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僕と私と誰かに俺が
作:月月月



『俺の日々(稀)』


俺の前に立ちふさがる彼は、まぁなんとわかりやすいんでしょうという程の不良だった。
頭の髪の毛が異様に前に突き出した……リーゼントって言うんだっけ? まぁ何だっていいけど。
不思議な髪型でだぼだぼの学生服を着ている。
なんか名乗りを上げているけど、別にこいつの話を聞いてやるような暇も気もないんで俺の中でオールドヤンキーと名付けた。と言うか今の時代にこんなわかりやすい不良がいるなんて思いもしなかった。天然記念物に登録してやりたいが、地球には害にしかならなそうだ。
女の子ならまだ可愛げがあるかもしれないけど、男だし、不細工だし、悪意剥き出しだし、なんか古臭いし、なんと言うか……可哀想な奴だな。

「男だとこんな変わるものなんだねぇ」
こういう場合、世間一般的にも個人的にも無視をするに限るものだけど。
迫りくるパンチを、さり気無くかわしながら何と無く世の中の不幸について考えている。
ああ。言い忘れていたけど、オールドヤンキーの音声は、いるものといらないものを自動的に振り分けてくれる俺の高性能な耳で判断して入ってこない。
どうせ感情のうねりが叫び声だか唸り声だかに変換されて外に出ているだけなんだろう。
同じ人間でもこんなに違う人生を歩むのって凄いよねぇ。本当に。成長の過程とかで変わるのかな?それとも生まれつきかなぁ? 
まぁ、
「俺には関係ないけどね」
そうなのだ。俺には関係ない世界で起こっている事柄に触れているだけなのだ。
その世界では価値や物の基準、果ては言葉の持つ力も違うだろう。
だから俺には関係ない。
だけど、今日はそうもいかないっぽいんだよなぁ……。
忙しい時はもうどうしようもないくらい忙しいのに静かな時は世捨て人になれるほど静かなんだよなぁ。

「はぁー。仕方ないなぁ。…ほい」

ズバビシィィ!

「べへぇっ!?」
おお、初めてオールドヤンキーが俺にとって必要な言葉を吐いた。
ん? ってことはこいつやられたのか。
ん〜。そこまで力は入れていないのだけど、どうも当たり所が悪かったのかね?気にすべき事じゃねーけど。
どっかのポケットから見慣れぬ財布を取り出して、その中から三千円くらい抜き出して俺のマネーポケットに入れて、知らない財布はそこら辺のポケットに入れておいた。
よくわからん不良君は捨て置いて進む。

この仕事はやる気が出ない。否、この仕事『も』やる気が出ない。
俺は封がしてある手紙を開き確認する。
そこにはこう書かれていた。

『Hi! 久しぶりだね。挨拶行けなくて御免にー。僕のほうは相変わらず元気ありありなのだけど、不穏分子達も元気ありありなんだよね。
で、本当は僕が行かなくちゃ行けない仕事なんだけど、ヤなので早速君に手紙を送りつけてドロンしようと思いまーす!
じゃ、宜しく!
P.S
いつもの奴だから、適当に相手しておいてね。(あ! 忘れてた!)合言葉は麗らかな妖気だよ☆』


……いっっつも思うけど、こいつの頭の中はどうなっているのだろうか。まぁ、今手紙を読み始めているのだから俺も大概人から外れているのかもしれないけど。

でもさ、俺に押し付けて自分はどっか居心地のいい場所で遊んでるのは納得いかねぇ。
ボヘーっと考えていても俺の足は迷う事無く進んでいく。
まあ、馴染みの仕事らしいし、前をしっかり見なくても大丈夫だろう。内容も確認したし、気にする事じゃない。
正直、懐が寂しいので、面倒だがやらねければならないだろうが、霞を食ってれば生きていけると聞いたことがあるし……矢張りやめてしまおうか。
と、そこで。
物陰に隠れている何かを見つけた。
経験から見てああいうことをする奴らはLv3ぐらい。俺が超勝手に決めた不良レベルだ。因みに俺はLv0。不良じゃないんで。

こういうのは敬遠するべきなのか、歓迎していいのかわからない。

そうそう、俺の顔は一見何も考えていなさそうな無表情だったりするのだ。
で、足は変わらず動いている。
あいつらは総じて俺がもう存在を既知しているとは夢にも思っていないだろうし、どうしようか。
俺は相手をしてやる気が余り無いんだけど。面倒だし。
うーん。困ったね。考えているうちに足が勝手に進んで不良達の目の前まで来ちゃったよ。
「……まぁ、いいか。時間はあるだろうし、もう近いし、あいつは……だし、それに……だし、まぁ……だし」
不良達に聞こえないように小さくつぶやく。
武器は持っていないようだし、今までの経験から見て、俺にあったのは二回目くらいだろう。
おお、よーく見るとたった五人の不良だ。
これなら討ち漏らしも無いだろう。

「な、なんだ君達は!?」
俺が大げさに狼狽すると、圧倒的優位を感じた不良達は余裕の体で、

「わかってンだ――」

「ハイ隙ありー」

一蹴りで僅かな差を詰め、反応しきれていない左右の不良の首を掴んで、前に押し込んでから引き倒し、その反動を使って更に奥にいた二人の不良の顔面に蹴りを何発か叩き込む。
それだけで、のた打ち回ったりピクリとも動かない不良が四人出来あがる。
一瞬で一対一。

「あ……?うぇえ?ええええええ!?」大袈裟に狼狽する不良君。
うるさいなぁ。うん。残した奴間違えたかな。
あぁ、こいつはわざと残したんだよ。
周りで倒れてる奴らの安否が気にかかるからね。俺は悪人じゃないから、たとえ俺を攻撃してきた人でも倒れている人は放っておけない。けど、時間がないから他の人で事情を知ってる人に頼むのだ。
人間は割とモロいので、あまり力を入れすぎると簡単に骨とか芯とかが逝ってしまうのだ。まれに非常にしぶといのには驚くが。

「ほら、最後はお前だけだ。やるか? 最後は俺サービスしちゃうよ〜?」
そう言うと面白いように青ざめ、そのまま全力で逃げ去ってしまった。
やだなぁ、冗談に決まってんのに。そんなに悪人面してないよなぁ……傷つくなぁ。
逃げ去った不良君は恐怖が勝っただけだろうから俺が居なくなればじきに戻ってくるだろう。誰だって仲間は大事だからね。

俺は倒れている不良達の間を通り抜け……先を急ぐ。

「ふふふ……。知らない間になんでかとっても暖かくなったなぁ。良いことだねぇ」

いや、ふふふ。寄り道はいいものだねぇ。


気長ーーっにやっていくつもりです。













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