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自作小説の世界に召喚されたので俺は未完放置する(エタる)のをやめました! 作者:冬塚おんぜ

第三章 魔女達の在り方

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第五十六話 「次からふん縛って歩くッス」


「ヒャヒャヒャヒャヒャヒャ!!」

 やたらめったらに、様々な属性の魔術をぶっ放してくる宙吊り野郎。
 壁に穴を開けるなんてのは朝飯前らしい。
 コイツ、滅茶苦茶だ!

 既に何回か、進行方向の階段を崩されて転落しかけた。
 メイの身体能力も、封印のせいで俺より足が遅い。
 だから必死に、手を引いて走った。

「何か反撃の手立ては無いか!?」

「そんなこと言われたって!」

「すまん、ただの独り言だ!」

 と、ここで足場が途切れる。
 目の前で、螺旋階段が下まで一直線に崩されていたのだ。
 パラリという音と共に小石が落ちていく。
 遥か下へと落ちていった小石は、砕け散る様子すら見えない。
 流石にこの高さを転落したら即死だな。

 だが、詰んではいない。

「イーハァアアアア!」

 宙吊り野郎は鎖をジャラジャラと伸ばして、急降下していった。
 杖を構えていて、明らかに誰かを迎撃する体勢だった。

 ――ファルド。
 俺は即座に、あいつを思い浮かべた。
 こんなに早く来てくれるなんて!
 俺は遥か下のほうへ顔を出し、全力で叫ぶ。

「気を付けろ! そいつ、狙いは甘いが強いぞ!」

「シン! すぐ助ける! 待ってろ!」

 遥か下の、塔の入り口にみんながいた!
 ファルド、アンジェリカ、ルチア、ヴェルシェの四人が!

 もうすぐだ。
 こんなクソッタレな塔から、もうすぐ脱出できる。


 *  *  *


 だが、戦闘は長引いていた。
 大きく揺れながら動く宙吊り野郎に、アンジェリカは狙いを定められない。
 ルチアの放つホーミングした太矢も、宙吊り野郎の魔術で撃ち落とされてしまう。
 ファルドとヴェルシェは近接攻撃しかできないから、何もできない。

 駄目だ駄目だ!
 このままじゃ、ジリ貧になる!

「俺は待つ事しかできないのか……?」

 いや、冷静になれ。
 ホーミング・エンチャントって投擲にも使えるんだよな?
 だったらこういう使い方、やってみるか。

「ルチア!」

「はい!」

 よしよし、聞こえてる。

「俺の両手を標的に、ファルドの剣にホーミング・エンチャントだ!」

「……かけました!」

「ファルド! 俺に剣を貸してくれ!」

「こうか!」

 ファルドの投擲したロングソードを、両手でしっかりキャッチする。
 よしよし、ちょっとした賭けだったが上手く行ったぞ。

 柄のメダルは、フォボシア島の時ほどじゃないが青く光っている。
 原理についてあれこれ悩んでも仕方ない。後回しだ。

「ルチア! 次に、天井の鎖にターゲット変更!」

「はい!」

 これで準備は整った!
 後は実際に行動に移すだけだ。

 俺の攻撃が、どんな敵でも簡単に両断できるなら。
 あの鎖も敵の一部なら。
 やってみせる。

 ただ単純に鎖を断ち切るだけじゃ、手負いのまま暴れ出すかもしれない。
 だったら、致命的な高さから落下させたほうがいい。
 万一死ななかったとしても、落下ダメージが大きければ暫くは動きを封じられる!

「上手く上まで誘導できればいいんだが……メイ、何かいい案は無いか?」

「先にあたし達を狙ったほうがいいって、本能レベルで判断させるとか」

「難しい注文だが、ちょっと試してみるか」

 とはいえ、何をやったらいいかな。
 咄嗟のアドリブが上手く行かないのも、俺の悪い癖だ。

 思い出せ、俺。
 シナリオ作りは、いつだってアドリブだっただろ。
 登場人物がやらなさそうな行動をリストアップして、それ以外の選択肢から選んでいくのがいい。

 この場合、宙吊り野郎がやらなさそうなのは……。
 逆さ吊りになってるんだから、地面は移動しないよな?

「みんな、塔から出ろ!」

「どういう意味だよ、シン!?」

「俺を信じろ!」

 ファルドはしばらく俺を見上げた。
 それから意を決したのか、みんなを連れて出て行く。

 待つこと数分。
 塔の入り口を見つめていた宙吊り野郎が、やっと鎖を巻き上げて登ってきた。

「イヒーイヒヒヒヒヒヒ!!」

 笑ってられるのも、今のうちだ。

「ずぇえりゃあ!」

 勢い良く放り投げた剣は、鎖を容易く切り裂いた。
 哀れ、宙吊り野郎は真っ逆さまに転落していく。

「ヒャアアアアアアアア!!」

 瓜が潰れたような音が、下から響いた。
 少し間を置いて、カランという金属音も。

 これが本当の、上げて落とす展開(物理)。

 下はスプラッタだな、こりゃ……。
 ルチア、すまん。


 *  *  *


 ヴェルシェが根気よくロープを張ってくれたお陰で、俺とメイは無事に戻ることができた。

「良かった、無事で良かった……!」
「アンタもう、私達から離れるの禁止ね!」
「そうですよ! 誰かを助けるためにシンさん自身が犠牲になったら意味がないんですからっ!」
「次からふん縛って歩くッス」

 みんなが口々に語り掛けながら、背中バシィやらボディタッチやら乱暴に撫でたりをしてくれる。
 もみくちゃにされながらも、俺は嬉しい気持ちで一杯だった。

「いい仲間達だね」

「何言ってんだ。お前も来るんだよ、一緒に!」

「やはり、そちらのお方とはお知り合いだったのですね。兄から話は伺っております。
 はじめまして、私はルチア・ドレッタ。ルチアと呼んで下さい」

 あれ。何か積極的じゃないか。
 キリオ(シスコン赤もやしと呼ぶのはちょっとな)に何を吹き込まれたんだ?

「あたしを知ってるみたいだけど、どこかで?」

「ええ、城下町でシンさんと何かをお話されていたのを」

「あはは……まあ、ちょっとね。はじめまして。メイ・レッドベルです。
 金髪の君がファルド君で、隣の魔法使いの女の子はアンジェリカちゃんだね?」

「ど、どーも」

「ご無沙汰してまーす……」

 いやご無沙汰って。
 確かにご無沙汰かもだけど、ちょっと違うだろ。

「エルフの子は……初対面だね」

「自分、ヴェルシェ・ロイメっていうッス! 罠が得意な、元フリーの冒険者ッス!
 今は勇者様のパーティにお邪魔して、その輝かしい栄光のグロリアス・ロードを歩んでいるッス!」

「……強烈だろ?」

「あ、あはは。そうだね」

「いつもこんな感じなんだよ、コイツ。黙ってれば頼りになる美人さんなのにな」

 なんて言ったら、ヴェルシェが両手の人差し指を頭上で立てながら抗議してきた。
 何そのモーション? 激おこぷんぷん丸って言いたいの?

「月も恥じらう乙女に何たる言い草ッスか!」

「それを言うなら花も恥じらう、ね? アンタもいい加減、覚えなさいよ」

「そうとも言うッス!」

 お前はどこのフリーダムスケベ五歳児だ。
 ケツだけ星人でもやってろ!

 ……全く、助かった余韻が台無しじゃねーか。
 笑っちまう。


 などと見ていると俺の右頬に、何か湿った柔らかい感触がした。
 驚いてそっちを見ると、メイだった。

「その、助けてくれたお礼に……ね?」

 と言いながら、メイは明後日の方向を見た。
 微妙に頬を赤らめている。

「だ、大胆です……!」

 ルチアが両手で顔を覆いながら震えるという反応を見せて、俺は我に返った。

「――フォカヌポォッ!?」

 思わず俺は、変な声が出て来た。
 だって初めてですぞ!?
 頬にキ、キ……キスとか!

 そんなの、キョドるに決まってるだろ!
 しかも公衆の面前でとかマジ大胆すぎですぞ!
 ここはフランスのラブロマンス映画じゃないんですぞ!

「き、キスくらいで何よ大袈裟な」

「アンジェリカさんは私としましたからね……とびきり濃厚なのを。初めてだったのに!」

 などとルチアは嘘泣きをする。
 顔がにやけているからバレバレだ。

「ううううっさい! ルチアの馬鹿っ!」

 濃厚なのっていうのは、確かボラーロでの時だな。
 あの時は色々立て込んでて、心がぴょんぴょんするどころじゃなかったな……。

 ――いやそんな事より、たった一晩で駆け付けるとか早すぎだろ!
 結果的に、ありがたかったけど!
 二人で脱出しようとしていたし!

 すごい!
 御都合主義って、本当にあったんだ!

 ……今は皮肉も何も無しで、喜ばしいがな。
 実際、助かったワケだし。


 *  *  *


 なぜファルド達が一日で助けに来る事ができたのか。
 その疑問は、磔刑の塔から少し歩いたところで氷解した。

「こいつで急いで来てくれたのか……」

 まさか飛竜で現場へ急行とはな。
 モードマンが言ってたのって、こいつの事だったのかな。
 そして飛竜と一言に言っても、黒船の艦載機みたいな二人乗りサイズじゃない。

 とにかくでかい。
 背中に、六人乗りの馬車みたいなのを背負える程のサイズだ。
 某ハンティングゲームで言えば金冠サイズだな。

 背負ってたらどうやって飛ぶかって、両手が翼手になってるから大丈夫なのだ。

 何より、その重量をものともせずに泰然と二本足で佇むその姿。
 くすんだオリーブグリーンの傷だらけの鱗は、色合いこそ地味だが歴戦の猛者である事を主張している。
 さながら、ドラゴン戦車チャリオットだな。
 すごいぞー! かっこいいぞー!

 しかも馬車の内部はシートベルト付きという豪華仕様だ。
 安全で快適な空の旅を約束してくれる。
 すごいな。
 馬鹿にならない金額だったろうに、よくこんな大物を手配してくれたもんだ。

「なんか、色々とごめんな」

「謝るなって。俺がシンだったら、きっと同じ事をしてたよ」

「そしてとっ捕まって私達に助けられると」

「や、やめろよ、アンジェリカ!」

「ほんっとアンタもシンも、突っ走ってばかりなんだから。
 まあ、私だって大切な誰かが捕まってたら、迷わず助けに行ったけどね」

 みんな、ありがとう。
 俺、これからも頑張るよ。


 獄鉄竜の鱗
 帝国が品種改良を重ねた、対地攻撃に特化した飛竜の、その鱗。
 獄鉄とは帝国に古くから伝わる、
 昔話に出て来る貴金属であり、暗緑色の光を僅かに纏っているという。

 結局は巨体ゆえに飼育費用が嵩み、帝国は通常種の飛竜を生産する方針へと転換した。
 大多数は激戦地へと送られ事実上の殺処分となったか、あるいは戦乱の最中に主を失い野生化したが、
 ごく少数は今でも生き延びている。

 そのうちの一匹は、とある男にとって、苦楽を共にした相棒でもある。
ふつつか者ですが、ランキング登録しておりますのでよろしくお願い申し上げる次第です。
小説家になろう 勝手にランキング
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