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神様、ちょっとチートがすぎませんか? 作者:七草裕也

ラクルス村編 第一章 ラクルス村のパドくんはチートが過ぎて大変です

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14.お母さんの笑顔

やっとここまできました。
ここまで書けて本当に良かったです。
「お母さん、お話があります」

 あの(みやこ)が見える崖で、お父さんと互いの秘密を話したあと。
 僕とお父さんは家に帰ってからお母さんに僕の秘密を話すことにした。

 もちろん、それが正しいのかどうかは分からない。
 お父さんと違って、お母さんはすでに僕のことを怖がっている。
 そんな状態で、さらに前世や呪い(チート)のことを話したらもっと状況は悪くなるかもしれない。

 でも、お父さんは言ったんだ。

「俺はサーラにも謝らなくちゃいけない。お前が産まれた日、サーラの言葉を信じてやることができなかった。サーラは1人で得体の知れない恐怖におびえていたのに」

 お父さんの言葉はもっともだと思う。
 そして、謝らなくちゃいけないのは僕もだ。

 僕がきちんと話をしていればお母さんは、少なくとも1人で恐怖におびえることなんてなかったのだから。
 その結果、僕が家や村を追い出されたとしてもだ。

「サーラ、これは重要なことだ。頼む、話を聞いてくれ」

 お父さんがさらにいうと、お母さんは小さく頷いた。

 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 家の小さな机を囲んで。
 僕たち3人は家族で話をすることになった。
 前世も今世も、こうやって家族で向かい合って真剣な話し合いをするのは初めてだ。
 緊張するけど、どこか嬉しいなと感じている自分がいるのが不思議だ。

「最初に言わなくちゃいけないのは、僕が産まれた日、お母さんが見た立ち上がった僕の姿は幻なんかじゃ無いってことです」

 僕の言葉に、うつむいていたお母さんは顔を上げた。

「どういうこと?」

 お母さんの声を久しぶりに聞いた。

「それは……」

 そして、僕は話し出す。
 呪い(チート)のこと、前世のこと、転生のこと……
 お母さんは黙ったまま、それでも確かに聞いてくれた。

「……だから、俺はお前に謝らなくてはならない。お前は幻をみたわけじゃない。お前が3年前、俺に必死に訴えていたことは事実だったんだ。それを俺は一切信じなかった。妻の言葉を切り捨てんだ。心から申し訳なかったと思う。すまない」
「僕も、お母さんが苦しんでいるのを知っていたのに、ずっと秘密にしていました。本当にごめんなさい」

 僕たち2人の話を最後まで聞き終えて、お母さんは両手を膝の上でギュッと握りしめた。

 ――そして。

「私、ずっと自分の頭がおかしくなったんじゃないかと思っていの。赤ん坊が立ち上がるなんて、普通ありえない。みんなが私の見間違いだと言うのも当たり前だと思ったから。
 でも、自分の見たことが幻だとはどうしても思えなくて。だから、きっと私は心を病んでいるんだって思っていた」
「違います。お母さんが見たのは幻なんかじゃありません」
「ええ、そうだったのね。
 でも、私はずっと自分の心が信じられなかった。それで、パドのことも、バズのことも受け入れられなくなったの。
 だって、頭のおかしい女が子育てしたり、さらに子どもを作ったりなんてするべきじゃないと思ったから」

 僕はお母さんの告白に、自分の大きな過ちに気づいた。
 僕はなんてバカだったんだ。
 なんてくだらない思い込みをしていたんだ。
 家族と幸せになりたいなんて思っていながら、どうしてこんなとんでもない間違いを犯していたんだ。

 お母さんは僕を恐れているのだと思っていた。
 それで、僕と話をしたがらないのだと。
 だからこそ、お父さん以上にお母さんには秘密を明かしたくなかった。

 だけど違った。
 お母さんが恐れていたのは、自分が正気ではないのではないかということだった。
 お母さんはずっと自分を信じられなかったんだ。
 そして、正気では無い自分は子育てをしてはいけないってずっと悩んでいて。

 全部僕の呪い(チート)のせいで。

 いや違う。
 呪い(チート)のせいなんかじゃない。
 僕がお母さんとお父さんを信用せずに本当のことを話さなかったせいだ。

「ごめんなさい、お母さん、本当にごめんなさい」

 僕は、お父さんと話したときとは違った意味で涙をボロボロ流した。

「パド、私こそごめんなさい。3年間、母親としてするべきことを、ずっとしなかった。本当にごめんなさい。あなたが苦しんでいたのに、母親として気づけなかった」

 お母さんはそう言って僕を抱きしめてくれた。

「僕は……ここにいてもいいんですか?」
「当たり前じゃない!! あなたは私とバズの子どもよ」
「本当に? 僕は前世の記憶を……」
「前世のあなたのご両親ができなかった分も、私たちがあなたを幸せにしてみせる」
「お母さん……」

 お母さんは僕を力一杯抱きしめてくれた。
 僕も同じようにしたいけど、自分の力を考えるとできないのが悔しい。

「そうだぞ、パド、色々あったけど、俺たち3人は家族だ。これから、1つずつ家族の形を作っていけばいい」

 お父さんも言う。

「はい」
「パドの秘密が分かった以上、俺も、もう2度と浮気なんてしない。誓うよ」
「はい……」

 ……って、え?

「……浮気は僕の秘密と関係なくないですか?」

 僕は涙もそこそこに、思わずツッコむ。

「そうね、それは関係ないわね」

 お母さんも同意する。

「っていうか、浮気は100%お父さんが悪いですよね」
「ええ、間違いなくそうね」

 僕とお母さんは涙を拭きながらジト目でお父さんを見る。

「え、いや、なに? この話し合い、最後はそういう流れなのか!?」

 慌てるお父さん。

「いや、だって……」
「ねぇ?」
「浮気はダメですよね」
「それをパドの秘密のせいにするとか、もうねぇ。男らしくないとしかいいようがないわ」

 僕とお母さんが口々に言う。

「ちょ、いや、あの、確かにそうだけど、でも、そこには男としての肉体的な欲望とか、そういう……」

 お父さんがひたすらイイワケを続ける。

「肉体的な欲望って……子どもの前で何を言っているのよ」
「いや、だって、パドは前世の記憶を持っているわけで……」

 咎めるお母さんにお父さんがさらにイイワケする。

「前世って言っても11歳で死にましたから、そんな欲望持ったことないです」
「うっ」
「そもそも肉体的な欲望って……もう、妻として聞いているだけで恥ずかしいわね」
「ううっ!?」

 引きつった顔で文字通り、椅子ごと後ずさるお父さん。

「そうそう、お母さん。お父さんってば結婚前日に崖の上から(みやこ)に向かって……」
「うわぁぁぁぁ、それは秘密って言っただろう!?」
「でも、お母さんには僕の秘密も話したんですから、お父さんの秘密も話していいと思います」
「いや、パド、それ、どういう理屈!?」

 お父さんが慌てるが、もちろん僕は知ったことではない。

「何々? 結婚前日になのがあったの?」
「崖の上から都に向かっておしっこして世界を征服した気分に浸ったそうです」
「……はぁ?」
「どうも、昔は冒険者にあこがれていたらしくて、結婚への踏ん切りのためだったとか」

 僕がそこまで言うと、お母さんは声を上げて笑い出した。

「なによそれ、おかしい。バカみたいっ」

 お母さんは心の底から楽しそうに笑った。
 それは、産まれて3年間、1度も見たことがなかったお母さんの笑い声だった。

「バカみたいって、男の夢をお前は……」

 お父さんの言葉にも、お母さんは笑顔のままで。
 つられて僕も笑い初めて。

 だから、僕もお母さんと一緒に笑って。
 3年分、笑いまくって。

 笑って、笑って、笑い疲れて。
 この笑顔をずっと大切にしたいって思って。


 だから、僕はこのときこう思ったんだ。

『僕たちの家族はきっとこれから幸せになれる』

 って。

 その時の僕はそう確信していたんだ。


 その時の僕は――

 ――翌日の月始祭で、僕と家族と村の笑顔を破壊する、あんなモノが襲来するなんて想像もしていなかった。
 
物語としては、まだ『プロローグ』なのかもしれません。
でも、それでも勇太くんはパドくんとして家族を作れました。
そのことは、彼にとってとても大きなことだと思います。

――だかこそ……

やがて訪れる災厄とパドくんは戦わなくてはいけません。

……ただ、その前に、書き漏らしていることをいくつかフォローさせてください。
第1章はあと1話。

そのあと、第1章の追録を1話。

そして、第2章は第1部とはガラッと雰囲気が変わると思います。
第1章が光だったなら、第2章は闇――になるかもしれません。

みなさん、是非ついてきていただければと思います。
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