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第5話 ステゴサウルス


第5話 ステゴサウルス


 ガラ。ゴン!
 いつものようにプロット先生が教室に入ってきた。
 もう長く住んでいるんだから入り口の高さぐらい覚えてもいいと思うんだけど・・・
 僕、岡の上小学校6年A組の毛利隆史は思った。
「おーいて〜! おはよう。」
 プロット先生は頭を押さえながらあいさつをした。
「起立!」
 横の席の清子が大きな声で言った。彼女はクラス委員長なんだ。
 かわいいけれど怒ったときは怖いんだ。
「プロット先生おはようございま〜す。」
 全員が立ち上がって朝のごあいさつ。
「はい、おはよう。」
 今日は思いっきり打ったようでプロット先生はまだ頭を押さえている。
「先生、背が高いんだから、腰を落として入ってこなくっちゃ。」
 僕が大声で言った。いや僕じゃない。
 僕の口って勝手にしゃべっちまうんだ。でもたまには僕自身が知らない事までしゃべるから今じゃクラスで恐竜博士ってあだ名がついたぐらいなんだ。
「そうタカシ。君の言うとおりだ。明日からはもっと気をつけよう。」

「さぁ勉強をはじめよう。教科書の23ページをあけて。」
 プロット先生が例の黒いバックパックの中へ手を突っ込んでゴソゴソかき回しながら言った。
 でも僕たちは全員がポカーンとしている。
 プロット先生が気付いて聞いた。
「あれっ、みんなどうしたの。」

「だって私たち、教科書なんて持っていません。」
 大内清子が言った。
「えっ、どうして。」
「だって先生は急に来て、それから教科書なんて使って、今まで勉強しなかったじゃない。」
 すぐうしろの席で菊池ひとみが大声をだした。
 お陰で僕の耳はキンキン。
「えっ、これって勉強を始める前に先生が言うあいさつじゃないの。だって、昨日、ほかの先生の授業を見なさいって教頭先生が言うから見てきたんだ。そうしたら全部の先生が同じように言ってたから。」
 プロット先生が目を丸くして言うものだから僕は算数の教科書を出して、
「これが教科書。」
 って言った。
「おータカシ、ありがとうね。なーんだ本の事か。じゃ、いらないね。」
「どうして〜、本を読めってみんな言うわよ。TVのドラマで道明寺だって本を読め、本をって言うわよ。」
 うしろの方の席のヨシミが叫んだ。ちょっと小柄で色の白いヨシミは本大好き人間だ。毎日学校での休み時間には決まって本を読んでいるんだ。
 そうそうヨシミって『好』って書いてヨシミって読むんだって。

「ごめん、ごめん、ヨシミ。そうじゃないんだ。僕の授業には本は要らないねって言ったんだ。じゃ先週出てきたステゴサウルスを今日は勉強しよう。さぁ、この恐竜について知っている事があったら何でも言ってごらん。」
 プロット先生は言ってバックパックの中から白いチョークを取り出した。それをプイッっと空中へ放り投げるとチョークは方向を変えて黒板へと飛んで行き、大きなステゴサウルスの絵を描き始めた。
「ワーオー」
 僕は心の中で叫んだ。
「じゃタカシ、君からだ。ステゴサウルスって名前の意味は知っているかい。」
「えっ、ステゴサウルス。そりゃもう、えーっと。子供が生まれたら親達はスタコラサッサとどこかへ行っちゃう恐竜だからかな。」
 急に名指しされたものだから、僕はどドギマギして適当に思った事を口にだした。
「そんなの可哀想じゃないの。」
 清子が横で目をむいて僕に怒る。
「ははは、そうか捨て子ねえ。なるほど。だれかほかに知っている人はいるかい。」
 シーン。
 先生が言ったってそんなの知っているやつはいないよ。
「じゃ、説明しよう。『Stego』って言うのは『屋根』という意味なんだよ。最初に80cmの長さの背中にある骨の板みたいなのが発見されてね、それが屋根に貼るタイルみたいな形だったからこう言う名前がつけられたんだよ。わかったね。」
「はーい」
 僕たちは揃って返事をした。

 プロット先生が黒板にくっついているチョークを手にとって黒板をコンコンと叩いた。
「さぁ実物で勉強しよう。」

 黒板に書かれたステゴサウルスがだんだんと太って来た。すごいや3Dになった。
 今まで灰色の黒味がかった、いや緑色の濃いのかな、になってきた。
 形が出来た頃にポンと黒板から飛び出してプロット先生の机の上に立った。

「プロット先生。ステゴサウルスってこんなに小さいのですか。」
 また僕の口だ。勝手にしゃべるなってーの。
「あぁ大人だと8mから9mぐらいになるんだけれど、今日は5分の1のミニチュアにしたんだ。だって大きいと危ないじゃない。でも気をつけてね。近ずくとしっぽで叩かれるよ。」
「でもこんなサイズならペットにしたらかわいいわね。」
 清子が僕にかわいい声でささやいた。

「さて、このステゴサウルスは、いつの時代に生きていたのかな。」
「はい先生。図書館で見た本には1億5000万年前のジュラ紀と書いていました。」
 清高が手を挙げたと同時にしゃべっちまった。うー腹立つー。
 僕だって知ってらー。
「おっ、そうか清高も勉強してきたんだね。えらいぞ。じゃ次。体重はどのくらいかな。」
「はい、2トンです。」
 今度はやったぜ。僕の口が早かった。
「そう。タカシはやっぱりよく知ってるな。じゃこのステゴサウルスが食べる物は何だろう。」
「そんなの簡単だよ。勿論、草なんかでーす。」
「植物でーす。」
「葉っぱだよー。」
 みんなが口々に言った。
「そうかそうか、みんな良く勉強してきたね。えらいえらい。植物イーターの事を何と言ったかなぁ。覚えているかい、最初の頃に勉強したね。」
「ハービボーだよ。」
 みんなが思い出そうとちょっとだけ間が空いたところへ僕が言った。
 今度は僕の口が勝手にしゃべったんじゃない。
 えっへん。

「そうハービボーだね。肉食はカーニボーだったね。」
「はーい」
「よしよし、じゃもう一つ。これは温血動物、それとも冷血動物。さてどっち。」
 シーン。
「あれっ、どうして。」
 プロット先生あ不思議そうな顔でみんなを見回した。
「だってそんな事ならってないもん。」
 和也がうしろの方から叫んだ。
「えっ、そうだったかな。じゃぁねついでに勉強しておこう。温血動物ってのは食べ物を食べて、それをエネルギーにして体温を保つ動物の事なんだよ。カズヤ。君がご飯を食べたら体が熱くなるだろう。」
「はーい。」
「そうだろう。じゃそうしたら人間はどっちかな。」
「温血動物で〜す。」
 みんなが揃って言った。
「はいよく出来ました。じゃ次は冷血動物の事だよ。これはね太陽の熱を直接貰ったり、土地や周りにあるものから熱を貰って体温を保つ動物達の事なんだ。誰だっけ家で犬を飼っているのは。」
「はーい。」
「はーい。」
 先生の言葉でクラスの半数が手を挙げた。

「そうか、ひとみんちの犬はいつもどこかの土の上で丸くなって寝ているだろう。そうやって土の温かさや太陽の熱を貰っているんだよ。それが冷血動物。わかった。」
「はーい。」
「じゃ、このステゴサウルスはどっちかな。」
「冷血動物で〜す。」
「はいよくできました。じゃ、今日の勉強はおしまいにしよう。タカシ、レポートにまとめておいてね。新聞に書くんだろう。」
 と言ってプロット先生は時計を見た。
「あれっ、変だなぁ10分も時間が余っちゃった。じゃ何か質問はあるかな。」
 誰も手を挙げないので、仕方が無い僕がしゃべるか。
「先生、このステゴサウルスって、こんな色なんですか。なんか軍隊の色みたいじゃないですか。」
「どんな声で啼くんですか。」
 横から清子が聞いた。
「よしよし、じゃ色の方から考えてみよう。恐竜ってのは2億4000万年前から生きて、6500万年前にいなくなっているよね。人間の歴史は精々ン万年だろう。誰も見た人はいない訳。恐竜が見つかるのは化石になった骨とか難い外皮みたいなものだから、色なんて判らないんだよ。このステゴサウルスだって、この板のような背中のトゲも敵から身を守る為でもあるし、体温を保つ為でもあった訳だから、色も黒なら太陽熱を吸収しやすくなるし、鏡みたいだと光を反射して敵の目を晦ますことだって出来るしね。。」
 と言いながらプロット先生がステゴサウルスの背中を触るとトゲが貝を貼り付けたように変わった。そして先生が背伸びをして手のひらをステゴサウルスに向けると、すごい光が先生の手のひらから出た。
 その光がステゴサウルスのトゲに反射して僕達は一瞬何も見え無くなった。
「どう。こんな事も考えられるだろう。だから色は今生きている動物たちを参考にして誰かが考えたものなんだよ。清子が言ってた声も実は一緒なんだ。でも声は化石に残った骨なんかから少しは想像することが出来るんだよ。じゃ、今日は終わりにしよう。」
 そう言いながらプロット先生はバックパックにステゴサウルスを押し込み始めた。それは風船のようにしぼみながら入ってしまった。
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  恐竜新聞 ステゴサウルスメモ 毛利隆史

 ステゴサウルスの化石は主に北アメリカで発見されている。
 150myaに生きていた。
 大きさは8mから9m。
 名前の意味は屋根恐竜。
 背中のトゲは二列になって生えている。
 しっぽには4本のつのが生えて、敵が来たらこれで叩く。
 冷血動物。
 背中のトゲの色は黒かも知れないし、鏡のような色かも知れない。

 でも、小さいとかわいかった。

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第5話ステゴサウルス了
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後記
今回はバックパックの活躍があんまり無かったね。次回はもっとバックパックに働いてもらうからね。
そうそう今回からお友達が増えたんだ。名前は武田好よしみちゃんだよ。仲良くしてね。

http://ncode.syosetu.com/n0980c/novel.html


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