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果時魔裏
作:元爺



第8話


やっぱり、足音の正体はアジスだった。というか、入ってくるな…

タオル一枚で前面を隠し、体を流して湯に入る。目の前にアジス。しかもきわどい…

あの時よりも近くにアジスがいる。目を逸らそうにも、視界に入ってくる。覚悟を決めた、諦めよう…

正面を向く。アジスの全部が視界に入ってくる。髪は湯に浸かり、湯の中ではタオルが体を隠し、アジスはこちらをじっと見ている。逸らしたくなってきた…

「なんで入ってくるんだ…」

「気にするな」

それだけで話は終わった。これ以上無理…

「んじゃ、俺は上がる…」

「それでは、私も上がるとしよう」

上半身が湯から出ると、アジスも上がろうとした。……

「…ちょ、ま。せめて、おれが、上がってからに、してくれ…」

少しの沈黙の後、途切れ途切れに訴える。頑張った…俺。

「しかたのないな…」

そう言って、アジスは体を湯の中に戻した。よかった…

そそくさと風呂場から出て着替える。近くにはアジスの服もあるようで見てはいけないものを見ている気がした。やばいって・・・

「もういいぞ」

アジスに一声かけると湯の音がした。退散退散…

さて、部屋に戻ってきた。短い時間が長く感じた…

適当に窓を見る。と、外が薄暗い、空が曇っている。ここに来た時は太陽が照り付けていたのに、寝るだけでこんなにも天気が変わってしまった。

そのまま外を見ていると、アジスが出てきた。さっき見た青を主体とした、カッコイイという感じの服装。うん、イケてる…

「鎧とかは?」

「流石に、城の中で着ているのもおかしいからな。いまは外している」

外を再び見ると雨が降ってきた。いきよいよく地面は濡れていく。人々の姿も消えていった。
窓にも雫…

「さて、急がねばな。起きるのを待ってほぼ一日、風呂に入ったから丸一日経ってしまった」

「え?」

振り返る。今なんと?

「シド様の任務のことだ。忘れてたのか?」

「いや、その前になんて言った?」

「丸一日経ってしまった」

“ポカーン”と頭の中に響いた感じがした。丸一日…寝てたのか俺…

「気持ち良さそうに寝ていたからな、起こすのもためらった」

見てたのかよ…恥ずかしいからやめてくれ…起こしてくれ…

「可愛らしい寝顔だったぞ」

アジス…ニヤけないでくれ…

「もぅいい。早くいこう」

「あぁ、そうだな」

気を取り直してアジスについていく。アジスを見ていると思い出したくないことばかりが思い出されていった。恥ずい…

さっきの広間とは違った小さい部屋。部屋の中央には台、その上には紙が広げられ、シドさんとヒゲの立派な人が二人が話をしていた。

「お待たせしました」

「おぉ、待っておった」

俺たちが入ってくるのに気づいて、話を一時中断して迎えてくれた。見上げて窺える表情には、知識が詰まっているように見える。作戦会議中だったのか…

「この方がこの作戦の実行者ですか」

「なんとも、頼りない者ですな」

「まぁま、そう言わずに。これでも実力はこのアジスが認めた人物なのですから」

何だろうかこの空気は…。王様なのに威厳がないというか…。まぁ、気にしないでおこう。

「アルア=アレフ。よろしく」

一言だけ挨拶して、台に集まる。ひそひそとした話し声が聞こえるけど、これも気にしないでおこう。うん。

台の上にあった紙は地図だった。でも何かが違う。俺の知っている地形と微妙に違っている…

今まで気にはしていなかったこと…ここはどこだ? なんでここにいる? 理由を考えても浮かばない。ただ気になるのは呼び出されて連れてかれた建物…そこからだ…

「…いつしか降り注ぐ脅威と化す前に手を打たなくては…」

話を聞いていなかった…。聞き逃した…。考えすぎた…

「君には、最近現れたという魔法使いを倒してもらう」

魔法使い?

「なんでも、風を起こし、変幻自在に攻撃してくるという。今分かっているのはこれだけだが…」

風…か。おもしれぇ…

話は聞いてなかったけど、やるべきことは分かった。

「どこに向かえばいいんですか」

「確認された通りに順を追っていけば今頃はここにいることになる」

シドさんは地図の真ん中から少し上を指差している。その少し南には町の絵。ということは…

「つまり、ここから北に行けば会えるかもしれない」

「そういうことになる。アジスにも付いていってもらう」

「はっ、了解しました」

「一人でもいけるのに…」

「では準備が整いしだい、出発してもらう」

言われて、アジスと俺は部屋を後にした。

これから何が始まろうとも、面白いことに変わりは無いはずなのだから…


夏休みで忙しくて一ヶ月くらい休んでました・・・。
これからは書きますのでよろしくお願いします。











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