のんびり行こうよ?(4/14)縦書き表示RDF


黄兎=ウサギ妖怪・翡翠と同居し始めたゆすら。
我が儘間な翡翠に振り回され、ゆすらは疲れ気味。
騒動たっぷりの同居生活。さてはて、どうなることやら…
霊感少女・神崎ゆすらと、口が悪くて我が儘だけど、なぜか憎めない奴なウサギ妖怪・翡翠の珍道中。
のんびり行こうよ?
作:維月十夜



陣取り合戦!


ウチには妖怪が一匹、棲みついている。
それは、今あたしのベッドを占領しているコイツ――‐‐‐翡翠だ。
「もう、寝苦しいのよ…ちゃんと、アンタ専用の寝床ラビットケージ用意してあげたじゃない」
「いやだね、こっちの方が、寝心地がいい。ゆすらばっかりズルいぞ」
茶色い兎が、コロンコロンとベッドの上を転がりながら言う。
邪魔で仕方がない。
以前、一度だけベッドに寝せてやったことがある。
それで味を占めたのか(絶対そうだ…)コイツは図々しくも毎晩ベッドを占領するようになった。
「はいは―い、カゴに戻ろうね?」
ゆすらは、翡翠を抱き上げて、ケージの中に入れてやり、鍵をかけた。
「おい、コラゆすらっ、てめーっ…んな場所ちっとも嬉しくねえよ、出せってば!」
「だって、毛抜けるじゃないの…イ・ヤ・よ、じゃぁおやすみ」
バシン、と勢いよくドアが閉められる。
「あ!くそぅ、ゆすらの奴めぇ…あうぅ、下心だしたのが、いけなかったのかぁ?」
翡翠は、兎らしからぬ、胡座あぐらをかきながらぼやいた。
もう、言葉を話す時点で、普通ではないのだが。
「しかしだな、あいつは…重大なミスをした!こんな鉄檻、食っちまえば出られるんだよなぁ」
兎の手で、ピースをする翡翠。
そんな悪巧みをしているが、ケージの中が狭いので、思いっきり頭をぶつけてしまった。
「ぐおっ!?…てぇ〜、狭い場所はキライだ!」
虫食い穴を開け、ケージから脱出した翡翠の前に、また新たな難関が、立ちはだかっていた。
「次は、これだな」
ゆすらの、部屋のドアである。
「ったくアイツは、毛が飛ばなきゃいーんだろ?要は、形を変えりゃいいって事だ」
翡翠は、身震いを一つすると、水飴のように、形を歪ませた。
どんどん形がなくなり――‐‐‐それから、大きく膨れあがったかと思うと、そこで、ふいに動きを止めた。
のそり、と人影が起き上がる。
「あの姿だから、ナメられたんだな…よし、これで問題解決!アイツばっかし、いい思いさせねぇぞ」
茶髪をガシガシ、と掻いて、翡翠はドアノブに手をかけた。
居候のクセに、生意気です。
「さーあてとっ、とっととゆすらの奴を叩っ起こし…ぶへっ!!」
ドアを開けた翡翠の顔に、枕が直撃!
「ブツブツと、うるさいわね…なんなのよアンタはっ」
眉間にシワ。
ゆすら、不機嫌モード全開である。
「ってて、ぬぁにしやがるっ、バカゆすら!」
ゆすらは、ふいを喰らって瞠目した。
「え―――――あの、どちら様?」
いきなり現れた謎の美男に、ゆすらは半歩後じさる。
「見て分からんかっ、翡翠だよっ!」
「え?―――‐‐‐あ、そう」
「そうだ」
二人の間に、しばしの静寂が流れる。
「じゃ、そういうことで、おやすみ」
「くぉら、現実逃避すな!」
部屋に引っこもうとしたゆすらの髪を、翡翠は慌てて捕まえた。
「痛ぁい、もう!アンタ、人間にもなれるのね」
「当たり前だっ、あんな狭い場所に閉じこめやがって…許さねぇぞ」
ゆすらに、青筋が浮く。
この兎は、居候のクセに、どこまで我が儘なんだろうか。
「もう、何が不満なのよっ、ちゃんと寝床も用意してあげたのに」
「全部だっ!俺ぁこれからは、この格好で過ごすことにした!」
「だから、なに?」
「部屋だよ、部屋よこせ」
どうやら、コイツは自分専用の部屋が欲しかったらしい。
両親が亡くなり、使用人も、もういないので部屋は腐るほど余っている。
だから、別にいいのだが。
欲しいなら欲しいと、素直に言えばいいのに。
「いいよ、廊下の脇の和室使って」
「ホントか!サンキュ」
ぱああ、と一気に顔を明るくする翡翠。
現金なものだ。
「布団は押入れね」
「おう!」
意気揚々と跳ねていく翡翠を尻目に、ゆすらは、深〜く溜息をついた。
「あ―――‐‐‐これで、やっと眠れる」

 しかし、ゆすらがベッドに入った頃には、すっかり夜が明けていましたとさ…
まあ、人生…焦らず急がず。
のんびり行こうよ?












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