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シンジリバースパニック!?
作:YY



PHASE-11【戦場の傷跡】


PHASE-11【戦場の傷跡】


「エヴァンゲリオン発進!!」

作戦部長の号令がかかる。

初号機が射出ポットから、強烈なGを受けているパイロットと共に出て来る。

「目標、初号機の迎撃可能ポイントまであと2分!」

ミサトがシンジに作戦を説明する。

「いい?シンジ君。敵のATフィールドを中和しつつ、パレットライフルによる一斉射撃。練習通りにやれば大丈夫よ。やれるわね?」

『はい』

「弾頭には劣化ウランが使われているから、一斉射といっても……」

『撃ちすぎると煙で目標を視認出来なくなる恐れがある、ですね?』

「そうよ。よくわかっているようで安心したわ。危険もあるけど私たちが全力でサポートするから大丈夫。冷静さだけは失わないで。」

『はい』

「それと……」

『……?』

「……必ず生きて帰ってくるのよ」

『はい!!』

元気な声でシンジは答え、パレットライフルを手に取る。

今のやり取りは、シンジの心を暖かくするのに十分だった。

前回の世界ではかけられなかった言葉。

絶対に勝ってやる、という気合が入る。

それに……。

(NERVは護る!あそこには……、あそこには綾波がいるんだ!)

それが今のシンジの全てだった。

『碇シンジ、エヴァ初号機、いきます!!』

そう言ってシンジは、パレットライフルのトリガーを引いた。




−避難シェルター−

使徒戦が始まると、予め決まったシェルターへと大多数の人間は避難する。

それは、第壱中学校の生徒たちも例外ではない。

シェルターの中で、第壱中学の生徒達はグループごとに固まっている。

そんな中、トウジとケンスケは一緒の敷物に座っていた。

ケンスケは自分のハンディミニテレビを起動している。

だが、おもむろに悪態をつく。

「ああ〜ダメだ!まただよ!」

「どうしたんや?」

「外の様子を知りたいけど文字ばっかし。折角のこんなビッグイベントなのに〜!」

トウジはそのテレビを見ながら答える。

「お前ほんっまに好きやなぁ、こういうの」

「だってさ、本物の怪獣との戦いだぜ!男のロマンだよ!ああ〜一度だけでいいから見てみたい〜。この次はいつ来てくれるかわかんないしなぁ」

「やめとけやめとけ。死ぬだけや。そういうんはあのボケカップルに任せとこうやないか」

「何だよトウジ。トウジは見てみたいと思わないのか?」

「思わへん」

「ちぇっ、内緒で一緒に外に行こうと思ってたのに」

「そりゃ残念やったな。あとで綾波やシンジに聞けばええやないか」

「守秘義務があるさ。教えてはくれないよ」

「そか。まぁシンジはともかく、綾波は結構冷たいしのぉ。そんなんなくとも教えてはくれんやろなぁ」

「冷たいって?」

「いくら話しかけても返事もせぇへん。ニコリとしたことも無かったやないか。この前、シンジの告白の時くらいやで。表情があったんは」

「……トウジ。これ見てみろよ」

そう言ってケンスケは、ビデオのメモリーを再生する。

「ん?なんや?」

そこは学校の屋上。

シンジとレイが映っている。

「なんやこれ?」

「碇が転校してきた日の昼休みだよ」

「お前、デバガメしたんか……」

トウジが冷めた目でケンスケを睨む。

「ち、違うよ!ちょっとクラスでいろいろあって、あの二人のその後の記録を取る羽目になったんだよ!」

もちろん、誰かに見せたりは一切していないが。

「デバガメには違いないやろが」

「と、とにかく!ここ、ここ聞いてみろよ!」

そう言ってケンスケは音を大きくする。



『綾波、今日は何か学校に用事があったの?』

『……いいえ』

『えっ、じゃあどうしてあんなに学校に行きたがったの?』

『……独りは嫌だから』



「!!!」

トウジはビックリしている。

「どうだ?」

「綾波にも寂しいっちゅうもんがわかってたんやな」

「ああ」

「えらいすまんこと言ってもうたな」

「まだ続きがあるぜ」



『……碇君、私はもう独りでいるのは嫌……、だから……碇君の傍にいさせてほしい……』

抱きしめられたレイの顔は、微笑んでいる。



「ほうか……。綾波は自分でシンジっちゅう自分の支えになってくれる人を見つけたんやな」

「そのようだね」

「シンジもええ奴やし、お似合いやな」

「そう、なのにトウジときたら……」

「なんや?」

「お前、人の話も聞かずに碇を殴ったろ?」

「あ、あん時は……」

「碇は綾波を護るためにエヴァに乗ったらしいぜ」

「な、なんやと?」

「つまり、今のあの綾波は、碇がいて初めて成立するのさ」

「…………。謝ったとはいえ、シンジにも、綾波にも悪い事したな……」

「そうだよ。トウジ、俺の制止も無視したんだからな」

「う……」

「トウジ、悪いと思ってんならさ……」

「……なんや?」

「外に出て、二人を見守らないか?」

「な、何ぃ、んん……!!」

そこまで言ってトウジは口を塞がれる。

「声がでかいって!いいか?お前は二人に悪い事をしたと思ってる。なら、その二人が味わっている危険を、少しでも知っておく必要があるんじゃないのか?」

「な、なんでワイが……」

「あ〜、綾波と碇、可哀想だな〜」

はぁ〜、とわざとらしく溜息をつくケンスケ。

「ぐ……、わ、わかったわい!全く、ホンマは自分が行きたいだけやろ?自分の欲望に素直なやっちゃな……」

「へへ、悪いな。でもさっき言ったことは本当に思ってたぜ?」

「わぁっとるわい!しかとシンジの辛さを見てきたる!」

「よし、じゃいこうか」

「ああ。委員長!わいら二人、便所や!」

そうして、ここいる二人は、シェルターを抜け出す事になる。




『ドガガガガガガガ!!!』

トリガーを引く初号機。

たちまち煙幕が上がるも、敵が見えなくなるほどではない。

(くっ!やっぱり効いて無いみたいだ……!)

シンジは、煙幕の切れ目からシャムシェルの状態を把握した。

だが、その瞬間。

一瞬にして双光鞭が飛ぶ。

「くっ!」

紙一重で後方に飛ぶ。

攻撃方法を知らなかったら間違いなく当たっていたのは歴史が証明している。

なにしろ一度試しているのだから。

距離をおきつつ牽制を続ける。

(このままでは埒があかない。隙を見て直接プログナイフをコアに叩き込む!)

シンジはジッと耐えていた。




−発令所−

その頃、ミサトは歯を噛みしめながら頭をフル回転させていた。

(奴に射撃は通じない。ならあとは近接戦闘しか……)

しかし、そこで考えは止まる。

(でもシンジ君は単独エントリーは初めて。近接戦闘を恐怖も無しに出来る?)

ミサトの脳裏にシンジのプロフィール(諜報部が調べてあったもの)がよぎる。

(多分無理でしょうね……。かといって、このままじゃ……)

「彼、凄いわね……」

ポツリ、とリツコが漏らす。

「確かに、初陣での動きにしては、いいわね」

ミサトは考えながらおざなりに答える。

「いえ、そうじゃないわ。さっきの鞭、音速を超えてたわよ」

「え……?」

「あれをかわせるなんて……。もし来るとわかっていても難しいわ。ましてや初めての実戦なのよ」

「………………」

「それにシンクロ率、普段は50%そこそこだったのに……。あの鞭をかわすとき、一瞬だけど90%を超えたわ」

「なんですって!?」

「今は60%前後だけど。彼の瞬間の集中力は凄まじいようね」

実際には、シンジはもっとシンクロ率を上げることが出来る。

おそらく400%までいくことも出来るだろう。

だがシンジは極力シンクロ率を上げなかった。

ある理由により、上げるわけにはいかなかったのだ。

「それよりミサト、シンジ君に何か指示を出してあげないと……」

「わかっているわ。シンジ君?」

「えっ、あ、は……うわああああぁぁぁぁああっ!!!」




−エヴァ初号機−

シンジはこれ以上ないくらいに集中していた。

(次、来る!)

サッと攻撃をかわす初号機。

だんだん焦れてきたシャムシェルが鞭を大振りする。

(今だ!)

サッとかわしたあと、素早く相手の後ろに回る。

(獲った!)

そう思った時だった。

『わかっているわ。シンジ君?』

誰かに呼ばれた。

「えっ」

この時、わずかに初号機の動きが止まった。

その隙を見逃すシャムシェルではなかった。

ヒュッ!!

音速を超えた鞭が飛ぶ。

シンジは誰かに呼ばれたと思い返事をしようと、

「あ、は……」

しかし目の前には光の鞭。

「うわああああぁぁぁぁああっ!!!」

一発目。

初号機の足を直撃。

これにより、初号機は尻餅をつく。

2発目。

初号機の足を掴み、遠くへと投げる。

これにより、初号機はパレットライフルを手放し、小高い山へと叩きつけられる。

この間わずか数秒。

あまりのことに、唖然、とする他ない発令所の人間達。

しかし、すぐに正気に戻り、ミサトは確認する。

「シンジ君!?大丈夫!?」

失敗した。

ミサトは心からそう思った。

話しかけるタイミングをもうちょっと見計らうべきだった。

誰もが、今の惨事をミサトの判断ミス、と思うだろう。

しかし、ここでミサトを責めるにはあたらない。

何故なら、この戦いは、秒速を超える応酬を繰り返していたのだ。

通常の人間には反応できるスピードではない。

『通常』なら。

ここで誰もがミサトの責任、と思ったことでそれは忘れられ、もう一つの驚愕すべき事実に気付く者はいない。

シンジはずっと『マッハの世界で戦っていた』ということに。




「……う、ううん……」

シンジは頭を振りながら起きあがる。

軽い脳しんとうが起きているようだった。

『シンジ君!?大丈夫』

ミサトからの通信が入る。

「あ、はい、大丈夫です……」

シンジは答えつつシャムシェルに視線を移した。

シャムシェルは、先ほど後ろを取られたからか、かなり慎重に初号機に近づいてくる。

「くっ、早く立ち上がらないと……!」

そう言ってシンジは地面についた手に力を……入れられなかった。

初号機の手。

地面に落ちて深く手形を残している。

その指の隙間。

人が一人ないし、二人程度が入るであろうその隙間に、シンジの見知った顔があった。

「トウジ、ケンスケ……!!」

シンジは高速で頭をフル回転させた。

戦闘に集中するあまり、このことを失念していた。

いや、最初は覚えていた。

速攻で、何処にも飛ばされることなく使徒を殲滅できれば、二人には危害は無い、と踏んでいたのだ。

しかし、結果はこの様だ。

歴史は繰り返された。

このままでは、歴史をたどることになる。

あの紅い世界。



嫌だ!


嫌だ!!


嫌だ!!!


嫌だ!!!!


絶対に変えて見せる!

このまま何も変わらなかったら綾波は……。



無表情の綾波。

何も知らない綾波。

いつも孤独な綾波。

自分が護りたいと思った綾波。



綾波はまたあの悲しい役割をしなくてはいけなくなる。

綾波を父さんの道具なんかにはさせない。

そのためにもここで殺られるわけにはいかない。

自分が死ぬのはいい!

でも、歴史を変えて、綾波を助けられないのなら、負けるわけにはいかない!!!



その瞬間。



初号機が吼えた。



「ヴォオオオオオオオオオ!!!!!!」



それにシャムシェルは怯えたように固まる。



初号機が音もなく立つ。



トウジとケンスケは怯えて泣いている。



ゆっくり歩く初号機。



瞬間。



誰にも見えない速度。



初号機の手は、シャムシェルのコアを貫いていた。












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