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偶然という名の奇跡〜愛の記憶喪失〜
作:城ノ内 ジョウ



金曜日の出来事


金曜日の出来事

今日もいつもの様に何気なく学校の学習メニューを終え、帰路に着いた俺は、これまたいつもの様に今日の夕飯の献立を考えていた。
飽きたとはいえ、料理は俺にとって毎日しなくてはならないものの一つ。料理が面倒なら、外食したり、出来上がっているものを買ってきたりすればいいのだが、外食は外食で面倒だし、出来上がっているものはどうも好きになれない。第一、自分で金を稼いでいない学生の分際で毎日外食をするのは生理的に受け付けない。
 毎月普通に暮らしている分には困らないだけの仕送りを貰っているのだが、使わないで済むなら、使わないに越したことはない。自分で料理する、というだけで節約できるのならば、自分で作るべきだと勝手に考えているのだ。
 やってみれば分かるが、一口に料理と言ってもかなり幅が広い。最近では飽きを紛らわせるために、一般の家庭料理から少々逸脱したものにまで挑戦している。
「おい、成瀬!聞いてくれよ!」
途中で料理の本でも買って帰ろうかなと思っていたところで、後ろから誰かに話しかけられた。
反射的に耳が拒否するようなフレーズで話し掛けてきたのは、腐れ縁でもう十年以上同じ学校に通っている麻生、その人だった。
俺の歳で十年以上というと、小学校よりも前からの付き合いになる。幼稚園からの付き合いだ。正直物心付いたときにはこいつがいたと言っても言い過ぎではない。もう友達というより家族に近い。
「なぁー。聞いてくれよぉー」
 麻生は無視を決め込んでいた俺に、纏わり付いてきた。
「分かった。聞いてやるからすぐに離れろ」
 俺がそういうと麻生は、さすが親友、とか言って素早く離れると早速話し始めた。
「デデデデデデートトオオすうするこっとになった」
・・・。日本語でしゃべってもらいたい。生憎だが俺は地球語、それも日本語しか、マスターしていないし、マインドスキャンも習得していないんでね。
「なんだって?」
「だからデデデデエートが決まったんだって!」
興奮して頭がおかしくなってしまったようだ。しばらくこの間抜けなやり取りが続いた。何回聞いても『デートする』以上の情報が得られない。麻生は麻生で俺が分かってくれないことに憤りを感じたようで、一生懸命喋り始めた。
しかしこれまたよく分からないので、この辺のやり取りは割愛させてもらう。
 麻生の話を纏めると大体こういうことになる。
「つまり、以前から好きだった女子と二人だけのデートが決まった、と?」
「そうだ!だからそう言ってるじゃないか!!」
悪いが全然分からなかったね。
 麻生の好きな人とは笹倉京子といい、隣のクラスの女子である。今まで複数では遊びに行った
ことがあったらしいが、二人きりは今回が初めてらしい。
延々今までの遊びに行ったときのことやら会話やらを話しまくり、最終的には自分は相手に好かれているに違いないなどという妄想じみた結論を下していた。正直興味が全くないのだが、話し出したら止まらないのも聞かないとうるさいのもよく知っているので大人しく聞いていた。
 しかしこいつから女子を誘うのは珍しい。
なぜならこいつはもてるのである。馬鹿でうるさいことを除けば、はっきり言って顔はいいし、背も高いので見栄えはいい。よく女子と遊んでいるのだが、誘われるほうなのだ。意外だなと思っていたのだが、そこまで興味も無いし、せいぜいデートがうまくいってほしいと思っただけで大して考えなかった。
 そして帰り道は麻生の妄想デートを三通りくらい適当に聞き流しながら家に向かった。
 この時点で非日常に突入したとはさすがに気がつかなかった。俺もまだ十五歳だし、習わぬ経を読んだところで所詮門前の小僧は小僧以外の何者でもなかったようで、圧倒的に経験値が足りなかったね。












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