あねさまっ!(4/4)縦書き表示RDF


更新遅くなりましたー。
最近フリーター業が忙しく…しかも暑いですしね、なかなか執筆が進みません…。
毎度ですが発想が貧相な作者はキャラクター募集をしておりますので、これはと思うものがある読者様は是非ともご一報下さい。
あねさまっ!
作:佐野達吉



第三話「転入生、来る<2>」


「失礼します会長。お疲れのところ申し訳ありませんが、バスケ部と茶道部から備品購入の為の追加予算申請及び泰平祭への参加表明書が来ていますが――詳細を?」
「ああ。報告しろ」
 頬杖をつきながら、凛然とした口調で会長と呼ばれた少女――姉大路巴は答える。
 ともすれば嫌悪感を抱かせかねない、無遠慮な台詞。
 しかし、鋭角的なデザインの眼鏡が良く似合った、理知的な印象を与える少女に気分を害した様子はない。
 彼女が数年来の‘まぶたの友人'であるからだけではなく、同意を求める行為自体が儀礼的なものだったからだ。
 彼女が良く知る姉大路巴という人物は、息つく暇も無いようなスケジュールに圧されながらも自分の仕事――特に生徒から寄せられた案件に対しては、自分で見て聞いてから決断する事を信条としている。
 でも――
 当然一つ一つ手を抜かずに処理していれば、時間は回らない。学生たるもの学業が本分であるので、僅かな少休憩時と放課後を全て校務にあてても、到底足りはしない。
 まぶたの目の下に拵えられた隈は、つまりそういうことなのだろう。
(全く一昨日だってろくに寝てないはずなのに…)
 と、傍目にも疲労気味に見える友人を心配して、
「…セリ。報告はどうした?」
「え。あっ、は、はい失礼いたしました‘会長'。で、では、まずバスケ部についてですが――」
 その友人に急かされて、慌ただしく収支報告を続ける少女、緑高セリ。
 美少女、というよりかは高嶺の美人という表現が相応しく、それでいて実は少し抜けている――‘少し'と本人は思っている――彼女は。
 日柄無愛想に口をヘの字に曲げているか、怒声を飛ばしながらこめかみに青筋を立てているか――そんな友人の普段の姿が、今日に限っては色濃く残った疲労の色をたたえているものの、何か別の感情に支配されている事に気付かなかった。
「以上が申請備品の内容になります。会計の三鷹さんにバスケ部、茶道部の新年度獲得部員を合わせた総部員数と備品消耗率の割合を計算してもらったところ未だ改善の余地があるとのことでしたので、後日双方の部長と相談した後に最終決定した予算案を挙げさせます。
 次に泰平祭への参加内容についてですが――」
 言うなれば‘それは'、一つの奇跡であったかもしれない。
 セリ<ふくかいちょう>の報告を聞きながら、連日の激務で疲れきった体を革椅子に預けている巴の意識は、今は遥か別の所にあった。
 ふっくらと心地よい革椅子に意識がまどろんで、思わず寝に入ってしまったのではない。
 重い開閉作業ながら、しかし数秒に一回瞬きする瞳は、会長室の天井に備えられた豪奢なシャンデリアを捉えている。
 常日頃、姉大路学園各所の経費節約を唱えている巴としては、まず会長室から改革すべき――と考えているのだが、これらはOBからの寄贈品である場合が多く、自分の一存で処分する訳にもいかない。それをいいことに会長の怠慢の証であると批判の意を唱える反生徒会派閥の人間などは、目下彼女を悩ませている‘こぶ'の一つであった。
 …のだが、今はただ採光窓から取り入れられた陽光を反射してキラキラと輝くシャンデリアをうっとりと眺める。
 それこそ、夢見心地であった。
(どれほどこの時を待ったか……四年、いや四年と十八日…か)
 虚空に浮かぶのはある少年の姿。
 その天使のような笑みを浮かべる輪郭を、絹のようになめらかな肌を、鈴を転がしたように涼んだ声色を――その全てに、四年と十八日という月日を経て、
(…会えるっ!)
「よって、茶道部については申請を大筋で了承。泰平祭の出展品目である『野点と川柳を楽しむ和の風景』についても、例年のアンケートと集客率から鑑みて泰平祭同日はかなりの集客が予想されますので、割り振りブロックはA判定区域にしたいと考えています。
 …報告は以上です。尚、泰平祭についての事項は決定期日が明後日までですのでお早く最終決定を――、会長?」
(会える! 会える会える会える会える――)
 そこには、冷血無慈悲と恐れられ、あるいは眉目秀麗な大和撫子として敬われる生徒会長の姿はなかった。
 常に鋭利な目は、トロンと恍惚を映して垂れ下がっている。
 頬は朱色に染まり、だらしなく開かれた口からは、時折怪しげな呟きが漏れる。
 傍目には中毒者<ジャンキー>のそれか、もしくは発作か何かに見える。
(正太に会える!!)
「会長、かーいちょー! ていうかまぶた聞こえてるー?返事してよ、ねぇ大丈夫なの!?」
 いくぶん‘前'がある為だけに、本気で友人に何かあったのかと心配するセリを尻目に――むしろ意識の内にも入れていない――巴は、抑えきれない想いを口にした。
「早く私のところに来きてくれ…正太」
 どこかで、一人の少年がくしゃみをした。














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