僕の名前は磐神武彦。高校二年。自分ではごく平凡な男と思ってる。
しかし、僕の人生は生まれた時から波乱万丈だった。
僕は夢を見ていた。
目の前には大好物のスイカ。
舌なめずりしてかぶりつこうとした。
んんん?
何故か口が横に広がる。
凄い力で引っ張られてる。
スイカにかぶりつくことができないまま、僕は目を覚ました。
「おお、やっとお目覚めか、武彦」
目を開けるとそこには何故か姉がいた。
美人で頭が良くて社交性抜群の姉は、外面はいいが、僕に対しては「傍若無人」だ。
え? 何で? どういうこと? 何が起こってるの?
「へえひゃん、はひひへんほ?(姉ちゃん、何してんの?)」
スイカにかぶりつけなかった理由がわかった。姉が僕の口を横に引っ張って遊んでいたのだ。
「もう少し目を覚まさなかったら、鼻を洗濯ばさみで摘もうと思ってたのに、残念」
姉はガハハと大口を開けて笑い、ベッドから降りた。
僕は口が伸びてしまったのではないかと思って確認した。どうやら無事のようだ。
「酷いな、もう。何なんだよ」
「愛する弟を美しい姉が起こしてあげたのさ。感謝しな」
僕に対しては乱暴な言葉遣い。彼に密告したいくらいだが、後の事を考えると恐ろしくて出来ない。
「早く朝飯食べちゃいなよ。遅刻だぞ」
姉は妙に可愛い声で言うと、部屋を出て行った。
僕の家族は母と姉。
父は僕が3歳の時に交通事故で死んでしまった。
母は悲しむ間もなく、仕事を探して働き始めた。
当時6歳の姉と僕は、その日から逞しく生きる事を運命づけられた。
姉は元々過激で暴力的だったが、それが30%増量された。
泣き虫だった僕は、たびたび姉に殴られた。
そんな姉でも嫌いにならなかったのは、姉が僕を守ってくれている事を知っていたからだ。
近所の悪ガキ、凶暴な犬、ずるい猫。
全部姉が退けてくれた。
「姉ちゃんは強い」
それが幼少の頃の僕の姉に対するイメージだった。
そしてそのイメージは今でも変わらない。
いや、進化した。
「姉ちゃんは更に強くなった」
最近はそう思う。
「何、武彦? 何か用?」
食事をしている姉を見ていたら、気づかれた。
「な、何でもないよ」
僕は慌てて視線を逸らせた。すると姉はニヤッとして、
「ダメよん、武彦。いくら姉ちゃんが美しくても、私達は姉弟なの。好きになってはダ〜メ」
「……」
僕は姉の途方もない返しに何も言わず、食事をした。
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