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夫婦愛をテーマにアメリカ旅行を題材にして書いていきたいと思ってます。旅行ガイド的、要素もとりいれて描けたらとおもっております。
アゲイン
作:カトラス



楽しい旅行に向かって


 私達夫婦は関西国際空港の北ウィング9番ゲートにいた。
 ここにいる理由はもちろん、海外旅行の為なのであるが……
 私の気分はとてもじゃないが、海外旅行に行くという晴れやかな気分などではなかった。
 なぜなら、私は不治の病である末期の肺がん患者だからだ。
 医者から死の宣告を受けたのは、ほんの数週間前の出来事であった。いまだに医者が冷たくいい放った言葉が脳裡にやきついている。
「残念ですが……末期の肺がんです。余命は長くもって、半年かと」
 最初はただの風邪だと思っていたのに。体の調子が悪くなったのが、死の宣告をうける三ヶ月前からだった。その時の私は、偶に咳がでて、たんがよくからむといったものだった。きっとタバコの吸いすぎだろう程度に思っていたが、現実は甘くなかった。症状が出始めたころに、病院に早くいっていたらとか、いろいろ考える。しかし、何で私がこのような目に合わないといけないのだろう。他人に迷惑をかけずに、決して贅沢もせず、妻の為に早くマイホームを立ててやろうと必死に働いていたのに。今となっては、子供がいない事が救いだとも思う。私がいなくなっても、子供がいなかったら妻も、次の結婚がし易いだろうと思うからだ。しかし、ほんとに辛い。体がしんどいワケではない。心が辛いのだ。
 私の心の声が叫ぶ! 死にたくない、死にたくない、死にたくないよ。

 私の名前は三浦 祐介。歳は32で、妻、貴子とは結婚して、ちょうど10年目である。職業は地元の小さな信用金庫で働いている。現在は病気治療のため休職扱いになっている。
 旅行の目的地はアメリカである。妻、貴子と新婚旅行に行った思い出の場所。医者からは旅行などもってのほか、すぐに入院して抗がん剤で治療しなさいときつく言われたが、なにをいまさらと思う。最初は入院して、治療に専念しようかと迷ったが止めた。どうせ、治療といっても、がん細胞を切除して直せるレベルでもないだろうし……それなら、あと数ヶ月、妻と少しでも一緒に過ごしたかったから。妻にその事をいったら、初めは、涙をうかべて反対していたが、自分の思いをぶちまけたら、理解してくれた。そして、それなら旅行にでもいきましょうと提案してくれた。
「あなた、今まで働きづめだったでしょう。どっか行きましょうよ。楽しみましょうよ、何かの本で、笑ったり、楽しんだりしたら、ガン細胞の増殖がおさまったって聞いた事があるわよ! だから、これからは、笑って生活しましょうよ。奇跡だってあるわよ、きっと、きっとね」
 そうだ、妻の言う通りだと思った。くよくよしてたって良い事なんかないと思う。でも、やはり、ウキウキした気分にはなれなかった。
 旅行の段取りは全て妻がしてくれた。妻の話では、とんでもなく豪華なプランであった。
「贅沢にいきましょうよ」
 私達にお金の心配は無かった。なぜなら、生命保険のリビングニーズという契約が適用されたからだ。すぐに保険会社からは私の銀行口座に5千万円という大金が振り込まれたからだ。いわゆる生存前給付金、私のように死の宣告を受けたものだけが得られる唯一の特権といったところだ。
「全部使うつもりで、旅行楽しみましょうね」
 愛する優しい妻は。そう言ってくれた。
「全部って、ダメだよ! 俺がいなくなった後、おまえの生活のための金なんだぞ」
 私が強く言っても、妻は笑顔でこう言うだけだった。
「私の事は心配しないでいいの。生活なんて、なんとかなるわよ! だって働いたらいいだけでしょう。それに。私美人だから、すぐに金持ちの男性がすりよってくるわよ」
 お世辞にも美人だとはいえない妻だが、性格はぴか一に明るく、そして優しい。私にはもったいない妻。
 あぁ、死にたくない。死にたくない。死にたくないよ!

 出発ロビーにいる人々。私達のように、これから出発する者、日本旅行を楽しんで、これから帰国する外国人の人、それぞれが、いろんな思いで飛行機の出発を待っているロビー、出発30分前になって、ようやく、私の心が晴れた。
 よし、思いっきり、旅行を楽しもう。くよくよしたって一緒じゃないか! 妻との思い出をいっぱい作るぞ!
「あなた、何、なにぃ。何かおもしろいことでもあったの?」
 私が楽しそうな表情をしていたのか、妻が聞いてきた。
「うん。旅行の事、考えたらウキウキしてきたよ! おおいに楽しもうじゃないか」

 ロビーからは搭乗を促すアナウンスが流れた。搭乗の順番は一番高い席をとっているものからだ。
 私達はファーストクラスに初めて乗る。搭乗券を握り締めて、搭乗ハッチに進んだ。金髪の客室常務員が一列にならんで、たどたどしい日本語で、「ようこそ、ユナイテッド航空へ」と言って頭を下げている。
 そして、コックピット正面前のゆったりとしたソファ式の座席に腰をおろした。
「凄いわね、凄い、凄い」
 妻はおおはしゃぎであった。妻の満面の笑みを見て、私は楽しい旅になりそうだと実感した。いや楽しい旅にしようじゃないか!







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