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第三章 境界線 第三部 オートマタの心 第二十話 獅子咆哮
起き上がった少女は数歩でロイドを間合に捉える
しかし、本人に自覚は無いのだろうが僅かに速度が落ちていた
吹雪の中を歩いた事により凍傷になっており、確かに高いポテンシャルを持つ少女でも完全回復にまで至っていないが故だった
僅かな差だが、ロイドにとって“目で追える"事は大きな差だった
それは反撃の際の危険度が著しく低下した事を意味している
特に少女の殆ど必殺と言っていい一撃の前でその事実は好機と言えるだろう


少女の爪を体を反らして難なく躱すと、ロイドは少女の腹を蹴り飛ばす
少女は後ろへ押されるものの、僅かでしかなかった

「無駄ですよ?お兄様?その程度私には効きません」

少女は体勢を立て直すと再び突撃して来た
本来なら容易に躱せるような攻撃だった

じわりと、脇腹から血が滲む

前回の戦いの傷は未だに癒えていない
その傷が先程避けた際に開いたのだ
その傷によって僅かに動きが鈍る

「捕まえた!」

ロイドは服を掴まれてそのまま壁へ投げつけられる
壁を破壊して一枚向こうの通路に入りその壁にぶつかり漸く止まる

骨は折れてないものの、傷が余計に拡がり出血が激しい

「はぁ、はぁ、どこから来る……」

ロイドは神経を研ぎ澄ませて辺りを探る
「みーつけた!」
その声と共に少女は右腕を振り下ろした


力任せの攻撃に辺りの視界は猶悪くなる
少女は右腕を確認すると、全く血がついていない事に気付いた


「ヤバかった……後、少し気付くのが遅かったら完全にあの世行きだ……」


右腕で傷口を圧迫して出血を抑えているものの流石に半日の間に大量の血を失っているのだ
意識が掠れてくる
そう長く少女と殺りあうなど不可能だと考えを纏めるが、あの少女の以上なタフさをどう処理するかが立ちはだかる
あのタフさをどうにかしない限りまた追って来る
強固な要塞並みの防御力に、対人的な物とは考えられない異常な攻撃力
隙など殆ど存在しない
いや……待て……
今までの事を思い出せ
もしかして、あの女……痛覚を無自覚に遮断してるのか?
凍傷についても気付いていなかった
なら、今までのダメージも蓄積されてる筈


「あら?お兄様から殺されに来たんですか?」

ロイドは少女の前に立つ

「悪いが先に行くんでな……消えろ」

ロイドの言葉を合図に少女は突撃して来る
しかし、ロイドは動かずに少女の攻撃を利用する

“獅子咆哮”

相手の力をそのまま利用して相手に喰らわせるカウンター
今まで使っていた劣化咆哮はカウンターより、肉を切らせて骨を切ると言った方が正しい
それに、劣化咆哮は僅かに衝撃が拡散して一点への攻撃には使えない


「右は殺した。」


ロイドは少女の破壊力をそのまま少女の肩に叩き込んだのだ
普通の人間なら右腕が吹き飛んでいてもおかしくない
骨が粉砕されただけな事からも異常さが分かる


「でも、まだ左が……」


ロイドは近くにあった鉄屑を少女の左肩に突き刺して壁に張り付ける
同じように右肩、両太股も張り付けて行く

「少しそこでそうしてろ….…」

少女は自身の体をフルに使っていた
つまり、筋肉が限界まで使われている。それは、少女の再生能力と合わさって出来る荒技だ。
しかし、それ故に痛覚が戦闘中は無自覚で麻痺させていた
だから、凍傷に侵されている事にも気付けなかった

ロイドは少女に目もくれず、イリアの後を追った
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