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ちっぽけで、ちっちゃな魔法
作:優美先人っ



1.あの日


僕は浦川陽一。僕は今、目の前にいる菊本玲奈に恋をしている。少し色の抜けた肩くらいまでの髪、茶色がかった瞳、背は平均より少し低いくらいじゃないだろうか。とりあえず、可愛い。百人に聞いて百人可愛いと言うと思う。けどそんな彼女に彼氏がいないわけがなくて…今、僕の目の前で、彼氏と思われる人と手を繋いでいる。
「浦川じゃん。久しぶりぃ」
屈託のない笑顔で笑いかけてくる彼女を、可愛いと思わない人は、世界中に一人もいないんじゃないか、と思う。
「あ、久しぶり」
ここは、僕らの住む町唯一の神社だ。ちなみに今日は元旦。初詣でたまたま会ったってなわけ。
「誰?」
「あたしの同級生だよぉ。浦川、拓馬だよ。あたしの彼氏ぃ♪」
そう言いながら拓馬とかいう奴の袖を引っ張り、また屈託のない笑顔を見せる。自制心がきかなくなりそうなくらい、可愛い。まぁ、それだけ可愛いんなら、彼氏の一人や二人いるよね…。確かに、その拓馬とかいう奴はかっこいい。金髪で、今風に言えばイケメンだろう。それに対して僕は、髪は真っ黒、ぱっとしない顔立ち。背も標準くらい…。一言で言えば、"普通"だ。そりゃ拓馬の方が僕よりずっとお似合いかもしれない。
「浦川は誰と来たの?あ!浦川彼女いたっけぇ?」
「いや、いないよ。進と来た」
進こと、中山進は小学校、中学校、高校とずっと一緒の幼馴染ってやつだ。
「あれぇ?進いなくなぁい?」
「今、金魚すくいしてる」
「あーねぇ。進っぽぉい」
菊本は語尾を伸ばす癖がある。そこがまた可愛いんだよなぁ。…我ながら気持ち悪っ!
「玲奈、行こ」
「あ、うん。ごめぇん。じゃあ浦川、またねぇ♪」
「またね!」
糞っ、拓馬とかいう奴、菊本の名前呼び捨てにしやがって!様くらいつけろ!
「よーいちぃいいー!!」
そう叫びながら、進がこっちに走ってくる…お前どんだけ金魚持ってんだよ。
「何?何匹いるの?」
「三十二匹!」
「は?いくら使った!?」
「え?百円だよ?三十三匹目獲ろうとしたら、店の人が頼むからもう止めてくれって言うもんだからさぁ」
どんな才能だよ。
「それより早くお参りしようよ」
「いや、お前の金魚すくいを待ってたんだよ?」
「あ、そっか!」
進は天然だ。しょっちゅう右と左の靴下間違えてたり、ボタンがずれてとまってたりする。
「陽一、ここの神社恋に効くらしいよ!万年独り身のオレらには、ぴったりだな!」
「うるさい」
へぇ、そうなんだ。知らなかった。

かなり長い列に並び、やっと順番が来た。
「やっときたぁ」
「進は、彼女下さい!か?」
「当たり!お前なんで分かったの?超能力!?」
「お前、毎年それじゃん」
「てへっ」
てへってお前が言っても、可愛くもなんともないって。菊本が言うんなら、話は別だけど。
「陽一は?」
「えっ?」
「早くしろ!!後ろ並んでんだぞ!」
おじさんが怒鳴ってきた。早くお参りしなきゃ。えーっと、お願い……駄目だ!菊本以外何も思い浮かばない!どうしよう…そうだ、菊本が彼女になりますように、とまでは言わないから、

あの拓馬って奴と菊本が別れますようにっ!

よし、終わりっと。
「……っ!!!」
一瞬何が起きたのか全く分からなかったが、周りの風景が固まっていることに気付いた。驚きのあまり声も出せずにいると突然、
「おぬしが、次期魔法使いか」
という声がした。ぱっと振り向くと、そこにはおじいさん?が立っていた。
「え?ま…魔法!?てっまっ周りがっ!」
動揺して上手く言葉が出せずにいると、
「周りが止まっていることは、気にすることはない。それより、ぬしが新たな魔法使いとなるのだ」
「えっ?はっ!?」
「簡単に説明すると、二十年毎、元旦の初詣で、人の不幸を望む、情けのない願いをした、最初の者が魔法使いとなるのだ」
「……」
「まぁ、情けない者の称号といったものかの」
「まっ…魔法って?」
どうやら僕は大変な状況に陥ってるらしい。
「魔法と言っても、ぬしが考えるようなたいした物ではない。人の心の内を知る事が出来るという、魔法だ」
……。
「もちろん代償は要るが、たいした事ではない。一度心を読む度に、ぬしの寿命が少しづつ縮むというだけだ」
「じゅ、寿命が!?」
「驚く事はない、縮むといっても、一回につき三日間縮まるというだけの話だ」
「…使わなければ?」
「おぉ、丁度説明しようとしていた所だ。もし、一週間に一度使わなければ、ぬしの最愛の人に不幸が訪れる」
「最愛の人って!?」
「その都度変わるが、今なら、そう、菊本という女子(おなご)だ」
え…それは困る。
「魔法使い、と響きは良いが、まぁ一種の呪いのようなものだ。だが安心しろ、一年間で呪いは解ける。単純に計算して、最低ぬしの寿命が百と四十四日間縮まるという呪いだ。まぁ、最低の話だがな」
……
「今日、今からこの呪いは始まる。何か分からぬことがあれば、ここに来るが良い。今日の所はここまでだ」

一瞬目の前が真っ暗になる。目に風景が戻ってきた時には、全てのものが動き出していた。




「まさかね…」
「んあ?どうしたよ、陽一?」
いきなりそう呟いた僕に、陽一は間抜けな声で返事をしてきた。
「…いや、なんでもない」





この時は、そう、なんでもないと思った。いや、思っていた。この一週間後にあれが…起きてしまうまでは…。






















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