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神様、ちょっとチートがすぎませんか? 作者:七草裕也

ラクルス村編 第二章 闇の襲来

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【少年と村長】紛れもない事実

お待たせいたしました。

何度も書き直し、結果、今回は3人称となりました。
しかも、6400文字近くあります。

あ、あとようやく村長(長老)の名前登場ですよ~
誰も待ってないと思うけど(; ・`д・´)

そして、相変わらず女っ気はないのでした。
 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇

(三人称・ジラ視点)

 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 ジラにとって、パドという少年は最初から『理解できないガキ』だった。

 ジラは2年間、年少組の中でも1番年下だった。
 ジラより上となると8歳以上の子しかいない。
 そうなるとどうしてもジラだけちびっ子扱いされる。
 ちびっ子だから許されることも多いが、一方でちびっ子だからないがしろにされているという気持ちも生まれる。

 だから、ライやパドという自分よりも年下の子が水くみ作業に参加するのが楽しみだった。
 今度は俺が先輩になるんだと思えば誇らしさや責任も感じる。

 現代日本で例えるならば、中学や高校の部活で2年生になって後輩ができた時に感じるような誇らしさや責任感だ。あるいは、入社して1年経った会社員が新卒の新入社員に感じる感情とも言える。

 実際、先に水くみ作業に参加しはじめたライは、ジラ以上に『つかれた~』とか『もう帰りたい~』などとワガママを言って、ジラが励ますこともあった。
 ライに対して河原で『つまずかないように気をつけろよ』と先輩ぶってアドバイスするのも気持ちよかった。

 が、ライの1ヶ月後に3歳になったパドは、ライとはまるっきり違った。
 何しろ、最初の挨拶からして『よろしくお願いします』である。
 子ども同士で敬語を使うヤツなんて初めて見た。

 そのあとも作業中文句1つ言わない。
 それどころか、ジラやライに対して『もっと○○したほうがいいんじゃないですか?』などと言ってくる。
 しかも、それらがことごとく正論で、しかも敬語を崩さないのが余計しゃくに障る。
 あげく、テルやキドにも『パドを見習ったらどうだ?』と言われるのだ。
 ジラとしてみれば当然面白くない。

 先ほどの例えでいうなら、中学の弱小野球部に入部した新入生が、実は元有名リトルリーグのエースで4番だったようなものだ。
 新入部員の実力は認めても、部内の力関係はむちゃくちゃになってしまう。
 1年間頑張って後輩を迎え入れたら、後輩の方が遙かに実力もあるし、後輩の練習についていくこともできない。
 先輩の面目は丸つぶれである。

 問題はジラもまだ5歳という幼さだと言うことだ。
 中学の野球部なら、他の部員も最後には新入生を認めてチーム全体としてまとまることもできるかもしれない。
 だが、5歳の子どもにそこまでの柔軟さを求める方が酷であろう。
 むしろ、ジラは自分が何でパドに対してイラつくのか、その理由すら理解できない。

 結果としてパドをぶん殴るという最悪の行動に出てしまった。
 もっとも、ジラとしても本気で顔面を殴るつもりなどなかった。
 いくらなんでも避けるか防御するかくらいはするだろう、もしかした反撃もしてくるだろうくらいに思っていたのだ。
 ところか、パドはそのどちらもしなかった。

 実のところ、パドの顔面に拳がめり込んで、1番慌てたのはジラだったりする。
 だから、父親に怒られてげんこつをもらっても、ジラはそれも当然だと受け入れた。

 翌日、ジラはパドに謝ろうと思っていたのだが、怪我を理由にパドは水くみ作業を休んだ。
 自分のせいで小さな子にそんな怪我をさせたのかと思えば、さらに罪悪感が芽生える。
 医者のいないこの村では骨折一つで一生障碍が残ることもあるのだ。

 実際にはパドは父親と崖で話をしていただけなのだが、ジラにはそんなことはわからない。
 もしも、パドに取り返しのつかない怪我をさせていたらどうしたらいいんだろうと、一晩悩み抜いたくらいだ。

 だから、次の日の月始祭で見かけたパドが元気だったことに、ジラは本気で胸をなで下ろした。
 しかも、謝ったらパドは許してくれた。
 もし自分がパドの立場だったら、きっと簡単には許さないだろうに。

 それどころか、ハズレ肉しかもらえなかったジラに、パドは自分の肉を分けてくれようとすらした。
 まあ、それはそれで、またむかつくのだけど。

 パドと話をしていると、まるで自分よりもずっと年上の大人と話しているような気分になる。
 でも、目の前にいるのは間違いなく自分より年下の3歳の幼児である。

 パドは幼児なのか大人なのか。
 ジラの幼い心では整理できず、結果パドという少年はジラの理解の範疇外の存在だった。

 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇

(三人称・ラクルス村村長バル視点)

 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 ラクルス村の村長、バル。御年62歳。
 村長になった理由は単純な年功序列である。
 60代どころか、50代後半の人間も他にいないラクルス村で、62歳というのはもはや長寿の域に達する。
 何しろ、村の平均寿命は35歳を下回る。これは乳児の死亡率が高いためでもあるが。
 なので、62歳で足腰も頭も衰えぬバルが村長とされるのは当然のことであった。

 ラクルス村における村長の仕事は多岐にわたるが、全てをひっくるめて書き表すならば以下に尽きる。

『村を護ること』

 そのためにバルはあらゆる努力をしてきた。

 村の財産や食糧、納税の管理当然。
 村人の中の不満や対立の解決も大切な仕事だ。
 なにしろ、貧乏な村では村民同士が派閥を作ったり、ましてや本気で対立したりすれば村全体が簡単に滅びる。

 そして、もちろん、疫病や外敵から村を護るのも大切な仕事の1つだ。
 時には村全体のために、1人の村人を切り捨てる決断をしたこともあった。
 村人達も村長の苦労を知っているし、その実力を認めている。
 村で唯一、文字の読み書きや算術もできる。

 だが、月始祭の終盤、村人達の目の前に現れた『闇』に対するバルの対応は、村長失格と言われても仕方が無いものだった。
 明らかに異質な存在に対して、バルは村人に逃亡の指示すら与えられなかったのだから。

 しかし、それもやむをえない。
 なにしろ、相手は『異質』を超えていた。
 村を襲ったのが、猛獣だろうが、盗賊だろうが、自然災害だろうが、領主の無茶な納税要求だろうが、バルは最善手を模索することくらいはしただろう。

 だが、『闇』は完全に『未知』の存在だった。
 しかも、あらゆる想像の範疇外にある、突然現れた『理不尽な未知』である。

 それが危険なのか、村に危害を与えるかどうかすらバルには判断できなかった。
 それどころか、『これは夢ではないのか』、『ついに自分の頭も老いてあらぬ物をみているのではないか』などという疑いが先に立ったくらいだ。

 おそらく、それはバル以外の村人達も皆同じだったのだろう。
 後から考えれば自分たちでもあきれるしかないが、その瞬間村人達は、村広場に降り立った『闇』を思考停止に近い状態で眺めることしかできなかった。

 そして、バルが何もできないうちに事態はさらに深刻になっていく。
『闇』の攻撃からパドをかばったサーラが貫かれる。
 遠目に見てもサーラの傷は明らかに致命傷だ。
 村長として何もできないうちに、村人が1人が殺されたのだ。

 だが、皮肉にもその事実はバルの心に少しだけ冷静さを呼び戻した。
 少なくとも『全くの未知』であった『闇』が、村にとって『害のある敵』だということは理解できたからだ。
 そうであるならば、相手の正体はともかく、自分のやることは決まっている。
 村を『闇』から護るのだ。
 だが、戦うのは無謀に過ぎる。
 村人達を一刻も早く逃がさなければならない。

 バルが未だ大半が惚けたままの村人達に指示を出そうとした時だった。
 再びバルの目の前で理不尽なことが起きる。

「お前、なにをやった……
 なにをやったかって聞いているんだ!?」

 サーラの息子パドが叫んだ。
 それ自体は理解できる。
 何しろ、目の前で母親を貫かれたのだから。

 問題はその後。
 パドは人外の力で、まるで飛翔するがごとく『闇』に飛びかかった。
 3歳の幼児に――いや、大人であっても1歩で飛びつけるような距離ではなかったにもかかわらず。
 さらに、パドが『闇』を地面に押さえつけて殴ると、その衝撃でどんどん地面が崩れていった。
 パドが拳を振り上げるたびに地面が大きく揺れ、バルは立っているのも(つら)いほどだった。

 バルから見れば――いや、村人達から見れば『闇』もパドも、理解の範疇外である。

 再びバルが対処に困惑していると、『闇』とパドの戦いは遙か上空に移った。
『闇』がパドを持ち上げ空高く飛んでいったのだ。

(一体何が起こっている?)

 60年以上生きてきたバルにも、全く理解できない。

「パド!!」

 パドの父、バズが妻を抱えたまま上空に向かって叫ぶ。

 息子を心配する父親の気持ちは理解できるが、自分は村長である。
『闇』からどうやって村人を護るか、そして超人的な力を見せたパドをどう扱うか考えなければならない。

「みんな、東の森へ一時避難しろ」
「食料は?」
「今は命が優先だ」

 誰かの問いに手早く答える。
 わけのわからない状況に動きが取れなかった村人達も、村長の言葉に動き始める。
 混乱した集団も、信頼する代表の音頭があれば動くことはできる。
 バルの言葉で村人がすぐに動き始めたのは、これまでの村長としての仕事を村人達が評価していた証左である。

 だが、動かない者もいた。
 重傷の妻を抱え、上空の息子を見守ろうとするバズである。

「バズ、早くしろ」

 バルが言っても、バズは動かない。

「サーラは重傷です。今は動かせない。それにパドも放ってはおけない」

 夫として、あるいは父親として当然の言葉だった。
 バルも人の親である。バズの気持ちは良く理解できる。
 だが、村長としては受け入れられない。

「サーラはもう助からん。そしてあの戦いはわしらの理解の範疇外だ」
「それでも、私は残ります。夫として、父として、この場を離れるわけにはいかない」

 バルは一瞬迷った後頷いた。

「わかった。(みな)、逃げるぞ」

 それは、バズとサーラを見捨てて逃げるという村長としての決断の言葉だった。
 夫として、父親として、バズはここに残ることを選んだ。
 その気持ちを反意させるのは容易ではないし、今はその時間は無い。
 村長としてやるべきことは、村人を逃がすこと。
 そのために、バズを、あるいはサーラやパドを切り捨ててでも他の村人を逃がさねばならない。
 そして、指導者として自分も逃げなければならない。自分がバズと一緒に残るということは、他の村人を指導する人間がいなくなるということなのだから。

 バルは村人達とともに、広場から駆け出す。
 逃げる東は川の方向だ。
 年少組でも走れる道のりだし、村人達も水くみや洗濯で何度も向かったことがある、1番よく知っている逃げ道だからだ。
 さらに言えば、村にしばらく帰れなくなったとしても、川の方角なら飲み水には困らない。
 何かの時に逃げる場合は、できうる限り川の方角と常日頃から決まっていた。

 だが、村人達が広場から逃げ出し、村の外へ向かおうとした直後だった。

「あれは何だ!?」

 上空を指さし叫んだのはテルだったか?
 バルも慌てて上空を見る。
 なんと、パドの右手に漆黒の刃が握られていた。

「なんと……」

 思わず足を止めて見上げてしまう村人達。
 バルも一瞬、逃げることを忘れた。

 パドは漆黒の刃で首を拘束していた『闇』の指を切り捨てた。
 そして、そのまま村の広場に落下するパド。   

「いやぁぁぁぁぁぁぁ!! 落ちるぅぅぅぅ!!」

 落下しながら叫ぶその悲鳴は確かに聞き慣れたパドの声だった。
 パドの画面が地面に――ちょうど闇を殴りつけてパド自身が開けた大穴の横に突き刺さった。

 バルは再び選択に迫られた。
 村長としての判断はこのまま村人達を逃がすべきだと告げていた。
 一方で、目の前で地面に突き刺さった幼児を放って逃げるのは人として正しい行いなのか。

 しかし、パドの見せた驚異的な能力は、むしろ『闇』と同じように村にとって驚異なのでは無いか?
 そもそもあの高さから落ちたら人間は助からないのでは?

 様々な考えがバルの中で渦巻く。

 と。

「うー、うー、うぅー」

 地面に落ちたパドの両足がバタバタと動き、なにやら苦しそうな声がする。
 どうやら、地面に埋まった頭を取り出そうともがいているらしい。
 だが、幼児のパドの短い両手ではなかなか難しいようだ。

 これは助けるべきか。
 しかし、先ほどのパドの戦闘力を考えると……
 それに、あんな上空から落ちてきて無事だと言うだけでも、パドはもはや人外の力を持っている。
 人外の力を持つ者を村人としてカウントし、他の村人の逃亡のチャンスをつぶしてまで助けるべきなのか。

 迷うバルの横を、小さな影が走り抜けようとしていた。

(!?)

 慌てて確認すると、それはジラだった。
 5歳の、一昨日パドを殴った子だ。

「パド!!」

 ジラは叫ぶともがいているパドに駆け寄ろうとしていた。

「まちなさい、ジラ」

 バルは慌ててジラの首根っこを掴む。

「離せよ、パドを助けないとっ」

 ジラが叫ぶ。

「しかしっ!! パドのあの力を見ただろう。あれは……」
「あれは俺よりチビのパドだ」
「だが、あんな力を持った者が他の村人に危害を加えようとしたら……」
「俺が殴ってもあいつ何もしなかった」

 それは5歳児の言葉とは思えないほどに正論だった。
 瞬間、ジラの言葉にバルは反論することができなかった。

 ジラの言葉を受け、バルの他にもパドに向かって駆け寄ろうとする者達が現れた。
 キド、サン、ライ、年少組の子ども達だ。それに3ヶ月前に年少組を卒業したテルもだ。
 身体の弱いテトまで走り出していた。
 男の子だけではない、いつもは別行動が多い女の子達も後を追う。

「ま、待ちなさい、お前達!!」

 バルは慌てて叫ぶが、1人では止められない。
 大人達が困惑して固まる中、子ども達はパドの元へと向かう。
 ふと気がつくと、捕まえていたはずのジラもするりと自分の手を抜け出してパドの方へ走り出していた。

 困惑するバルの横に、いつの間にか今年40歳になった自分の娘が立っていた

「お父さん、子ども達を全員置いて逃げる?」

 バルは娘のその問いに、一瞬だけ目をつぶって熟考した。

「村長として私は村を護らねばならん。子ども達を見捨てることは村の未来を見捨てることだ。ならば子ども達を助けねばならない」

 村長の言葉に、村人達は頷いた。

 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇

(三人称・ジラ視点)

 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 ジラがパドの元に走ろうとしたのは、別に深い考えがあったわけではない。
 そもそも5歳のジラは、大人達のように熟考する思考力など最初から持ち合わせていない。
 だから、村長への言葉だって、深く考えて言ったわけではない。
 パドを殴りつけてしまった贖罪とかそんなつもりもない。
 突然現れた『闇』や、パドのあり得ない能力などについても理解できない。

 わかったのは自分よりも小さな子が高いところか落っこちて、頭が埋まってもがいているということだけだ。
 だったら、それは先輩として助けるべきだろう。
 大人達がとまどうことしかできない中、ジラが考えたのは本当にそれだけだった。

 ジラは別に『良い子』ではない。
 水くみをサボれるならサボりたいし、遊べるなら遊びたい。
 おいしいものが食べられるなら食べたいし、嫌なことがあったら我が儘を言って泣きわめく。
 むかつくヤツがいたら喧嘩するし、殴り飛ばすことだってある。
 お調子者だし、泣き虫だし、口も悪い。
 そいういう、どこにでもいる当たり前の子どもだ。

 当たり前の子どもだから、自分より小さな子どもが(つら)い目にあっていたら、当たり前に助けたいと思っただけだ。

 そこに打算などない。
 将来の懸念も考えない。
 そんなことを考えられるほど頭は良くないのだから。

 だからジラは――子ども達はパドを助けることを選択して、地面に突き刺さったパドの足を引っ張った。

 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 子ども達がパドの足をひっぱたことで、彼は自分で抜け出すよりも早く立ち上がることができた。
 結果として、それは『闇』が再び地面に降り立つよりも早く、パドが母親の傷を治して臨戦態勢を取れた要因の1つとなった。

 仮にパドが自分で脱出したとしても、間に合った可能性はある。
 しかし、そうであったとしても、パドが地面から抜け出したとき、子ども達がパドを励まし、奮い立たせたことは間違いない。

 そして後年の歴史におけるパド少年の重要性を考慮するならば、ここでパドが『闇』に敗北していたら、ラクルス村のみならず、世界全体が滅んでいた可能性すらあったといえることは紛れもない事実である。
最初、パドくんの視点のまま書こうとして上手くまとまらず、ならばと村長の1人称でなんとか書き終えたのですが、気に入らない内容に。
一念発起してジラくんの1人称で書いたのですが、明らかに5歳児にみえない(まあ、転生者でもない幼児の一人称というのがどだい無理があるのですが)。

で、結局3人称にしてジラくんと村長さんの視点両方使ったら、なんとかまとまりました。
とつぜん3人称でゴメンナサイ。

ジラくんは将来ガキ大将→粗暴だけど村の警備として大活躍みたいになりそうな子ですねぇ。

次回から新展開……あれ? 決着していないじゃんと思うかもしれませんが、まあ、見ていてください。
+注意+
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