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神様、ちょっとチートがすぎませんか? 作者:七草裕也

ラクルス村編 第一章 ラクルス村のパドくんはチートが過ぎて大変です

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10.みんなと仲良くなる方法がわからない

年少組の一人として水くみ作業に従事するパドくんのお話です。
子供の世界というのも、なかなか難しいモノで……
 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇

(パド 一人称)

 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇

「よーし、みんなそろったな。それじゃ、出発するぞ!!」

 年少組のリーダー、キドが僕らを見回して言った。
 ここは村の西の外れ。
 僕ら年少組の男の子達8人はこれから水くみに向かう。
 みんなそれぞれにバケツを持っている。
 僕は3歳だからコップみたいな小さなバケツだ。

 子どもだけで歩くくらいなので、川までは歩きやすい道のりだ。
 とはいえ、前世のようにコンクリートなんてないし、石畳というわけでもない。
 細い土の道で、石ころも落ちている。
 しかも、急ではないもの坂を上ったり降りたりするので結構大変だ。

 集団の1番前を10歳で年長でリーダーのキド、1番後ろを9歳で副リーダーのサンが歩く。
 3歳の僕は列の真ん中だ。
 隣を同い年のライや2つ年上のジラが歩く。

 この村には日本と同じように四季がある。
 雪は滅多に降らないが、夏はそれなりに暑い。
 今は夏にさしかかったところなので、こうして歩くだけで汗が出てくる。
 しかも、僕は慎重に歩かないと、道に大穴を開けかねないので気が抜けない。

「つかれたぁ」
「もう帰りたいぃ」

 ジラとライが言う。
 この2人、いつもこんなかんじである。

「ほら、ライ、もうすぐだから」
「ジラ、お前も頑張れ」

 周りの年長者達が励ます。

「だってー」
「足痛いし……」

 兄弟でもないのに、変な方向に意見が一致する2人。

「お前ら、2人ともいいかげんにしろよ。いつもいつも文句ばっかり言いやがって。少しはパドを見習ったらどうだ」

 サンが2人に言う。

「そんなこと言ったって……」
「なぁ」

 ついに座り込むライとジラ。

 確かに幼い2人に水くみ作業は辛いだろう。
 だけど、こうして外を歩けるっていうのはとても幸せなことだ。
 こうやって仕事をしてみんなの役に立つと言うこともだ。
 前世で病室から外に出られなかった僕は心からそう思う。

「2人とも、もう少し頑張りましょうよ。水くみは大切な仕事です」

 僕は2人に言う。

「うるせーよ、パド、いつもいつもお前はそうやって上から目線で言いやがって」

 ジラがジロッと僕をにらむ。

「そんなつもりはありませんが、こうやって外を歩けるって楽しいじゃないですか」
「ふんっ、お前はいつもいつもいい子ぶりやがって!!」

 ジラが立ち上がって叫ぶ。
 当たり前だけど、5歳のジラが立ち上がると、3歳の僕を見下ろす形になる。

「そのつもりもないですけど……気に障ったならごめんなさい」

 僕のその返事に、ジラはさらに怒りが増したようだ。 
 顔を真っ赤にし、両手を握りしめて震わせる。

(まただ)

 僕はいつもこうやってジラを怒らせてしまう。
 そんなつもりはないのに。
 みんなと仲良くしたくて励ましただけのつもりなのに。
 どうしてうまくいかないんだろう?

「そこまでにしておけ。ジラ、それだけの元気があるならまだ歩けるだろ。ライもいいかげん立ち上がれ」

 キドの言葉に、渋々ジラは引き下がり、ライは立ち上がった。

「パド、お前ももう少し言葉には気をつけるんだ」
「……ごめんなさい」

 正直、僕はすごく気をつかって話しているつもりだ。
 他の子よりもずっと丁寧な言葉でしゃべっているつもりだし。
 それなのに、どうしていつも裏目裏目にでてしまうのか、自分でも分からない。

「さ、行くぞ」

 キドが言って再びみんなが歩き出す。
 歩き出す寸前、ジラは再び僕のことをギロッとにらみつけた。
 どうしてこうなってしまうんだろう。
 怒らせるつもりも、ケンカをするつもりもないのに。

 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 ラクルス村から歩くこと30分――かどうかは時計がないのでわからないけど、たぶんそのくらい。
 川までたどり着いた。
 川の名前は知らない。名前があるのかどうかもわからない。
 村の近くの川はこれだけので、村人達はわざわざ固有の名前で呼ぶ必要が無いのだ。

「じゃあ、少し休憩しよう」

 キドがそういって、小休憩になった。
 僕や年長の子達は適当な石に座って休む。
 実のところ、僕も結構疲れている。
 チートな力を抑えて歩くのは、他の子達以上に疲労がたまるのだ。

 ――一方。

「おりゃぁぁ」
「あーやったなぁ、ジラっ」

 聞こえてくるのはジラとライの声。
 2人は川の中に入って水かけっこをしている。
 道中さんざん『疲れた疲れた』と言っていたのに元気だよなぁ。

 2ヶ月くらい前、先月まで年長組のリーダ-だったテルに『お前は参加しないのか?』と訪ねられた。
 僕は『休みたいからいいです』と答えておいた。実際その通りだし、僕のチートな力で水かけっこなんてしたら何が起きるか分からないという怖さもある。

「おい、2人とも、少しは休めよ」
『はーい』

 2人はそういうと、ようやく川から上がった。

 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 で、帰り道。

「疲れたぁ……」
「もうやだぁ……」

 案の定、ジラとライはまた途中でへばって座り込むのだった。

「お前らなぁ……」

 キドが頭を抱える。
 気持ちは分かるよ、うん。
 あれだけ川で遊んでおいて、『疲れた』もないだろう。

「だいたいなんで俺らばっかり、こんなことしなくちゃいけないんだよぉ」

 ジラが八つ当たりするように石ころを拾って道の端に投げた。

「俺らばっかりって……みんな頑張っているだろうが」

 サンがあきれたように言う。

「うっそだぁ。女どもは参加してないじゃん」
「そうだよー」

 ジラとライが口々にいう。

「女の子は織物や炊事洗濯を頑張っているだろう」
「でも、俺たちの方が大変だもん」
「だよねー」

 サンの言葉に、ライとジラはふくれっ面を浮かべた。
 ラクルス村では男と女の仕事は分かれている。
 簡単に言えば男は力作業、女は手仕事だ。
 もちろん、厳密な区分けではなく、女性が畑仕事をすることもあるし、男性が料理をすることもあるけど。

「男が力仕事をするのは当たり前だろ」
『……ぅ』

 サンの言葉に2人が押し黙る。
 前世の世界なら『そんなの男女差別だ』と反論できるかもしれないが、この世界――全体がどうかは知らないけど、少なくともラクルス村ではそこまで男女同権の意識は進んでいない。
 男女差別が激しいわけではないが、男性が力仕事をするのは当然だという認識である。

「……じゃ、じゃあ、テトはどうなんだよ。あいつ男だけど水くみしてないじゃん」

 少し考えてから、サンにくってかかるジラ。
 この言葉には、僕がむかっとする。

「テトは体が弱いんだから仕方が無いだろっ!!」

 僕は反射的に怒鳴った。
 いつもと違って乱暴な口調だった。

 確かに、5歳のテトは男だが水くみに参加していない。
 だけどそれはテトの体が弱いからだ。

 もちろん、前世の僕ほどではない。
 医学の発達していないこの世界で、前世の僕のような未熟児が生まれたら赤ん坊のうちに死ぬと思う。おねーさん神様の言葉を信じるなら、そのまま別世界へ転生するのだろうけど。

 テトはせいぜい風邪を引きやすく、体力が他の子よりも少ないくらいだ。
 とはいえ、抗生物質などないこの世界では風邪が致命傷になることも十分ありえる。

「なんだよ、パドがそんなにどなることねーだろっ!! 体が弱いからって仕事免除とかおかしいじゃん!!」

 ジラが立ち上がって言い返した。

「何も分からないくせにっ!!」
「なんだと!! 俺が何を分からないって言うんだ!?」
「病気で外に出られない苦しさなんて、ジラにはわからない!!」

 そう、分かるわけがない。
 病室のベットの上でテレビの向こう側にあこがれる気持ちなんて。
 自然を走り回れるのができることが、どんなにありがたいことなのかなんて。
 健康に産まれたジラに分かるわけがない!!

「じゃあ、お前には分かるって言うのかよ!?」
「分かるよ!!」
「何でだよ!?」
「それは……」

 そこまで言って僕は言いよどむ。
 転生のことはお父さんにすら言っていない秘密だ。

「だいたい、お前はいつもいつもいい子ぶりやがって、生意気なんだよ!!」

 そう叫ぶと、ジラは右手を振りかぶった。

(顔面を殴られるっ!!)

 僕は思わず腕でよけようとし――しかしやめた。
 もしも、僕が防御しようとした腕にジラの右手が当たったら、きっと大怪我をさせてしまう。
 なにしろ、僕は自分で制御しきれないチート級の馬鹿力を持っているんだから。
 とっさによけるのも、周囲の他の子達を怪我させかねない。

 ……と、殴られるまでの数秒に考えたのかどうかは自分でもよく分からなかったけど。
 いずれにしても僕は防御すらしない無抵抗のままジラの拳を顔面に受けた。

 頬に熱い痛みを感じた次の瞬間。
 僕は地面に後頭部から倒れ込み、僕の持っていたバケツがどっかに吹っ飛んだ。

「おいっ!! ジラ!!」

 周囲の誰かが叫ぶ。たぶん、キド?

「あっ……その……」

 さすがにジラもやり過ぎたと思ったらしい。
 僕が立ち上がった時にはジラも真っ青な顔をしていた。

「パド、大丈夫か!?」

 キドが立ち上がった僕に駆け寄ってくる。

「は、はい……その、水こぼれちゃいましたけど……」
「それはいい。痛みは?」
「……大丈夫……です」

 僕は少し考えてからそう答えた。
 実際には頬がズキズキ痛んでいたけど、あまり僕が痛がるとジラの罪が増えるだろうからそう言っておいた。
 それに、前世でいつも感じていた胸の痛みに比べればどうってことはない。

「ジラ、お前、年下の子に何をやっているんだ!?」

 サンがジラに言う。

「そ、その、ごめん」

 慌ててサンに謝るジラ。

「謝るなら俺にじゃなくて、パドにだろ」
「……ぅ……でも、よけないなんて思わなかったし……」
「そういう問題じゃないだろ?」

 ジラは言葉につまる。
 僕の方を見て、一瞬不満そうな顔をした。

「パド、ごめん」

 ジラはそういって、両手を前で合わせた。
 この世界での謝罪のポーズだ。

「いえ……僕も言い過ぎました」

 僕はそう言って頭を下げそうになり――それがこの世界では通用しない謝罪ポーズだと思い出して、ジラと同じように両手を前で合わせた。
まあ、一人だけ敬語をつかっている時点で、浮きますわな……
それだけでなく、子ども達の間で『正論』だけをしゃべっていればこうなりますね。

なまじ前世の知識があるのに、同年代の子どもと遊んだ経験が無いまま転生した歪さといましょうか。
『いい子』ではあるけど、それが空回りしているかんじですね……

◇◆◇◆◇◆◇◆◇

ところで、登場人物がいきなり増えた上に、ほとんどが2文字の名前なのでわけが分からなくなってしまった方もいると思います。
というか、作者もわけわからなくなりそうになりました(;^ω^)

一応、以下、第1部に登場した簡易人物紹介を書いておきます。

パド……主人公。前世の名前は桜勇太
バズ……パドの父
サーラ……パドの母
アボカド……ラクルス村出入りの商人
ミーラ……バズの浮気相手
テル……11歳になったばかり。バズと狩りをした少年
キド……年少組の現リーダー
サン……年少組の副リーダー
ジラ……5歳。パドを殴った子
ライ……3歳。パドと同い年
テト……病弱で水くみに参加できない子
+注意+
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