僕の名前は磐神武彦。高校二年。平凡な男。
しかし、その人生は、僕の姉のせいで、波乱万丈だった。
「むげっ」
奇妙な声を口から漏らし、目を覚ました。
「起きたか、武彦。今日は母さんが1日いないから、姉ちゃんがお前の面倒を見てあげるぞ」
姉が僕にフライングボディアタックをかましたらしく、僕はベッドの上で姉に押し潰されていた。
「ぐ、ぐるじい…」
「情けない声出すな、武彦ォ。姉ちゃんは悲しいぞ」
意味がわからない。あ、でもこの感触は…。
「さてと。布団干すから、起きた起きた!」
姉はようやく僕の上からどいてくれた。
さっきのあの柔らかい感触はまさか…?
僕が記憶の糸を辿っていると、
「おら、邪魔!」
と、ベッドから蹴落とされる。
「ぶへ」
また奇妙な声を出してしまった。
姉はズンと布団をかつぐと、
「ぐえええ!」
と叫ぶ僕の背中を踏みつけ、部屋を出て行った。
まるで台風だ。でも、あの感触は…?
思い出される、小学校三年生当時。
僕は相変わらずの泣き虫で、よく同級生のワルに苛められていた。
ジャンケンで勝っても負けても全員のランドセルを持たされる。
身体が小さかった僕には、かなりの重労働だった。
「もうダメ。無理だよ」
僕が泣き言を言うと、ワル共は、
「磐神ィ、ランドセル落としたらぶっ飛ばすぞォ」
と脅かして来て、僕は泣きながら千切れそうになる腕と肩でランドセルを支えて歩いた。
その時だった。
「誰をぶっ飛ばすって?」
ワル達の前に、姉が現れた。
その姿はまるで、正義のヒーローだった。
姉は女だが、ヒロインではなくヒーローが似合っていた。
「ゲ、モンスターだ!」
ワル共は姉の強さと容赦のなさは良く知っていたので、慌てて僕からランドセルを奪い、逃げ出した。
「逃げられやしないよォ!」
某アニメの悪役のセリフを叫び、姉はそいつらのランドセルを掴むと引き摺り倒した。
そして、パンツが丸見えになるのも気にせず、そいつらに馬乗りになり、
「てめえら、今度武彦いじめたらここ潰すぞ!」
と股間をグイッと掴んだ。
見ていた僕の方が怖くなって、泣いてしまった。
股間を掴まれたワルはお漏らしし、泣き出した。
「うわあああん」
他のワル共も姉の形相にビビり、泣きながら走り去った。
「武彦」
姉は優しい顔で僕に近づき、泣いている僕を抱きしめた。
「姉ちゃんが守るから。絶対に守るから」
僕と違って成長が早かった姉は六年生にしては大柄だったので、強さに磨きがかかっていた。
そうか。
あの時の感触だ。
やっぱりあれは…。
「ぐえええ」
また奇妙な声が口から漏れる。
姉が背後からスリーパーホールドをかけて来たのだ。
姉の強さに更に磨きをかけたのが、「プロレス」だろう。
「ね、姉ちゃん、死ぬ、死んじゃう…」
僕は姉の腕を叩いた。しかし姉は、
「大丈夫。死なない程度に締めてるから」
ととんでもない返し。
あ。でも、この感触。
またこの感触…。
まもなく、僕は気絶した。
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