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自作小説の世界に召喚されたので俺は未完放置する(エタる)のをやめました! 作者:冬塚おんぜ

第二章 新たなる創造

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第三十一話 「だからお礼を言われても調子狂うんだってば!」



 翌日。
 グリーナ村を出発する前に、共有財産で生活必需品とかの類いを買い漁った。
 それから、各々が自分の小遣いで買い物をする。
 どの店も、俺達が井戸潜み達を退けたという事で、格安で売ってくれた。

「役場の幹部連中は魔女の墓場を懇意にしているが、俺は奴等を好かん。
 奴等と来たら、ずかずかと入り込んでは文句ばかり垂れたからな」

「墓場ぁ? 荷さばきが遅いだの何だのと、こっちは慎重にやらなきゃならないのに、随分な言い草だったぜ。テメーで墓に入っとけと――あ、これ内緒だぞ」

 と、中にはこのような事を言う人達も居た。
 なるほど、グリーナ村も一枚岩じゃないみたいだな。


 馬車の発着場に到着すると、リーファが御者と雑談をしていた。
 休憩中だろうか。サボってたりしてな。
 リーファは俺達に気付くと、昨日と同じように手を振った。
 思えば、錆の騎士とか倉庫とか丸太とか、俺達に色々と手伝ってくれたんだよな。

「先日は、ありがとうございました」

 俺は深々と頭を下げる。
 彼女が動いてくれなかったら、俺達のうち一人くらいは三枚に下ろされてたかもだしな。

「硬いなあ君は! 礼を言うのは、おれ等のほうだよ! サンキューな!」

 と言って、リーファはワッハッハと笑った。
 陽気なのは助かるな。

「で? おたく等、もう行っちまうの? もう少しゆっくりしてきゃいいのにサ」

「そうも行かないんだ。魔王軍はあちこちに居るから」

「そっか。じゃ! 頑張りなよ。それと、おれも来週から城下町まで行商する事にしたんだ」

「そうなんだ?」

 なるほど、御者と話をしていたのはサボってたんじゃなくて、その相談か。

「ウチの村の行商担当が引き抜かれちまってさ。えーっと、何だっけ。
 アレだよアレ。裁縫針から攻城兵器までって触れ込みの……」

 リーファは名前を思い出せずに言い淀む。
 するとルチアが、ふと思い出したような顔をした。

「ドレッタ商会、ですか」

「そうそう、それだよ! かぁーっ! ただでさえ働き手が減ってきてるのに、もーう!」

「お気の毒様です……」

 ルチアは、それが自分の身内であるという事までは言わなかった。
 言えば色々とこじれるしな。その気持ちはよく解る。

「まあおれも? これで晴れて城下町デビューするし? まあ別にいいんだけどね!?
 おれの旦那も邪教にお熱でしょっぴかれちまったし。村のみんなは、おれに同情して庇ってくれたけどさ」

 バツイチだったんかーい!

「あー、でも……ウチのおチビちゃんどこに預けようかな。なあ、いい託児所知らない?」

 しかも子持ちかーい!
 ……苦労してるんだな、この脳天気お姉さんも。

「この村じゃどうも不安でさ。昨日のあの感じ。見ただろ? 碌でもない責任の押し付け合い」

「だったら、丸太持ってた人達じゃ駄目なんですかね?」

「そいつらみんな、子育ての経験が無いんだよ。おっぱいも出ないし」

 リーファもぶっちゃけ同じような……いや、それは置いておこう。
 この村じゃ粉ミルクとかも無いだろうしなあ。
 ふと俺はファルドのほうを見たら、まさにこれから名案(笑)を言おうとしている様子だった。
 いや、あそこは駄目だって。

「だったら、いいところ知ってるぜ」

「おいファルド、お前まさか雪の翼亭とか言わないだろうな?」

「え……駄目?」

 ほらやっぱりなー!
 そしてお前はあの場所を勧めるつもりだろうが、それは駄目だ。

「そりゃ駄目でしょ。あそこが何処と提携しようとしてるか知ってるだろ?」

「あッ……」

 やっと察したか。この愚か者メガ。
 たとえ島流し同然で出向させられた子会社といっても、ドレッタ商会直系だ。
 リーファはドレッタ商会にあまりいいイメージが無いだろうから、オススメしないほうが良かったのに。

「雪の翼亭だね。おれ覚えたー! そこ当たってみるよ! じゃ、仕事戻ッから! またなー!」

「あ、リーファさん、だからそこは――!」

 俺が言い終える前にリーファは去って行った。
 そそっかしいお姉さんだな、まったく。
 まあ最後まで聞かなかったし、何かあったら自己責任って事で片付けよう。

「あいつ、昔からああなんだよ……」

 などと苦笑している御者に、アンジェリカが歩み寄って、話を付ける。
 御者は威勢のいい声で「任せとけ! サービスしちゃる!」と言った。


 こうして俺達は、南西の港町ボラーロへと出発したのだ。
 グリーナ村から行くとしたら、交易路とかの関係でフェルノイエを経由した方がいいと言われた。
 アンジェリカがあからさまに嫌そうな顔をしたが、ファルドにたしなめられていた。
 俺はと言えば、ある一つの疑問がずっと前から頭の中から離れず、悩ましく思っていた。

「そういや馬車ばっかり使ってるならいっそ買えばいいのに、なんで発着場の往復馬車ばっかりなんだ?」

「馬車じゃ通れない所とかもあるし、乗せて貰ったほうが安上がりなのよ。
 買うと高いし、維持費も嵩むし。それに、往復馬車で使えるクーポンあるから」

「クーポン」

「雑誌の付録とかに付いてるのよ」

「雑誌の付録」

「で、雑誌は古本屋に売るの。同じ雑誌をセットで売るとちょっと高く買い取ってくれるわ」

「すごいダス! 浮いたお金でたくさんの本が買えるダス!」

「ダス……?」

 まさか異世界でクーポンとか雑誌の付録とか、そういう単語を耳にするとは夢にも思わなかった。
 新聞といい、この世界での印刷技術はどうなってやがんだ!
 大抵の後付け設定にはもう驚かないと思ってたのにな。してやられた。
 しかし、ここまで徹底してると逆に感心するな。
 何がって、アンジェリカの主婦力だ。
 この分だと健康グッズとか色々集めてたりしてるんじゃないか?


 パソコンを開き、テキストファイルにメモを取っておく。
 それにしても、随分と書き溜めたな。
 印刷すればA4一枚分くらいにはなるか?
 そろそろカテゴリー別でしっかり整理した方がいいかもな。
 ちなみにバッテリーはやっぱり健在だった。
 予言は参考程度に留めておく程度になったとはいえ、他にも色々出来る事は沢山ある。
 今の俺には、それを精一杯利用する事しか選択肢が残されていない。

「変わった道具ッスね」

 おもむろに、ヴェルシェが話し掛けてくる。
 そういやコイツにはまともにパソコンを見せてなかったんだっけ。

「これはつがいの石版と言ってな。選ばれた者だけが扱える、叡智の結晶だ」

「ほへぇー! すごいッス! 何だか知らないッスけど、それを扱える人なら誰でも賢者って事ッスね!」

「でもシンしか使えないのよ。私達には何が書いてあるのかサッパリ」

「そういう事だ。むしろ俺の存在価値なんてこの石版しか無いからな!」

「何を言い出すかと思えば、この藪蛇石版男は。存在価値なんて自分で作るくらいの努力はしなさいよ」

「ありがとな」

「だから! 調子狂うのよ、お礼を言われても!」


 *  *  *


「到着だよ。みんな、俺達の村を守ってくれて、ありがとうな。またな!」

 俺達は御者に別れを告げ、フェルノイエへと向かった。
 フェルノイエは、村というより、ちょっとした町だな。
 煉瓦造りの建物が幾つもある。
 街道も石畳で舗装されてるし、割と小洒落た雰囲気だ。
 元の世界で言えば、首都圏からちょっと離れた住宅街といった感じか。
 町の中心を、南北に分断する大きな川が流れている。
 俺達はその北側にいて、南側は商店街が立ち並んでいる。

 原作の記述通りならば、フェルノイエから南東に行くとエスノキーク魔法学校がある。
 そして、南西に行くと港町ボラーロだ。

 ファルドが魔法学校に体験入学する没シナリオもあったんだよな。
 学園編も書きたい。そう思っていた時期が俺にもありました……。
 今はもう、セリフだけ書いたテキストファイルしか残されていない。
 なんでこれだけテキストかって、多分エタる直前にふと思い付いたんだろう。
 あるあるすぎて涙が出て来る。

 さて、入り口は商店街のアーチよろしく “フェルノイエへようこそ”と書かれていた。
 勇者の故郷だし、盛大に歓迎してくれるといいんだが。


ふつつか者ですが、ランキング登録しておりますのでよろしくお願い申し上げる次第です。
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