のんびり行こうよ?(10/14)縦書き表示RDF


霊感少女で、妖怪始末人の彼女・ゆすらと甘い生活を送っている翡翠。
帰ってきた居候・猫又の一牙も加わってちょっと一波乱のご様子。さらに、ゆすらの(数少ない)人間の友達が遊びに来ることになって!?
のんびり行こうよ?
作:維月十夜



あわや!


今日のゆすらは、なんだか忙しそうだ。
掃除機とやらをかけたり(床に寝ていて、2度ほどかれたが。)窓を拭いている。
「なあ、誰か来るのか?」
窓を拭いているゆすらの膝に、小型化した翡翠が、ちょこんと前肢を乗せた。
「友達が来るのよ…ここ最近、掃除サボってたから、やりごたえあるなぁ」
腰をさするゆすらに、翡翠は人の姿に戻った。
「友達って、人間のか?」
言われて、ゆすらは一つ瞠目した。
したが、職業柄、人間より、妖怪の知り合いの方が多いので、特に気にはしない。
「そう、綾子っていうの。旅行の時に一緒にいた子よ」
翡翠はおぼろに、ゆすらがあの時、人を待たせていると言っていたのを思いだした。
「ああ、あの時のな」
「で…お願いがあるんだけど、聞いてくれる?」
「願い?」
嫌な予感に、翡翠は小さく身震いをしたのだった。

 「なんでだよ、フツーの兎のふりしろって…無理だって!」
「お願いよっ、だってビックリするでしょ?ペットは喋らないの。インコか鸚鵡おうむ以外はね」
「じゃ、念話ならいいか?よっぽど鋭いヤツじゃねぇと聞こえない」
不機嫌に、鼻の頭にシワを寄せる翡翠を、ゆすらはそっと撫でてやる。
「ええ。悪いけど、そうしてちょうだい」
「仕方ねぇなあ、じゃあ報酬は…」
言った瞬間、唇に柔らかな感触。
ついばむような優しいキスに、翡翠は、目を剥かずにはいられなかった。
「これで、どう?」
へたり込んだ彼を抱き締めて、悪魔的に、ゆすらはにっこりと微笑んだ。
「…分かったよ」
彼女の腕の中で、翡翠の姿が歪む。
小兎になると目を閉じ、スリスリとゆすらの胸に甘えた。
「っか‐―――‐‐っこの、どスケベ…」
どこからか聞こえた一牙の声に、翡翠は慌てて飛び起きた。
「なっ…てめえ、見んじゃねーっ」
赤毛の子猫になっている一牙は、テレビの上に寝そべりながら、翡翠を茶化す。
もしその時、翡翠が人型だったなら、やかんの様にまっ赤になっているだろう事は、ほぼ間違いないだろう。
「ゆすらも、なーんで…こんなガキがいいのかねぇ」
「るせえっ、年増は縁側で伸びてろってんだ!」
翡翠も、負けじと背中の毛を逆立てて毒を吐く。
「おう、やんのか?ガキんちょ…」
ぎゃいぎゃい、とやかましい二匹。
犬猿の二匹を放置しておいたら、どんなことになるか分かったものではない。
「あぁ、こら…やめなさい、二人とも。翡翠もね、いい子だから」
と、ゆすらが二匹を止めた瞬間、同時に呼び鈴が響いた。
「おでましみたいね。は‐――‐い!」

 「う゛‐――――‐‐」
翡翠は、鼻の頭に最大級のシワを寄せていた。
なにを隠そう、不機嫌なのだ!
ゆすらの友人(綾子とかいうヤツ)は、どうやら無類の動物好きのようだった。
こっちが疲れるほど、執拗しつように構ってくるのだ。
「あら、ウサちゃんがいる!だっこしてもいい?」
綾子は手放しに喜ぶと、翡翠を抱きあげた。
「うん、この子、翡翠っていうのよ?」
(怒ってるわね、大丈夫かしら?)
ゆすらは内心、一人ごちる。
(ウサちゃん!ウサちゃんだってよー…ああ、腹いてぇ)
テレビの上で笑い転げる一牙に我慢できず、翡翠は前足で、シッシッという仕種をした。
(うるせえな、バカ猫…どっか行きやがれ!)
「プフっ…」
「おとなしいねぇ、よしよし…」
いきなり、ムギュウゥ、と頬を寄せてきた彼女に、翡翠は慌てて顔をそむけた。
(ぶへっ…オイゆすら、コイツ、なんか臭ぇ!鼻につーんときたっ)
花か、なにかとも異なる臭気が、翡翠の小さな鼻を灼いた。
内心、早く離して欲しい、と切に願う翡翠である。
(ゆーすーらー…早くどうにかしてくれ、鼻がもげる)
「あ、綾子…翡翠、そろそろ返してもらってもいい?」
ゆすらが、助け船を出して受け取った翡翠は、心なしかぐったりしている様だ。
「うん、またね、翡翠ちゃん」
名残惜しげに、綾子は翡翠を一撫でした。
(ちゃん、じゃねえっ…俺ぁ男だ!)
床に降ろしてもらった翡翠は、念入りに、身繕いを始めた。
「嫌われたかな?」
「ううん、大丈夫。あの子、人見知りするのよ」
ははは、と軽く笑って誤魔化すが、翡翠の視線が痛い。
(怒ってる、すっごく怒ってる…)
「そっか…」
なにか、寂しげな雰囲気になってしまったので、ゆすらは急に素っ頓狂な声をあげた。
「あ、ちょっと待ってて…あたしったら、お茶も出さないで。淹れてくるね?」
ぱたぱた、と台所に走っていったゆすらを見送って、綾子は、足元に寄ってきた猫一牙を抱き上げた。
「ねえ、ゆすら…なんか変わったよねえ?」
一牙は、にゃあと鳴いて、曖昧に相槌あいづちをうってやる。
『それは、俺にも分からねぇ』と、左右色ちがいの瞳を、三日月の形に細めて見せた。
「一牙と、なに話してたの〜?」
蓬色よもぎいろの湯飲みにお茶を注ぎながら、ゆすらは上機嫌に尋ねた。
「二人だけのナイショ。ねっ、一牙」
困ったように、ぶみゃあ、と鳴いた一牙には、後でたっぷりと事情聴取を受けてもらうことにして、ゆすらは『そう』と笑みを返した。
「そうそう、ゆすら…サークルの話なんだけど、あんまり顔出さなくなったじゃない、どうしたの?」
テーブルの下でぶすくれていた翡翠は、どうも話について行けないようで、頭には無数の、クエスチョンマークを浮かせている。
(さ、さぁくるって、なんだ?)
「バイトとか、最近忙しくてね」
(誤魔化し、きくかしら…)
内心、またもハラハラしたが、これも通ったようだ。
「そうなんだ、ここだけの話なんだけど、アンタ、結構モテてたじゃない?ほら、あの…え〜っと、なんていう名前か忘れたけど、サークルの男連中の中で、アンタに気があるってヤツ。そいつに、昨日しつこく聞かれちゃってさ…」
(ぬぁにっ!?ゆすら、本当かっ)
勢いよく起き上がった瞬間、すこんっ、とテーブルに頭をぶつけた翡翠は、危うく声を出しそうになり、なんとか、鼻を鳴らしてその場を誤魔化した。
(ぬおぉぉ‐‐――――‐‐っ、俺という男がいるってのに〜っ)
テーブルの下で、頭を抱えて苦悩する翡翠だが(一見には、痛がっているように見える。)、ゆすらの一言に、ぴたりと動きを止めた。
「困るわ…それに、余り憶えてないのよ。誰がいたかなんて」
「代わりに、断っとこうか?」
「ええ、そうね、お願いするわ」
うるうる、と大きな瞳を潤ませる翡翠。
まったく、現金なものだ。
ほっ、と安心した様子のゆすらに、綾子は、にんまりと笑った。
「アンタの好きな人って、どんな人?」
「えっ、なっ、なんで?!」
まさか、聞かれるとは思っていなかったのだ。
ゆすらは、酸素不足の金魚のように、口をぱくぱくさせた。
「分かるわよぅ、それくらい…アンタを見てればね。なんか雰囲気が変わった、柔らかくなった、っていうのね」
そろそろ、とテーブルの下から出てきた翡翠が、グイグイとゆすらの腕の中に頭を押し込む。
居ずまいを整えると、幸せそうに目を細め、ペロペロとゆすらの頬を舐めた。
(ここにいるだろ?ここに…)
「そうね、我が儘で、口が悪くて、態度もでかくて…」
彼女の言葉に、少なからずめり込む翡翠。
「でもね、好きなの」
「こりゃ、かなり重傷だわね…」
うっとりというゆすらに、綾子は呆気にとられる。
しかし、少し違和感を感じて、綾子はゆすらを見た。
(この子の想い人って、まさか…)
いや、正しくいうなら、ゆすらに熱烈なキスをしている翡翠をだ。
彼女といて、平気な男がいるだろうか?
失礼な考えだが、見えないモノが見える彼女なら、あり得ないことではない。
なぜか、こういう『カン』だけは鋭い綾子である。
「それって、まさか…この子?」
綾子は、翡翠を指さす。
がちんっ、と一気に石化するゆすら。
翡翠は相変わらず、熱烈なキスをくり出している。
石化したが、なんとか持ち直し、誤魔化し通すことに成功した。
「やあだ、なに言い出すかと思えば…この子は、あたしに懐いてるだけ。好きな人は、別よ」
「そう…?あんたのことだから、てっきりその子が妖怪で…とか言うかと思って」
「なに言ってんのよ、もう」
(う〜ん、さすが…鋭い、全部あってるわ)
誤魔化すことに精一杯で、違う意味で目を潤ませている翡翠に、ゆすらは気づかない様だった。

 綾子が帰った後、一番苦労したのが、拗ねた翡翠のフォローだった。
「どーせ俺なんて…」
とか何とか…。
始終、夜のベッドの中で呟かれては、堪ったものではない。
「も〜…だから、ゴメンて言ってるじゃない」
「すげぇ、傷ついたんだけどなぁ〜…」
子供のように聞き分けのない彼に、泣きそうになる(すでに半ベソ)。
「も〜…いい加減にしてよぉ」
翌日、ゆすらは、腰痛で起きあがれなかったという。

 人生…楽あれば、苦あり。
ここは一つ(どういう数え方だ…)、のんびり行きましょうや?


こんばんわ、維月十夜です。
読者様方、ここまでご苦労様です。
今回の『のんびり行こうよ?』ちょっと翡翠×ゆすらの、なにげに18禁ぽくなってしまいました…。
知識もないクセに、稚拙ですぅ(>_<)
こんな作者でもよろしければ、今後ともよろしくです。
それでは、失礼致します。











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