表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

短編集

俺とゴブリン

作者: 枝鳥

胸糞要素有り。注意。

 こんな異世界糞食らえだ。


 今日も俺は短剣でゴブリンの心臓を開きながら悪態を吐く。

 俺はよくある異世界転移物みたいに、事故に遭って神様に会って、神様に魔法を貰って異世界に来た。

 適性が土魔法しかなかったけど、俺なら異世界で上手くやっていけると思っていた。

 だが、異世界は俺が思っているほど楽なものじゃあなかった。

 冒険者なんて使い捨てのゴミみたいな存在。知識チートで成り上り?俺の考えるものなんて糞の役にも立ちゃしない。料理だってそこそこ美味いし、そんなそこそこの料理より美味い物なんて俺に作れるわけがない。便利な道具だって作り方なんてわかるわけがない。

 それでも俺は冒険者をやるしかなかった。

 冒険者以外に俺がなれるものなんてここにはなかった。


 物語やゲームで序盤に出てくるゴブリン。人より小さくて素早くて臭くて凶暴。

 そんなゴブリンすら俺は死ぬ思いで倒すしかない。

 土魔法があるだろうって?

 ストーンバレットの呪文を長々と唱えてる間に移動されて当たらない。

 だから、木の上に登ってゴブリンが通りかかるのを待って頭上から石を落としてやるしかない。

 石を持って木に登らないですむことだけがありがたかった。


 そんなゴブリンでも、1日に2匹も狩ることが出来れば、何とかここでは生きていける。

 討伐報酬なんてここにはない。

 ゴブリンを始めとする魔物の心臓にある魔石。これをギルドで換金して俺は暮らしている。

「本当に糞ゲーだわ、この世界」


 魔石は魔道具を動かすために必要だが、常に不足しているらしい。だから俺は見たことも使ったこともない魔道具のために、ゴブリンを狩って魔石を取り、それを売って暮らしている。


 俺は1日の目標を5匹と決めている。

 糞ゲーなこの世界、やっぱり俺は女にももてない。イケメンでもないし金もないし、トークが上手いわけじゃないしで俺がもてるわけがない。

 だから、毎日ゴブリンを狩って魔石3個分をコツコツ貯めている。

 この世界に奴隷がいることを聞いて俺は決めた。

 金を貯めて可愛い女奴隷を買って嫁にする!

 俺だけに従順であんなこともこんなこともさせてくれる奴隷ちゃん!

 出来れば若くて可愛くて料理上手で床上手な処女!!

 今は可愛い奴隷ちゃんを迎えるための試練の時なんだ!!!


 奴隷の値段はピンキリだという。

 安いと日本円で100万くらい、高いのは上限なし。

 あんまり安いと変な病気とかが怖い。

 だから俺は3年間、必死にゴブリンを狩った。

 そして貯めた日本円で500万。


 途中からは土魔法のレベルが上がったのか、ゴブリンを土壁で囲んでから落石でトドメを刺せたから、ゴブリン狩りもだいぶ楽になった。これだと群れでも狩れるからな。

 ま、それでも臭いゴブリンを毎日相手にするのは相当きつかったが。

 100万で日本なら軽自動車くらい買える。

 500万あれば高級車が買える!

 出来れば300万くらいに出費を抑えて、200万は奴隷ちゃんとの新生活の費用にしたい。


 俺は、ドキドキしながら奴隷商の店のドアを初めて叩いた。

 え?

 今まで下見に来なかったのかだって?

 俺は買えないのにショールームに行って馬鹿にされるのなんて嫌だよ。

 それに、もし!俺の理想の奴隷ちゃんがいて、俺が金を貯める前に他の奴に買われたらショックだろ?






 俺は一人で奴隷商の店から出た。

 絶望した!

 何だあれ?

 100万で買える奴隷なんて野郎ばっか。しかも年取ってよぼよぼじゃねえか。

 200万出してようやく若い女が出て来ても、正直こいつ絶対に変な病気あるだろって奴ばっかり。

 500万で病気のない女が出て来ても、おばちゃんどころかおばあちゃんになりかけなBBAしか出てこない。


 絶望した!

 糞みたいな異世界に絶望した!



 500万あるから、しばらく生活には困らないが、俺は八つ当たりを兼ねてゴブリンを狩っていた。

 俺が欲しいような若くて可愛いい処女の奴隷は、日本円で1000万でも無理だった。

 奴隷商ははっきり金額を口に出さなかったが、そんな可愛い女は娼館が買って、買った以上の儲けを出すらしい。

「クソックソックソッ!」


 こんなゴブリン、いくら狩っても奴隷を買える日なんて来やしない。




 そして俺は閃いた。

 それはまさに天啓だった。





 俺は土魔法を何度も使って壁を作る。

 高い壁に囲まれた空間。

 一箇所だけ出入り口を作っておいて、奥にゴブリンの死骸を置いておく。

 翌日、壁の中にはゴブリンがワラワラいて共喰いをしていた。

 ゴブリンは小さくて素早くて臭くて凶暴。

 それ以外にも超雑食で、エサが無ければ共喰いだってする。

 性欲も強くて繁殖力も強い。

 が、メスが生まれにくいので他種族のメスをさらって繁殖する。1回の繁殖で10匹は増える。繁殖期間も10日ほどで早い。

 だからゴブリンはいくら狩っても減らない。

 メスが繁殖できなくなると、このメスもエサにする。まあ、一応、繁殖できるメスには優先的にエサを与えるようだが、本当に酷い種族だと思う。

 俺は入り口から15万に値切って買った奴隷を入れて壁を塞いだ。

 病気でちょっと頭がいかれた、買い手もないような奴隷だ。

 ほっといても1ヶ月もすれば死ぬだろう。


 まだしばらくはゴブリンを狩る必要がある。

 ゴブリンを狩って魔石を取り出す。

 死骸は塀の中へ。

 メスのためのエサも放り込む。

 たまに壁の外に階段を作って中の様子を確認する。

 共喰いが始まったあたりで、転がる魔石を回収。

 頭数が増えすぎたら、落石で減らす。

 減りすぎたら、儲けで買った壊れかけの奴隷を中に入れる。




 糞みたいな異世界で、俺は金を稼いだ。

 稼いだ金で嫁も買った。

 嫁はいつでも俺に従順であんなこともこんなこともしてくれる。

 ビクビクしていて、とても可愛い。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 最後の1行でホラーに早変わり(笑)15万で買った奴隷は人間の女の子ってことでいいんですよね?
[一言] 色んなものが振り切れちまったか。 でも命の価値が軽い世界だと普通にあり得そうなのがなんとも・・・ ちなみにゴブリンの魔石ができるのって産まれた時点なんだろうか?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ