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高校二年編
その一
 僕の名前は磐神いわがみ武彦たけひこ。高校二年。自分ではごく平凡な男と思ってる。

 しかし、僕の人生は生まれた時から波乱万丈だった。



 僕は夢を見ていた。

 目の前には大好物のスイカ。

 舌なめずりしてかぶりつこうとした。

 んんん?

 何故か口が横に広がる。

 凄い力で引っ張られてる。

 スイカにかぶりつくことができないまま、僕は目を覚ました。



「おお、やっとお目覚めか、武彦」

 目を開けるとそこには何故か姉がいた。

 美人で頭が良くて社交性抜群の姉は、外面はいいが、僕に対しては「傍若無人」だ。

 え? 何で? どういうこと? 何が起こってるの?

「へえひゃん、はひひへんほ?(姉ちゃん、何してんの?)」

 スイカにかぶりつけなかった理由がわかった。姉が僕の口を横に引っ張って遊んでいたのだ。

「もう少し目を覚まさなかったら、鼻を洗濯ばさみで摘もうと思ってたのに、残念」

 姉はガハハと大口を開けて笑い、ベッドから降りた。

 僕は口が伸びてしまったのではないかと思って確認した。どうやら無事のようだ。

「酷いな、もう。何なんだよ」

「愛する弟を美しい姉が起こしてあげたのさ。感謝しな」

 僕に対しては乱暴な言葉遣い。彼に密告したいくらいだが、後の事を考えると恐ろしくて出来ない。

「早く朝飯食べちゃいなよ。遅刻だぞ」

 姉は妙に可愛い声で言うと、部屋を出て行った。



 僕の家族は母と姉。

 父は僕が3歳の時に交通事故で死んでしまった。

 母は悲しむ間もなく、仕事を探して働き始めた。

 当時6歳の姉と僕は、その日から逞しく生きる事を運命づけられた。



 姉は元々過激で暴力的だったが、それが30%増量された。

 泣き虫だった僕は、たびたび姉に殴られた。

 そんな姉でも嫌いにならなかったのは、姉が僕を守ってくれている事を知っていたからだ。

 近所の悪ガキ、凶暴な犬、ずるい猫。

 全部姉が退けてくれた。

「姉ちゃんは強い」

 それが幼少の頃の僕の姉に対するイメージだった。

 そしてそのイメージは今でも変わらない。

 いや、進化した。

「姉ちゃんは更に強くなった」

 最近はそう思う。



「何、武彦? 何か用?」

 食事をしている姉を見ていたら、気づかれた。

「な、何でもないよ」

 僕は慌てて視線を逸らせた。すると姉はニヤッとして、

「ダメよん、武彦。いくら姉ちゃんが美しくても、私達は姉弟きょうだいなの。好きになってはダ〜メ」

「……」

 僕は姉の途方もない返しに何も言わず、食事をした。
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