口増加も手伝ってだんだんと人々の居住地は大陸全土に広がっていく。

 そうなると困ったことがおきてくる。
 王家の支配の限界である。

 この世界には電話もインターネットもテレビもない。
 移動手段は徒歩か馬(含む馬車)か船。
 ごく一部の魔法使いは通話魔法を使えるが、それも限定的な条件下でらしい。
 この大陸の広さはいまいち説明を聞いても理解しにくいのだが、端から端まで早馬でとばしても2月(ふたつき)はかかるらしい。
 この件に関しては王族だけの裏技もあるのだが、それを僕が知るのは後々のことだ。

 いずれにしても、王都から遠く離れた土地を王家が直接管理するのは物理的に難しいのだ。

 それはそうだろう。
 通信機器や移動手段が確立された時代の島国日本だって、総理大臣と国会議員だけで北海道から沖縄まで管理するのは難しい。
 だから、都道府県にわけ、さらに市区町村にわけと、統治の一部を地方に任せていた……はずだ。
 まして、電話もない世界で大陸全土を統治するなど不可能としかいいようがない。

 当初は一部の冒険家などが出向くだけだったが、10年もすれば大陸のあちこちに人族の集落が出来る。
 中には王都なんて見たことがないという現地育ちの子どもまで出てくる。
 放置し続けることは出来なかった。

 そこで、初代国王キダンは一計を案じる。
 各地に能力のある信頼できる者を派遣し、それぞれの場所を統治させるのだ。
 要するに、都道府県のような地方自治ということである。

 統治を任された者達は、当初『統治監』と呼ばれていた。
 彼らは初代国王からかなりの統治権を与えられていた。
 結果論から言えば、キダンが彼らに与えた統治権は大きすぎたといえるが、その時点ではキダンと彼らは信頼関係があり、それゆえの大きな統治権だったのだろう。

 しかしながら、人族というのはどんなに長生きしても100歳が限度。
 医療技術が発達していないこの世界の平均寿命は30歳といったところである。
 もちろん、これは乳幼児の死亡率も加味した話なので、70歳まで生きる者もいるが、いずれにしても100年もすれば王家も教会も統治監も代替わりする。
 もちろん、一般民衆もだ。

 するとなにが起きるか。

 信頼関係の崩壊である。
 もちろん、1代変わっただけで即座に信頼関係が壊れるわけではない。
 初代統治監は次代の子どもに王家への忠義を教えていた。
 だが、それが2代、3代、4代と代替わりすればどうなるか。

 いくら初代国王が勇者であったとしても、その子孫が全て優秀とは限らない。
 優秀な王族もいれば愚鈍な王族もいる。
 歴史を見れば、能力があっても私腹をこらし悪政をしく王も者もいたし、良心的だが能力が無く国を混乱ささせた王もいる。
 もちろん、素晴らしい王もいたが、問題なのは『初代王の子孫だからといって必ずしも王として優れているとはかぎらない』という事実だ。

 徐々に統治監達は『なんで俺ら王家に忠誠を誓わなくちゃいけないの?』となる。
 教会も同じく『なんで神に仕えるべき教会が王家に仕えなくちゃいけないの?』となる。
 そして、統治監や教会の神父達だって善人ばかりではない。

 いつしか統治監達は自分達を『領主』と自称するようになった。
 統治を任されたのではなく、領土の主は自分達だという意味を込めて。
 あの豚領主はその末裔の1人ということだ。

 一方、教会も王家からの支配を嫌い、神の生の元に王家や領主に対して様々な難題を突きつけてくる。
 なにしろ『神様の思し召しだ』という大義名分と、民衆の信仰という後押しがある。
 さらには、この大陸で人族が使う魔法のほとんどは僧侶グリカードと賢者ブランドの考案であり、教会は魔法の取得をも独占していた。
 勇者キダンのオリジナル魔法も存在するが、威力が大きすぎて民間に広められる物ではなく、また王家の血を引く物しか使えないものも多い。
 そのため、キダンの魔法のほとんど王家の秘伝となっている。

 さらに建国から300百年が経った記念の日。

 ついに領主達は自分達に貴族位の授与を求めた。
 元来この国における貴族とは王家でこそないが、初代国王キダンの血を引く者のことであった。
 領主達の大半はこの条件を満たしていない。
 故に、本来ならこの要求は却下されてしかるべきである。

 が、ここで別の問題があった。
 初代国王が統治監を任命した者のなかに国王の孫の1人が含まれており、その一族だけは代々貴族位を持っていた。
 そして、その末裔の領主の支配地域は、領主が貴族位を持つが故に他の地域よりも優遇され栄えていた。

 これは他の地域からみれば不公平に映る。
 領主だけでなく、民衆からみても同じことだ。
『我らが領主様に貴族位を』という思いは強くなっていたのだ。

 領主達の訴えにはそれなりの正当性が認められし、民衆の後押しもある。
 王家は3つの選択肢から選ぶしかなくなった。

 1つは現状維持。
 1つは王家の血を引く領主から貴族位の剥奪。
 1つは全ての領主へ貴族位の授与

 その時代の国王は良く言えば善良、悪く言えば弱気な性格だった。
 彼は現状維持を選んで国内の混乱を抑える自信は王になく、また民の不満を放置することを是ともしなかった。
 かといって、王家の血を引く者の貴族位を剥奪する大義はなく、また前代未聞のことでこれも大きな混乱を呼ぶ。

 結局、王家は領主全員に貴族位を与えることを決定する。
 これにより、領主達はさらに力を持つことになった。

 これが今から223年前のことである。

 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 ……と、ここまで話した段階で、太陽は傾きかけていた。
 レイクさんの魔法のせいで息が苦しくなってきたし、王女様が疲労と空腹を訴えたこともあり、1度休憩することになった。
 僕としても、一気に色々な話を聞いたので頭を整理したかったし、3人並んで崖の上の風を感じながら干し肉をかじるのだった。
最初は全部会話文にしようとしたのですが、冒頭でパドくんが言っているとおり10万文字つかっても収まらないので、悩んだ末こういう形を取らせていただきました。

この世界の統治制度について、パドくん(というか勇太くん)は日本の都道府県による自治を思い浮かべたようですが、もちろん、より近いのは中世における封建制度です。

封建制度といわれてもピンとこないという方は、江戸幕府と諸大名を思い浮かべると近いかもしれません。
初代将軍家康は確かに天下統一したけど、本当にその子孫にも国を治める大義や能力があるのか。

状況は色々違いますが幕末に倒幕派が現れたのも、幕府の力を諸大名が信頼できなくなったからです。
(黒船の襲来という外因もありますが)

もっとも、日本の幕末の倒幕派は日本全体のことを考えていたことも事実で、ラクルス村にやってきた領主のような大義のない豚さんとは違いますが。
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