回想1 雨の日の夢
季節の変わり目になり、雨が降っていた。
黒と白は、人の形になり、空を眺めていた。
白は、ある部屋を見ながら呟いた。
「主人は、雨の日はいつもあの部屋に篭りますね。ぐーたらですか!」
黒は、それに対し溜息をつきながら答えた。
「はぁ、確かにそーかも知れないけど、あいつにとっちゃーまだあの日の事は清算しきれてねーんだろ!少しは分かってやれよ!それとも、あの女に自分が負けてるのが悔しいのか?」
白は、顔を真っ赤にしながら叫んだ。
「ち、違うわよ!私は、ただ、ただですよ。もう、あれから1年経ったんだから、もう忘れてもいいと思うんです。過去の事はもう戻らないのですから…」
黒は、少しうなづきながら答えた。
「確かにそうかも知れないけど、あいつにとってあの女は、世界そのものだったんだよ。」
白は、俯きながら言った。
「確かに、そうでした。私は彼であり、彼は私でもある。なら、もう少し頼ってくれてもいいんじゃないかと…って、何さっきから上から目線で答えてるんですか?」
白からでる黒いオーラに、黒は逃げた。
「待ちなさい。逃がしませんよ。」
部屋の中で、自分が創り出したもう二人の自分達の会話を聞かながら、窓にうちつける雨を眺めていた。手には、日記を握っていた。そう、あの日の事を書いた日記を…絶対に忘れないだろうあの日の事を…
雨を見ているとつい、うとうとしてしまい眠ってしまった。
雨の日には、いつもあの日の事を夢にみる。あの忌々しいあの事件を…
「はぁ、朝だよ。そろそろ起きなさい。」
誰かが自分を呼ぶ声が聞こえる。
「う、うーん。おはようございます。カミーラさん。」
目の前には、死んだはずのカミーラがいた。そこで、すぐにこれが夢だと気付く、だが、心の何処かでさっきまでの世界が夢なんじゃないかと思ってしまう。でも、そんな考えはすぐに消えた。
「起きたね。じゃあ、食事の前にいつものように軽くトレーニングをしましょうか!」
カミーラの言葉に、さっきまで考えていた事は消えた。今だけは、あのもう戻れない日々を過ごしたい。この後に起きるあの出来事は、すっかり頭から無くなっていた。
トレーニングの後、朝食を軽く済ました。それから、次の街に向けて歩き出す。
私は、彼女の背中が好きだった。でも、いつか並んで歩けるようになりたかった。
そして、並んで歩けるようになったら母さんと、本当の親子になりたかった。血は確かに繋がっていない、だからこそ、なにか親子である証が欲しかった。
今考えたら、馬鹿馬鹿しくなる。そんなもの、最初から持っていたのに気付かなかった。
もし、気付けていたなら、いつか面と向かって母さんと呼ぶ、そんなちっぽけな願いは儚く消える事はなかっただろう。
街へ着くといつもまず、足りなくなった物を補充する。これが私の仕事だった。
そして、それが終わるといつも良くできた。と、頭を撫でてくれる。今回もきっとそうだ。そう思いながら、雑貨屋へ走って行った。空は、黒い雲が覆いつくし、今にも雨が降り出しそうだった。私は、行くなと訴える。しかし、所詮は夢、体は言う事を聞く訳もなく、これから起こる事も、見ている事しかできない。
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