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Spirit
作:いとむぎあむ



Spiritという名の組織



 山々に囲まれた都市伝説の発生地・小ノ江町。その町の山奥に存在する、心霊現象を専門とする秘密組織「Spirit」。霊力を持つ土地を異形の魔物たちから守り続けている。そして、この町には、霊地の源と呼ばれる「聖羅の地」が存在し、現在そこには学園が建っている。そこを警備するべく送られた5人の霊能力者。森井 梓、竹田 尚希、朝野 祈、黒瑞 輝、そして魔女の異名を持つ凪下 あやこ。強力な霊力を持つこの5人の霊能力者たちの戦いが、今。始まろうとしていた。

一章 双子の子守歌

 聖羅の地に建つ「聖羅学園」。そこの中等部2年の梓、尚希、祈、輝。そして、高等部1年のあやこ。普段は、学校生活に溶け込み、学生として生活している。こんな平和な日々がいつまでも、続けばいいと思った。しかし・・・。
 あるゲーム店。小学生くらいの男の子が、上の方にあるゲームを手に取る。
           〜幻覚ゲーム〜
 紫色の字でそう書いてあった。男の子はそれを買ってしまった。
 その夜。暗いリビングで、テレビの電源を入れ、ゲーム機にそのソフトを入れた。画面に大きく「幻覚ゲームへようこそ」と浮かび上がった。しかし。
「あれ?何にも変わんねーじゃん。・・・・!?」
と、その時。画面から、細く白い手が伸び、コントローラーを持つ男の子の腕をがっしりと、掴んだ。そして、そのまま画面の中に吸い込まれた。
 気がつくと、そこは赤黒い世界だった。すると、後ろで声がした。
「ようこそ。ゲームの世界へ。私は、この世界の主・あやね。この世界に入ったからには、もう元の世界には、戻れない。あなたは、ここで死ぬの。」
と、あやねは、人差し指を男の子の額に押しつけた。すると、男の子の体は炎に包まれた。
「うわわわわわ!!」
悲鳴を上げ、男の子の体はあっという間に、灰となった。あやねは、その頭蓋骨を拾い上げ、砕いて、口の中へと運んだ。ゴリゴリ音を立てて、口の中で噛み砕く音がした。すると、向こうから、あやねにそっくりの子が、あやねの真似をするように、骨を口に運んだ。
「良い骨でしょ?あやめ。」
「えぇ、お姉様。霊力が、ちゃんと入ってますわ。」
二人は、会話しながら、夢中で骨を口に運んだ。すべて食べ尽くすと、あやねが鏡を出した。そこには、聖羅学園の中等部が映し出された。
「次はもっと、霊力の強い子を食べましょう。」
と、舌で唇を舐めた。
 次の日の朝。中等部の新聞部に集まった5人。尚希が暇そうに新聞の字を目で追った。
と、その時。尚希が、椅子を倒して、勢いよく立ち上がった。
「!?なっ、何よ。脅かさないで!」
と、梓が怒鳴った。それを無視して、尚希が机の上に新聞を広げた。
「皆。これを見ろ。」
と、ある記事を指差した。
『昨夜午前0:00頃。〇〇市の小ノ江町で、小学4年生の××君10歳が自宅のリビングで、焼死体として発見された。現場には焼けた後がないため、他の場所で殺害されたもようです。××君は、昨晩に一人ゲームをやっていたらしいです。ゲーム名は「幻覚ゲーム」だそうです。』
「これが、どうしたのよ?」
「おかしくないか?他に焼け後がないなんてさ。焼けた死体をなんで、わざわざ家に運ぶ必要が、あるんだ?」
「確かに妙だな。」
と、輝も眉を寄せた。すると、あやこが一言呟いた。
「双子の吸血鬼。」
「え!?」
「ゲームで人間を誘き寄せ、自分たちの世界に引きずり込ませてから、その体を焼き、霊力が染み込んである骨だけを食らう。そんなバケモノの話を聞いたことが、あるわ。」
「血じゃなくて、霊力か・・・一理あるな。少し調べてみよう。あやこさんは、祈と現場の方へ。梓と尚希は、ここで待機。俺は、ゲームの行方を追う。」
「OK!」
あやこと祈は、現場へ急いだ。輝は自分専用の椅子に座り、腕を組んで、意識を集中させた。
 輝の能力は二通りあり、一つは、悪霊を服従させることができる能力。もう一つは、第三の目を開き、いろんな場所の情報を集められる能力。輝はグループのまとめ役であり、情報調達役でもある。しかし、霊能者にしか見えないゲームを探すのは、そんなに簡単ではなかった。
 その頃、現場に向かった祈とあやこ。他の一般人には見えていなかったが祈たちには、はっきりと見えていた。すでに被害者の家には、邪気が取り巻いていた。
「・・・このぶんだと、この家を使って、実体化する可能性があるわ。輝がゲームを見つけてくれると、いいんだけど・・。」
 あやこは渦巻くその家を遠い目で、見つめる。
 そして、輝はゆっくりと目を開けて、立ち上がった。
「全員呼び戻せ。ゲームの居場所がわかった。今晩、その場所に向かう。」
「わかった。」
           さぁ、悪夢のような一夜の
              始まりだ。

二章 幻の魔の手

 その日の夜。5人は、ゲームのある被害者の家に向かった。すると、テレビの電源が入っていて、「幻覚ゲームへようこそ」と、浮かび上がる。
「作戦はこうだ。あやこさんと俺と尚希は、ゲーム内から攻撃する。梓と祈は、外から実体化を防いでくれ。よし。行くぞ!」
と、輝、あやこ、尚希は、画面の中へ飛び込んだ。
 ゲーム内に入った3人。そこは、赤黒い海の真ん中。その上に立っていた。コツッ・・・コツッ・・・と、向こうの方からあやねとあやめが、やって来た。
「三人同時に来てくれるなんて、手間が省けたわ。ねぇ、あやめ。」
「そうね。お姉様。」
と、ニコニコ笑う二人を見て、あやこが炎を剣型に変えた。尚希が拳を握ると、拳の周りを風の帯が取り巻いた。
「さぁ、行くわよ。」
「あぁ。」
あやこは、あやねの頭上を飛び、剣を立てた。しかし、同じ炎使い同士で、あやねも炎の剣で、あやこの攻撃を受け止めた。
「なっ!・・・やるわね。だけど・・」
すると、あやこの炎の強さが増した。
「何!うっ・・うわわわわぁぁぁ!!!」
あやねは、火炎車の中で焼かれた。
「お姉様!」
あやめが、とっさに叫んだ。
「よそみすんな!」
と、尚希の拳が、あやめの体を突き抜けた。
「ぎゃぁぁぁぁ!!」
うめき声を上げ、その体は崩れるように倒れた。後始末は、輝の悪霊たちがやった。
 次の日。そのゲームは、不良品として処分された。そして、あの死体は別人で、本物の彼は、衰弱した状態で、親のもとに帰ってきた。どうやってあの炎から逃れたのかは、あやこたちにも、わからなかった。
 昼休み。屋上で鳥の足に報告書をつけて、飛ばすあやこ。
「いいわね。ちゃんと、届けるのよ?」
と、鳥を飛ばした。
 Spirit本部にその報告書は、届けられた。最高幹部が、報告書を読んで、小さく笑った。
「ククッ。なかなか面白いな。さて・・・」

          ―次はどんな敵がやって来て、
          どんな面白い話を聞かせてくれるかな?―

              〜おわり〜












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