00. 手をとり合って
頭上高くの天窓から降り注ぐ、青白い月光はひたすらに儚く、頼りなく。
それだけしか光源のないこの閉ざされた部屋では、物の輪郭がかすかにしか掴めない。
手を差し出したまま黙ってしまった少女の表情だってわからない。
泣きそうなのか、憤っているのか、微笑んでいるのか――――見えないけれど、一言では表せぬ複雑な表情をしているのだろう。
その手をとってしまえば後戻りは出来ない。
でも。
だけど。
………それでも、差し出された手のひらから目がはなせなくて。
彼女は、この私から見れば幼い少女は、とてもとても、悲しいくらいに優しいから。
悲しいほど強く、悲しいほど真っ直ぐに気持ちをぶつけてくれるから。
――――差し出された手を嬉しいと思ってしまったから。
彼女は何も言わない。
ただ待っている。
私の選択を、決意を、覚悟を、理解を、意思を。
試しているわけでもなく、拒絶をも恐れず、ただ優しい沈黙で待ってくれている。
彼女は賢い。
私を連れ出すことの意味を、分かっていないはずがない。
どれほど罪深いか知っていても、それでもその手を差しのべてくれた。
――――嬉しいと思ってしまったから。
きっと答えは最初から出ていたのだ。
緊張にか、恐れにか、この身を浸す歓喜にか、意思ではどうにもならない身震いが襲い、私は自身に苦笑する。
暗闇の目隠しのおかげで、彼女には気づかれていないと思うけれど。
ああ、でもせっかくの彼女の表情が見れないのは悔しいな。
はるか天空から見下ろす鷹のような、彼女の凄烈な意思がこめられた瞳が見れないのは残念だ。
私は余韻に震える手を、少女の小さなてのひらに重ねた。
「アンジェリカ――――」
その思いに応えよう。
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