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ささくれ黙示録 ~ショートショート集・ソノ1~

ショートショート001 教育

作者:笹石穂西
 ある小学校で、子どもに対するアンケートが行われた。

 どこの学校でも定期的に実施されているもので、今回は新年度最初のアンケートだった。

 その内容は次のようなものだった。


〈あなたが、お父さんやお母さんに、「お父さん・お母さんのことは好きかい?」と聞かれたら、どう答えますか? その理由は何ですか?〉


 この質問に対して、ほとんどの子どもは、こんな答えを書いていた。


〈「好きだよ」と答えます。そう答えたら、お小遣いをもらえるかもしれないからです〉


 しかし今回、ひとりの新入生が、こう答えていた。


〈「好きだよ」と答えます。好きだからです〉


 この回答に、先生たちはざわついた。


「いまどき、こんなことを答える子は、一年生とはいえ、珍しいですね」

「大体の子は、先生の目を気にしてそう答えているだけですよ。実際に話を聞いてみると、やはり小遣い目当てだったり、自分の評判を良くするための答えだったり、ということがほとんどです」

「しかし、この子は私のクラスの生徒なんですが、どうやら、本当にお父さんのことが好きだからこう答えたらしいのです」


 それを聞いた先生たちは、一斉に眉をひそめた。


「それはいかん。このご時世、小さいころから世間を上手く泳ぐ方法を学んでいかないと、溺れてしまうに違いない」

「このままでは将来が不安ですな」

「仕方ありませんね」


 翌日、先生たちは両親に事情を説明して、子どもを学校と提携している病院に連れて行き、対処を依頼した。



 しばらく経って、その子は無事に帰ってきた。

 両親と再会したその子は開口一番、純真無垢そのものといった風の表情で、しかしどこか前よりも媚びるような目つきで、こう言った。

「パパ、ママ。僕は、パパとママのことが、大好きだよ」


 息子の言葉の真意を正しく理解した両親は、満足そうにうなずきながらお小遣いを与え、愛するわが子とともに家へと帰って行った。

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