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妻を憎み娘を愛す

作者: 柴山浩二

俺は柴山浩二(しばやま こうじ)

16歳の一人娘をもつシングルファザー?ってやつだ。

親なんだから当たり前のことだが、俺は娘を愛してる。誰よりも愛している。あんなことをした憎い憎い妻なんかよりも…

さて、これから俺が書き記すのは10年前の話だ。憎い憎い妻の話だ。


十年前の娘の誕生日の10日前。俺は妻からこう言われた。

「ねぇ、離婚してくれない?お金はあげるから」

俺はその言葉に、

「お前分かってんのか?もうすぐあの子(娘)の誕生日なんだぞ?それなのに今離婚をしろだと?俺がではそうしましょうって言うとでも思ったか?あの子がどれくらいの精神的ダメージを負うかわかってるのか?…とにかく、離婚は認めない。絶対にな。」

と、顔を真っ赤にして怒鳴った。

それから誕生日まで、妻は離婚のことについて話しかけて来なかったので、離婚話は終わったと思っていた。

そして、娘の誕生日。妻が朝出かけたきり戻ってこない。俺はおかしいなとは思ったが、どうせすぐ帰って来るだろうと思い、娘と2人でパーティをやろうとしたその時、一通の電話がかかってきた。恐る恐る電話に出ると、警察が出た。

警察「もしもし、柴山家の方ですか?」

俺「はい」

警察「実は、貴方の奥さんが人を殺しました。」

俺はその言葉を聞くと、受話器を落とした。そしてその場に1分ほど立ちすくんだ後、娘にこう言って外へ出た。

「俺もお母さんも必ず戻ってくるから、ここでお留守番しててくれ」

警察署に着くと、大勢のマスコミが待ってましたと言わんばかりに俺の周りを取り囲んだ。だが警察官に手を引かれ、どうにか署の中に入ることができた。俺はすぐに取り調べを受けた。

警察「既にご存知だとは思いますが、今日の夜7時頃、貴方の奥さんが公園で無差別に人を切りつけ、切りつけられたうちの3名は死亡しました。貴方はこの事について、何か知っていますか?」

俺は、10日前に離婚話をされたことを話した。その後も細かく質問され、取り調べは約1時間程で終了した。マスコミを避けつつ家に戻ると、何も知らない娘は笑顔で迎えてくれた。だがそれからの9年間、娘の笑顔を見ることは出来なかった。事件後1年間は近所から嫌がらせを受け、娘はというと小学校で6年続けていじめられた。小学校の仲間と同じ中学校に入ることを避けるため、猛勉強をしてトップクラスの中学校に入っても、結局その中学校でいじめられた。だが、娘は強かった。笑顔こそ消えたものの、誰にも涙を見せなかったのだ。娘は常にこう言っていた。

「私は罪人の子。そのマイナスのレッテルはどうあがいても消せない。だけど、プラスのレッテルを沢山貼ってもらえるよう努力すれば、結果的にプラスになるの。」



妻の罪は無期懲役、つまりもう会うことは無いだろうし会おうとも思わない。散々家族を苦しめてきたのだから。


俺は妻が憎い。人を殺した妻が。

俺は妻が憎い。家族に迷惑をかけた妻が。

だが

俺はその娘を愛している。俺よりも強い娘を。

俺は娘を愛している。優しい心を持つ娘を。

つまりこれはどういう事なのだろうか。

…そうか。俺は、





「妻を憎み娘を愛す」

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