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幕間 思い
カミーラは、ロイドが雑貨屋へ走って行くのを眺めていた。
その後姿を見て彼を拾った時の事を思い出す。

彼女が彼を拾ったのは、とある廃墟だった。彼女は、次の街へ向かう途中、夕立にあい、雨宿りをするためにその廃墟に入った。そこには、一人の少年がいた。
彼の体には、無数の切られた傷があった。そこでなにかあったという事は、すぐに頭に入った。彼女は、少年を手当をするために必要な道具を取り出した。そして、手当をしようとした。しかし、次の瞬間、彼女は驚いた。さっきまであった傷が跡形もなく消えていたのだ。
その子は、目を覚ました。そして、私を見て言った。
「ごめんなさい。ごめんなさい。」
少年は、彼女に対して謝り続けた。
「出て行きます。出て行きますから、もうやめてください。」

この世界で、まだ10にも満たない少年が生きていく事は、不可能と言っていい。ましてや、武器も無い。野獣に襲われたらひとたまりも無い。有り得ない、この少年は、何かの罠か!
そう、一瞬考えた。そして、彼女は、少年を拘束し尋ねた。
「あなたは、何者?何が狙い?白状しなさい。さもなければ、腕を折るわよ。」
少年は、答えない。まるで、人形の様にくりかえすばかりだ…
「答えなさい、本当に折るわよ!」
全く答える気配がない。
手が力んでしまい、廃墟の中にボキッという音が響いた。
少年は、それでも表情を崩さなかった。折れた痛みで、悲鳴すらあげなかった。まるで、本当に人形になってしまった様に…

すると、近くから声が聞こえた。誰かがこっちに向かってきている様だ。
雨で土壌が湿り、足音がする。


廃墟の前で音が止んだ。私は、とっさに姿を隠した。何か、このままここにいては危険だと直感した。
現れたのは、女性だった。白銀のような美しい髪をした女性だった。
「ごめんなさい。見ている事しかできなくて…」
そう、呟きながら少年の頭を撫でた。
「アルテミナと言う名前を背負わしてしまって…」
彼女は、視線をあげた。そこには、数人の男がいた。
「やっと見つけたぞ。そのガキを渡せ!」
男達が彼女から少年を奪おうとした。
「はぁ、まだやつら懲りてないのね……」
そこには、金色の髪の少女がいた。
「何度も同じ手を食うかよ!」
一人が少女に対し何かを唱え始めた
「まさか!」
女が行動を起こそうとした。だが、間に合わない。
少女は、消えてしまった。
「いくら、アリスでも、三時間は、戻って来れまい。」
リーダーらしき人間が言った。
女は、少年を護ろうと立ち塞がる。
「たしかに、あんたに一対一の戦いでは、勝てない。だが、一対多なら、こちらに分がある。かかれ!」
確かに、数人は倒した。だが、簡単に取り押さえられた。
リーダーらしき人間が少年に近付いた。
気付いた。先程の話から推測するに、彼女達にとっての日常が、この世界が当たり前なのだと…そして、何かがおかしいと…
「やめなさい、それ以上するなら、私が相手になるわ!」
体が自然と動いていた。だが、自己嫌悪していた。なぜなら、彼を何者かがはなった刺客なのでは、と疑ったからだ。
彼らは予想外の敵に動揺したことにより、奇襲は成功した。彼らのリーダーを潰せた。
私は、少年に近づいた。
すると、初めて彼に感情らしきものがみえた。そして、こう言った。
「あなたが、僕を殺してくれるの?」
期待を込めた視線で、少年は、私を見ていた。私は、何も言えずにただ少年を抱き締めた。
しばらくの時間が経った。
私は、気絶していた女性から話を聞いた。
分かったのは、

彼が人ではない事
彼の心が壊れている事
彼が死に難い体である事
彼が何者かに狙われている事

だった。
女性は彼の母親らしい……この子を護り抜く自信を無くしていた。無理も無い。彼女は、疲れていたのだ。追っ手から逃げる事に…そして、彼をこんな運命に巻き込んでしまった事を…
「さっきは、すまなかった、私の勘違いで怪我をさせてしまって」
私は、少年に謝った。
だが、少年は、聞く耳など持たず、
「早く、早く、早く、僕を殺して」
そう繰り返すだけだった。
わたしは、その視線に耐えられなかった。彼は、頭がいいのだろう。母親が自分のせいで苦しんでいる事に気付いているのだ。だから、私は、少年にこう言った。
「そうだ、なら、一年、一年でいい、私と旅をしよう。」
その女性は、その話を聞き私にその少年を預けた。一緒にいてやりたいのだろう。だが、彼を、彼の幸せを考え私に預ける事にしたようだった。
これが、私達の歪な関係の始まりだ。いつ壊れてもおかしくなかった歪な関係の始まりだった。

だが、あれから意外にも三年もっていた。三年が経ち、少年には、感情が戻っている。
私は、何度も彼に聞こうとした。
あなたは、いま幸せ?
唯この一言を聞きたかった。だが、返ってくる答えがもし、
いつになったらころしてくれるの?
なのではないか、とそう考えた。私は、怖かったのだ。この日常が、私にとって既に当たり前になっていたこの生活がくずれるのが……
だからこそ、この質問を恐れた。それは、少年を息子の様に考えているからだ。三年共に過ごした。それだけの時間があれば、彼を息子の様に思うには、十分だった。だから、いつか彼の口からお母さん、という言葉が欲しいと考え始めていた。

その願いは叶う事となる。たしかに、彼女は、母親として過ごす事はできなかった。だが、彼女の事を母さんと呼んでいるのを彼女は、消えかけた命の中見たからだ。だから、彼女は笑って死ねた。うれしかったのだ。死んでいく中でそのたった一言で彼をあの暗闇の世界から救えたことがわかったのだから……そして、あの女性との約束を守れたのだから…
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