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神様、ちょっとチートがすぎませんか? 作者:七草裕也

ラクルス村編 第一章 ラクルス村のパドくんはチートが過ぎて大変です

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7.僕の秘密、お父さんの秘密(中編)

お父さんが連れて行ってくれた場所とは?
お父さんの秘密とは?

眼前に広がる絶景を前に親子はなにを語らうか。
「うわぁぁぁ、すごい!!」

 目の前の絶景に、僕は声を出していた。
 お父さんに連れられやってきたのは、高い崖の上だった。
 眼下には森が広がり、その先には草原、さらにはるか彼方に見えるのは……大きな街だ。

 それは僕が知っているどんな光景よりも美しい世界だった。
 病室で見たテレビの映像なんかとは比べものにもならない。
 ラクルス村や河原のような木々に遮られた世界とも違う。

 それはまさしく、どこまでもどこまでも続く世界だった。

「あんまり身を乗り出すな、落ちたら大変だ」
「はい」

 知らず知らずのうちに僕は身を乗り出していたみたいだ。
 お父さんの言うとおり、この崖から落ちたら命はないだろう。

 ……ここがお父さんの秘密の場所。

「とりあえず、座れ」
「はい」

 僕とお父さんは崖の方を向いたまま並んで地面に座った。

「パド、お前が住んでいる場所の名前を知っているか?」
「……ラクルス村でしょ?」

 いまさら何を言うのかと、僕はいぶかしむ。

「もちろん、その通りだ。だが、もっと大きな世界がある」
「……大きな世界」
「ラクルス村は聖テオデウス王国のゲノコーラ地方に属する……らしい」

 おお、そういえば国名とか聞いたことないな。
 なにしろ、生活基盤がほとんど村の中で完結しているから村人も特に国の名前など口にする機会がないのだろう。

 ……っていうか……

「らしいって?」
「俺だって村とその周辺くらいにしか行ったことがないからな。村の住人のほとんどはそうだ。村長だって隣村に何度か行ったことがあるくらいだろう」

 隣村というと近そうだが、徒歩半日はかかるらしい。
 ラクルス村はそのくらい田舎なのだ。

「俺は子どもの頃、この村から出てもっと大きな世界に行きたいと思っていた」
「そうなんですか?」
「ま、男ならみんな1度は冒険にあこがれるもんだろ?」

 まあ、そうかもしれない。
 11年病室から出たことがない僕からすれば、川まで行くだけでも冒険に感じるけど。
 でも、その生活をあと5年も続ければさらなる冒険に出かけたくなるかもしれない。

「……と言っても、本気の覚悟があったわけじゃない。村から出て1人で食っていくことができるとも思っていなかった。今思えば子どものあこがれでしかない」

 お父さんは遥か彼方の街を眺めながら続ける。

「俺のお袋と親父(おやじ)が死んで、サーラと結婚することになったとき、俺はそういった夢みたいな憧れは捨てた。まあ、当然だな。
 だけど、最後に俺があこがれた外の世界を見たいと思って、聖テオデウス王国の(みやこ)が見えると聞いたこの崖にやってきたんだ」
「そうなんですね……」

 確かに、村の外を冒険してみたいという憧れに踏ん切りをつけるにはいい場所かもしれない。

 ……うん? でもちょっと話が違わない?

「あれ? でも、それってお父さん以外にもこの場所を知っている人がいるように聞こえるんですけど?」

 誰かに教えられてやってきたということは、そういうことだろう。

「ああ、結構みんな知っているぞ。都のある方角はアボカドさんに聞けば分かるし、村の男達はだいたいこの場所に来たことあると思う」
「……じゃあ、秘密の場所じゃないんじゃ……?」
「おう、この場所自体は全然秘密じゃないぞ」

 おいおい。
 話が違うじゃん。
 いや、もちろん、この光景には感動したけどさぁ。

「そんな顔するな、秘密というのは俺がここでした『ある行動』のことだ」
    
 ……ある行動?
 お父さんの秘密の行動……僕が思い当たるのは1つしか無い。

「……お父さん、ここで浮気したんですか?」

 僕は冷めた口調で言った。

「そんなわけあるかっ!!! こんな場所で横たわってアレしたら崖から落ちる……じゃなかった、そんな場所に息子を連れてくるかっ!!!!!」

 お父さんが僕にツッコむ。
 まあ、そりゃあそうだろうけど。

「じゃあ、いったい何をしたんですか?」
「ふむ、恥ずかしいことだ。恥ずかしすぎて今まで誰にも話したことがない」
「浮気よりもですか?」
「いや、浮気から離れろ、たのむから……」

 お父さんが疲れたように言う。
 まあ、親の浮気を子どもがあんまりゴチャゴチャ言うもんじゃないか。

「とにかく、だ。これはお前だから――息子だから話すんだ。お前も他の人には言うな。俺とお前だけの秘密だ」

 お父さんが真剣な顔で言う。
 ……ふむ。
 僕を信じて秘密を明かしてくれるってことか。
 ちょっと嬉しい。

「わかりました。誰にも言いません」

 僕は神妙な顔で頷いた。

「あの日、サーラと結婚する前日、俺はこの場所に来た。そして、遙か遠くの都に向かって、あることをした。今からもう1度やってみせる」

 お父さんの言葉に僕はもう1度頷いた。
 いったいお父さんは何をしたのだろうか。

 じっと見つめていると、お父さんはおもむろに立ち上がった。
 そして、崖の方を向く。

(ゴクリ)

 思わずつばを飲み込む僕。

 と。
 お父さんがズボンを足下まで下ろした。

 ……って、お父さん!?
 なにをしているの!?

 ちなみに、ラクルス村では下着を履く習慣はない。
 習慣がないというより、そんな余分な布がないという法が正しいのかもしれないが、ともあれ、この時期厚着をする必要も無いので、ズボンを下ろせば全部露出する。

 唖然とする僕をよそ目に、お父さんはアレを都の方に突き出し放尿をはじめた。

 ……って、オイ!!

「あ、あの……、お、お父……さ……ん……?」

 あんまりと言えばあんまりなお父さんの行動に、僕は呆然と言った。

「いやー、結婚前日に都に向かってションベンぶっかけたら、なんか世界を征服したような気持ちになってスッキリしてな。
 村で母さんや産まれてくる子どもと家族を作ろうっていう気持ちになったよ」
「……は、はぁ……」

 生返事をする僕。

 ……いや、他にいったいどうしろと……

「とはいえ、結婚前日にこんなアホなことをしたなんて、他人に言えるわけないだろ?」

 そりゃあ、そうだ。
 あまりにも恥ずかしすぎる!!!
 ちなみに、あたりまえだけどお父さんのおしっこは崖の下に落ちただけで、都までは届いていない。

「今のが俺の誰にも言っていない秘密だ。言いふらすなよ、パドを信じているから話したんだからな」

 そっぽを向くお父さん。
 あ、でもちょっとだけ見える頬は赤い。
 やっぱりお父さんも恥ずかしいらしい。

「ま、まあ、誰にも言いませんよ」

 というか、自分の親が結婚前日にこんなアホなことをしていたとか、情けなすぎて他人に言えないです。

「……と、まあ、俺の秘密は以上だ。俺はパドを信頼しているから話した。パド、お前はどうだ? 俺を信頼しているか?」
「え……?」

 真剣な顔で僕に向き直ったお父さんの言葉に、僕は思わず詰まる。

「俺は頼りない父親かもしれん。確かに3歳の息子に浮気したなど言われるのはダメ親父(おやじ)以外のナニモノでも無いだろう。だが……」

 お父さんはそこで言葉を切る。

「それでも、お前が抱えている秘密を受け止めて、信じてやることはできる。お前がどんな秘密を持っていてもお前の味方でいてやることはできる。お前が望むなら他の誰にも明かさない」
「僕は秘密なんて……」
「お前が秘密を抱えていることくらい俺にだって分かるさ。毎日、子どもらしくない遠慮をしていることだって分かる」

 お父さんはそういうと、再び僕の横に座る。
 そして、僕の頭をぎゅっと抱きしめてくれた。

 お父さんの腕と胸はとても温かくて……
 それは前世では手に入れられなかった暖かさで……

 お父さんの腕はとっても太くて。
 お父さんの胸はとっても硬くて。
 でも、とっても優しくて。

「俺を信頼して話してくれないか?」

 いいのかな……
 僕の秘密、話してもいいのかな?

 3年間、ずっと我慢してきた。
 前世のことも、チートのことも、誰にも話さずに。
 ただひたすら自分の力を抑えて。

 だって、話したらきっとお母さんはもっと僕のことを怖がる。
 お父さんだってお母さんと同じように怖がるかもしれない。

 それは僕にとって、ものすごく恐ろしい想像で。
 そう思うと、とても相談なんてできなくて。

 でも、でも……

 気がつくと、僕の両目からボロボロと涙が流れていた。
 ずっと抑えてきた気持ちが一気に吹き出しそうだった。

 お父さんは泣き出した僕を見ても何も言わず、ただ抱きしめて待ってくれていた。
 僕の気持ちが落ち着くまで。

 僕のことを信頼しているから。

 だったら、僕は――

 もう、限界だった。

「わかりました。お父さんのことを信頼します。とても信じられないことだと思うけど、これから話すことは全部本当のことです」

 僕がそう言うと、お父さんが神妙な顔で頷いた。

 ――そして僕は、僕の秘密を話し始めた。
というわけで、お父さんに全てを告白することを決めたパドくんでした。

親父、お前……と思うでしょうけど、男なんざそんなもんさ。
……たぶん、きっと(^O^;)

ちなみに、なにげに国名とか出てきていますね。
これはもちろん、伏線です。

第1部と第2部は村の中でほぼほぼ完結しますが、第3部以降はずっと広い世界が舞台になります。

第1部はたぶんあと2話です。
第3部でパドくんは村から大きく羽ばたくのですが、そのまえに残酷な運命と試練と決断が待ち構える第2部を乗り越えなければなりません。

なぜ、『この作品には 〔残酷描写〕 が含まれています』と書かれているのか、それは第2部が終わるまでにはハッキリするでしょう。
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