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旅の途中、一行は傷ついた老人を助けたが、その老人は、氷魚の祖父だということが分かって!?

妖幻抄―8章―
作:維月十夜



瑰―かい―


横たわっていたのは、紅い髪をした、初老の男だった。
「おい、大丈夫か!じいさんっ、しっかりしろ!」
氷雨はおそるおそる、初老の男の肩を揺さぶった。
「あ…ああ、すまないのぉ、お若いの、いたた…」
男は、腰をさすりながら、立ち上がった。
「いやいや、村に戻る途中に、追い剥ぎに会うてな…困っておったんじゃ」
男の腕や足には、斬り傷がついており、傷口からは血が流れていた。
「じいさん、ひどい傷だ…斬りつけられたのか?!待ってて、いま血止め草を出すから」
腰の巾着を探る明を見た、男の表情が固まった。
「十六夜…!お前、十六夜か!?生きておったんだな?はぁ…よかった、さぁ、早く村に戻るべ」
手を掴む、男の力は強い。
明は、ちらりと、困惑気味に、氷雨の方を見た。
「おいおい、じいさん…ヒト違いしてねぇか?こいつ、女だぞ」
「待って、氷雨。十六夜は、父さんの名前だが、じいさん…父さんを知っているの?」
「知っているともさ、なにせ、十六夜は、儂の息子なんじゃから」
「え…えぇ!?」
いきなりの事実判明に、明は目を白黒させる。
「そうか、あんたが十六夜の娘かぁ…手当てまでして貰って、ありがとうなぁ、それにしても、あ奴そっくりじゃのう」
驚く明をよそに、男は明の手を握り、うんうんと頷きながら再会を喜んでいた。
「じいさんが、明の祖父殿!?」
氷雨は、狼狽する。
「明というのか、儂はかいという、少年は、名をなんていうのだ?」
「お、俺は氷雨だ」
「そうか、助けていただいて、すまないな…そなたらは、この先に行く宛はあるのかね?」
「いや、特には…ない、よな?」
氷雨は、明に同意を求めた。
「う、うん」
「では、どうじゃろう…儂に、恩返しを、させてはくれんかの?」
「恩、がえし?」
明は、ふにっ、と首を傾げた。
「ああ。儂の村に、招待したいと思ってな」
「構わねぇけど、その村、どの辺にあるんだ?」
氷雨が尋ねると、瑰は『よくぞ聞いてくれた』といわんばかりに、微笑みながら説明をし始めた。
「うむ、それ…向こうに海が見えるじゃろ?あの向こうに、儂の村がある。」
「なぁ氷雨、海ってなんだ?」
「いや、知らねぇけど…」
「海はな、すべての生命の源じゃよ、いま命ある者はみな、そこから来たと言われておる」
「へえぇ、物知りだな、じいさん」
瑰は、何も応えない代わりに、嬉しそうに笑った。
「しっかし、どうやってこの海を越えるかだよなぁ…ん?」
くいくい、とズボンの裾を引っ張られ、見てみるとヨミがいた。
「なんだよチビ、腹でもへったのか?明に団栗でも貰ってこい」
「ほう、烏兎とは好都合な」
瑰が、ヨミの傍に屈むと、ヨミは困ったように、キィと啼いた。
「瑰…ヨミが、どうしたの?」
問いかける、明の手の中から体を捩って、ヨミが抜け出した。
「ん?烏兎は空を飛べるんじゃよ、知らなかったか」
明は、ヨミの方を見る。
当のヨミは、猫じゃらしによく似た、金狗尾草きんえのころにじゃれたりしている。
とても、そんな風には見えない。
「そうは見えないけど…」
「うーむ…では、高所から落としてみなさい、本性が現れるから」
少し間をおいて、瑰は言う。
明は、間が空いたのに疑問を持ったが、この際、考えないことにした。
「明、俺がやろうか?」
暇そうにしていた氷雨が、明に抱きついた。
「ううん、いい…下手に触ると、危険なんだ」
明は、彼の手の甲を抓り、べたつく氷雨を、ベリッと剥がして、肩を払った。
油断も隙も、あったものではない。
「ってぇ、いいよ、俺がやってやる」
抓られた手の甲を、フーフーと吹きながら、氷雨はヨミの傍に屈む。
「や、やめた方が…」
明が止めようとした瞬間、事は起こった。
「いてっ、いててっ!いてっ、て…やめろアホっ!助けてくれぇ明っ」
勢いよく、耳を振りまわすヨミ。
いわゆる、往復ビンタである。
ヨミは、鼻息荒く、再度、耳を氷雨に叩きつけた。
「ほら、だから言っただろう…ヨミ、おいで」
キィ、と啼いて、肩に飛び乗り、何事もなかったかのように、欠伸をする。
「てンめぇ―――‐‐‐依怙贔屓えこひいきじゃねぇかよっ、このっ!」
氷雨の手を、すり抜けて着地し、ヨミは、毛皮を逆立てて威嚇する。
眩暈を感じた明は、二人の仲裁に入っていく。
「その様子では、どうやら、手なづけるしかあるまい…」
瑰は一本、手近な金狗尾草を手折り、ヨミの目の前に翳した。
「ほれほれ、楽しいか、ん?」
猫じゃらしに、じゃれ始めるヨミに、茫然となる氷雨。
「なっ…俺の苦労は、何だったんだよ。ま、いいケドさぁ」
「カワイイ…ヨミ、嬉しそうだ。なぁ氷雨」
「あ、ああ」
内心、どこがだよ、と毒づくが、楽しそうな明を見て、自然に口が動いていた。
「ほう、これが欲しいか…ならば、取ってこい!」
瑰が、猫じゃらし、もとい金狗尾草を放り投げた瞬間、ヨミが変化した。
黒い巨体が、宙を舞う。
空中を飛行しながら、素早く獲物を銜えた。
「すごい、飛んだ!」
「な?飛んだだろう」
はしゃぐ明に、瑰は、嬉しそうに笑う。
「おいで、ヨミ…お前、飛べるんだね」
降り立ったヨミは、喉を鳴らして、明に甘えた。
「お前、あたし達を乗せてくれる?あの、海の向こうに」
くぉん、と啼いて、ヨミはしきりに尾を振る。
どうやら、承諾してくれたようだ。
「ありがと、ヨミ…いい子だね」


どうも、維月です。
明、不調がついにピークを迎えております。
氷雨は、相変わらず、ヨミと仲が悪いですね(汗)
ヨミの、以外にカワイイ(?)一面が…
まあ、楽しんで、読んでくださいませ♪













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