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Forgotten Saga 作者:水夜ちはる

第九章・導く者のイデア

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第3話

ワルティユの監獄から救出されたレルシェル。
傷ついた身体を癒す間もなく、ルテティアでは王国軍と革命軍の決戦が始まろうとしていた。彼女はその戦いに身を投じることを決意する――。
 戦端を開かれて二時間、戦局は一進一退の互角の展開が続いていたが戦意に勝る革命軍が押し始め、王国軍の前線は徐々にその陣形を崩し始めた。フィルマンは革命軍の勢いを止めようと予備兵力を前線に投入したが、それでも革命軍の勢いは止まらず王国軍は前線に大きく楔を打ちつけられる形となった。
「さすがに連戦連勝を重ねてきたことはあるな。勢いだけではない。攻勢をしかける時機とこちらの弱いところを良く見極めてそこを的確についてくる」
 フィルマンは革命軍司令官のリシェールの用兵に舌を巻いた。リシェールは敵が大軍であろうと少数であろうと戦いの機微を見逃したことがない。攻めるときに攻め、引くときに引く。リシェールの軍はこれを徹底していたし、それを指揮するリシェールも細心の注意を引いて一番大切なこととしていた。
 今でこそ革命軍は数を増やし、その後方には数多くの支援勢力があるが、元々小規模な反乱の頃から軍を率いてきた彼である。兵員の補充の機会は非常に乏しく、失われた兵は失われたままのことがほとんどであり、人的にも物質的にも大きな損害を出すことは致命的だった。また、小さな兵力で大軍を相手取り、勝利を得るためには攻勢の時機を見極めることが重要だった。敵陣の弱点、弛緩するタイミングなどを計り、彼は数々の勝利を得てきた。
「彼らは良く戦場を見ている」
 フィルマンはそう評した。
 事実、革命軍の参謀であるアルノ・デ・トリュフォーは非常に多くの人員を索敵や斥候にあて、そこから得られる豊富な情報を元に的確な判断と作戦立案をリシェールに提供してきた。リシェールの指揮力と用兵手腕もさることながら、革命軍の快進撃を支えているのはアルノの情報力とそれに基づいた作戦立案能力によるところが大きい。
 一方で王国軍は大兵力に安んじ、まともに会敵すれば勝てるという自信が慢心を呼び視野を狭め、低い戦意と相まって敗北を重ねる結果となった。
 余談ながら先のマコンやヌーヴェル・アルビン、レルシェル・デ・リュセフィーヌも情報を先んじて得ることに腐心していた。彼女も率いる軍が少数であり、味方の連携も欠いた状況で犠牲を出さないための努力だった。敵情や地形を知り、自軍に有利な戦場を選択することで彼女は配下の将兵を多く救っている。また王都旅団に関しては騎馬などの装備も十分で、彼女の一団が革命軍に対して一定の戦果を得ていたのは情報に加えて機動力があったことも一因である。
「アルノ! 敵に伏兵や増援の気配はあるか?」
 リシェールは敵の前衛を食い破りつつある味方の勢いを見て、隣にいるアルノに叫んだ。
「今のところ近隣に戦局に影響を与えるような兵力はない。敵は目の前に見えているだけだ」
 アルノはすばやく答えた。彼の組織した斥候部隊は戦場を離れた場所にも展開していて、それは王都内部までに至る。そうして得た情報は、王都を守備する騎士団を除けば、王都周辺に展開する部隊は小規模な輸送部隊などを除けば存在していなかった。
「よし、ブラゼッティに連絡! 槍騎兵二五〇〇を持って敵陣を切り裂けと!」
 リシェールは好機と見ると即断した。アルフォンノ・ブラゼッティは厳つい顔と筋骨逞しい立派な体躯を持ち豪傑を思わせる風貌の将校で、その外見に違わず騎乗突撃をもっとも得意とする革命軍きっての猛将である。彼と彼の率いる槍騎兵はリシェールにとって戦況を動かすときの切り札だった。
「ようし、突撃する! 我らが槍騎兵隊の力でこの戦いを決めるぞ!」
 ブラゼッティはリシェールからの伝令を受けると馬をあおり、配下の将兵たちを鼓舞させた。兵たちもブラゼッティの声に怒号で答え、彼を先頭に一糸乱れぬ隊列で王国軍の前衛にその強烈な攻撃力を叩きつけた。
 ブラゼッティ隊は革命軍の精鋭中の精鋭である。実は革命軍は装備に難を持っていた。義勇軍や民兵、各地の地方駐屯部隊で混成された革命軍は各部隊の装備等にばらつきと不足に悩まされていた。その中でもブラゼッティ隊は元はレオン駐屯の正規兵であり、装備錬度共に頭一つ抜けている。リシェールはこのブラゼッティ自身の勇武と、その部隊の力に全幅の信頼を置いていた。
 王国軍の前線では怒号と悲鳴が交錯した。
 ブラゼッティの突撃は王国軍の前線中央を粉砕した。槍騎兵は長槍を持って集団突撃を得意するという古風な兵科であるが、銃火器を用いた新しい竜騎兵や砲兵と言った部隊よりも現在のところ遥かに高い打撃力を持ち、戦場における決定力を持つ部隊とされていた。現に勇敢で統率力のある将に率いられた彼らは次々と王国軍の陣を突破している。
「うわあぁ! 来るぞ! ダメだ、止められない!」
「砲兵、砲兵隊は何をやっている! 奴らに大砲を打ち込んで止めるんだ!」
 王国軍中央は強烈な攻撃に混乱し崩壊し始めた。
 王国軍は兵力はもちろん、装備の質も革命軍に比べて格段に良かったが、戦意の低さを覆すことはできなかった。既に彼らは命を賭けて祖国を守ろうと言う意志を失っていた。いや、むしろ負けたほうが祖国が良くなるかもしれない。そんな考えのものが少なくなかった。
 これまで革命軍に敗北を重ねてきた王国軍は、王都の目の前でもやはり惨めな敗北を強いられるのか。戦場にいる将兵たちにそんな絶望感が漂った。
「やれやれ……予想通りといえば予想通りだが、ここまで弱兵とは。二ヶ月……いや一月半あれば兵の意識も変えられたかもしれないけどなあ」
 そうぼやいたのは芳しくない戦線を見つめるフィルマンだった。
 しかしその言葉よりも彼の表情には余裕があるように見えた。
「閣下、何か対策がおありですか?」
 参謀でもない従卒のエルヴィンは司令官の考えを聞くのは分をわきまえていないことだと知りつつも、知的好奇心が刺激されて思わず訊いてしまった。
 フィルマンはそんなエルヴィンを叱りもせず、にこりと笑った。
「そうだね、私はこうなることを予想通りと言った。予想していながら何もしていなかったら私は無能者のそしりを受けるだろう。勿論、準備はしているさ」
 フィルマンはそう言ったがそのあと肩をすくめて言葉を足した。
「準備をしていたといってもそれがうまく行く保証なんかない。相手が私の想像を超える相手であれば素直に白旗をあげるしかない。背伸びをしても手が届くりんごは決まっているのだから」
 フィルマンはそう言うと側近の将校に合図を出した。
 その将校は腰に下げていた図面を広げると、それに従って信号弾を数発空に向かって打ち上げた。
 信号弾は様々な色のついた煙を上げ、空高く上がっていく。
 ほとんど間をおかず、王国軍の各陣地から呼応するように次々と信号段が上がる。
「よし、ここまでは成功だ。あとは我々の切り札がどこまでやってくれるかだが」
 フィルマンはそうつぶやくと直率する本隊への指示を出した。それまで戦場の動向を静観していた司令部本隊の大部隊が大きくざわめいた。


「今の信号弾は何だ? 撤退の合図ではなさそうだが」
「わからない。でも気をつけたほうがいいぞ、リシェール」
 フィルマンが上げた信号弾とそれに呼応する信号弾は革命軍の首脳部でも確認されていた。
 信号弾は革命軍でも簡単な指示を迅速に伝えるために利用されている。だが、王国軍が放った信号弾の数は彼らが見たこともない数だった。
「しかしこのまま進めば敵陣を分断できる。そうなればどんな作戦があろうがまともな指揮など出来まい。ここはブラゼッティに任せて突破する」
 リシェールは現在の状況を勝機と見ていた。敵陣中央に叩き付けたブラゼッティの槍騎兵は目論見どおり敵中央を食い破り大きな傷口を開いている。そこへ全軍を叩きつければ、分断された王国軍は散り散りになって抵抗力を失うだろう。
 アルノは迷いながらも頷いた。王国軍の信号弾には何かしらの意味があることは明らかだ。だがリシェールの言うとおり例え王国軍に何か準備があったとして、実行できる力を奪ってしまえば意味を成さない。リシェールは戦場の勝機を見出す力に秀でていたし、ここは彼の判断に委ねることにした。
 リシェールは後方に控えた予備兵力を動かし、戦局を決定付けようとした。ブラゼッティが開いた王国軍の穴に全軍を叩きつける。
 その勢いに王国軍は抵抗する術を持たず革命軍は王国軍を二つに切り裂き、陣形を蹂躙していく。王国軍の後衛はもはや戦うことも放棄して左右へ逃げるように自ら割れて行った。
「無様な姿だな」
 リシェールは勝利を確信した。兵力の規模的にはこれまでとは桁違いの会戦であったが、始まってみれば大した時間をかけることもなく帰趨は決した。
 その時だった。
 王国軍の陣の後方の丘から多数の爆音が鳴り響き、その数秒後、ブラゼッティ率いる革命軍の中央でいくつもの爆発が起こった。
 将兵と軍馬が宙を舞う。
 大口径砲の一斉射撃だった。
「なんだと!」
 リシェールは突然の反撃に驚いて前衛を襲った爆炎を見つめ、次いでアルノを見た。
「馬鹿な、あんなところに砲は配置されていなかったはずだ!」
 アルノも驚いてそれを見ていた。アルノは斥候からの情報で地形と敵陣の情報をほぼ完璧に抑えていた。王国軍には間諜を忍ばせ、陣における兵科や装備までもが彼の頭の中には入っている。その彼の頭の中にはない部隊が存在していた。
「しかも……砲兵だと?」
 アルノの驚きは当然だ。砲兵はその名の通り、大砲を運用する兵科だ。火力は高いが砲兵の機動力は他の兵科に比べて格段に落ちる。大砲は台車に乗せて人の手で運ばねばならず、砲身は他の装備に比べて圧倒的に重く、また消費するその弾薬も重いためだ。そのためじっくりと時間をかけて攻撃と防衛を繰り返す攻城戦には力を発揮しても、野戦では他部隊との連携を欠き、無用の長物になることが多いとされた。
 その動きが重い砲兵隊が開戦して僅かな時間であの丘に移動しているなどなどありえなかった。
 アルノは驚愕の表情のまま、だが我を忘れずに腰に下げた望遠鏡を使って敵の砲兵の陣を探った。
 大砲が吹いた黒く濁った煙が風に洗われる。地形が現れ、次いで陣の姿が彼の目に入ってくる。
 アルノはその部隊の指揮官を探した。
 煙が完全に晴れて視界が自由になると彼はさらに驚かねばならなかった。
 そこには白馬に跨り、赤い軍服を着た少女が金髪を風になびかせていたのである。


「第二射、撃て!」
 凛とした少女の声が陣に響き渡る。大声量に関わらず濁りのないそれは紛れもなくレルシェル・デ・リュセフィーヌの声だった。
 彼女の声を合図に轟音を響かせて重砲が火を噴く。勢い良く飛び出した砲弾は第一射によって混乱を生じたブラゼッティの陣に飛び込み、凶悪なまでの大口径砲の破壊力で多くの将兵を殺傷した。
 着弾を確認したレルシェルは傍らのシトロエンに声をかけた。
「どうだ? 卿の意見を聞きたい」
「さすがにこの数の砲撃、大した威力です。敵の行き足を見事止めましたよ。次はもっと範囲を広げてもよいでしょう」
 ずらりと並んだ一八〇門の大砲を眺め、シトロエンは鼻息も荒く答えた。この時、レルシェルが率いていたのは約百五〇名の傭兵と、彼女を慕った騎士約五〇名、シトロエンが率いた約五〇名の将兵のみである。それに一八〇門の大砲は異常とも取れる数だった。
「分かった。射撃の修正は卿に任せる。第三射を撃ったらすぐに半数を率いて次の地点へ移れ」
 ペーター・シトロエンは数少ない砲術の専門家だ。現状、動きの鈍い大砲は防衛には向いているが、攻勢には向いておらず人気のある兵科とは言えない。しかし遠距離から味方に犠牲を出さず、大威力のこの兵器は近い将来戦場の姿を変えると信じて彼は戦術の研究を続けていた。
 なおヌーヴェルで大敗北を喫した第三師団が敗走するとき、シトロエンは手持ちの砲兵隊で追撃する革命軍に痛打を与え、半壊した第三師団がなんとか「組織的な撤退」を行なえたのは彼の手腕によるものだった。
 シトロエンの指揮により第三射が行なわれる。第一射、第二射よりも目標を拡散させたその砲撃はさらに革命軍に被害と混乱を与えた。
「では我々は移動します。この陣地は敵に知られてしまいましたが……」
「我々は我々の仕事をする。敵をここに引きつけ、その隙に卿は他の地点から砲撃を行う。最初に決めたことだ。槍騎兵がすぐにでもここに来るぞ。卿は卿の仕事を頼む」
 騎乗したシトロエンにレルシェルは微笑を浮かべて返した。シトロエンが砲兵を率いて移動すればここには一五〇名ほどの傭兵しか残らない。ギャランらがいかに百戦錬磨の兵だと言っても彼我の戦力差は火を見るより明らかだ。しかし、砲兵は槍騎兵などに肉薄されては抵抗する術を持たない。
 シトロエンは後ろ髪を引かれる思いでレルシェルの指示に従い、馬を走らせた。
 シトロエンが率いた隊は馬二頭に大砲を引かせていた。
「まったく、とんでもないことを思いつく人だ」
 彼は自らが率いる一団を見てつぶやいた。砲を馬が引いて戦場を高速移動するなど前代未聞だった。少し時代を遡れば、移動に向かないこの兵器は攻城用の大砲などは戦場で鋳造されたくらいなのだ。
 レルシェルはこの鈍重な兵器をなんとか機動力を持たせられないかと、森のきこりや木工職人に十分な強度を持った台車を制作するように依頼した。職人たちも今までにない依頼だったが、長年培った熟練の技はレルシェルの要求に応えられるものを数日のうちに十分な数を作り出した。
「これはすごいな。ルテティアの一級免許を持つ工務屋でもこんなものは作れない」
 レルシェルは試作品を見て感嘆の声を上げたものだ。
「免許なんて腕じゃねえ。金がある奴らが取るもんですぜ。あいつら金を使って試験を通して免許を貰ってるだけでさあ」
 森の職人たちはそう言って揶揄した。確かに王都の大手の工務ギルドと王宮官僚には癒着があり不正な免許が乱発している事実があった。
「馬鹿な。免許どころか私が軍務省の人間なら軍備開発部の重職を与えるぞ。内務省なら技術開発だな。どちらにしろ卿らの技術はもっと世に広めるべきだ。工廠を作り、弟子を集めて大量生産できるようにするのだ。そこで出来た品物は高く売れる。外国にもだ」
 レルシェルの言葉に職人たちは驚いた顔で目を合わせ、そのあとで大笑いをした。彼らにはそんなことは夢物語だった。どんな優れた技術を持とうとも、この社会では貧乏人は貧乏人のまま一生を終える。それが当たり前だった。レルシェルは真面目に言っただけに納得がいかなかった。この社会の仕組みも、そう思っている彼らの心も。
 ともかく運用に十分な数が揃えられると判断したレルシェルは、シトロエンを通してフィルマンに砲兵の新しい運用方法と出来うる限りの砲と馬の用意を依頼している。そしてフィルマンはこの戦いにおいて使用できる移動式の大砲の七割をここに集中運用すると言う大胆な判断をしている。
 シトロエンは奇妙な馬車を率いて指定の位置へ速やかに移動した。そこには陣地とは呼べない、ただ弾薬が詰まれた場所だった。
 大砲を高速移動させるために、移動の枷となる弾薬を先んじて配置しておく。これもレルシェルが考案したものだ。これを実現するためには綿密な作戦計画と、それを実行する熟練した将兵、そして十分な物資を揃える必要があった。
 再び大砲が火を噴く。それはリシェールたちから見ればまったく違う陣の「別の部隊」から発砲されたように見える。
「馬鹿な、敵はどれだけの砲を持っているんだ?」
「俺たちはすっかり大砲に取り囲まれているんじゃないのか?」
 革命軍の兵士たちは恐慌に陥った。
 砲兵の陣地があろうとも、それが一箇所であればそこに突撃して蹂躙してしまえばいい。砲の間合いでなくなれば、大砲など役に立たないからだ。だがそれが複数あるとなると話は変わってくる。一つの陣地を潰しても他から攻撃されてしまうからだ。
 シトロエンはさらに移動を繰り返して砲を撃ち続けた。


「アルノ! これはどう言うことだ、敵の本体の後ろに砲兵陣地があってそれもこれほどの規模だとは俺は聞いていないぞ」
 リシェールは戦況を見つめ、苦虫を噛み潰したような表情で言った。
 アルノは状況に狼狽しながらも、明晰な頭脳をもって戦場を理解しようとしていた。
「違う、敵の砲兵陣地は元々なかった。彼らはそこへ移動してきたんだ。信じられない速度で。そして今もまた移動しつつ攻撃をしているのだろう。なんと言うことだ……砲兵にこんな使い方があるとは」
 アルノは愕然としながら見解を述べた。事前の情報収集に問題はなかった。その情報力を超える機動と情報伝達を王国軍がやってのけたのだ。そしてあの信号弾は自軍の陣形や配置を瞬時に部将に伝え、また後方の移動する砲兵隊に自軍と敵軍の位置の詳細を知らせていたのだ。そしてあの空を飛ぶかような砲兵の運用。
 王国軍からは定期的に信号弾が放たれており、その度に王国軍の陣は有機的に動き、中央突破したかに見えた革命軍を包囲しようとしている。
「まんまと乗せられたと言うわけか。俺たちは敵陣を中央突破したんじゃない。敵中に誘い込まれたんだ」
 リシェールは舌打をしながら言った。
「僕たちは情報を武器に戦ってきた。それで僕たちは勝って来た。今回もそうなるはずだと、根拠のない自信を持っていた。だが、敵は僕たちが集めた情報を超える速さで戦場を動かしてきた。戦場は常に変化している。そう言うことか――」
 アルノは悔しそうに歯軋りをしながら唸った。
 リシェールはそのアルノを横目で見て言った。
「おい、アルノ。まるで負けたように言うな。俺たちはまだ負けちゃいない。俺にはまだこれだけの兵がいるし、お前にはまだ策がある。そうだろう?」
 リシェールの語気は強かった。彼の声には気力が十分にあり、彼の目は挽回の機会を逃すまいと戦場を見つめていた。アルノははっとなって彼を見た。そして彼も後悔の念から未来へ思考を切り替える。
「そうだ、リシェール。戦いの決着がついたわけじゃない。まずはここを突破しないと」
 アルノの言葉にリシェールは頷き、王国軍の包囲を突破するための指揮を取り始めた。
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