4.魔法
「魔法…かぁ」
ぼそっと呟いたところで何か変わるわけではない。
「魔法って、陽一、ついに頭おかしくなったか?」
神社からの帰り道、独りで歩いていたはずの僕の耳元で、確実に頭のおかしい奴の声がした。驚くので止めてもらいたい。
「黙れ、進。明らかにお前の方がおかしい」
「ママぁあああ!陽一ちゃんが、僕の事虐めるよぉ!!」
商店街を通っている時だったので、周りの人々の冷ややかな視線が突き刺さったことは言うまでもない。
相手の心が分かるって、どういう風に分かるんだろう。もうちょっとじいさんに聞いとくんだった。
翌日、早朝。
僕は足早に神社へと向かった。
「じいさーん…出ておいで」
「早くからご苦労なことだの」
耳元で声がする。最近耳元でいきなり声がすることが多い気がする。正直、止めて欲しい。
振り向いた時には、案の定周りが止まっていた。昨夜雨が降ったのだろう、木の葉から滴る水滴が宙に浮き、幻想的に輝いていた。
「じいさん、魔法の説明をお願いしたい。使い方、効果…その他諸々」
「よかろう。使い方は相手を指差し、尋ねればよい。効果はその人の本音が分かる。代償はぬしの寿命三日。他に聞きたい事は?」
あっさり答えられたため、少し戸惑う。
「え…いや、大丈夫です」
「また来るがよい。…あぁ、早朝は避けてくれぬか?わしもなんだかんだいって、眠いのだ」
答えようとした時、光の粒が空中に静止し続けることを止め、土を濡らした。
「起立、気をつけ、礼」
「「「「「おはようございまーす」」」」」
「着席」
朝、菊本は腕に包帯を巻いていた。見るからに痛々しかったのだが、本人曰く、打撲で湿布貼ってるんだけど、剥がれちゃうから包帯巻いてるだけだよぉ♪、らしい。もう、ものすっごく、非常に、あり得ないくらい、申し訳ない気持ちでいっぱいだ。
「早速だが席替えを開始する!!」
いきなり松原が全力で吠えた為、教室内の全員…寝ている若干一名(友達間では進と呼ばれている)以外全員が身体を強張らせた。学校生活の中で楽しみなイベントランキング、上位にランクインするこの席替えというイベントで何故ビビらなければいけないのだろうか。
「では!!!!席はくじで決める!!……と言うとでも思ったか!!!」
松原の全く意味のないフェイントが響き渡る。窓が振動する程の声の大きさと言えば、どのくらいうるさいのか分かってもらえるだろうか。
「違うんですか?」
流石の進も起きたらしく、寝ぼけた声で質問した。
「席は……」
松原が黒板に座席表を雑に、いやもう本当に雑に、書く。
「よし!全員に数字を選んでもらう!そしてその後この座席表に数字を書いていく!選んだ数字の席が新しい席だ!!」
松原は、吠える、叫ぶ、以外に喋るという事ができないんだろうか。
「じゃあ女子から引きにこい!!」
言われるままに女子が引きにいく。
「男子!引きにこい!」
菊本の隣がいいなぁ……
あ!
教卓の前に人が大勢いた為に、後ろに回り込んだ僕は、教卓の中にある数字の書いてある座席表を発見した。視力は2.0あるから余裕で見える。
でも菊本の番号分かんないしな…
……分かるか?……
…分かるんだろうか?…どうせ使わないといけないんだから、こんな時にこそ…
僕は不自然でないように、こっそりと指先を菊本の方へ向けた。
引いた番号を教えて下さい……そう、心の中で呟く。
……13……
そう頭の中に菊本の声が鳴り響いた。
13の横は…7!
迷わず7番を選んだ。
「じゃあ数字書いていくぞ!」
………
菊本の隣になった。
この時から僕は、魔法の存在を信じて疑わなくなった。
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