僕は磐神武彦。高校三年生。
幼馴染のクラスメートである都坂亜希ちゃんと交際中だ。
その亜希ちゃんに、中間テストを頑張った「ご褒美」をたくさんもらい、僕は浮かれていた。
クラス中のみんなが、僕を見直してくれて、僕は勉強が好きになりかけていた。
これも全部亜希ちゃんのおかげだ。
「どうしたの、武君? ニヤニヤして」
訝しそうな目で亜希ちゃんに言われた。
しまった、また思い出し笑いをしていたみたいだ。
今、僕と亜希ちゃんは、図書室で勉強中。
しかも誘ったのは僕。
「ご、ごめん。ボンヤリしてた」
「ボンヤリしてたにしては、嬉しそうに笑っていたけど?」
亜希ちゃんの視線が痛い。
「あ、その、亜希ちゃんのご褒美を思い出していたんだ」
僕はうっかり本当の事を言ってしまった。
「もう、武君たら、エッチなんだから」
そう言いながらも、亜希ちゃんはニコニコしている。
僕は頭を掻き、ノートに目を向ける。
「ここなんだけど」
「ああ、それはね」
亜希ちゃんの顔が近づく。僕は思わず彼女の唇に見入ってしまう。
「でね、こう。それから、ここでこの公式を使ってね」
亜希ちゃんは僕の視線には気づかず、説明を続けている。
いかん。勉強に戻らないと。
僕は亜希ちゃんの話に集中した。
そして、下校。季節はすっかり夏。
我が校は、衣替えを終え、みんな涼やかな制服になっている。
女子達の制服は、近隣の高校の中でも人気で、制服目当てで受験する子もいるらしい。
そういう事に関心が薄かった僕は、一年と二年の時の亜希ちゃんの夏服を全く覚えていなかった。
三年になってからの衣替えで、
「ウチの高校の女子って、何て可愛い制服を着てるんだろう!」
と改めて思った。って言うか、気がついた。
亜希ちゃんは何を着ていても可愛いし、ファッショナブルだ。
でも、やっぱり制服を着た亜希ちゃんが一番可愛い。
僕は決して制服マニアではないけれど、そう思う。
そして何より、亜希ちゃんはさり気なくお洒落なのがいい。
本当にこれほどの女の子と付き合っているんだと思うと、僕は幸せだと感じた。
「じゃあ、また明日ね」
亜希ちゃんと亜希ちゃんの家の前で別れ、僕は自分の家に帰った。
「わっ!」
僕は玄関に入るなり、叫んでしまった。
「何? 文句ある?」
そこには、姉が立っていた。
いくら姉が怖い僕でも、玄関に姉が立っているくらいで叫んだりしない。
そこまで姉が怖い訳ではないから。
叫んだ理由は他にある。
姉はどういう訳か、高校の時の制服を着て、玄関の姿見の前でポーズを決めていたのだ。
しかも、スカートは丈を詰め切ったような短さ。当時のままだ。
何のつもりだろう?
「べ、別に文句なんてないよ」
「どう? まだ高校生に見えるかな、姉ちゃんも?」
僕は唖然としたまま、姉を見た。
「衣替えで服を入れ替えていたら出て来たんだ。懐かしくなって、着ちゃった」
僕は無言のまま姉の横をすり抜け、階段を上がる。
「おい、何か言え!」
後ろで叫ぶ姉を無視して、僕は自分の部屋に入った。
でも。
亜希ちゃんも可愛いけど、姉ちゃんも可愛い。
まだ高校生で通りそうだよ。
そう言ってあげたいけど、そんな事を言ったら、あのまま出かけそうなのでやめておこう。
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