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神様、ちょっとチートがすぎませんか? 作者:七草裕也

ラクルス村編 第一章 ラクルス村のパドくんはチートが過ぎて大変です

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【家族の問題・農村編3】家族の回復

これにて第1部完結です。
 狩りから帰ってみると、息子がケンカして怪我をしていた。
 もっとも、俺はそれ自体はたいしたことじゃないと考えていた。
 男の子などケンカしながら大きくなるものだ。
 大怪我をするとか、いつまでも禍根が残って村全体に迷惑をかけるとかなら別だが、怪我はたいしたことないようだし、本人も悩んで反省もしているようだ。

 話を聞く限りケンカの原因はどっちもどっちとしか思えなかった。
 確かにテトに対するジラの発言は道義上問題があるかもしれない。
 しかし、村全体を見れば正論でもあるのだ。
 ラクルス村は働けない人間をむやみにおいておけるほどに裕福ではない。
 テト自身も女の子の手伝いなどを頑張っているとは思うが、ジラにしてみれば一言言いたくもなるだろう。
 本人に面と向かって言ったのならまだしも、作業中の軽口に対してパドが過敏に反応しすぎた部分もある。
 双方それぞれの言い分はあるだろうが、要するに『子どものケンカ』としか思えない。

 そんなことよりも、パドが『どうしたら子どもらしくなれるんでしょうか?』などと尋ねてきたことに困惑した。
 とても3歳の子どもが言う言葉ではない。
 幼児の発言としてはあまりに(いびつ)に感じる。
 これは親としてなんとかした方が良いのではないか。
 しかし、どうすればいいのか見当もつかない。

 ともあれ、狩りの成果の報告はしなければならない。
 悩みつつも、まずは村民としての義務を果たすため村長の家に向かった。

「バズ、パドは大丈夫か?」

 狩りの報告を聞き終えたあと、村長が俺に尋ねた。

「怪我はたいしたことなさそうです」
「ふむ、いや、それはキドからも報告を受けている。そうではなくてな……」
「何でしょうか?」
「ケンカをした時、パドは反撃しなかったらしい。それが気になってな」
「そりゃあ、年上の子が相手ですし……」
「もちろん、年上相手に殴りかかるような子でないことは理解してる。だが、パドは逃げることも身を守ることもしなかったそうだ」
「それはどういうことでしょうか?」
「普通、顔を殴られそうになれば、手で防ぐくらいはするだろう。しかし、棒立ちだったとキドは言っていた」

 ふ、ふむぅ。

「それは、パドがどんくさいってことでしょうか?」
「いや、キドが言うには防御することを恐れていたように見えたらしい」

 意味が分からない。

「むろん、ワシにも意味が分からん。だが、パドを見ていると何か、大きな秘め事を抱えているように見える」
「はぁ……」

 そうはいうが、村長とパドはそこまでつきあいがあっただろうか。
 少なくとも父親の俺よりは短いつきあいのはずだ。

「お前とサーラの間が未だ修復されていないことは分かっている」
「え、いや、まあ……多少の禍根はありますが……」
「ワシはこの村全体の管理者だ。学は無いが無駄に年はとっているからな。村人はみんなワシの子どものようなもんじゃ。それぞれの考えなんぞ分かるんじゃよ」
「……す、すみません……」
「パドもそうじゃ。あの子は何か自分だけで大きな悩みを抱えておる。それがお前達夫婦に起因するモノかどうかまでは分からん。だが、息子の心を煩わしていることがなにか、親ならば考えてみることだ」

 そういわれてもどうしたらいいものやら。
 しかし、息子が何か悩みを抱えているなら、それを解決する手助けくらいはしたい。

「わかりました」

 俺はそう返事するしかなかった。

 それにしても、パドが秘密を持っているか。
 確かに、あの子の行動は不自然なところがあるが、3歳児にそんな重要な秘密などあるものだろうか。
 そんなことを考えながら家に帰ると、壁に穴が開いていた。
 どうやらパドが開けたらしく、謝ってきた。

 修繕しながら考える。
 どうやったらこんな穴が開くのか……
 もしパドが秘密を持っているとするなら、この穴も関係があるのだろうか。

 俺はそう考え、カマをかけてみた。

「パド、お前、何か隠していることがないか?」
「そんなこと……ありません」

 パドはそう言いながらも露骨に目をそらした。
 図星か。
 このとき、俺は初めて自分の息子が秘密を持っているのだと確信した。

 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 息子が秘密を持っていることが分かったとして、どうやって聞き出せばいいか。

 俺はバカだし無学だ。
 浮気の件で家族からの信用も失ったかもしれない。
 そして、パドは頭の良い子だ。
 俺なんかよりよっぽど色々なことを考えているのではないかと思うこともある。
 駆け引きで聞き出すなど無理だろうし、それでは本音は聞けない。

 ならば、俺に出来ることは正面から聞き出すしかあるまい。
 俺は崖の上で自分の秘密を打ち明け、パドを信じると言い切った。
 その上で、パドに俺を信じろと言った。

 正面からの説得は功を奏し、パドは涙を流しながら自分の秘密を話し始めた。

 それはあまりにも凄まじい話しだった。

 異世界、1度死んだ魂、神様、生まれ変わり、生まれながらの力……

 そのどれもが、村から出たこともない俺には想像もできないことばかりだった。
 普通ならばとても信用できない話だろう。

 だが、俺はそれを信じることにした。
 その理由はいくつかある。

 俺と同じく村から出たことがないパドが、想像だけで話せる内容ではなかったこと。
 幼児の嘘としてはあまりにもできすぎだと言うこと。
 この3年間で起きた不可解なことに説明がつくこと。

 それに、俺は息子の言うことを信じると断言したのだ。
 その言葉を嘘にしたくない。

 パドは前世で病弱だったらしい。
 11年、病院から出られなかったというのだから相当な話だ。
 テトの件で本気で怒ったのも、前世での経験故なのだろう。

 最後に前世の親の話になった。

「前世の僕――桜勇太が死んだ後、前世の僕の両親は泣いてくれました。迷惑しかかけられなかったのに、僕の死を悲しんでくれました」
「死んだ後のことも覚えているのか」
「転生する寸前に、神様が両親と弟の姿を見せてくれたんです」
「……そうか」
「だから、僕は幸せになる義務があるんです。前世で迷惑をかけ続けて何もできなかった両親の気持ちに応えるためにも」

 その言葉に、俺は胸が張り裂けそうになった。
 同時に、その神がとても残酷な存在に思えた。
 2度と会えない親が自分の死で涙している姿を、11歳の消えゆく子どもに見せるなど残酷という言葉以外に何と表現できようか。

 息子を本当に苦しめていたのは、秘密でも凄まじい力でもない。
 前世の両親に申し訳ないという自責の念だ。

 そして俺は理解する。

 この子はとてもやさしい子なのだ。
 俺になんてもったいないほどに本当に素晴らしい子どもだ。

 その子どもが自分を責めて悩んでいる。
 親として放っておけない。
 だから、俺は息子へ語った。

「パド、お前の気持ちは分かった。だが、たぶん、お前は1つ勘違いをしていると思う」
「……勘違い?」
「お前が産まれたとき、俺は嬉しかった。心の底から嬉しかった。子供が生まれた喜びはどんな親でも同じだと思う。俺には想像も出来ない道具があふれている別世界であってもだ」
「…………」
「だから、お前は前世の親に『何もできなかった』なんて思うことはない。お前が産まれたことそれ自体が、前世のご両親へ最高のプレゼントにだったはずだはずだからだ」

 考えようによっては、俺の発言は無責任な言葉だったかもしれない。
 会ったこともないパドの前世の両親の気持ちなど分かりようもないし、俺に代弁する資格があるとも思えない。
 それでも、我が子のために泣いたという前世の両親は、パドの心を晴らすために俺がこういう言い方をしても許してくれのではないかと思う。

 俺の言葉を聞いてパドは目を見開いた。
 そして安心して肩の荷を下ろしたような満面の笑みで俺に言った。

「ありがとうございます」

 その笑顔を見て、俺は確信する。
 俺の言葉は間違っていない。
 11年、病気の子どもを支え続たというパドの前世の両親も、きっとそう思ってくれるはずだ。

 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 そして今、パドとサーラが家の中で声を上げて笑っている。
 パドが産まれてから1度たりとも見たことのない光景だった。

 笑いの原因が俺の浮気や秘密にまつわることなのは少々思うところもあるが、2人の笑顔を見ればそれが尊いものだとわかる。
 普通でない生まれと力を持つパドは、きっとこの先もいろいろな苦労があるだろう。
 それでも、父親として、一家の(おさ)として、この笑顔を守りたいと、その時俺は心の底からそう思っていた。
ようやく第1部が終わりました。
このあとは次は第2部なのですが、その前に第1話の追録を1話だけ書かせていただきます。
本当は第1部の追録は全3話のつもりだったのですが、本当に必要な内容だけに絞ることといたしました。
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