■ 34 ■
九月の下旬ともなると、朝夕はすっかり涼しくなった。昼間はまだ暑いけれど、季節はゆっくりと移り変わっている。
僕は相変わらず幸村とつるみ、仲本や矢野たちとふざけあっている。クラスは夏木と九条を中心にまとまり、今は受験勉強と文化祭の準備に追われている。
キャンプ以来、森川奈菜と姫さんは意気投合しているらしく、よくふたりでいるところを見かけるようになった。
噂によると、夏木は進学しないそうだ。
三鷹は幸村と別れた。幸村は一晩泣き明かしたらしく、結果を報告してきたときもまだ目が腫れていた。慰める言葉も出なかったけれど、あいつは一人で立ち直った。
僕は進路希望の紙を埋めて提出し、加藤先生をちょっぴり涙ぐませた。
シドの個展はそれなりに話題を呼んだ。いくつかの雑誌で取り上げられたようだが、本人はすでに飽きていたらしく、今は日本を離れている。またそのうちに、ふらりと戻ってくるだろう。彼の場合、十花なしでは一ヶ月と持たないのだから。
父さんが久しぶりに帰ってきた。母さんは顔には出さないけど嬉しそうだ。僕も嬉しい。
三鷹はいつものように雑誌をめくっている。ただし洋雑誌ではなく、フリルやリボンがたくさんついたドレスの女の子が載っているやつだ。ピンクのウィッグのいかれたツインテールもいる。別れてからも、ときどきは幸村の趣味に付き合ってふたりで出かけているらしい。
「好きだ」
試しに言ったら聞き流された。「片想いしている三鷹が好きだ」今度はちらりと睨まれた。「天才でサディストっていうだけでもしんどいのに、十花に惚れるなんて」ぱたり、と雑誌が閉じられる。「茜らしいよね」
「忠告、なんてするんやなかった」
真顔で見つめ返す三鷹は、人生最大の汚点だとでも言うようにふうっと息を吐き出した。僕がこらえきれずに吹き出すと、冷ややかに睨まれる。
「一貴ー、宿題終わったんならバレーやろ、バレー」幸村に呼ばれて、僕は立ち上がった。
fin.
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