挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
自作小説の世界に召喚されたので俺は未完放置する(エタる)のをやめました! 作者:冬塚おんぜ

第五章 魔王は誰の手に

しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

更新通知 0/400

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

110/146

第百四話 「裏切り者の悪名、甘んじて受ける!」


 帝国騎士団の団長。
 それが私の肩書だった。

 ジェヴェン・フレイグリフ。
 それが私の名だ。

 大陸を巻き込んでの戦争……その渦中に私はいた。
 大戦末期、私は齢二十にして団長の座に上り詰めた。

 そこから戦争終結までのおよそ五年間、私は一度を除いて敗北しなかった。
 誰もが私を恐れた。
 鬼の騎士という、今や久しく呼ばれなくなった異名も、当時は私を表す異名だった。

 貧しい民を救う為ならば、鬼の誹りも甘んじて受けよう。
 その決意の下に戦い続けた。

 抵抗するならすべからく首を刎ね、命乞いするなら馬で踏み殺した。
 相手が敵国の王であるならば、己が死中に在ろうと構わず剣を振るった。


 ……しかし、いつしか戦争の目的は変わった。
 富を独占する王国から貧しい民に財を分け与える筈の戦いが。
 いつしか、ただ奪うだけの戦いへと。

 こんな筈ではなかったと、何度も嘆いた。
 だが嘆いたところで、皇帝陛下は止めなかった。

 それどころか、陛下は己の意見に賛同しない者達を次々と粛清していった。
 次第に国土は痩せ細り、要人が次々と亡命していくさなかでも、粛清は止まなかった。

 兵が足りぬと将は言う。
 大臣達はそれを笑い、将を足蹴にした。
 兵が足りぬなら、民を戦わせれば良いと。
 大臣達の提案に、皇帝陛下は頷いた。

 救われるべき貧しき民は、こうして前線に送られた。
 ろくに食事も取れない身分の彼らでは、十全に訓練を受けてきた兵の半分も戦果を残せなかった。
 そして、使い捨てられ、死んでいった。

 いよいよ防衛線を維持できず、ガンツァを捨て置いて後退した。
 数々の新兵器も、その半数以上は王国側の飛行船に潰されていった。
 帝国の敗北は、誰の目にも明らかだった。


 そして、ついに陛下は姿を消してしまわれた。
 皇帝陛下の失踪による波紋は瞬く間に帝国全土に広まり、帝国は瞬く間に瓦解していった。

 もはや、何のために戦っているのか。
 ついぞ解らぬまま、私はとうとう囚われた。


 *  *  *


 牢獄に繋がれた私に、報せが届いた。
 魔王襲来による、恒久的な停戦。

 あの地獄のような日々は、二度と訪れない。
 そう願いたかった。

 数日後、ペゼル・ラルボス宰相閣下の取り計らいにより、私は釈放された。
 大陸各国は協定を結び、魔王軍に対抗すべく連合騎士団を編成、増強計画を打ち立てた。
 連合騎士団に編入された新人達の訓練をしてほしいという要求が出たのだ。

 曰く、魔王は悪逆無道の輩であり、それは帝国軍の比ではないという。
 兵であろうが民であろうが、魔王の尖兵は平等に蹂躙していくという。

 ……ならば。
 私は再び立たねばならない。
 今度こそ、民を救いたい。
 その決意を胸に。


 *  *  *


 だが、魔王はもう一つ、恐ろしい置き土産をしてくれた。
 それは、魔女だ。
 魔女は人々を欺き、陥れた。
 終戦から数年にわたって、魔女の被害は日に日に増していく一方だった。

 そこで大陸連合は、一つの答えを出した。

 魔女の墓場。
 魔女を葬る為の組織だ。
 私はその魔女の墓場の軍事顧問を兼任する事となった。

 現場監督として、彼らの初陣を見た。
 彼らは魔女容赦なく叩き伏せ、火の中へと彼女の身を放った。
 見るにおぞましい光景に、私は足がすくんだ。

 逃げるようにして、私は出兵していた構成員の半数を連れて本部への歩みを進めた。
 道中ですれ違った少年の顔が、何故か頭から離れなかった。
 緑色の髪をした少年は、魔物だったのだろうか。

 ……程なくして、現場に残してきた構成員が息も絶え絶えに追いすがってきた。

 曰く、魔女の力が、緑色の髪をした少年に憑依した。
 少年は憎しみに染まった表情で、次々と構成員を斬り伏せた。
 命からがら撤退したが、彼以外は壊滅したという。

 思い返せば、あれがレイレオス・カーツと名乗る男との最初の出会いだった。


 勇者が選ばれる日の夜、私はレイレオスと再会した。
 かつての面影は、緑色の髪を除いて殆ど消え失せていた。

 四人の枢機卿が、彼を引き入れるよう命じた。
 私もそれに従った。
 レイレオスは、短く頷くだけだった。


 枢機卿の目論見通り、レイレオスは目を見張る働きを見せた。
 一方で、命令を無視した虐殺が目立った。
 このままでは、暴走する恐れもあった。
 もしそうなった時、止められる者はいるのか……。

 そして危惧していた通り、レイレオスは勇者ファルドに襲い掛かった。
 理由を問いただすと、彼は口をつぐんだ。

「魔王を殺すのは、俺だ」

 そう一言だけ、彼は告げた。
 彼は危険だと、私は何度も枢機卿に具申した。
 聞き入れられる事は一度とて無かった。


 *  *  *


 更に時は流れ、今に至る。

「ヴィッカネンハイムを焼き討ちにせよ」

 私に下された、一つの命令。
 聞けば、勇者達もそこに隠れているらしい。

 そこまでして、勇者にこだわる理由は何だ。
 私はまた、私利私欲の為だけに戦わされるというのか。

 これまでに、何度も悩んだ。
 本当に、これで良いのかと。


 魔女アンジェリカ・ルドフィートを処刑してから幾日が経った頃、一人の少女が私を詰問した。

「先生は、いい人だった! 私の、大切な先生だった! どうしてみんな、魔女だからって、傷つけようとするの!? 同じ人間なのに!」

 少女の慟哭に、私は何も答えられなかった。
 構成員達は、そんな少女にすら武器を向けた。

「黙れ、クソガキ!」

「思い通りにならなかったら、そうやって傷付けるの!?
 折り鶴も、歌も、あの人達の残してきたものを全部消していく! 魔王軍よりひどいよ! ねえ、何と戦っているの!?」

 私は急いで互いを止めさせ、早々にその場を離れた。
 構成員達は、口々に彼女を罵倒した。
 聞くに堪えない罵詈雑言は、彼女が見えなくなってからも続いた。


 ……実際、少女の言う通りだった。
 ある者は、踏み絵を描かぬ画家の手を、焼けた炭に突き入れた。
 またある者は、勇者を貶める歌を拒んだ吟遊詩人の舌を、根本から切り取った。
 更にある者は、魔女を庇った錬金術士の家を、破壊していった。

 命だけではなく、魂まで蹂躙していくそのさまを何度も目の当たりにした。
 もう、誰も信じられなくなっていた。

 魔女を倒すのは、魔女に騙される犠牲者を増やさない為ではなかったのか。
 何故、勇者を執拗に狙う必要があるのか。

 魔王を倒すのは勇者でないと断ずるなら、早々に魔王を倒しに行けば良いだけではないのか。


 今は無理だとしても、せめて次の世代からは人々が笑って暮らせるようにしたい。
 何者かが後ろ指を指して嘲笑うさまが当たり前の世界ではない。
 屈託の無い笑顔でいられる事が当たり前でいられる、そのような世界にしたい。

 私が守るべきは、誰かを蹂躙する歪んだ欲望ではないのだ。

 ……ゆえに!

「裏切り者の悪名、甘んじて受ける!」

 元より、私は何度も裏切ってきた。
 騎士の誇りも、民の期待も、幼き命も、魂も……!

『許せ、テオドラグナ。叩き直せる段階など、とうに踏み越えてしまったのだ。
 貴殿のお父上は悲しまれるだろうが、私にはもう、これしか縋るものが無い』

 最初に償う相手は、テオドラグナだ。
 彼女はもう私を許してくれるとは思えないが、つけは少しでも払わねばならない。

 準備は済ませた。
 人探しは得意だが、今回は流石に骨が折れた。


ふつつか者ですが、ランキング登録しておりますのでよろしくお願い申し上げる次第です。
小説家になろう 勝手にランキング
cont_access.php?citi_cont_id=329038609&s
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ