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第3章 境界線 第三部 オートマタの心 第十二話 血を分けし者
「気のせいですかね……」
ミンファがレイピアを鞘に戻す
だが、ヘムリルはロメリアを抜き放ったまま歩き出した
それを見てタルバーニャは止めようとする
「ヘムリルさん!ここで失礼を働くと向こうも情報を渡してくれませんよ‼」
それでも、ヘムリルはロメリアを納めない
ミンファが気になり尋ねる
「どうかしたんですか?」


「何かヤバそうな気配がしたからな……その警戒だ……あの気配は普通じゃあない」
そう呟くとタリフマンの屋敷に入って行く

ーーーside

その後ろで血で真っ赤に染まったドレスを着た少女が笑っていた
「凄い!凄い!今の殺気に気付いてあそこまで警戒するなんて!隙が無いじゃない!殺りたいな……兄さんを殺る前に前菜として殺っちゃしましょうか?あれ?あれは……」
そう呟くと何かを見つけどこかへ行ってしまった

sideout

「何か用ですか?そんなにぞろぞろと……」
書斎に通された三人の前には人当たりのよさそうな若者が居た
タルバーニャはその若者に言った
「タリフマン、三つの資料の内、貴方の持つ物を見せてもらえませんか?」
それに少し戸惑う様な表情を見せる
「なぜですか?」
ミンファが今にも槍を抜きそうなヘムリルを抑えながら言った
「必要だからです!それ以上に理由が必要ですか?」
その言葉に少し頷くが取り出す気配は無い
タルバーニャはその様子にまさか……と思い尋ねる
「盗まれたんですか?」
少し目線を逸らすと「ああ……」とだけ答える

「行き止まりか……」
ヘムリルが壁を蹴ると、上から何か大きな物が壊れる音がした

ロイドside

「なんだ!あいつは‼」
背中に闇に染まる翼を生やし空を展開しながら抱えた黒髪の少女に尋ねる
だが、全く答える気配は無い
「このままだとお前も巻き添えを食って死ぬぞ‼」
それに対し、黒髪の少女は自らを嘲笑う
「お似合いですよ……敵に捕まる様な不良品には……」
黒髪の少女自身、ラジルの最初の一撃で内部を破損し力を使えない状態になっていた
ロイドは少女を強く抱きしめる
「何をするんですか!」
少女は真っ赤になりながら暴れるがそれを無視して翼を畳むと急降下する
「着地は任せる!」
それだけ言うと、猛スピードで屋敷の屋根に突っ込んだ
「ちょっと‼もぅ……どうなっても知らないわよ‼」
屋根を突き破り、床を貫通し漸くスピードが落ち着地する
足からは火花が散り、床が真っ黒に焦げる

「ロイドさん‼」

黒髪の少女が振り向くと、要注意リストに名前があった二人がいた
「気を取られる余裕なんてあるの?」
その言葉に振り向くと目の前に血塗れの少女がいた

体が動かない

「不良品はいらないわ……兄さんを殺すのに邪魔だし……」
そう呟くと手を振り下ろす
黒髪の少女は目を瞑り自らの死を受け入れようとしていた
ロイドも片方の翼が千切れた事により大量の魔力が拡散し満身創痍だ
自身が無力なのも理解している

だが、腕は振り下ろされなかった

「へぇ、それが兄さんの力ですか⁉」
千切れた片方の黒い翼の代わりに白い翼が生えていた
そして、地面からいきなり出てきた光り輝く鎖が少女を拘束していく
だが、その翼は数秒で消滅し、光り輝く鎖も同じ様に消えてしまう

「この距離なら避けられないだろ……」

ぼろぼろのロイドはそう呟くと、少女の胸に手を置いた

劣化咆哮

だが、少女は全くビクともしなかった
「なかなか重い一撃だけど、私には効かないわよ……これぐらいの一撃じゃないと……」
少女はロイドの腹を勢い良く殴りつける
ロイドの口からは胃液とともに、大量の血が吐き出される
何本か骨が砕ける音がした

その光景に、ミンファは動けなかった
ヘムリルはロメリアを抜けばロイドを巻き込んでしまうため迷ってしまう

「わはははははははははははははははははははははははは……弱い弱い弱い弱い弱い弱い弱い弱い弱い弱い弱い弱い弱い弱い弱い……つまらないつまらないつまらないつまらないつまらないつまらないつまらないつまらないつまらないつまらないつまらない……兄さんの力はこんな物なの?」

笑いながらロイドを叩きつける

呼吸をする間すら与えない

血の池に叩きつけたロイドは微かに動くてで手が自身の血を触る
「消………え…………ろ……………」
そう呟くと血が光り輝く
少女も戸惑い出す
「何をしたの!」
ロイドに手を伸ばそうとするが届く前に跡形もなく消えた
黒髪の少女も目を丸くする
「何をしたんですか……」
その言葉に掠れた声で答える
「無作為に転移させただけだ……早く、ここを離れないと……」
黒髪の少女は溜息を吐くと、ロイドを担ぐ
「ここで死なれたら目覚めが悪いですから……いくら敵とは言え私を庇って死なれたら嫌ですから‼ですが、決して貴方のためではありませんから……」
全く聞こえていないだろう事を理解しながら叫ぶ

だが、後ろにはヘムリルとミンファがいる
ここから逃げるのは容易では無い……
ミンファがレイピアを抜き放ち通告する
「その人を此方に渡して下さい!」
黒髪の少女はその通告を蹴る
ミンファはレイピアに風を纏わせ斬りつける

「ありがとう……逃げるために助力してくれて……」

黒髪の少女はその風の勢いを利用し高く飛び立つ
なんとか開いた翼で姿勢を制御し滑空し近くの路地裏に降り立った

「 ……私の風を利用して逃げたんですか……」
いきなり黒髪の少女の背中から翼が生えた事に驚く
ヘムリルも顔には出さなかったが内心は酷く驚いていた
タルバーニャも驚愕を隠しきれなかった
ただ一人タリフマンだけは、その様子に少し苛立ちを見せていた事に三人は気付かなかった
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