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自作小説の世界に召喚されたので俺は未完放置する(エタる)のをやめました! 作者:冬塚おんぜ

第三章 魔女達の在り方

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第五十話 「その話、乗った!」


 早速俺はファルド達に計画の内容を打ち明け、実行に移す事にした。
 今回、俺はキリオと二人で移動する。
 道中で魔物の襲撃があった場合は、キリオが何とかしてくれるらしい。

 ていうか、キリオは戦えるのか……。
 いや冷静に考えたら、ルチアのストーカーをするくらいなんだから、それくらいワケないか。


 そして俺とキリオは、ミランダを娼館に送り届けた。
 道中で遭遇した魔物は雑魚ばかり。
 いつものゴブリンと、野良ヘルハウンドと野良オオトカゲだ。
 キリオがだいたい片付けてくれた。

 またキリオは、自身が使っている武器――魔旋盤ディスクについて教えてくれた。
 これは大陸大戦時代に試作された触媒の一つで、空中に浮かせて魔術を放ったり、盾として使えたりする。
 モードマンの研究の一つだ。
 こいつは障害物越しに曲射じみた魔術攻撃が出来るというのが、大きな利点になる。

 これに関しては原作でも出番がある。
 だが俺が設定したスペック以上に、キリオはこれを上手く扱ってくれた。

「鮮やかな戦いぶり、感服する限りです」

「お褒めにあずかり、光栄でございます。
 是非、湾岸警備隊の皆様にもお伝え願います。この魔旋盤の性能を!」

 という会話が印象深かった。
 口説かず宣伝に徹する辺り、キリオは根っからの商売人だな。

 もちろん他にも色々と話をした。
 BGMとして、ミランダの歌をパソコンで再生しながら。

 特に、もしかしたらこれを応用して、歌声を再生する装置が作れるかもしれないという話をした時の事だ。

「実現の暁には、私の歌を最初に使って下さい」

 と語ったミランダの目は、真剣そのものだった。

 きっと実現できるさ。
 モードマンの科学力は世界一なんだから。
 スイッチ一つで温める手帳サイズの暖房に、両足の疲れを軽減する中敷き。
 自動で動くトロッコに、飛行船まで作ったモードマンだ。


 *  *  *


 娼館の立ち並ぶ大人ロードから住宅街へと移動した俺達は、このボラーロで唯一の画家である、とある男の家へと向かった。
 というより、例の集合住宅の一室にそいつは住んでた。
 表札はちょっと洒落たデザインで、いかにもって感じがする。
 いや俺のセンスだから、この表札が一般的に見てどのレベルなのかはちょっと解らないが。


 部屋をノックするなり、寝癖だらけの男が目を擦りながら出て来る。
 あの、もうお昼なんですが……。

「え、なんですか、おたく等。営業許可なら、領主様から取ってるんですけど」

「そういう事ではございません。お仕事の依頼をしたいのです」

「はあ……」

 この返事である。
 やる気が一切感じられない。
 部屋も画材が散らかり放題だ。
 開け放した窓から潮風が入り込んで、キャンバスがゴトリと倒れた。

「ちなみに、絵は主にどんなものを?」

「なんで言わなきゃならないんですか」

「内容によって、こちらから提示するプランを変更するかもしれません。何、悪い話ではありませんよ」

「胡散臭いな」

 気が合うじゃん、この画家さん。
 俺もそう思うよ……。

「では失礼」

「あ、ちょっと! アンタ何を勝手に!」

 キリオは訝しむ画家を押し退けて、部屋の奥へと入り込む。
 そして、倒れたキャンバスを元の場所に戻そうとして、そのまま固まった。

「おや。これは……」

 画家が、ものすごく苦々しい顔をする。
 悔しさとか、怒りとか、そういったものが渦巻いているようだ。
 しかしキリオはそんな画家などお構いなしだった。

「ネロ・オストゥテル作の“やぐらの街”ですね。良い趣味です。
 確かこの絵は3万ガレットはする筈ですが、どうしてそれが描きかけで、ここに?」

「ああくそ! だから嫌なんだ! 素人共が!」

 画家はキリオからキャンバスを引ったくり、それから少し黙り込んだ。
 やがて、ぽつりぽつりと、語り始める。

「……本物じゃあ高くて、手が出せないって、落ちぶれた貴族達がそれでも箔を付けたいからって、俺の所に依頼しやがるんだ」

「つまり、贋作と」

「皆まで言うな。俺だって本当は……だが、無理だ。無理なんだ」

 苦労してるんだな……。
 おおかたオリジナルをやっても売れないとか、そういう事情なんだろう。
 単刀直入に切り込むのは心が痛むが、前に進むためだ……訊いてみるか。

「本当は、自分のセンスで勝負したいんですよね?」

「まあ、な」

 画家は、渋面のまま頷く。
 やっぱりか……ミランダといい、この画家といい、世間の辛さを体現したような人達だ。
 自分のやりたい分野が評価されず、やむを得ずやっている事だけが評価される。

 それって正直、辛い事だと思う。
 俺は後者については経験が無い。
 だが前者については、たっぷり泣きを見た。

「今更、新しい何かを生み出すなんざ、俺には無理だね。精密に再現しろってのなら、すっかりお手の物になっちまったが」

「ならその経験を活かして、イカしたビジネスをしてみませんか?
 大丈夫。新しい何かを生み出す仕事です」

「……どういう事だ?」

「まず、美術一般に関しての知識には自信はありますよね?」

 画家は表情をよりいっそう険しくさせる。

「馬鹿にしてんのか。俺だって芸術家の端くれだよ。クソみたいな商売しかできないが。
 何だったら大陸各国の美術品の成り立ちについて国別に解説してやってもいい。
 どの国の絵画が、どういう色を好んでいるとか、そういうのを三日間みっちり講釈垂れてやってもいいんだぞ! ええ!」

「まあまあまあ! 一応、確認してみただけですって! それだけの知識があれば、こちらも安心できます!」

「ケッ。口の利き方に気を付けろってんだ」

 ……危ない危ない。どうにか矛を収めてくれたか。
 この人と敵対関係になるのは、非常に不本意だ。
 だがこれで、次の質問での効果測定がしやすい。

「それでですね。この国には、絵の付いた抱き枕ってあります?」

「だき、まくら……何だ、それは? しかもそれに絵が付いている? 意味が解らない」

 よっしゃ!
 美術に詳しいながらも抱き枕を知らない……つまり!
 キャラクター抱き枕は開拓されていないジャンルって事だ! 多分。

 さあ、ここからは俺のアイディアの面目躍如だ!
 美少女抱き枕……俺の元居た世界では、特に俺達の界隈では割と有名なグッズだ。
 こっちの世界に置き換えれば、有名な美女の抱き枕を作らせればいいのだ。

「文字通り、抱くような形の枕です。大きさは大体、女の人の一般的な身長くらいで」

「何となく読めてきたぞ……それで、俺にどうしろって?」

「高級娼婦のミランダって居るでしょう」

「――!」

 ガタッと贋作職人が立ち上がる。俺はすかさず次へと繋げた。

「彼女に許可を取り、彼女の肖像画を印刷なり直接描き込むなりした抱き枕を、売ってみてはどうかなと」

「そんな事が、可能なのか?」

「娼婦は一夜に一人の男しか相手取る事が出来ない。
 ですが彼女を欲しがる男は多く、彼女は何らかの理由で金が欲しい。
 そして彼女は、本当は歌いたい。その為には時間が必要だ。
 ……それらを同時に叶える、たった一つの冴えたやり方が、抱き枕なんです」

「その話、乗った!」

「娼館へお連れします。幸い、彼女の所属する娼館はドレッタ商会との繋がりも深い」

 これも、キリオやミランダと事前に打ち合わせをした通りだ。
 実はこの件について、ミランダは快く了承してくれた。
 多分、蓄音機(仮)の話を振ったからだと思う。
 あとは画家と直接打ち合わせをするというのが、ミランダの出した条件だ。

「準備するから、廊下で待っててくれ」

「わかりました」

 そしてこの条件もクリア。
 集合住宅の廊下に出た俺は、キリオとハイタッチをした。

「キリオさん、上手く行きましたね!」

「ええ、完璧です!」

 ま、人としてどうなのかって思わなくも無いがな。
 連合騎士団のテオドラグナ辺りが聞いたら絶対、苦い顔をするに違いない。
 だが三大欲求の二つを同時に満たす事が出来るなら、こんなに素敵なやり方もねーだろ。
 抱き枕業界、万々歳だな。

 それにしても、ドレッタ商会はどんだけあちこちに手を付けてんだよ。
 よくエタらないよな。
 見習いたいよ、そのマルチタスクっぷり。


 *  *  *


 娼館のオーナーも交えた、ミランダ、画家、キリオ、俺のミーティングは無事に終了した。
 結論としては大成功だ。

 魔王軍襲来によってよりいっそう先行きの見えなくなった人生の中で、一つや二つの夢や妄想は持つべきだと。
 オーナーはそう言って太鼓判を押してくれた。
 まあぶっちゃけ、ドレッタ商会というネームバリューとか、俺が勇者一行の一員であるって事が効いたんだろうが。
 これが俺一人だったら、こう上手くは運ぶまい。
 悔しいが、ドレッタ商会サマサマの勇者万々歳だな。

 ……大手サークルに寄生する無名作家とかいう単語が脳裏をちらついたが、無視したい。



 慟哭する肖像画
 灰の降り注ぐ廃墟で慟哭する男が描かれた肖像画。
 描かれた男の悲痛な表情は、何を意味しているのか。
 これを描いた画家は遠い昔に自ら命を絶ったという。
 その伝承が事実であるならば、彼は自らの絶望を世に知らしめるべく、この肖像画を描いたのだろうか。


 朽ちた画材
 長い年月の果てに朽ち果ててしまった画材。
 慟哭する肖像画の近くに置かれていた事から、その作者の所有物であったと窺える。
ふつつか者ですが、ランキング登録しておりますのでよろしくお願い申し上げる次第です。
小説家になろう 勝手にランキング
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