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負けヒロインを書く苦悩

作者:双山サキ
 双山サキと申します。気付いたら恋愛ものばかり書くようになってしまった物書きです。
 せっかく舞台を近未来だ!異世界だ!としているのに、どうして恋愛にメーターが振りきれるのか……。
 まあ、それはさておき本題に入りましょう。

 私の作品の中に、「猫と兎」というものがあります。現代恋愛ものです。
 主人公は男性で、彼の一人称で物語は進みます。そして、ダブルヒロインものです。
 現代が舞台ですから、どちらとも付き合ってハッピーエンド、というのは非現実的。
 よって、どちらかを選ぶという決断を彼にはさせました。
 どちらも選ばない、という答えもあるでしょうが、あまりにもふがいないのでそれは選択しませんでした。
 以下、ネタバレ全開で進んでいきますので、先に作品を読まれたい方は一度ブラウザバックしてくださいね。






 まず、「猫と兎」を書くようになった経緯から。
 何年か前、ツイッターで「動物系女子」が流行りましたよね?
 それを元に、性格の違う二人の女の子が出てくる話を書いてみたい、と思ったのがきっかけです。
 そして、プロットからではなく、キャラクター作りから入りました。実際に出来上がった設定はこんな感じです。

・主人公…立野志貴
 取り立てて特徴のない男性。ただ、もの凄く優柔不断。年相応に調子に乗ったり、大人ぶったりする。酒には強い。

・猫系女子…金子夕美
 気まぐれで、愛想があるときとそうでないときの差が激しい。シックな服装を好む。酒には強い。

・兎系女子…宇崎陽奈
 誰から見ても愛らしい。よく拗ねる。女の子らしい喋り方。ふわふわとしたモテ系の服装を好む。酒には弱い。

 そして、プロットを組み立てました。簡単に言うと、
「志貴は高校時代、陽奈と付き合っていたが、夕美とも関係を持ち、(それが原因ではないが)別れてしまう。大人になり、二人と再会した志貴は、どちらを選ぶのか?」
 といったものになります。
 ……一言プロットを紹介するだけでも、主人公の優柔不断さがよくわかりますね。
 そして、プロットを書いた時点では、「陽奈を選ぶ」というエンディングを考えていました。ところがどっこい、完成したのは「夕美を選ぶ」というお話。
 一体どうしてこうなったのでしょう。



 当初、私はこう考えていました。「高校時代の彼氏と再会して、また付き合うとか夢があっていいじゃないか」と。
 高校時代に実現できなかった夢を実現して、今までの空いた時間を埋めて、未来を共に歩んでいく。素晴らしいじゃない、と。
 そのためには、夕美を徹底的に悪者にする必要がありました。不特定多数の男性と付き合っている設定にして、タバコまで吸わせました。
 それでも、優柔不断な志貴に、夕美を選びたいと思わせる要素を作るため、猫っぽいツンデレさを演出させました。
 するとどうでしょう。作者まで、優柔不断になってしまったのです。「これじゃ夕美が可哀相」と……。

 連載は中断しました。夕美に気持ちが少しでも傾いた以上、プロットの見直しが必要になったのです。
 通勤中、食事中、入浴中、どちらがより良いエンディングなのか、悩みに悩みました。私は完全に、「自分のキャラクターに感情移入」してしまっていました。
 私が小説を書いていることを知っているリアルの人間は夫だけなのですが、彼にも聞いてみました。「猫系と兎系、どっちが好き?」と。
 「そんなもん、人によって異なるやろ。自分で考えなあかん」と厳しい言葉を頂きました(笑)。
 そういったわけで、私は志貴の気持ちになって考えるしかありませんでした。彼の家族関係、友人関係、仕事関係……とあらゆる背景を考慮しました。
 すると、ポッと浮かんだのです。「僕は夕美を選ぶ」という言葉が。このときの感情は、文章に表し辛いものです。何せ、完全に志貴になりきっていましたから。

 私(と志貴)は決断しました。陽奈を負けヒロインにすることを。そして、負けヒロインを描くに際し、ネットの色んな記事を参考にしました。
 「負けヒロイン」と検索して上位に出てくる、みんなの御用達(なのか?)NAVERまとめさんに書かれている、負けヒロインの特徴はこちらです。

・性格がいい
・主人公のことをくん付けちゃん付け
・おだやか
・眼鏡
・幼馴染
・他ヒロインよりも早く告白する
・主人公から大切な存在と思われてる
・最初から主人公に惚れている
・他ヒロインに宣戦布告しちゃう
・主人公のファーストキスを奪う
・料理が得意

 なんの因果か、最初から陽奈はこのいくつかに当てはまっていました。初期プロットの段階から、彼女は負けヒロインになることを運命づけられていたかのようです。
 私はこれを参考に、陽奈の性格をさらに組み直し、負けヒロイン目がけて突っ走らせました。するとどうでしょう。
 「陽奈、可哀相……」。はい、そう思ったわけです。

 それでも、私の決心は変わりませんでした。志貴は夕美を選ぶ。この結末だけは変えまいと、執筆に取り掛かりました。
 そうして、遂に志貴が陽奈を振るシーンがやってきます。そして、夕美のことが好きなのだと彼女に告げる、残酷な時が訪れます。
 非常に親バカな話で申し訳ないのですが、私、ここら辺は泣きながら書いていました。もう、陽奈が可哀相で可哀相で。
 こんな結末にしてごめんね、せっかく勇気出して告白したのにね、明るく笑う描写にしとくけど、家に帰ったら絶対号泣してるよね、と。

 そして、志貴が夕美に告白するシーンでは、猫系の性格付けをしていることもあって、大喜びはさせないよう注意しました。
 しかも、勝ちヒロインである夕美は、負けヒロインである陽奈を知っているという設定です。
 そこで単純に喜ばせちゃ、志貴の苦悩は一体なんだったんだ、ということにもなりかねませんでしたから。
 しかし、エピローグではきちんと志貴に甘えさせました。夕美だって、今までよく頑張ったもんね、もう思う存分デレデレしてもいいんだよ、という気持ちで。

 さて、完結させてみて、私はふとこわくなりました。この結末で、読者さんは納得するのかと。
 執筆に没頭するあまり、今まで私は読者さんのことを考えていませんでした。
 読み手としての自分は、ダブル(もしくは複数)ヒロインものを読んだり観たりするとき、「なんでこっちとくっつけなかったの!」と怒ることもあります。
 それと同じように、「猫と兎」も、「普通は陽奈とくっつけるだろ」と思われないだろうか。

 でも、そこは開き直ることにしました!
 私が書きたかったのは、ハーレムものではない、現実的な恋愛もの。その主軸を揺らしてはいけないと感じました。
 賛否両論、私は受け付けます。それぞれに魅力あるキャラクターになるよう、努力したつもりですから。

 投稿を終えた後、私は「こんなに悩むならダブルヒロインものはもうこりごりだ……」と思いました。
 しかし、またひょっこりと書きだしてしまうかもしれません。
 そのときはどうぞよろしくお願いします。

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