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自作小説の世界に召喚されたので俺は未完放置する(エタる)のをやめました! 作者:冬塚おんぜ

第五章 魔王は誰の手に

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第百十五話 「人の限界など、知れたものだ」


 今度は何が始まったのかって話だよ!
 落ち着け、信吾。

 方角、大きさからして飛行船が墜落したのは間違いない。
 本当に墜落か?

 いや、違う!
 あの大きさで墜落したら、天井は崩落する!
 かといって、それより小さい質量がぶつかったとしても、あれほどの揺れは無い!

 だったら答えは……一つ!

「――あいつら、着陸した!」

 俺の一言に、周囲がにわかに色めきだった。
 この場合、どうすりゃいい?
 地上に出るには、瓦礫と化した灯台の地上部分へと登らなきゃいけない。
 だが、瓦礫をどかさない事には出られない。

 ……早速、カグナ・ジャタの出番だな。
 ちょっと頼むのは気が引けるが、仕方ない。

「先手必勝! 潰――うおわッ!?」

 目の前で岩盤が、ドカッと崩れてきた。
 焚き火は一瞬にして消え、代わりに丸く切り取られた青空がまるで月のように浮かんでいる。

 ――違う!
 岩盤を“斬った”んだ!

 土煙が晴れると、前後に長い形で兜をすっぽりと覆った騎士が立っている。
 鎧はグラカゾネクと同じような意匠でありつつ、ところどころにフサフサの毛が付けられ、高級感がある。
 腰には大きな太刀。

「……民を襲わせぬというアリウスの誓いは無駄になったか」

 兜でくぐもった、低い声。
 落ち着き払ったセリフ。
 それに、こんな芸当が出来る奴は、俺が知る限りでは一人だけだ。

「ドゥーナーク!」

「お前が、石版の預言者か」

「ああ。誰かから聞いたか!」

「カグナ・ジャタを連れ戻しに来た」

 ドゥーナークは、俺の問いかけを無視した。
 ただ棒立ちしているだけの筈なのに、全く隙を感じさせない……。
 魔王の側近だからこそ成し得る風格だとでもいうのか。

「我を連れ戻すだと? 血迷ったか」

「我が方は兵が不足している。戻れ、カグナ・ジャタ。人間には絶望したのだろう」

「……」

「戻っちゃ駄目だ!」

 黙りこむカグナ・ジャタの目の前に、ファルドが立ちふさがる。
 いや、お前。
 ドゥーナークに背を向けるなよ。

「勇者か……」

「お前を愛する人達は、まだ絶望しちゃいない! 歌声を裏切るのか!?」

「我は、この戦いに、手出しはせぬ。見届けさせてくれ。汝らの矜持の、その先を」

「臆したか」

「抜かせ。我の首すら落とせぬ弱者が」

「ならば、この場でお前以外の全員を斬り捨ててくれよう。覚悟!」

 目にも留まらぬ速さで、猛烈なラッシュが炸裂する。
 圧されているのは、ファルドだ。

「ぐ、うっ!?」

「私のファルドに手を出さないでよ!」

 アンジェリカが割り込み、炎の壁を発生させる。
 だがドゥーナークは、それをいとも簡単に斬り裂いた。

「所詮は与えられただけの力か」

「メイ! 挟み撃ちだ!」

「オーケー!」

 左右から挟み込むようにして攻撃!
 ああ、駄目だ、弾かれる……!

「やらせん!」

 ジェヴェンが背中から斬りかかる。
 ドゥーナークは左足を軸に、右足を高く上げて剣の腹を受け止めた。
 常人離れした反応速度だ……魔王の側近なだけはある。
 今までろくに出番が無かったからって、ここぞとばかりに活躍しようとしやがって!

「人の限界など、知れたものだ」

「スネーキー・フレイム!」

「……甘い」

 ――居合の構え!?
 マズい! アレが来る!

「みんな、よけろ!」

 間に合わない!?
 アンジェリカの出した魔術ごと、ギラリと光を帯びた暴風が辺りを斬り裂いた。

「あぐっ!?」
「うおぉ!」

 岩肌に、それぞれの切り口から血が滴り落ちる。
 広範囲を切り裂く、必殺の一撃……やっぱり本家が使うと違うな。

「俺の一閃車輪喰裂いっせんしゃりんがれつは、愚弟の半端な技とは違うぞ」

 あ、そこ英語読みじゃないんだ。
 それはどうでもいい!

「……少々、余計なものを斬ってしまったが」

「口の減らない野郎だな。その技の特性、俺はよーく知ってるぞ。ビビらなきゃ、その技の効果はイマイチだ!」

「僅かな恐怖でも、俺の餌には相違ない」

 納刀からの、またしても棒立ち。
 舐めプとは魔王軍らしい悪役プレイだな!
 悔しいが、打開策が思い浮かばない。
 ……マジで、どうやって打ち破ればいいんだ。

 確かに、俺達はあの技に対抗できていない。
 グラカゾネクとの戦いで、一閃車輪喰裂に対抗するには勇気を持つのが一番と知っているにもかかわらずだ。

 こういう時は、内なる力が覚醒するとか王道パターンがあるんだが。
 そんな都合よく話が運ぶような現実じゃないんだよな、実際。


「――その戦い、俺達も混ぜてくれるかい!」

「……ジラルドさん!」

 嘘だろ!?
 なんでここに来てるんだ!

 えー、不肖・志麻咲信吾。
 度重なるご都合展開を、心の底からありがたがっております。

「ビリー! エリー! スターター・フォーメーションだ!」

「俺達! 稲妻三人組サンダー・スリー!」

 ビリーと、どっかで見た(ものすごくいけ好かない)女が、ジラルドを中心に決めポーズをとる。
 背後で稲妻がピッシャアときらめいた。

 えっと、その……何だ。
 助けに来てもらって、こういう事を思っちゃいけないのは百も承知だ。
 だが、敢えて言おう。

 そのセンスは、無い。

「雑魚が三人増えたとて、結果は同じだ。
 お前達自身が開発した兵器によって、この街は滅びる」

「それはどうかな?」

 大爆発と共に、天井が崩落する。
 派手にやったな……。

「この空を見ろ。何が飛んでいる?」

「ば、馬鹿な……! 大型浮遊魔旋盤オービタル・ディスクが落とされただと!?」

「人間、まだまだ捨てたもんじゃないって事さ」

「――面白い! 魔王には伝えておいてやろう。お前達の到着は近いとな!」

 ドス黒い光の柱と共に、ドゥーナークは姿を消す。
 実に魔王軍らしいログアウトだ。


 などと俺が暢気に構えた理由は一つ。

 アイツ、はなから茶番のつもりでここに来たんだろう。
 でなければ、全力で戦っていた筈だ。
 衰えていたとはいえ、あの只者じゃない王様を斬首する程の腕前だぞ。
 一人で全員を相手取ったところで、苦戦するような奴じゃない。

 それが、突然うろたえた。
 しかも割と棒読み。
 なんてわざとらしい野郎だ……初めから俺達は手の上で踊らされていただけじゃねえか。


 それより、もっと腑に落ちないのは、ジラルドとビリーが連れてきた奴だよ。

「なぁんでエリーザベトがここにいるのかしら」

「それは私も疑問だ。捕虜か、奴隷にでもなったのか?」

 ジェヴェンだって頭から疑問符がポコポコと湧いて出てきてるし!
 まあそうだよな。
 まさかエリーザベトが、ジェヴェンみたいに改心するとは思えない。

「ジラルドさんを騙して、俺達をドゥーナークと相打ちさせるつもりだったのか?」

 ファルドもちょっと的外れっぽいが割と誰もが一度は考えそうな疑問を口にしているし!
 そうだよな、そうだよな!
 北の最果てでやられた仕打ちを思えば、そういう発想が出てくるのは仕方ない。

「冗談じゃねえやい! 俺の両手やミランダさんの舌だけじゃなくて、今度は何を奪いに来やがったんだ!」

「まさか、わらわを殺しに来たか!?」

「ほら、さっさと答えなさいよ。返答次第じゃ、焼くわよ?」

 みんな激おこだぞ!
 いや、みんなでもないな。

 俺はどっちかっていうと「もしかしてジラルドが裏切ったか?」っていう不安のほうが大きい。
 ミランダは困惑してるし、カグナ・ジャタは青菜に塩って感じだ。
 メイは……顎に手を当てて難しい顔をしている。

 激おこ組がワイワイガヤガヤとしてるから、そうでない組はあんまり目立たないが。


「……まあ、お控えなすって」

 ジラルドが苦笑交じりに両手で俺達を制す。

「やはり、恨んでいらっしゃるでしょうね……わたくしの今までの所業を考えれば、当然の結果ですわ」

「ちょいと冷たい言い方をするが、それは受け入れてくれ。
 お前さんが前に進むためには、そうしなきゃいけねえ」

「ええ」

 ファルドがついにキレたのか、剣を構えた。
 両目が赤く光る。

「魔女の墓場の幹部なんですよ……アンジェリカはそいつらのせいで!」

「俺が面倒を見るから、お前さん達はそのまま仕事を続けてくれればいい」

 なんとなく、納得できたぞ。
 つまりジラルドは、色々あってエリーザベトを引き抜いたと。
 ドーラがオフィーリアにそうしたように、諭したんだろう。

 えっと、周りの連中は……あんまり納得できてなさそうだな。
 やられた事を考えたら、それも仕方ないんだがな。
 俺なんて、まだ幸せなほうだろう。

「とりあえず、置いといてくれるかい。
 お前さん達はビレスデアに行きな。レイレオスの野郎が、派手にやろうとしているらしい」

「派手に……?」

「罠じゃないって保証はあるんですか。もう俺、嫌ですよ。騙されるのは」

 あちゃー、ファルドは完全に疑心暗鬼だな。
 ヴェルシェのせいでアンジェリカが死ぬ所だったって事を思えば、それも仕方ない。
 ただ、なあ……。

「詳しい話は後だ。罠だったら戻ってくればいいだろうが! 早く、野郎を止めるんだよ!」

 ジラルドの表情は、いつになく真剣だ。
 嘘を付いているようには見えない。
 ここはやっぱり、俺から動いたほうがいいかな。
 なんていうか、この世界の生みの親として?

「ファルド。ジラルドさんの言う通りだ。罠なら戻ればいい。テレポートなら簡単に戻ってこれる」

「でも!」

「確かに、騙そうとしてくる奴はほぼ例外なくクソ野郎だ。だがお前は、それを恐れて人を信じる事をやめるのか?」

「……」

「俺は、行くぞ。一人で戦っているんじゃないんだ。
 俺達の手が届かない所で何かが起きているなら、そこにいる誰かを信じるしかない。運命に抗う誰かを。今回の場合、その誰かってのはジラルドさんだろ」

「……あたしもジラルドを信じるよ。これまでと変わらず、ね。
 ビレスデアには、あたしがテレポートで連れて行くけど、誰が行く?」

 ここで、アンジェリカが挙手した。

「ビレスデアといえば、ドーラさんが奴隷魔女の待遇改善を訴えた場所よね。
 そんな街を血みどろにするのを見過ごせば、絶対に後悔すると思うわ」

「あ、あの!」

 エリーザベトが急に、上ずった声を出す。

「皆様、これまでの狼藉の数々、申し訳ありませんでした! これはお返しします!」

 ――冬の聖杯!
 すっかり頭から抜け落ちてたが、そういや枢機卿が管理してるって話だったもんな。
 ファルドはひったくるようにして受け取り、ルーザラカの前に差し出した。

「守人の血を垂らせば、本物って証明できるんだろ?」

「そ……そうじゃな!」

 ルーザラカが恐る恐る、指に傷をつけて聖杯に触れる。
 すると、確かに聖杯は輝いた。
 間違いなく、本物だ。

 ファルドはその血を拭いて、ルーザラカと同じように自分の血を垂らした。
 今度は、聖杯は輝かなかった。

「あたしとシン君、アンジェリカとファルド、この四人で行く。それで間違いない?」

「……ああ」

 ファルドは、ようやく頷いた。
 渋々といった様子だが、これはもう時間をかけて信じてもらうしかない。

 ふと俺は、絵師に対する詐欺行為が怖くて活動停止した同人作家が脳裏を去来した。
 いわく、騙されて不当に低い賃金で描かされた挙句に悪評をバラ撒かれるという事例を目の当たりにして(本人ではなく身近な人だ)、怖くなってやめてしまったのだ。
 同情はするが、勿体無いとも思う。


 生きてる以上は騙される。
 だからって心を閉ざさなきゃいけないなんて、それこそ奴らにとってはスナック菓子を片手に語らう笑い話程度にしかならない。

 駄目だろ。
 そういう足を引っ張るクソ野郎共を、完膚なきまでにぶちのめすんだ。
 もう何をやっても無駄だと、思い知らせてやらなきゃ駄目なんだ。


ふつつか者ですが、ランキング登録しておりますのでよろしくお願い申し上げる次第です。
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