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第1話 ヒューイ登場
     


登場人物

Drプロット(ロバート・プロット)
容姿 ハゲ頭でトンボメガネをかけて、鼻の下には太くて長いヒゲをはやしている。やせて、背が高い。
教科 理科
   専門 恐竜学

生徒 毛利隆史
大内清子
加藤清高
島津直子
多古弘子
菊池ひとみ

舞台 岡の上小学校 6年A組


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第1話  ヒューイ登場



「おっはよ〜」
 月曜日の朝、僕、毛利隆史は元気に6Aの教室へ入った。
 いつもは静かな教室なのに、なぜか今日はガヤガヤワイワイだ。
「これ、だれ?」
「外人だよ」
「どうしたの?何があるの?」
 と、僕もみんなが騒いでいる方へと寄って行った。
 そこには背の高い?いや足の長い外人が、弘子の机の下に黒いバックパックを置いて、それを枕にして眠っている。
 頭はハゲていて両耳の上にだけ天然パーマの毛がぐちゃぐちゃになってはえている。口の廻りのヒゲもはえ放題。
 かけたトンボメガネも半分ぐらいずり落ちて、やっと高い鼻のところで引っ掛かっている。着ている服も土臭くて何となく汚い。

「なんで、こんな所に外人の浮浪者がいるんだろう」
 僕が言った時、ガラッと教室の戸が開いて教頭先生が入って来た。
「みんな静かに!今日から新しい先生がこのクラスに来る事になっている。もう来ていると思ったんだけれど。」
 教頭先生のその声が終わると同時に僕達は寝ている外人を一斉に見た。
「えっ!これが?」
「まっさか」
「こんなハゲ外人が先生なわけないよね」
 僕が小さな声で横にいた直子にささやいた時、ゴン!と大きな音を立てて、その外人が起きあがろうとした。

「オー、イタイ」
 彼の口から出た最初の言葉だった。
「あっ先生いらっしてたのですか、じゃよろしくお願いしますよ」
と、教頭先生は出ていった。
「じゃやっぱり、このハゲ外人が僕達の先生!」
 僕が小声で言ったのを横の清子が
「シー」ととめた。
「いいよ、いいよ。僕から自己紹介するから」
と、その外人がよっこらしょっと起きあがりながら言った。
 普通なら僕の声なんか先生に聞こえる筈は無い程で言ったのに。

 先生はチョークを持って黒板に{クルー}と書いて
「僕はクルーだよ」
 と言った。
 そこで横の席の清子が
「起立!」
 と掛け声をかけたので、僕達は一斉に立ち上がって
「クルー先生。おはようございます」
 と挨拶をした。
「ハハハ、、、ちゃうちゃう僕はドクター・ロバート・プロットだよ。僕の言ったクルーとは新しい勉強を始める仲間と言う意味だったんだよ。」
 と言って名前を黒板に書いた。

 僕達は外人の先生が日本語を話すので全員がホッとして席に座った。
「さてタカシ!ハゲてて悪かったね。それからナオコ!浮浪者みたいな服って言ってたけれど、これは僕の制服みたいなものなんだよ。」
 あれ!どうして先生は僕達の名前を知っているんだろう。今日、と言うよりか今会ったばかりなのに、、、、まぁいいか。
 僕達はクシュンと沈んでしまった。
「ハハハ、、まぁそんなに気にはしてないけれどね。そうそう僕の制服って言ったけれど、本当はこんな所で教えるより外でホッシキングをするのが仕事なんだよ。」
「先生!ホッシキングって何ですか?」
 僕が手を挙げて聞いた。
「オー、タカシ!いい事を聞いたね。ホッシキングってのはね、化石なんかを探す事を英語で言うんだよ。」
「化石って、あの古い骨の事?」
「そう、死んだ動物の骨や植物なんかの事だよ。」
「え〜、気持ち悪〜い!」
 いつも静かな弘子が叫んだ。

「そんな事は無いよ。じゃ、別のクルーを紹介しよう。」
 と言って、先生はバックパックのチャックを開けて中をかき回してラグビーボールぐらいの大きさの石を取り出した。
「これは何かわかるかい?」
「石!」
 僕達は一斉に言った。
「ハハハ、、、、そう、石だよね。」
 と、プロット先生は言って、またバックパックに手を差し込んで一本のハンマーを取り出した。でも、、、そのハンマーは普通のハンマーと少し形がかわっている。お父さんが普段使ってるものとは確かに違った。釘を叩く方は同じだけれど、反対側は小さなスコップみたいだ。
「ちょっと見ててごらん。」
 と先生は言ってから、机の上に置いたその石をハンマーのスコップの様な側で軽く叩きだした。

 コンコンコンコン、、、、、、、、、
「このハンマーはね、ホッシキングハンマーと言ってね、こういう風に岩を叩いて割るんだよ。」
 コンコンコンコン、、、、、、、、、

 僕達はどうなるんだろうと全員がイスからお尻を浮かせて、その石を見つめた。
 ラグビーボールの長い方の廻りに浅いみぞが出来たところで先生は少し力を入れてパカッと半分に割った。
 その半分の石の割れ目を僕達に見せて
「じゃ、これはなんだい?」
「恐竜!」
 僕達は同時に叫んだ。
 その石の割れた面には小さな恐竜の骨が頭からしっぽまできれいに揃って張り付いていた。
「かわいい〜〜」
「ちっちゃ〜い」
 口々に叫ぶのをプロット先生は制して
「そう大正解。これから僕達はこの恐竜について勉強を始めよう。でもチョット広いかな。」
 言いながら先生は教室をグルーッと一周して
「あっ、間違った。狭いかなだったよね。さぁみんなの机とイスを全部うしろと壁に寄せてくれるかい。」
 僕達は、どうして勉強をするのに机やイスがいらないのだろうと思いながらも先生の言う通りにした。
 僕達は教室の中央に大きなスペースを作った。
「じゃぁタカシ。その恐竜を床の真ん中に置いてくれるかい。」
 と先生が言ったので、先生の机に行って乗っかってる恐竜を取って床に置いた。あれ!石は?いつの間にか元の石は消えていた。机の上から先生が片付けたのかな?でも、、、 先生は教室のうしろの方に立っているし、、、、、、まぁいいか。

 先生は両方の手を顔の前で擦り合わせて、何かにお祈りをしている。
 僕は横に立っている清子にささやいた。
「先生はどうして僕の名前を知っていたんだろうね」
 清子も不思議そうに思っていた様子で言った。
「そう、プロット先生が来てから、何か変よ、、、、」
「さて、いいかね」
 先生が床の真ん中へ歩いてきて大きく手を広げて言った。
「さぁ、みんなモットうしろに上がって!」
 先生は、僕達が不思議そうな顔をしているのを見て、少し考えて
「あっ、ごめん。うしろに下がってダッタ。さぁ、ヒューイが大きくなるから。」
 僕達はそんな事はあり得ないと思っているから、直子が恐竜の骨を指さして
「大きくなってる〜」
 っと叫ぶまで誰も動かなかった。

 本当にそれは大きくなっている。
 机よりも大きくなった。
 車よりも大きくなった。
 そして天井に届くかなと思った所で止まった。

 勿論、僕達は先生に言われるまでもなく、一歩一歩と退いて、今では壁に寄せた机の上にお尻を乗せるまで離れていた。
「わ〜ぉ、さっきの骨はわたしの家の一歳の犬ぐらいだったわよ。」
 ひとみが名前と同じ様に目を大きくして言った。
「違うでしょ。生まれて一週間目か二週間目ぐらいの大きさだったわよ。」
 と弘子が叫んだ。
「でも今では、恐竜の骨のおなかに私が入るぐらいじゃない」
 またひとみが言った。

「あっ、また!」
「ふるえてる!ゆれてる!」
 清高が教室の隅で震るえながら言った。
「ははは、、、震えているのは清高じゃないか」
 と僕が言った。
「何言ってるんだ。見てごらん君の足も震えてるじゃないか。」
 実際、僕の足も立っているのがやっとの状態だった。
 いつの間にか僕達は小刻みに移動して、全員が教室の片隅に、、、、、恐竜のしっぽの方へとかたまってしまっていた。

「臭わない?」
「うん、臭くなってきたね」
「誰か、おならをしたでしょう」
「ひとみのおなら!」
「違うわよ!」
「うわぁ、くさい!」
「あっごめんね。やっぱり少し臭うね。でもすぐに慣れるから、ちょっと、辛抱してね。」
 プロット先生がみんなを見回して言った。
 既にその時には骨だけだった恐竜に肉も皮も付いて、本物の恐竜に変身していた。

 恐竜はその長い首をゆっくりと持ち上げて、ぐる〜っと見回して顔をプロット先生に近づけた。
 先生は恐竜の目をじ〜と見て、優しく言った
「僕は君のママじゃぁないよ。ヒューイ」
 恐竜は首をかしげて、今度は僕の方へその首を廻して聞いた
「本当?」
 僕達は一言も言えず立ちつくしていた。

 何しろ恐竜を見たのも初めてだし、恐竜に話しかけられるなんて、、、
 しかも日本語で!

 でも僕は震える足を両手で押さえながら、勿論、目は恐竜からは離さないで。みんな、僕達全員が最も知りたい事をプロット先生に聞いた。
「プロット先生!この恐竜は僕達を食べるの?」

 プロット先生は両腕を組んでヒゲをなでながら言った。
「さぁねぇ、、、でももし君達がこのヒューイの事を知りたいのなら、彼に直接聞いてごらん。」
 でも僕には恐竜に話しかけるなんて勇気は無かった。何しろ両手は両足のふるえを押さえるだけで、顔はヒューイの目を見つめている。考えてみたらカッコ悪い姿だろうなぁ。
 横で僕の左手にしがみついていた清子が
「あなたは私達を食べるの?」
と、自分の身体を半分僕のうしろにかくして言った。
 僕はやっぱり女の子は強いなぁと、いつもの清子の強さを思い浮かべていた。
 その声を聞いてヒューイが顔を僕達の方へ廻してきて鼻先まで寄せてきた。すっごく臭い筈なのに、もう匂いなんて感じない。
 ふるえは最大限になってきた。既にお尻は机の上に乗っかっている。でも清子が握っている僕の左腕に彼女の爪が食い込んでいるので、少しは気持ちを抑える事が出来ている。

「あなたは草なの?」
 と、ヒューイが聞いた。
「ちが〜う!」
 僕達の真後ろで隠れていた清高が叫んだ。
「じゃぁいらない」
 と、ヒューイが言って首を元に戻したので僕達の緊張は少しだけゆるんだ。

「ヒューイは植物しか食べないハービバーと言う種類の恐竜なんだよ。」
 と、横からプロット先生が言ったので、僕達は全員がホーっと大きなため息をついた。
 そうと判っただけで僕の足の震えもとまった。でもまだ清子の爪は腕に食い込んでいる。
「あのぉ、、痛いんだけど。」
 今まで何とも無かった様な顔をして、僕は清子に耳うちした。
「あっ!」
 清子が小さな叫び声をあげ、顔を赤くしてパッと離してくれたので、なんか全てから解放された様な気持ちになった。
 やっぱり強がっていても女の子は女の子だなぁ。でも清子は僕の事が好きなんじゃぁないかな。ふふふ、、、実は僕も好きなんだけれどなぁ。あっ、そんな事よりヒューイのことだった。
 先生が説明してくれてたんだ。

「ハービバーって言う種類の恐竜はね、50cmぐらいの大きさから40mぐらいのものまで色々な種類があるんだよ。そしてね、二本足で歩くのもいるし四本足で歩くのもいる。でも大体大きな恐竜はこの種類に入るんだよ。だってね木は大きく高く育って行くだろう、そうしたら身体が小さければ食べ物に届かないから死んでしまわなくちゃならないだろう。」

 もう僕達はゆとりでヒューイを見つめている。
「君の頭はちっちゃいんだね。」
 と、清高も落ち着いてヒューイに言った。
 ヒューイは長い首を廻して自分のしっぽから足まで見回して言った。
「そんなこと無いよ。僕には頭なんてないんだから。」
「何言ってるの!あなたは持ってるじゃないの。」
 と、弘子が言いながら近づいて平手で頭をパンパンと叩いて
「ここに!」
 と、言葉を続けた。
 ヒューイは両目を寄せて
「僕には見えないよ。」
 と言った。
「先生!」
 僕が手を挙げて言った。
「少しバカなんじゃないですか?」
 そうしたら弘子が目をむいて
「私の事をチキンヘッドって言うの!」
 と、鼻息荒く言った。
 どうして僕が発言するとこうなるのだろう。女の子は恐ろしい。

「ハハハ、、、ヒューイの脳の大きさが豆粒ぐらいだと言っているんだよ。」
 と、先生が助け船を出してくれた。
「そうして君が大人になった頃の脳は体重の40分の一ぐらいの重さだけれど、ヒューイの場合は5万分の一ぐらいだからね。」
 と、続けた。
「でも、、、、、そんな小さな脳で、、、どうやって敵と戦う事が考えられるの?」
 と、ひとみが控えめに聞いた。
「ヒューイはね、考える力なんて必要無いんだよ。」
 プロット先生が言ったけれど、ひとみは納得しないで
「ヒューイ!あなたは何を考えているの?」
 と、聞いた。けれどヒューイは何も返事をしないので、
「ヘイ!ヒューイ!これはあなたの名前なの?」
 と重ねて聞いた。
「そうだよ。」
「じゃぁヒューイ、あなたは毎日何を考えているの?」
「考える?」
 と、ヒューイは言いながら、しばらくして
「僕は何も考えないよ、、、、、、考えるのは食べる事だけ、、、それと、、敵を探す事かな。」
 と、鼻であしらった。
 プロット先生が、その言葉を引き継いで僕達に言った。
「ヒューイ達の敵はね、カーニボーと言って肉食の恐竜たちなんだよ。ヒューイ達の様なハービバーが彼等の食べ物なんだ。現代で言ったら野生のライオンがシマウマなんかを襲って食べる様なものだよ。」
 それを聞いて清高が言った。
「カーニボー達はヒューイより賢いんだね。」
「そうだねぇ、カーニボー達はハンティングの計画も立てなくてはならないし、少しは脳のパワーが必要だね。例えばトロードンなんかは3mぐらいの長さの身体だけれど、その体重にしては大きな脳を持っているしね。」

 先生が説明してくれた。でも清高がどうしてって不思議そうな顔をしているのでプロット先生は僕達を見回して
「もし、もっと違った種類の恐竜を勉強したいのなら、それらを書き留めておかなくっちゃね。みんな手伝ってくれるかい?」
 と言ったので
「恐竜新聞を作ろう!」
 僕が叫んでしまった。これが僕の悪い所なんだよなぁ。頭で考えるより先に口に出てしまうんだ。でも、、
「やろう、やろう。」
「新聞の名前は、、、、」
「本にしよう。」
 みんながワイワイガヤガヤで、今回はうまくまとまった。よしよし。
「オーケー、オーケー。そしたら最初の新聞は誰が編集長をやるんだい。」
「ぼく!」
 僕は先生の言葉が終わる前に叫んだ。やれやれ僕の口め!

「先生!ヒューイが窓の外の植木を狙ってるぅ!」
 清子が叫んだ。
 ヒューイは教室の窓から首を出して植木の匂いを嗅いでいる。
「オーケー、タカシ、僕のバックパックを投げてくれ。」
 と、先生が言ったので、丁度僕のうしろにあったバックを取り上げた。なんだ軽い。空っぽじゃぁ無いのか?でも先生が言うのならと、四人ぐらい横の先生へ放り投げた、つもりだったがコントロールが悪かったのか弘子の頭にぶっつけてしまった。あの時の弘子の目は一生忘れられないだろう。女の子が怒ったらコワイ。
 でも、カラッポのバックパックなんか当たっても痛くも無い筈なのになぁ。
 頭を押さえながら弘子が重そうに先生に、そのバックを渡した。
 受け取った先生はすぐにチャックを開けて、一個のキャベツを取り出して一枚ずつはがして丸めてヒューイにやりだした。

 変だなぁ、あのバックパック確かにカラッポだったのに、、、本当に不思議な先生だ。
 ヒューイは先生から貰ったキャベツを美味しそうに噛み砕き、ゴクンと音を立てて飲み込んでいる。たちまち全部のキャベツを食べてしまった。そして大きな大きなあくびをした。それはすっごく臭くって僕達は一瞬息をとめた程だった。
 そしてヒューイは猫が自分のしっぽを追いかける様に大きな体を回し出した。
「みんなもっと広がって!」
先生が叫んだ。
 言われなくっても僕達は一足先にヒューイから離れていた。

 見る間にヒューイは前足をおって、続けて後ろ足をおって床に座り込んだ。また大きなあくびをして目をつぶった。身体が右に左にとゆれている。そしてゆっくりと左の方へ横たわって行った。彼は身体を横たえる前に眠っていたんだ。
「さあ、今日の勉強した所を君達の新聞に書いて」
 と、先生が言ったところで授業終了のサイレンが鳴った。
「じゃぁタカシ。君が編集長なんだからちゃんとまとめておく事。わかったね。」
「ハ〜イ」
「じゃぁタカシ、ヒューイを僕のバックパックに入れてくれるかい。」
 先生のその言葉で僕達はヒューイを見ると、いつの間にか元の骨だけになっていた。

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1話了 いかがですか?楽しめましたか?こんなバックパックがあったらいいだろうね。
    
http://ncode.syosetu.com/n0980c/novel.html


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