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自作小説の世界に召喚されたので俺は未完放置する(エタる)のをやめました! 作者:冬塚おんぜ

第五章 魔王は誰の手に

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第百十六話 「俺と同じには、ならなかったか」


「まだ、始まってないな……」

 物陰から隠れて見ている限りでは、このビレスデアの街は平穏そのものだ。
 行き交う人々の表情からは、緊張した様子は見受けられない。
 とは思うんだが、嵐の前の静けさっていうのもあるだろうからな。

 あ、ちなみに今回もメイは往復した。
 ドーラを連れてきたのだ。

 オフィーリアを置いてきていいのか疑問ではあるが、結界が無いから防衛要員は一人でも多いほうがいいだろう。
 レジーナもいるし、ヒルダも戦えないワケじゃあないだろうしな。

「少し、移動しよう。ここだけじゃ、解らないよ」

「そうね」

 ファルドの提案に頷き、俺達は移動する。
 街の中心部まで行ってみないと。


 それにしても、ドーラは大丈夫か?
 ドーラが言うには、親はドーラの罪の責任を問われて処刑されたかもしれない。
 そんな場所へやってくるんだ。
 ドーラの心中は穏やかではないだろうし、見つかればただじゃ済まされない。

「カージュワック家の邸宅も、確認しに行きますか?」

「貴公等をこれ以上の危険に晒すのは、父も本意ではないだろう」

「会ったこと無いんですが」

「父は、そういう性格だ。仮に私が墓参りしなかったとて、恨みはするまいよ」

「待って下さいよ。まだ、死んだとは限らないじゃない」

「……期待はしない」

 あー、駄目だこの辛気臭い空気。
 早く何とかしないと!

 隙を見て確認できれば一番なんだが……!
 頼む、ドーラのお父さん、生きててくれよ!
 これ以上、無駄な犠牲は沢山なんだ!

「――と、ちょっとタンマ」

 俺は見つけた。
 見覚えのある奴を。

 かなり遠くのほうだな。
 レイレオスと、もう一人のエルフは……あのエルフのショタっ子は誰だ。
 俺は目を凝らして、二人の唇の動きを観察する。


「――半分は取り逃がしたんだね。まあいいんじゃない? 上々の結果だ」

「次は、どこだ」

「まあそう焦らないでよ。魔物も討伐しなきゃいけない。ボク達の敵は多いって事、知ってるでしょ?
 クロムウェルはしくじっちゃったし、エリーザベトは遠征中だ」

「……来る前に決めておけ」

「指図するな! ボクは枢機卿なんだぞ!」

 枢機卿……他の三人は見たから、じゃあコイツがアイザックか。
 すぐに補填できる人材でもないし、殆ど確定でいいな。

「だから、どうした」

「キミは本当に……聖女ルチアの件だってそうだ! 彼女はこの国の王様と結婚するんだぞ。
 それを知りながら、暴力を振るった! ボク達が必死に取り繕わなきゃ、どうなってたと思う?」

 暴力、だと……。
 てめえら、いい加減にしやがれよ。

「暗愚の死骸が二つに増えるだけだ」

「そういう問題じゃない! ボク達が公に行動できる理由作りには、ルチアが必要なんだよ!
 まあ、あの気持ち悪い趣味に関しては悪影響がありそうだから、早急に矯正しないとだけどね?」

「興味が無い。残り半分はどこに逃げた」

「追わせてるよ。大丈夫だって、ちゃんと追い詰めて確実に殺せる状況にするんだから! 順序! 大事だよ、順序!」

 くっそ!
 あーもう、くそったれ!
 どこまでも上から目線で、人の命や生活を何とも思っていない物言い!
 ほんっとにイライラするぞ!

 しかも残り半分?
 って事は……半分は既に殺されてたって事じゃないか!
 手遅れだったのかよ、俺達は!

「ちぃーっす! レイレオスさん! 俺ら、見回り終わりましたよ!」

「ちょッ!? なんであいつら……」

 ユヴォルなんちゃらと不愉快な仲間達は、事もあろうにノーヘルで灰色装束を着ていた。
 アレか……不良だからワルとして泊を付けたいとかそういう理由か。

「しっかし、なんでこっちなんでしょうねェ。アンジェリカの亡霊とケリを付けたかったぜ」

「しょうがないでしょう。魔女は数を減らせばそれだけ弱体化しますから。だったら、ここで一気に減らしたほうがいい」

「あぁ? どういう原理だよ? それ」

「魔女の総数がそのまま、魔女達のそれぞれの強さに一定の割合で上乗せされるんですよ」

「へぇ~……よくわかんねえけど、まあいいや。とりあえず殺せばいいんだな?」

「……」

「あ、ひ、いや! 流石に大物はレイレオスさんにお譲りしますって!
 その、尊敬してるんで! 俺達は雑魚だけで充分ですって! マジで! へへ!」

 クソ野郎共!
 俺の堪忍袋はもう、爆発寸前だ!

 だが、ここで飛び出せば間違いなく十字砲火で蜂の巣だ。
 何よりビレスデアの人達に迷惑がかかる。

 だからこらえろ。
 我慢しろ。
 特にファルド!
 お前は仲間を侮辱されると後先考えず突っ込んでいくから――あれ?

「ファルド? どこいった?」

「あのさ、嫌な予感がするのよね」

「あたしも……」

「まさかとは思うが、ファルド殿は……」

 おずおずとドーラが指差したその先には。
 いたぞ!
 今まさに、アイザックに斬りかかろうとしている!

「皆殺しにしてやるッ!!」

 マズい、またダークサイドに堕ちてる……!
 あのモードになると、とにかく話を聞かなくなるんだよな。

「気配を、隠していた!? レイレオス! ボクを守れ!」

 言い終える前に、レイレオスはファルドの剣を受け止めていた。
 鍔迫り合いからは、火花が飛び散る。
 そしてアイザックは、何度もつんのめりそうになりながら逃げていく。

 正直、ブチ切れたファルドの太刀筋は滅茶苦茶だ。
 それでありながら、黒いオーラみたいなものを追尾させているから読みづらい。
 そこにアンジェリカの魔術も加わった。
 だがレイレオスは全てのオーラを、最低限の動きで弾き飛ばしていく。
 全身に目が付いているんじゃないかってレベルだ。

 ファルドが振り下ろした剣を、レイレオスが押し返す。
 あらぬ方向に向かったファルドの剣は、壁に激突。
 壁はみるみるうちにヒビが広がっていき、レイレオスが横薙ぎにした大剣がそれを完全に崩した。


 重低音が鳴り響く剣戟は、たちまち周囲を破壊していった。
 その音に誘われて、灰色連中が集まる。
 結局、こういう流れになっちまうのか……。

「レイレオスと言うのか。おそらく、ヴァン・タラーナの邸宅を破壊したのは彼奴だ」

「マジですか……」

 何かと顔が広いな。

「私も加勢する。援護を頼む」

「……わかったわ」

「あたしが撹乱するね! じゃ、お先に!」

 メイはそう言って、敵の中心に瞬間移動していった。
 例の「ばぁん!」を使って蹴散らしている。
 殺傷能力は無い……よな?

「ファルド。亡霊に頼るとは未練がましい」

「勝手に殺すな! アンジェリカは生きている! もう二度と失わない!」

 ――ガッデム馬鹿野郎!
 なんで、そこで正直に言っちまうんですかねえ!
 バレなきゃ狙われないだろうに!

「生きている……!?」
「そんな馬鹿な! 手筈は完璧だった筈だ!」
「本部に報告しないと!」

 周囲が騒がしくなっていく。
 灰色連中の攻撃も、すっかり勢いを失っていた。

 不良共もうろたえている。
 約一名、安堵してる奴がいるがな。
 いやお前、どの面下げて胸を撫で下ろしてるんだ。
 お前だよ、ユヴォル・マレッキ!

 レイレオスは首を振った。

「俺と同じには、ならなかったか」

「なるわけ、ないだろ」

「ならもう一度ここで処刑してやる。いるんだろ」

 ファルドから離れてアンジェリカを探そうとするレイレオス。
 俺はすぐに、道を塞いでやろうと思った。
 メイも同じ事を考えたらしく、俺とメイの二人でレイレオスの前に立ちはだかった。

「どこへ行こうと言うのかね!」

「創造主、お前は最後に殺す」

「え……」

 俺はいとも簡単に放り投げられ、民家の塀に背中を打った。
 くっそ痛い。

 ――それよりも気になる事があるじゃないか!
 今こいつ、創造主って言わなかったか!?
 仕込むとしたらヴェルシェくらいしかいない……あのクソエルフ!


「――伝令! 逃げ延びた魔女はメルツホルン線へと集合している模様! 帝国軍と合流すると推測されます!」

「まずはそっちから片付けるか」

「待て、レイレオス!」

「邪魔をするなら、殺す」

「望むところだ! 掛かって来い、死ぬのはお前だ!」

 殺伐としすぎだろうが!
 もうこれずっと前から何度も言ってるが、俺達の敵は魔王軍だろ!
 何回言わせりゃ気が済むんだ、マジで!

「お前らマジでいい加減に――」

「――おやめなさい!」

 そう、それ!
 さっすが、ルチア!
 まさしく、それが言いたかったの!
 だができれば、最後まで俺に言わせてくれると非常にありがたいんだが!

 ……って、え?

 ルチア?

「国王からの勅命です。直ちに戦闘を中止しなさい」

 ルチアだ!
 服装は前と違って、灰色地に金色のアラベスク模様の法衣を着ている。
 長い黒髪は頭の後ろで纏めているし、表情は見違えたように険しい。
 目は据わってるし、クマもできているが……間違いなくルチアだ。


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