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Spirit
作:夢見獏



記憶の葉(前編)


 枯れ葉が舞う秋。笑顔で楽しそうに登校する森井梓もりいあずさ朝野祈あさのいのり。二人はお互いの家族の話題で盛り上がっていた。
「お姉様は、聖アルジュラ女学院の方に通ってます。他に兄弟はいないんです。梓さんの御兄弟は?」
「え?私は・・・弟が一人と、死んじゃった姉が・・・」
「あ・・ごめんなさい。悪いことを聞いてしまいましたわね」
「いいよ。よく憶えてないから。悲しいとかじゃないの」
「・・・無理しないでくださいね」
「うん」
 しかし、梓はあの話しから、全然元気がなくなり、祈は心配になって、黒瑞輝くろずいひかる竹田尚希たけだなおき、園田あやこに相談した。
「ふーん。それは・・・」
「それは?」
「多分、片岡吹雪さんのことだと思う」
「あれ?苗字が・・」
「えぇ。本当の姉妹じゃないの。梓の家の従姉妹で近所に住んでた片岡怠蔵かたおかたいぞうの一人娘。けど、霊力目当て異形たちの手によって、吹雪さん以外の片岡家の人間は、全員殺されてしまった。森井家は、責任を取るために、吹雪さんを森井聡もりいさとし。まだ若かった梓のお父様が保護したの。その2年後、梓が産まれた。6歳も年が離れていたけど、吹雪さんは、梓を本当の妹みたいに可愛がっていたらしいわ」
「へぇ〜」
「だけど・・・お亡くなりに・・・」
「えぇ。一緒に梓の初仕事の時。梓を庇って、死んでしまった。その時に梓は自分の中に眠っていた破壊の能力が発揮されて、家族全員の手でなんとか止めたの。でも、そんなに叱らなかったらしいわ。しかたないもの。まだ5歳なのに、そんな経験したんだもん。そして、二度と思い出さないように、祖父の手によって記憶を消された」
「そう・・・なんだ」
「梓は防御の方が得意だけど、その気になれば、眠っている破壊能力ですべてを壊してしまう。あの時は、まだ5歳だったから少しで済んだけど、今度はそうもいかないわ」
「・・・」
と、そこへ梓が暗い顔でやってきて、静かに椅子に座った。
「梓?」
「・・・・―!」

ガターンッ

大人しかった梓は急に立ち上がり、椅子は倒れた。
「ど、どうしたの?梓」
「い・・・今、気配が・・・」
「えぇ。よく気づいたわね」
「え!妖ですか?」
「えぇ。とっても姿を消すのがうまいヤツね」
「・・・」
「用心してね。私は、ちょっと見回りしてくるわ」
と、あやこは一人出て行った。
 室内に残された四人は沈黙していた。祈は微かに感じていた。梓の妖への殺気が強くなっていることを。

 その夜。集まった五人は校庭で待ち伏せた。と、その時。校庭に桜吹雪が舞った。
「・・・!皆!その花びらを取ってはダメ!それは・・・」
 しかし、時すでに遅し。美しい桜を梓は取ってしまった。

      ――ドックン・・――

 梓の中で何かが起きた。そのまま動かなくなってしまった。
「梓さん!」
「どうした!?」
「あやこさん!梓さんが・・」
「取ったのね?もう・・」
「あやこさん、この花びらは・・・」
「記憶の狂い桜。取った人間の一番残酷な思い出を再生させる悪夢の桜」
「!?まさか、梓さんは今・・」
「えぇ。少なくとも、吹雪のことを見ていると思うわ」
「そ、そんな・・・」

 ――・・・。

 梓は目の前の光景をただ呆然と見ていた。正月に吹雪と一緒に羽根突きをしていたり、お手玉してたり、楽しそうに遊んでいた。
「吹雪。今日は梓の初仕事。何かあったら・・」
「聡様。梓が危うい時は、私が命を捨ててお守りします」
 聡は吹雪のことを強く抱きしめた。
「吹雪。お前は私の娘同然。“お父さん”と呼んでいいんだ。死ぬな、吹雪」
「・・・うん」
 誓いをたてたその日。悲劇は起こってしまった。ビクビクしながら吹雪の袖を掴む梓。そして、妖が三対出てきて、吹雪は氷の粒を一体に飛ばし、倒していった。防御しか出来ない梓は木の根元でしりもちをついてしまった。
「あ・・・あ・・」
 妖はニタリと笑い刃を向けて直進した。とっさに梓は手を広げて、幼い自分の前に立ちはだかった。
「やめて!!」
 と、叫んだ。しかし、妖は梓を擦り抜けた。そして・・・

        ドンッ!

 ギリギリのところで刃を吹雪が受けた。血が飛び散り、幼い梓の頬に付いた。梓の頬を涙が伝った。
「い・・・いやぁぁぁぁ!!!!!」
 崩れるように座り込んだ梓。刃は嫌な音をたてて抜かれた。口から血を吐く吹雪は幼い梓の中に倒れた。血まみれの右手で梓の頬を撫でる吹雪から微笑みが零れ、最後に。
「生き・・・て、梓・・」
 右手は力尽き、梓の膝の上に落ちた。顔は俯き、微笑みを浮かべた吹雪の顔に涙が落ちる。
「う・・う・・うぁ・・・うわぁぁぁぁ!!!!」
 叫び声と同時に光りが広がり、その力はすべての周りのものを吹き飛ばした。異変に気づいた聡とその他の家族は、竜巻の起こっている場所に走る。
「梓!吹雪!!」
 聡はそこで目にしたのは、血まみれの吹雪を抱いて泣き叫ぶ梓の姿だった。


       ――その時。父は梓に怒りの表情を向けた――












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